死神さん、こっちです!

ボブえもん工房

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第3章 携帯越しに止まった時間

紗綾と日向

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「本当に来るのかなぁ。」
「分からない、来るか来ないかはあんたの親友さん次第だからね。」
私たちは今、ある場所へと来ていた。
それは私と日向がよく遊んでいた公園だ。
時間は数時間前に戻る。
私が泣き崩れ、女の子にある問いかけをされる。
私の答えはすぐに決まり、女の子が私の目の前に携帯を突き出してきた。
「それ私の携帯!!」
「あんたが死んだ道路で拾った。」
「なんで!?」
「こういう私物はたまに使うことがあるんだよ。だから念の為拾っておいた。これでもう一度、もう一度だけ親友にメールを送ればいい。」
私は希望の光が差し込んだ気がして、曇らせていた表情を明るくし、携帯を受け取ろうとした。
でも、私は携帯に触れられなかった。
詳しく言うと、受け取ろうとした手が透けていて、携帯を掴むことができなかったのだ。
「なんで・・・?」
「あんたは死んでるからこの世の物には触れない。」
「じゃーどうやってメールを送るっていうのよ!!」
私は女の子の言葉に焦りを感じ、大きな声で怒鳴ってしまった。
女の子は首を振り呆れた顔で続けた。
「だからあんたの言葉を私が打つ、そうすればメールを送信できる。」
女の子は携帯のメールを開いて、私の言葉を打つ前に釘を指してきた。
「いい?もう一度だけだからね。これであんたの親友さんが来ても来なくても階段は登ってもらうよ。」
不器用ではあるが確かに温かい。
女の子は冷たい感情を持っているが、不思議と温かい声をする時もある。
これだけは私の勘違いではないのかもしれない。
本当は心が純粋で温かい子なのかもしれない。
「ありがとう・・・。」
私は一気に女の子の優しさに触れた気がして、また涙を零した。
メールを打とうとする女の子は泣かれたことが面倒臭いのか、自分の頭を乱暴にかき、私に早く何を書けばいいのか言えという顔をしてきた。



日向、昨日は会えなくてごめんね。
話したいことがあるの。
小さい頃よく一緒に遊んでた公園あるでしょ?
学校が終わってからでいいからあそこに来て欲しい。
待ってる。



そして今に至る。
とても緊張はしているが、女の子がくれた最後のチャンス。
無駄にはしたくなかった。
私が目を瞑って日向が来ることを願っていると足音が聞こえてきた。
思いっきり顔を上げるとそこには日向がいた。
「日向・・・。」
日向からはやっぱり私たちは見えていないようだ。
目の前にいるにも関わらず、周りをキョロキョロしている。
私は女の子に不安の眼差しを向けたが、女の子は口を開き驚く一言を言った。
「今からあんたの親友さんに電話をさせる。」
「え?」
「死んだ人間と会話を交わすことが出来る方法、それは死んだ人間にだけかかる番号に電話をかけること。」
「そんな事できるの!?」
「できる。」
そう言って女の子はメールを打ち始めた。


