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First Chapter
目的のために
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目的のためには手段を選ばず、と言う言葉がある。政治と道徳を切り離した政治思想家の言葉だ。
しかし現実に己の道徳心を完全に政治手段と切り離せる者が何人いるだろうか?
『目的の達成のためには手段を選ぶべきでは無い、達成されなければ悲劇と破滅が待っているのだから』――まるで己の道徳心に対して、言い訳や隠れた呵責を並べ立てるかのようにこの言葉を唱えてはいないだろうか。
ミマナと言う女は、己の持つ良心や道徳心に対して、一切の弁解無くこの言葉を実行できる女だった。疑問や謎と言うものが、己が信じている何かが揺らいだ瞬間に生まれるものだとしても、それと己の為すべき事を即座に切り離して考え、具現しようとする。
敵に回せば『どの手段』を『いつの時』に選ばれるか分からず恐怖でしかないが、味方にすれば逆にどれほどに頼れる存在なのかを、皇太子ヴァンドリックは誰よりも痛切に理解していた。
一度は皇太子の地位を剥奪された己が再び返り咲けたのも、全てはこの女が己の陰に日向に支えてくれたからである、と。
故に彼は、残り二人の妃選びもミマナ姫に一任した。
「君が選んでくれた女性ならば間違いないし、私は君に隠れて不実な事をしたくない」
真心からそう告げると彼女は少女のように喜んで、皇太子ヴァンドリックにとって最善最高の最適解であるレーシャナ姫とキアラカを見つけてきたのだった。
その後もミマナ姫は二人の妃達と良好な仲を築き、出来る公務は分担させつつも、後宮の品位と秩序を維持してくれている。
流石にキアラカが妊娠を二人へ先に告げたと知った時は彼も拗ねたが、『乱詛帝』や『赤斧帝』の時のように妃達がいがみ合い、お互いを飲み合う蛇のように殺し合っているよりは遙かに良い、と落ち着いてから考え直した。
――その彼からすれば理解不能を通り越して、ただただ哀れな存在でしか無かったのだ――ミマナ相手に後宮の女主人の座を巡って真っ正面から敵対し、叩き潰そうと画策するアーリヤカごときなど。
しかし現実に己の道徳心を完全に政治手段と切り離せる者が何人いるだろうか?
『目的の達成のためには手段を選ぶべきでは無い、達成されなければ悲劇と破滅が待っているのだから』――まるで己の道徳心に対して、言い訳や隠れた呵責を並べ立てるかのようにこの言葉を唱えてはいないだろうか。
ミマナと言う女は、己の持つ良心や道徳心に対して、一切の弁解無くこの言葉を実行できる女だった。疑問や謎と言うものが、己が信じている何かが揺らいだ瞬間に生まれるものだとしても、それと己の為すべき事を即座に切り離して考え、具現しようとする。
敵に回せば『どの手段』を『いつの時』に選ばれるか分からず恐怖でしかないが、味方にすれば逆にどれほどに頼れる存在なのかを、皇太子ヴァンドリックは誰よりも痛切に理解していた。
一度は皇太子の地位を剥奪された己が再び返り咲けたのも、全てはこの女が己の陰に日向に支えてくれたからである、と。
故に彼は、残り二人の妃選びもミマナ姫に一任した。
「君が選んでくれた女性ならば間違いないし、私は君に隠れて不実な事をしたくない」
真心からそう告げると彼女は少女のように喜んで、皇太子ヴァンドリックにとって最善最高の最適解であるレーシャナ姫とキアラカを見つけてきたのだった。
その後もミマナ姫は二人の妃達と良好な仲を築き、出来る公務は分担させつつも、後宮の品位と秩序を維持してくれている。
流石にキアラカが妊娠を二人へ先に告げたと知った時は彼も拗ねたが、『乱詛帝』や『赤斧帝』の時のように妃達がいがみ合い、お互いを飲み合う蛇のように殺し合っているよりは遙かに良い、と落ち着いてから考え直した。
――その彼からすれば理解不能を通り越して、ただただ哀れな存在でしか無かったのだ――ミマナ相手に後宮の女主人の座を巡って真っ正面から敵対し、叩き潰そうと画策するアーリヤカごときなど。
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