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二章『追いつかない進化 - 飽食の町マーシア -』
第20話 病?
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「あれ……?」
シドウが目を覚ましたのは、ベッドの上でのことだった。
「シドウ! 気づいたんだ。大丈夫?」
「おお、意識が戻ったのですね。よかった」
ティアとアランの声を聞き、仰向けのままシドウは首を動かす。
ベッドの左右に二人が座っていた。
「ここは?」
「タリス教聖堂付属の治療所です」
タリス教――。
さまざまな土着の宗教が存在する中、大陸規模で広まっている世界最大の宗教である。
聖堂は世界各地に存在し、回復魔法の普及に努めているため、聖堂にはたいてい回復魔法所が設けられている。
マーシアの町の例のように「回復魔法所」ではなく「治療所」という名前になっている場合は、タリス教の僧侶の他、薬師も出入りしている総合診療所になっていることが多い。
回復魔法では疾病を治すことができないため、薬師とはお互い職域が重なっていることもない。基本的には、どこの町でもいがみ合うことなく協力し合っている。
「そうですか……。ティア、アランさん、ご迷惑をおかけしました。ええと――」
「わたしが教えてあげる! シドウがスケルトンに後ろから斬りつけられてたから、アランが慌ててスケルトンに魔法を撃ってくれたんだよ」
シドウはなぜこんなことになったのか記憶を振り返ろうとしたのだが、先にティアが説明してくれた。
「あ、そうだったんですね。アランさんありがとうございました」
アランにお礼を言った。一歩間違えれば危なかった。
「でもね。ちょうど振り向いたシドウの顔に、飛んだ頭蓋骨が直撃して失神! というわけ~」
「申し訳ありません。とっさに撃ったので加減ができず、骨が勢いよく飛び散ってしまったようです」
意識を失う直接の原因となったであろう、頭部への衝撃。
ああそういうことだったのか、とシドウは理解した。
「いえいえ。おかげで助かりましたし……というか、ティアはずいぶん楽しそうに言うね」
「うふふっ」
「いえ、ティアさんもかなり心配して、あの場で一生懸命に回復魔法を――ふぐっ」
ティアに頬をつままれ、アランは最後まで言えていなかった。
だが、斬られていたはずの腰の痛みが今はない理由も、シドウは理解することができた。
ケガの治療そのものはティアがやってくれて、この治療所の人がやったわけではなかったようだ。ここに運ばれた理由は、単に失神していたためらしい。
「ティア。ありがとう」
「どういたしましてっ。お代は高いよー?」
ぷいっとそっぽを向きながらティアはそんなことを言う。
それを見たアランは微笑みながら、
「私の回復魔法は彼女ほど性能がよくありませんので。ティアさんがいてくれてよかったですね。シドウくん」
と軽く追撃するようなことを言った。
「まったく、自称世界有数の魔法使いさんが頼りにならないから」
「申し訳ありません。しかしご存じと思いますが、攻撃魔法と回復魔法は相性がよくないんですよね。どちらも高度に習得するというのは、残念ながらこの世に生きている以上は不可能です」
アランの言うことは、言い訳というわけではない。
攻撃魔法を使う魔法使いは、基本的に回復魔法がまったく使えない。
むしろアランのように『片方が不得手ながらも両方使える』という人は非常に珍しい。
「でも、今回はシドウくんの寝顔が間近で見られたのは幸運でした」
アランはそう言うと、シドウの亜麻色の髪をいじりながら、顔をぐっと接近させてくる。
