173 / 308
173
しおりを挟む
食堂に入ると意外にも客が結構な数居る。見た目がボロいのに客が入ると言う事は味が良いか安いかだ。その両方と言う事もありえる。
「ここはね、見た目はアレだけど、安くて美味いって、冒険者の間ではちょっと有名なお店なんだよ。」
アデルが僕の心を見透かしたように言う。多分、態度に出て居たのだろう。
慣れた感じで奥へと進むアデルの後を追う。どうやら一番奥のテーブルを陣取っている様だ。
「有能な魔法使い見つけて来たよ~。」
「本当に有能なんだろうな?」
アデルの言葉に返事を返す女性。あれ?前衛も女性?もしかして、女性ばかり3人のパーティーなのか?
椅子に座ってエールを呑んでいる2人の女性がこちらを見る。多分、2人共アデルとあまり年齢は変わらないはずだが、少女と言うよりは女性と言うのが合っている。
何が違うんだろうとアデルと2人を見比べる。なるほど、胸だな。
2人の戦士は、レモーネとバレッタと言うらしい。2人共金髪なので見分けが難しい。
「もしかして、女性ばかりのパーティーなのか?そこに僕が入って大丈夫なのかな?」
「有能なら問題無い。」
レモーネが答えて、アデルがうんうんと頷いている。
ハンターの男女比は4対1位だ。女性だけのパーティーと言うのは珍しい。
「有能かどうかと言うのはどうやって判断するんですか?」
「一度一緒に狩りに出れば判るんだが、その前に面接かな?」
なんだ?このゆるさは、それで良いのか?
「パーティーメンバーを募集するのが初めてだからね。勝手が判らないんだよ。」
アデルがそう言った。
なるほど、そう言えば僕も正式にこう言う風にパーティーメンバーに応募するの初めてだな。
「じゃあ、とりあえず、どんな魔法が使えるのか教えて貰えるかな?」
今まで黙っていたバレッタが切り出した。
「攻撃魔法と支援魔法、あと回復魔法と一通りは使えます。」
「ほう?回復魔法が使えるのか?それはポイント高いな。」
何時からポイント制になったんだ?まあ、良いけど、回復魔法が使えるのって珍しいのかな?
「うちらのパーティーは基本攻撃2枚で、それなりに成り立っている。だから、最初の内は防御の面で活躍して貰いたい。回復と言うのもありがたいが、攻撃を受けない方が効率的だ。可能か?」
今度はレモーネが発言する。どうやらリーダーはレモーネらしい。
「物理防御も魔法防御もイケますよ。」
「どうやら本当に有能な魔法使いらしいな。今までは何処のパーティーに居たんだ?」
「基本、ソロでやってました。あと一時期ですが、『緋色の風』と言うパーティーに在籍していました。」
「ほう?『緋色の風』と言えば今、注目のCランクパーティーじゃ無いか。」
あれ?あいつらいつの間にCランクに上がってるんだ?
「僕からも質問良いですか?」
「構わないぞ、なんでも聞いてくれ。」
「まず、条件面ですね。報酬とか。」
「報酬は基本山分けだ。誰が何匹倒したとかそう言った事で分配を変える気は無いな。」
ふむ、悪く無いな。多分アデルに配慮した結果だろうな。斥候に攻撃力は期待できないからね。
「休みとかあるんですか?」
「狩りに出るのは週3日だ。それ以外の日は練習や昇級試験に充てて貰って構わない。もちろん休みに使ってもOKだ。」
「週3日でどの位稼ぐんですか?」
「そうだな、月に一人頭、白金貨10枚って所かな。十分な暮らしが出来る金額だと思うが?」
月に白金貨10枚と言えば、パーティーならBランク相当以上だな。この戦士2人はかなり強いんじゃ無いだろうか?
「条件はかなり良いですね。是非お願いしたいです。どうすれば良いですか?」
「じゃあ、明日。一緒に狩りに出てみよう。それで使える様ならパーティーに入ってもらう事にする。明日の朝、ここへ来てくれ。」
「解りました。あ、ちなみにパーティー名は?」
「ああ、うちらは『鈍色の刃』と言う。一応Cランクパーティーだ。」
ん?Cランクなの?稼ぎはBランク以上なのに何故?もしかして意図的にランクを上げて居ないのか?
