神様の配達員 思いを 願いを 届けます

紅玲葉

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神様の恋事情4

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速秋津比売命の居る川から離れ、2人は子犬を助けた男性を探すべく情報収集を始めた。
下流の方へと河川敷を歩いていると、ランニングをしている女性と出会う

「ちょっとすみません」

「はい、なんでしょう?」

「3日前にここの川で子犬を助けた男性を見かけませんでしたか?」

「すみません、その日は走っていないのでわかりませんね。」

「そうですか、運動中のところすみませんでした。」

そう言うと女性は軽く会釈をし、走っていった。

その後も色んな人に声をかけ、子犬を助けた男性を見かけたかを聞いてもわからないの一点張り、日も沈みはじめ辺りが暗くなり始めた頃だった。

勇人と狛犬は河川敷の芝に座り川を眺めている

「見つかりませんね」

「そう簡単には見つからないか…今日はもう帰ってまた明日探そう」

諦めて帰ろうとした時だった。
上流の方からスーツを着た男性が下を向いて歩いていた

「最後にあの人に聞いてみて、ダメだったら大人しく帰ろう」

「わかりました。」

2人は立ち上がり、歩いてくる男性に声をかける

「すみません、ちょっとお聞きしたい事があるのですがよろしいでしょうか?」

「はい…」

「3日前にこの川で子犬を助けた男性を見かけませんでしたか?」

男性は目を見開いたまま、顔を上げる

「子犬を助けたのは私です。でも、子犬を引き取ろうとしても遅いですよ…私が助け家に戻った時には息を引き取りましたから…」

「そうですか…それは辛かったですね。」

「それで、あなたは誰ですか?」

「自分は神林勇人と言います。配達員をやっております。」

「そうですか…私に何か荷物でも?」

「はい、お手紙が届いておりますのでそれを渡しに」

勇人は男性に手紙を渡した

「送り主とか私宛の部分も書いてないけど、ホントに私宛かい?」

「確かに貴方様宛の手紙で間違いありません」

「そうですか、受け取っておきましょう」

「ありがとうございます。それと、申し訳ないのですが、貴方様の名前と住所を教えて頂けませんでしょうか?」

「別に構わないですが、配達員なら知っていると思っていたのですけどね」

「まだ新米の配達員でして、覚える事が沢山あるんです。」

「大変ですね」

そう言いながら、勇人が出した白紙に名前と住所を書いていく

「内田  希(うちだ  のぞみ)で合ってますか?」

「はい…」

「ありがとうございます。では失礼します。」

深いおじぎをした後、勇人はその場を去った

「変な配達員さんだったな」

内田は手紙を手に持ちながら河川敷を歩き1人で帰って行った。

内田はアパートに戻り、椅子に座って手紙を開ける

「初めまして、私は速秋津比売命です。この意宇川を守っている神様です。私は貴方様が子犬を助けた所を見ていました。私は貴方様の勇敢な姿を見て、私は貴方様の事が忘れられなくなりました。貴方様を思うと胸が熱くなるのです。どうか私とお会いしてはいただけないでしょうか。私は貴方様にもう一度、お会いしたいのです。」

手紙を机においた

「神様なんているはずがないじゃないか…神様がそんな…こんな俺の事を好きになるなんてある訳ないだろ…どうせ、いたずらの手紙だ…」

そう彼は言い放ち、手紙をゴミ箱に捨てた

次の日

仕事が終わり、アパートに帰ると配達員から渡された手紙と同じ、白い手紙が郵便箱に入っていた。

「昨日と同じ手紙、もしかしてあの配達員が…」

それからも次の日、また次の日と手紙が届く、手紙の内容は速秋津比売命の人生が書かれていた。
内田は徐々に彼女の事を気にし始める。

仕事が終わりいつも通り、河川敷を歩いて帰っている時だった。

「内田さん」

後ろから声をかけられ、後ろを振り向くとそこにいたのは例の配達員だった。

「内田さんにお手紙です。」

勇人は内田に手紙を渡した。

「配達員さん、この手紙の主は本当に神様なのか?」

「はい、神様です。速秋津比売命様からの手紙です。」

「君は一体何者なんだい?、ただの新米配達員じゃないんだろ?」

「言い忘れてました。自分は神様の配達員です。」

「神様の配達員…」

「はい、自分は神様の悩みや思い、願いを叶え、解決し、また届ける仕事をしているんです。」

「そんな仕事があるんだな…信じられないが、気になって眠れないんだ、その神様に合わせてくれ」

「わかりました。では、着いてきてください」

そうして、2人は川の近くまで行き立ち止まる

「ほんとにここに神様が…」

「いますよ、内田さんには見えないかも知れませんが、アドバイスを言うと周りの音や川の流れに気を向けてください。」

「速秋津比売命様、子犬を助けた男性をお連れしました。」

彼女が現れると、周囲の音が消え、川の流れが穏やかになる。その光景を見た内田は驚く

「今、川の中央にいますよ」

「川の中央に神様が…一瞬にして、音が消えて、川の流れが穏やかになった。これが神様…なのか」

彼女は内田の姿を見て涙を流し始めた…

「また、お会いすることができました。貴方様に会いたくて、夜になるととても悲しい気持ちになっていたのです。」

涙を流しながらも両手を前に出しながらゆっくりと内田がいる方へと歩み始める

「あとは2人でごゆっくり」

勇人はその場を離れ、狛犬と2人で彼女達を遠くから眺める

波紋を広げながら彼女は内田の前で立ち止まる

「お待ちしておりました。内田様、やっと貴方様に会えた事、心から嬉しい限りです。」

彼女の声は内田には届かなかった
内田は下を向いたままだった

「僕は…小さい頃に弟を川で亡くしているんだ…子犬が流されてる所を見て、同じ事を繰り返したくなくて、僕は子犬を助けた…けど、家に戻った時には息をしていなかった…僕は助けられなかったんだ、だから僕は勇敢ではない、貴女様が思ってるような人間じゃないんだ…」

内田は涙を流しながら語った。
涙を流していると、足元に何かが当たる
そこには紙が入った小瓶が流れてきた。
蓋を開け、紙を読む

「それでも、私は貴方様に恋をしました。この気持ちは叶わない事は承知です。貴方様は同じ過ちを繰り返さない為に、命を張って川に飛び込み、助けました。あのまま貴方様に助けられてなかったらあの子犬は辛い亡くなり方をしたでしょう。ですが、貴方様が助け、貴方様に暖められながら、抱かれながら、息を引き取った事は安心していられたからではないでしょうか」

内田は大粒の涙を流す

「私には見えます、貴方様の傍に貴方様が助けた子犬の姿が、とても幸せそうに頬を足に当ててますよ。弟様もいます。笑顔で貴方様を見守っています。貴方様はとても優しい方です。だからもう、自分自身を責めないでください。」

内田は膝と手を地面に着け、心の底から涙を流した
彼女は優しく彼を抱きしめる

勇人は泣いている狛犬の頭を撫でながら視線を夕日に向けた

「あのまま2人にして、うちらは帰るぞ」

「はい…」

鼻を啜り、涙を拭く狛犬の片方の手を掴みそのまま2人は帰った…
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