どう防衛しようかシドウが考えあぐねていると、アランの赤毛が上から掴まれ、無事に顔が引き離された。
「ハイハイ、見てて気持ち悪いんで。離れた離れた」
赤毛を吊っている手は、もちろんティアのものである。
「気持ち悪いですか? ティアさん」
「そういうのに偏見はないつもりだけど。少なくともアランの場合は気持ち悪い」
「ふむ。私の容姿に問題はないはずですが」
「だから余計本格的に見えちゃって気持ち悪いの! 不細工のほうがまだ冗談っぽくてマシ」
「……ふむふむ。ではティアさんの強い要望により離れることにしましょう」
シドウは内心でティアに感謝した。
アランのことは嫌いではないが、さすがにこのノリはきつい。
「ところでシドウくん。戦闘中にボーっとしていたという目撃情報がありましたが。本当ですか?」
「すみません。それは本当です。思いっきりよそ見してました」
「うわあ、本当だったんだ。ちゃんと反省するようにっ」
「痛っ……。うん、気を付ける」
ティアが右手でシドウのおでこを力強く叩いた。
その際に、手首の近くに着けている腕輪が目に入った。スケルトンと戦っているときに、盾代わりにしていたものだ。
先ほどの彼女の戦いぶりが思い出される。
「ティアって強いよね。なんであれで初級冒険者なんだろう」
「えっ? 何。突然」
「俺、ティアが戦っているところをきちんと見るのは初めてだった」
「あの……シドウくん。もしかして、ティアさんの戦いぶりに見惚れていて負傷したということで?」
「え、あ、あー……。見ていたのは間違いないです……。なんであんなに戦えるのに初級なのかなとか、右腕の腕輪はどうやって使うのかなとか……」
「もー、やあね。それじゃ覗きと変わらないじゃない! だいたい、シドウとアランの昇級が速すぎるんでしょ。十六歳で初級は別に普通だから!」
ティアはそう言って、またぷいっとそっぽを向いた。
そしてそのまま「トイレに行ってくる!」と言って退室してしまった。
シドウは慌てて上半身を起こし、「あ、ちょっと――」と言うが、彼女の姿は消えてしまった。
「怒らせてしまいましたかね?」
「いえ、そういうわけではないと思いますが」
「?」
「……やっぱり色々駄目なようですね」
アランがそう言いながら少し笑うと、また右手でシドウの亜麻色の髪をくしゃくしゃといじる。
よくわからないシドウは髪をいじられたまま、体を起こしたついでということで、フロア内を確認することにした。
寝ていてもわかったが、あらためて天井が高いと感じる。
広さもあり、ベッドがたくさん……三列で六台ずつ、合計十八台置いてある。
町の建物は薄い黄土色のレンガで出来ているものが多かったが、この治療所は灰色の石造りのようだ。
柱も角ばっておらず円柱状で、いかにも聖堂の一部という雰囲気である。
そして。
置かれているベッドは、全部埋まっていた。
隣のベッドに誰か寝ているというのは先ほどから気づいていた。なので、きっと自分以外にもケガ人がいるのだろうとは思っていたが……。
満員御礼になっているのは予想外だった。
「あの、アランさん。さっきの戦いは、もしかして結構な被害が出たんですか?」
「いえ。被害は上級冒険者の誰かさんだけでしたよ」
髪をいじる手を止め、微笑みながらアランがそう答える。
ではどうしてここはケガ人だらけなのか?
混乱しているのが顔に出ていたのだろう。アランが説明してきた。
「ここにいる方々は、前回の襲撃や前々回の襲撃で負傷された方々です」
「――!? どういう……ことでしょう……?」
ここは回復魔法を使う僧侶がいる治療所である。なのに過去のケガ人がまだ寝ているというのは、いったいどういうことなのか?
