39 / 45
第8章 パパとボク
笑顔を願って
しおりを挟む
それからレンタローと私は、今までの事を父親に話した。
レンタローの家がどういう状況か、母親と上手くいっていない事、どうやってここまで来たのか。
父親は目を丸くして驚いたり、眉を下げて悲しそうな表情をする。
しかし、話しているレンタローは父親と会えた事が嬉しいのか、悲しい言葉でも楽しそうに口にした。
「そうか。ママはそんなに変わってしまったのか。」
一通り話を聞いた父親は、何よりもそれがショックの様で肩を落としていた。
「レンタロー、ずっと独りぼっちだったみたい。」
「悪い事をしたな、廉太郎。」
父親はレンタローの頭を、私の時みたいに撫でた。
「ううん!パパに会えたから大丈夫!」
眩しい笑顔。
それを見た私は、胸の辺りが暖かい陽射しのようにぽかぽかとした感覚になったが、それと同時に胸がキュッと締め付けられるような苦しい気持ちにもなった。
きっとこの時間が終わったら、レンタローは父親と一緒には居られない。
もしかしたら罰を与えられてしまうかもしれない。
私も同じ様に罰が与えられるだろう。
胸がざわざわとうるさい。
これはなんと言う気持ちなのか。
そんな風に思っていると、騒々しい足音が後ろから聞こえてきた。
「自殺者はこっちですぅ。」
私は聞き覚えのある声に振り向くと、そこには白い空間にいた男とスーツを着た奴らがたくさん居た。
私はレンタローを庇うようにして身構える。
「あんた、どういうつもり?」
私は殺気を放ちながら男に聞く。
「ワタクシも職務放棄だけでは罰を与えられますからねぇ。ルールを破った愚か者が2人いると報告させてもらいましたぁ。」
ニヤっといやらしい笑みを向ける男。
いつの間にか私達はスーツを着た者達に囲まれてしまった。
私が逃げる策を頭の中で考えていると、レンタローが私の後ろから出てきて、男の方へと歩いた。
「廉太郎!!!」
「パパ…、僕もう行かなくちゃ。」
悲しい声で言葉をゆっくりと紡ぐレンタロー。
「僕ね、本当はルールを破ってここに来たんだ。だからね、もう行かなくちゃいけない。」
小さい肩が震えている。
「僕…、お家の窓から飛び出して死んじゃったんだ。」
「廉太郎、自殺なのか…?」
父親の驚いた声に、彼はこくんと頷く。
「ごめんなさい、でも僕我慢できなかった…。変わっちゃったママを見るのも嫌だし、いつも怒ってるパパを見るのも怖かった。本当にごめんなさい…。」
彼は静かに泣き出した。
きっと今の言葉が、心の奥底にねじ伏せていた本音のSOSなのだろう。
明るく話していても、大好きな父親に会えても、消える事のない深い傷。
ずっと我慢して隠してきた恐怖。
「パパに会えてよかった。僕のパパはやっぱりパパだけだよ。」
レンタローはゆっくりと振り向いた。
その幼い顔は涙で濡れていたが、曇りひとつ無い満足そうな笑顔だった。
そんなレンタローに父親は静かに近づき、また優しく抱きしめる。
「パパも会えてよかった。この場所で会えた事だけじゃない、パパの子どもとして産まれて来てくれた廉太郎に出会えて良かった。」
父親もゆっくりと泣き出す。
「またいつかどこかで会えるのなら、また廉太郎と笑っていられる未来でありたい。これがパパの願いだよ。」
「うん、僕もパパがずーっと笑っていられるようにお願いするね!」
お互い愛情を確かめるように抱きしめ合い、しばらくそのままの時間が流れた。
先に離れたのはレンタローだった。
「バイバイ…。」
小さな手を振る子ども。
「またな。」
優しい温かな手を振る父親。
「さぁて、天使の所に行きましょうねぇ。ご案内致します。」
白い空間にいた男が歩み寄るとレンタローの背中に手を置き、一緒に天使の元へと向かい出す。
父親は名残惜しそうに我が子の歩く後ろ姿を見守っていた。
レンタローの背中を見送る私を、スーツを着た奴らが囲んでいた。
「あなたにも来て頂きます。死神裁判を受けてもらいますよ。」
私はスーツの奴らに背中を押されて、裁判所へと向かう。
抵抗はしなかった。
掟を破る覚悟を決めてここに居るのだから。
レンタローと私は違う方へと歩いているが、これからの結末はきっと同じになるだろう。
私はレンタローの言っていた父親の匂いを思い出していた。
それが海の匂いなのか、本当に父親の匂いなのか、私には分からなかった。
レンタローの家がどういう状況か、母親と上手くいっていない事、どうやってここまで来たのか。
父親は目を丸くして驚いたり、眉を下げて悲しそうな表情をする。
しかし、話しているレンタローは父親と会えた事が嬉しいのか、悲しい言葉でも楽しそうに口にした。
「そうか。ママはそんなに変わってしまったのか。」
一通り話を聞いた父親は、何よりもそれがショックの様で肩を落としていた。
「レンタロー、ずっと独りぼっちだったみたい。」
「悪い事をしたな、廉太郎。」
父親はレンタローの頭を、私の時みたいに撫でた。
「ううん!パパに会えたから大丈夫!」
眩しい笑顔。
それを見た私は、胸の辺りが暖かい陽射しのようにぽかぽかとした感覚になったが、それと同時に胸がキュッと締め付けられるような苦しい気持ちにもなった。
きっとこの時間が終わったら、レンタローは父親と一緒には居られない。