111-4444
この電話番号に私の事を考えながらかけて。


女の子はその文章を日向に送信をした。
ピコン。
日向のメールの受信箱にメールが届いた。
早速番号を入力し、電話をかけている。
すぐに私の携帯が震えだした。
私は震える携帯を見つめ、女の子に決心した視線を送り、携帯を耳に当てて貰い電話に出た。
「もしもし。」
「え・・・?もしもし、本当に紗綾?」
「そうだよ。」
「あなた事故で死んだんじゃないの・・・?」
やっぱり日向は私が死んでいることを知っていた。
とても驚いているのが声から伝わってくる。
「死んだよ?でもある方法で電話できるみたいで、試したら出来た感じかな・・・?」
「何かの冗談かと思ったけど、まさか本当にかかるとはね。」
「あのさ・・・、その・・・、最後に伝えたいことあってさ。」
「ちょうど良かった、私も伝えたいことあったんだよね。」
日向の声色が急に変わる。
不安な気持ちにさせる冷たい声。
「何・・・?」
「私さいじめられてたじゃん?それで紗綾も引っ越して私一人ぼっちになっちゃったわけだけどさ、そのおかげで私変われたよ。」
「どういうこと・・・?」
「強くなれたってこと。私はもういじめられる側の弱者じゃない、今はいじめる側の強者になったんだよね。」
「え、ちょっとよく分からないんだけど・・・。」
混乱した。
小さい頃の日向からは絶対に出てこないはずの言葉。
『いじめる側』『弱者』『強者』
何もかもが私の知っている日向とは違う言葉で私は動揺を隠せないでいた。
「日向・・・、今誰かをいじめてるの?」
「そうだよ!小さい頃はいじめてるやつらなんか皆いなくなれって思ってたのに、今では私がいじめてるんだよ。凄くない!?」
日向は興奮したかのように声を大きくして私に言ってきた。
日向からは私のことは見えていない。
でも私からは見える。
日向の目は血走っていた。
私はそんな日向が怖くなり後退りをしたが、今伝えなきゃいけない気がして勇気を振り絞り声を出した。
「自分が何をしてるか分かってるの・・・?
日向なら分かるでしょ、いじめられている人の気持ちが・・・。なのになんで日向がそんな事してるのよ!!!」
口を開き話し始めると、自然と言葉が出てきた。
怖いという感情よりも怒りの方が強くなり、口調も強くなっていく。
「日向は何がしたいの?昔いじめられていたことへの復讐なの・・・?そんなのいじめた本人にすればいいじゃない!そんな勇気も無いくせに、他の人いじめて優越感に浸ってんじゃないわよ!!」
「うるさい!!!!」
日向も大きな声を出し私に対抗してくる。
「紗綾には分からないでしょうね。引っ越してからすぐ関係ない顔して生きてたもんね。私の事見捨てたんでしょ?気づいてないとでも思った?」
やっぱりだ。
日向は私のことを恨んでいた。
日向はとても優しい子だから、私の事を許してくれていると信じていたけど、やっぱり恨んでいた。
放心状態へと陥る。
覚悟はしていたが、直接言われるとやっぱり傷つく。
でもそれと同時に気づいたこともある。
日向が傷ついてこうなってしまったのは私のせいだと。
日向を傷つけたのは私なのだと。
「紗綾のこと信じてた・・・。手紙とか来て、私の事ずっと親友って言ってくれると思ってた。でも・・・、何も来なかった。どれだけ待っても紗綾からの手紙も言葉も、何も来なかった!!!」
さっきまで血走っていた日向の目からは、大粒の涙が零れて、下を向き可哀想なほど震えていた。
私もそれを見て涙を零した。
「私は私を守るので精一杯だったの・・・。こうなっても仕方がないでしょ?誰かの事をいじめるなんて間違ったことって分かってるよ・・・、でもこうしないとトラウマが私を襲ってくるの。強くないと私が弱い枠に入れられちゃう・・・。」
私に対する日向の気持ちはいいものではなかった。
でも何故かすっきりしている私もいる。
日向の言葉には傷ついたが、本当の思いをしれて安心もしている。
「ごめんね、でも私も同じだったよ。日向ほど辛い思いはしてないけど、小さい頃の話を誰にも出来なくてモヤモヤしてた。」
私の言葉に日向が顔を上げる。
その時に何故か、私と目があった気がした。
「私は親友のことを結果的に裏切った形になってしまった。この事を誰かに言いたかったけど、軽蔑されるかもって怖くなって言えなかった。ずっと気持ち悪いこのモヤモヤを隠しながら生きてきた。私は・・・、嘘つきだ。」
日向の潤んだ瞳に私が写っている気がする。
日向からはどう見えてる?
・・・おかしいね、見えてないのは分かってるけど、何だか見えている気持ちになる。
「紗綾・・・?あなた・・・。」
「もう切るね!とりあえず私が日向に言いたかった事は・・・。ごめんね、信じてくれてありがとう。」
日向は何かを言いかけたがそれを遮った。
次に出る言葉を聞くのが怖くて意図的に遮ってしまった。
私は日向を見つめながら言った。
「日向、じゃあね。」
女の子は通話を切った後すぐにくるりと後ろを振り向いて歩き出し、私は女の子に着いていく。
その時、夕日が綺麗だということに気づいた。
懐かしい。
私と日向が小さい頃、こんな綺麗な夕日に包まれながら遊んでたっけ。
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