そう思って聞いたシドウだったが、アランは笑顔を消し、黙って首を振った。
すでに事情は聞いているが、ここでは言いづらい。そうアピールしていた。
空気を察し、それ以上突っ込まないようにしようとしたシドウだったが――。
「この町の人間は、ケガをすると治らないのさ」
その声は、隣のベッドに寝ている肥満体型の中年冒険者からだった。
彼は、左足の包帯をわざわざ取り、素足を見せてきた。
「……!」
シドウは絶句し、固まってしまった。
彼の足は、指先から炭化したように、黒く変色していたのだ。
ちょうどそこでトイレから帰ってきたティアが、
「あー、それが治らないって言ってたケガなんだね……」
と言った。
「ああ。この町の人間はな、みんな手足にケガをすると、回復魔法を使っても薬を使っても治らない。そのまま腐って壊死してしまうんだ」
「……」
「ここは『魔王城に一番近い町』だった。滅ぶ間際にヤケクソで放った大魔王の魔法が生きているという噂だ」
「魔法、ですか……」
「そうだ。だが他の町から来た冒険者はその魔法がかかっていない。だから、よそ者の冒険者はこの町では重宝されるのさ」
そのような魔法はシドウの知識の中にはなかったが、シドウも得意分野以外はまったく詳しくない。信憑性がある話なのかどうか、よくわからなかった。
(シドウくん、ティアさん)
(はい?)
(なに? 小声で)
(私は世界有数の魔法使いです)
(それ何度も聞きましたよ?)
(そうよ。自称でしょ?)
(まあまあ。自称かどうかはおいときまして……断言しましょう。そんな魔法はこの世に〝存在しません〟)
(えっ?)
そのとき、入り口の外のほうから、三人には聞き覚えのある声がした。
扉がガチャリと開く。
現れたのは、車椅子姿の町長だった。
入口に一番近いベッドから、寝ている人に話しかけ始める。
内容は「具合はどうですか?」などと、ケガを気遣うもののようだ。
シドウのところにも回ってきた。
「怪我をされたとお聞きしましたが、大丈夫ですか」
「あっ、大丈夫ですよ。わざわざすみません」
「今回はお手伝いいただきありがとうございました。お大事にしてくださいね」
町長はそう言うと、次のベッドに向かっていく。
それを三人でしばらく見つめていたが、一通り声をかけ終わると、町長はまた退室していった
「お見舞いのために来たのか……」
ポツリとそう漏らしたシドウに、先ほどの隣のベッドの中年冒険者が答える。
「いい町長だろう? いつもこうやって来てくれるのさ」
シドウが目を覚ましたのは、ベッドの上でのことだった。
「シドウ! 気づいたんだ。大丈夫?」
「おお、意識が戻ったのですね。よかった」
ティアとアランの声を聞き、仰向けのままシドウは首を動かす。
ベッドの左右に二人が座っていた。
「ここは?」
「タリス教聖堂付属の治療所です」
タリス教――。
さまざまな土着の宗教が存在する中、大陸規模で広まっている世界最大の宗教である。
聖堂は世界各地に存在し、回復魔法の普及に努めているため、聖堂にはたいてい回復魔法所が設けられている。
マーシアの町の例のように「回復魔法所」ではなく「治療所」という名前になっている場合は、タリス教の僧侶の他、薬師も出入りしている総合診療所になっていることが多い。
回復魔法では疾病を治すことができないため、薬師とはお互い職域が重なっていることもない。基本的には、どこの町でもいがみ合うことなく協力し合っている。
「そうですか……。ティア、アランさん、ご迷惑をおかけしました。ええと――」
「わたしが教えてあげる! シドウがスケルトンに後ろから斬りつけられてたから、アランが慌ててスケルトンに魔法を撃ってくれたんだよ」
シドウはなぜこんなことになったのか記憶を振り返ろうとしたのだが、先にティアが説明してくれた。
「あ、そうだったんですね。アランさんありがとうございました」
アランにお礼を言った。一歩間違えれば危なかった。
「でもね。ちょうど振り向いたシドウの顔に、飛んだ頭蓋骨が直撃して失神! というわけ~」
「申し訳ありません。とっさに撃ったので加減ができず、骨が勢いよく飛び散ってしまったようです」
意識を失う直接の原因となったであろう、頭部への衝撃。
ああそういうことだったのか、とシドウは理解した。
「いえいえ。おかげで助かりましたし……というか、ティアはずいぶん楽しそうに言うね」
「うふふっ」
「いえ、ティアさんもかなり心配して、あの場で一生懸命に回復魔法を――ふぐっ」
ティアに頬をつままれ、アランは最後まで言えていなかった。