もしかしたら罰を与えられてしまうかもしれない。
私も同じ様に罰が与えられるだろう。
胸がざわざわとうるさい。
これはなんと言う気持ちなのか。
そんな風に思っていると、騒々しい足音が後ろから聞こえてきた。
「自殺者はこっちですぅ。」
私は聞き覚えのある声に振り向くと、そこには白い空間にいた男とスーツを着た奴らがたくさん居た。
私はレンタローを庇うようにして身構える。
「あんた、どういうつもり?」
私は殺気を放ちながら男に聞く。
「ワタクシも職務放棄だけでは罰を与えられますからねぇ。ルールを破った愚か者が2人いると報告させてもらいましたぁ。」
ニヤっといやらしい笑みを向ける男。
いつの間にか私達はスーツを着た者達に囲まれてしまった。
私が逃げる策を頭の中で考えていると、レンタローが私の後ろから出てきて、男の方へと歩いた。
「廉太郎!!!」
「パパ…、僕もう行かなくちゃ。」
悲しい声で言葉をゆっくりと紡ぐレンタロー。
「僕ね、本当はルールを破ってここに来たんだ。だからね、もう行かなくちゃいけない。」
小さい肩が震えている。
「僕…、お家の窓から飛び出して死んじゃったんだ。」
「廉太郎、自殺なのか…?」
父親の驚いた声に、彼はこくんと頷く。
「ごめんなさい、でも僕我慢できなかった…。変わっちゃったママを見るのも嫌だし、いつも怒ってるパパを見るのも怖かった。本当にごめんなさい…。」
彼は静かに泣き出した。
きっと今の言葉が、心の奥底にねじ伏せていた本音のSOSなのだろう。
明るく話していても、大好きな父親に会えても、消える事のない深い傷。
ずっと我慢して隠してきた恐怖。
「パパに会えてよかった。僕のパパはやっぱりパパだけだよ。」
レンタローはゆっくりと振り向いた。
その幼い顔は涙で濡れていたが、曇りひとつ無い満足そうな笑顔だった。
そんなレンタローに父親は静かに近づき、また優しく抱きしめる。
「パパも会えてよかった。この場所で会えた事だけじゃない、パパの子どもとして産まれて来てくれた廉太郎に出会えて良かった。」
父親もゆっくりと泣き出す。
「またいつかどこかで会えるのなら、また廉太郎と笑っていられる未来でありたい。これがパパの願いだよ。」
「うん、僕もパパがずーっと笑っていられるようにお願いするね!」
お互い愛情を確かめるように抱きしめ合い、しばらくそのままの時間が流れた。
先に離れたのはレンタローだった。
「バイバイ…。」
小さな手を振る子ども。
「またな。」
優しい温かな手を振る父親。
「さぁて、天使の所に行きましょうねぇ。ご案内致します。」
白い空間にいた男が歩み寄るとレンタローの背中に手を置き、一緒に天使の元へと向かい出す。
父親は名残惜しそうに我が子の歩く後ろ姿を見守っていた。
レンタローの背中を見送る私を、スーツを着た奴らが囲んでいた。
「あなたにも来て頂きます。死神裁判を受けてもらいますよ。」
私はスーツの奴らに背中を押されて、裁判所へと向かう。
抵抗はしなかった。
掟を破る覚悟を決めてここに居るのだから。
レンタローと私は違う方へと歩いているが、これからの結末はきっと同じになるだろう。
私はレンタローの言っていた父親の匂いを思い出していた。
それが海の匂いなのか、本当に父親の匂いなのか、私には分からなかった。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
里帰りをしていたら離婚届が送られてきたので今から様子を見に行ってきます
結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
<離婚届?納得いかないので今から内密に帰ります>
政略結婚で2年もの間「白い結婚」を続ける最中、妹の出産祝いで里帰りしていると突然届いた離婚届。あまりに理不尽で到底受け入れられないので内緒で帰ってみた結果・・・?
※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
三十年後に届いた白い手紙
RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。
彼は最後まで、何も語らなかった。
その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。
戴冠舞踏会の夜。
公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。
それは復讐でも、告発でもない。
三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、
「渡されなかった約束」のための手紙だった。
沈黙のまま命を捨てた男と、
三十年、ただ待ち続けた女。
そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。
これは、
遅れて届いた手紙が、
人生と運命を静かに書き換えていく物語。
冤罪で辺境に幽閉された第4王子
satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる