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第七話:【回想編】出会い(3)
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「それじゃ、俺は鉤爪を渡してくるから、ここから先はついてくるなよ」
「わかっている」
依頼主の屋敷の前でウルリックと別れ、ユルトは報酬と引き換えに、依頼主に鉤爪を渡した。
鉤爪を撫でまわしている成金ヒヒジジイに、召使が小走りに寄ってきた。唇を読んでみると、どうやら門の前に謎の屈強な男がいて、中に入れろと言っているらしい。
「何?」
「来客中、失礼」
成金ヒヒオヤジが驚いている間に、ズカズカとウルリックは部屋に入ってきた。
一緒に入って行ったらユルトの仕事に差し障る。そう悩んだウルリックは「ユルトとは別に入ってきた」という体裁をとったようだ。どう考えても不自然だが。
「なんだ突然貴様は!」
「通りすがりです! むむ! これはブルードラゴンの鉤爪ではないか。なんて立派なものなんだ。ご主人、どうか私に譲ってくれないでしょうか」
明らかなる棒読みである。
通りすがりの客人は、たまたま入った屋敷にブルードラゴンの鉤爪があるのを見て、どうしても欲しくなってしまったようだ。
「盗賊、貴様情報を横流ししたのか!」
依頼主がユルトに怒鳴りつけたが、ユルトは落ち着いて首を振った。依頼主の名前も居場所も教えていない。すべて勝手についてきたウルリックが勝手にやったことである。実際、ユルトが一枚噛むのであれば、もう少しウルリックの白々しいセリフと棒読みをなんとかしただろう。
「よかろう、ならば400万Gだ!」
成金ヒヒオヤジは、ウルリックにとんでもない金額を吹っ掛けた。りんごが400万個買える値段である。
ちなみに、ユルトが報酬として支払ってもらったのは、1万Gである。
しかしウルリックは平然と金貨の入った袋を取り出した。
「あります」
ウルリックは律儀に400万G分の金貨を勘定してその場で支払った。ちなみに袋の中にはまだ金貨が残っていたので、どうやら500万Gほど用意していたらしい。
「この件は片付いた。だから仲間になってくれるか」
鉤爪を荷物に入れて成金の家を出ると、すぐさまウルリックは言った。
なぜ自分なのか。なぜそこまでしてドラゴンを倒したいのか。
何もよくわからなかったが、盗賊職を平等な仲間として認められたのは初めてだった。
そして、口数は少ないが堂々と断言し、堂々と誘う、そういう姿は自分にはないもので、ユルトは素直に感銘を受けた。
「わかったよ。取り分は平等な」
わざと、やれやれ、といった風情で手を差し出すと、ウルリックは力強くその手を握り返し、初めて口元を緩めて笑った。
薄紫色の瞳が夕日を受けて輝き、ウルリックは普通に握手をしているだけなのに、ユルトの手のひらが何やらくすぐったかった。
◇ ◇ ◇
ウルリックとの冒険は、悪くなかった。
仲間も増えていった。エルフの精霊魔術師、異国の姫剣士、リザードマンの僧兵。
皆、ウルリックが直接スカウトした。
そのたびにウルリックは、相手が借金まみれのド貧乏だろうと、異国の姫君だろうと、ドラゴンに姿かたちが似ていて差別されているリザードマンだろうと堂々と率直に誘い、仲間に加えていった。
──なーんだ、俺だけに言ってるわけじゃないんだ。
などと、ちょっとがっかりしたような気がしたが、ユルトは「そんなん当たり前じゃないか」とそれ以上考えないことにした。
そのまま、そのまま自分の気持ちを自覚しなければよかったのだ。
そうすればパーティを追い出されても、ここまで傷つくことはなかったのに。
「わかっている」
依頼主の屋敷の前でウルリックと別れ、ユルトは報酬と引き換えに、依頼主に鉤爪を渡した。
鉤爪を撫でまわしている成金ヒヒジジイに、召使が小走りに寄ってきた。唇を読んでみると、どうやら門の前に謎の屈強な男がいて、中に入れろと言っているらしい。
「何?」
「来客中、失礼」
成金ヒヒオヤジが驚いている間に、ズカズカとウルリックは部屋に入ってきた。
一緒に入って行ったらユルトの仕事に差し障る。そう悩んだウルリックは「ユルトとは別に入ってきた」という体裁をとったようだ。どう考えても不自然だが。
「なんだ突然貴様は!」
「通りすがりです! むむ! これはブルードラゴンの鉤爪ではないか。なんて立派なものなんだ。ご主人、どうか私に譲ってくれないでしょうか」
明らかなる棒読みである。
通りすがりの客人は、たまたま入った屋敷にブルードラゴンの鉤爪があるのを見て、どうしても欲しくなってしまったようだ。
「盗賊、貴様情報を横流ししたのか!」
依頼主がユルトに怒鳴りつけたが、ユルトは落ち着いて首を振った。依頼主の名前も居場所も教えていない。すべて勝手についてきたウルリックが勝手にやったことである。実際、ユルトが一枚噛むのであれば、もう少しウルリックの白々しいセリフと棒読みをなんとかしただろう。
「よかろう、ならば400万Gだ!」
成金ヒヒオヤジは、ウルリックにとんでもない金額を吹っ掛けた。りんごが400万個買える値段である。
ちなみに、ユルトが報酬として支払ってもらったのは、1万Gである。
しかしウルリックは平然と金貨の入った袋を取り出した。
「あります」
ウルリックは律儀に400万G分の金貨を勘定してその場で支払った。ちなみに袋の中にはまだ金貨が残っていたので、どうやら500万Gほど用意していたらしい。
「この件は片付いた。だから仲間になってくれるか」
鉤爪を荷物に入れて成金の家を出ると、すぐさまウルリックは言った。
なぜ自分なのか。なぜそこまでしてドラゴンを倒したいのか。
何もよくわからなかったが、盗賊職を平等な仲間として認められたのは初めてだった。
そして、口数は少ないが堂々と断言し、堂々と誘う、そういう姿は自分にはないもので、ユルトは素直に感銘を受けた。
「わかったよ。取り分は平等な」
わざと、やれやれ、といった風情で手を差し出すと、ウルリックは力強くその手を握り返し、初めて口元を緩めて笑った。
薄紫色の瞳が夕日を受けて輝き、ウルリックは普通に握手をしているだけなのに、ユルトの手のひらが何やらくすぐったかった。
◇ ◇ ◇
ウルリックとの冒険は、悪くなかった。
仲間も増えていった。エルフの精霊魔術師、異国の姫剣士、リザードマンの僧兵。
皆、ウルリックが直接スカウトした。
そのたびにウルリックは、相手が借金まみれのド貧乏だろうと、異国の姫君だろうと、ドラゴンに姿かたちが似ていて差別されているリザードマンだろうと堂々と率直に誘い、仲間に加えていった。
──なーんだ、俺だけに言ってるわけじゃないんだ。
などと、ちょっとがっかりしたような気がしたが、ユルトは「そんなん当たり前じゃないか」とそれ以上考えないことにした。
そのまま、そのまま自分の気持ちを自覚しなければよかったのだ。
そうすればパーティを追い出されても、ここまで傷つくことはなかったのに。
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