だが、斬られていたはずの腰の痛みが今はない理由も、シドウは理解することができた。
ケガの治療そのものはティアがやってくれて、この治療所の人がやったわけではなかったようだ。ここに運ばれた理由は、単に失神していたためらしい。
「ティア。ありがとう」
「どういたしましてっ。お代は高いよー?」
ぷいっとそっぽを向きながらティアはそんなことを言う。
それを見たアランは微笑みながら、
「私の回復魔法は彼女ほど性能がよくありませんので。ティアさんがいてくれてよかったですね。シドウくん」
と軽く追撃するようなことを言った。
「まったく、自称世界有数の魔法使いさんが頼りにならないから」
「申し訳ありません。しかしご存じと思いますが、攻撃魔法と回復魔法は相性がよくないんですよね。どちらも高度に習得するというのは、残念ながらこの世に生きている以上は不可能です」
アランの言うことは、言い訳というわけではない。
攻撃魔法を使う魔法使いは、基本的に回復魔法がまったく使えない。
むしろアランのように『片方が不得手ながらも両方使える』という人は非常に珍しい。
「でも、今回はシドウくんの寝顔が間近で見られたのは幸運でした」
アランはそう言うと、シドウの亜麻色の髪をいじりながら、顔をぐっと接近させてくる。
どう防衛しようかシドウが考えあぐねていると、アランの赤毛が上から掴まれ、無事に顔が引き離された。
「ハイハイ、見てて気持ち悪いんで。離れた離れた」
赤毛を吊っている手は、もちろんティアのものである。
「気持ち悪いですか? ティアさん」
「そういうのに偏見はないつもりだけど。少なくともアランの場合は気持ち悪い」
「ふむ。私の容姿に問題はないはずですが」
「だから余計本格的に見えちゃって気持ち悪いの! 不細工のほうがまだ冗談っぽくてマシ」
「……ふむふむ。ではティアさんの強い要望により離れることにしましょう」
シドウは内心でティアに感謝した。
アランのことは嫌いではないが、さすがにこのノリはきつい。
「ところでシドウくん。戦闘中にボーっとしていたという目撃情報がありましたが。本当ですか?」
「すみません。それは本当です。思いっきりよそ見してました」
「うわあ、本当だったんだ。ちゃんと反省するようにっ」
「痛っ……。うん、気を付ける」
ティアが右手でシドウのおでこを力強く叩いた。
その際に、手首の近くに着けている腕輪が目に入った。スケルトンと戦っているときに、盾代わりにしていたものだ。
先ほどの彼女の戦いぶりが思い出される。
「ティアって強いよね。なんであれで初級冒険者なんだろう」
「えっ? 何。突然」
「俺、ティアが戦っているところをきちんと見るのは初めてだった」
「あの……シドウくん。もしかして、ティアさんの戦いぶりに見惚れていて負傷したということで?」
「え、あ、あー……。見ていたのは間違いないです……。なんであんなに戦えるのに初級なのかなとか、右腕の腕輪はどうやって使うのかなとか……」
「もー、やあね。それじゃ覗きと変わらないじゃない! だいたい、シドウとアランの昇級が速すぎるんでしょ。十六歳で初級は別に普通だから!」
ティアはそう言って、またぷいっとそっぽを向いた。
そしてそのまま「トイレに行ってくる!」と言って退室してしまった。
シドウは慌てて上半身を起こし、「あ、ちょっと――」と言うが、彼女の姿は消えてしまった。
「怒らせてしまいましたかね?」
「いえ、そういうわけではないと思いますが」
「?」
「……やっぱり色々駄目なようですね」
アランがそう言いながら少し笑うと、また右手でシドウの亜麻色の髪をくしゃくしゃといじる。
よくわからないシドウは髪をいじられたまま、体を起こしたついでということで、フロア内を確認することにした。
寝ていてもわかったが、あらためて天井が高いと感じる。
広さもあり、ベッドがたくさん……三列で六台ずつ、合計十八台置いてある。
町の建物は薄い黄土色のレンガで出来ているものが多かったが、この治療所は灰色の石造りのようだ。
柱も角ばっておらず円柱状で、いかにも聖堂の一部という雰囲気である。
そして。
置かれているベッドは、全部埋まっていた。
隣のベッドに誰か寝ているというのは先ほどから気づいていた。なので、きっと自分以外にもケガ人がいるのだろうとは思っていたが……。
満員御礼になっているのは予想外だった。
「あの、アランさん。さっきの戦いは、もしかして結構な被害が出たんですか?」
「いえ。被害は上級冒険者の誰かさんだけでしたよ」
髪をいじる手を止め、微笑みながらアランがそう答える。
ではどうしてここはケガ人だらけなのか?
混乱しているのが顔に出ていたのだろう。アランが説明してきた。
「ここにいる方々は、前回の襲撃や前々回の襲撃で負傷された方々です」
「――!? どういう……ことでしょう……?」
ここは回復魔法を使う僧侶がいる治療所である。なのに過去のケガ人がまだ寝ているというのは、いったいどういうことなのか?
そう思って聞いたシドウだったが、アランは笑顔を消し、黙って首を振った。
すでに事情は聞いているが、ここでは言いづらい。そうアピールしていた。
空気を察し、それ以上突っ込まないようにしようとしたシドウだったが――。
「この町の人間は、ケガをすると治らないのさ」
その声は、隣のベッドに寝ている肥満体型の中年冒険者からだった。
彼は、左足の包帯をわざわざ取り、素足を見せてきた。
「……!」
シドウは絶句し、固まってしまった。
彼の足は、指先から炭化したように、黒く変色していたのだ。
ちょうどそこでトイレから帰ってきたティアが、
「あー、それが治らないって言ってたケガなんだね……」
と言った。
「ああ。この町の人間はな、みんな手足にケガをすると、回復魔法を使っても薬を使っても治らない。そのまま腐って壊死してしまうんだ」
「……」
「ここは『魔王城に一番近い町』だった。滅ぶ間際にヤケクソで放った大魔王の魔法が生きているという噂だ」
「魔法、ですか……」
「そうだ。だが他の町から来た冒険者はその魔法がかかっていない。だから、よそ者の冒険者はこの町では重宝されるのさ」
そのような魔法はシドウの知識の中にはなかったが、シドウも得意分野以外はまったく詳しくない。信憑性がある話なのかどうか、よくわからなかった。
(シドウくん、ティアさん)
(はい?)
(なに? 小声で)
(私は世界有数の魔法使いです)
(それ何度も聞きましたよ?)
(そうよ。自称でしょ?)
(まあまあ。自称かどうかはおいときまして……断言しましょう。そんな魔法はこの世に〝存在しません〟)
(えっ?)
そのとき、入り口の外のほうから、三人には聞き覚えのある声がした。
扉がガチャリと開く。
現れたのは、車椅子姿の町長だった。
入口に一番近いベッドから、寝ている人に話しかけ始める。
内容は「具合はどうですか?」などと、ケガを気遣うもののようだ。
シドウのところにも回ってきた。
「怪我をされたとお聞きしましたが、大丈夫ですか」
「あっ、大丈夫ですよ。わざわざすみません」
「今回はお手伝いいただきありがとうございました。お大事にしてくださいね」
町長はそう言うと、次のベッドに向かっていく。
それを三人でしばらく見つめていたが、一通り声をかけ終わると、町長はまた退室していった
「お見舞いのために来たのか……」
ポツリとそう漏らしたシドウに、先ほどの隣のベッドの中年冒険者が答える。
「いい町長だろう? いつもこうやって来てくれるのさ」
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