「なんか稼ぎとランクが合って無い気がするのですが、何か理由でも?」
「大した理由では無いのだが、私はBランクなんだが、バレッタとアデルがDランクでな。その気になれば、バレッタは私より強いのだが、昇級試験が面倒と言う理由でランクを上げて居ないのだ。」
なるほど、バレッタは面倒くさがりなのか。
「納得しました。では、明日来ますのでよろしくお願いします。」
翌日、食堂に行くと既に3人が来ていた。どうやら近くに3人で共同の家を借りているらしい。
ギルドに行くのかと思ったら、直接狩りに行くらしい。依頼を受けずに討伐だけするスタイルは僕に似ている。
今日は東の森に行く様だ。ターゲットは特に決めて居ないらしい。
東門を出て暫く街道を歩き、適当なところで森に入って行く。
このスタイルだと魔石位しか金にならない。あれ?もしかして、この3人かなり強いんじゃ無いか?
斥候のアデルが先行して索敵、敵を見つけると戦士の2人とスイッチする。かなり速いペースで狩りが進む。
どうやらアデルは斥候としてかなり優秀らしいが、攻撃力が無い彼女はランクが上がりにくい。
魔石を取り出すのもアデルの役目らしいが、今日は僕が片っ端から得物をストレージに放り込んで行く。
「アイテムボックスも持っているなんて、本当に有能なんですね。」
「アデルも斥候としてはかなり有能だと思うぞ。剣技でも習ってランクを上げたらどうだ?」
「剣技は苦手なんですよね。レモーネとバレッタにさんざん鍛えられてやっとDランクなんですよ。」
「じゃあ、魔法を覚えるか?教えるぞ?」
「私に魔法が覚えられますかね?」
「やってみないと判らないが、索敵魔法を覚えれば斥候としても成長するんじゃ無いか?」
「んー、確かに一理ありますね。」
「おっと、右からベア系の魔物が2匹来るぞ。注意しろ!」
パーティー全員に聞こえる様に声を上げる。
「索敵魔法ですか?」
アデルの質問と同時に魔物が現れる。僕はパラライズでベア2匹を麻痺させる。レモーネとバレッタが止めを刺した。
「一応魔法が使える所も見せて置かないとね。」
「と言うか、アイテムボックスを持っている時点で合格だと思いますよ。」
ん?そんな簡単に合格できるの?
「今まで、魔石や持ち帰れる素材は換金していましたが、肉が素材の魔物は捨ててましたからね。持ち帰れるとなると収入がかなりアップします。」
なるほど、収入アップはパーティーに貢献している事になるから、アイテムボックス持ちは優遇されるのか。そう言えば、最初にギルドに登録した時にアイテムボックス持ちだと言う事は隠した方が良いと言われたな。
「じゃあ、昨日、アイテムボックス持ちだって言って居たら、即、合格だったとか?」
「ああ、その可能性もありますね。」
んー、失敗したな。Sランクになったんだから、アイテムボックス持ちを隠す必要無かったんだよな。
「まあ、折角来たんだから、少しばかり実力を見せましょう。」
そう言って、次に出たベア系の魔物を剣で仕留めて見せる。
「ほう?君は剣も使えるのだな。」
レモーネが感心した様に言う。
「まあ、ソロが長かったので、剣も魔法も使えないと厳しいですからね。」
「戦力としても使えるし、何よりアイテムボックス持ちと言うのはありがたい。」
「それじゃあ、合格ですか?」
レモーネがバレッタと視線を合わせる。バレッタが頷く。
「良いだろう。合格だ。」
「ありがとうございます。」
良し。パーティーに潜り込めれば成功だ。後は彼女たちをSランクに育ててみよう。
見た所、レモーネとバレッタは既にAランク相当の腕前を持っている。問題はアデルだな。魔法の素質があれば面白いのだが。
パーティーに入る事で、だいぶ目立たなくなるはずなんだが、どうだろう?
「ここはね、見た目はアレだけど、安くて美味いって、冒険者の間ではちょっと有名なお店なんだよ。」
アデルが僕の心を見透かしたように言う。多分、態度に出て居たのだろう。
慣れた感じで奥へと進むアデルの後を追う。どうやら一番奥のテーブルを陣取っている様だ。
「有能な魔法使い見つけて来たよ~。」
「本当に有能なんだろうな?」
アデルの言葉に返事を返す女性。あれ?前衛も女性?もしかして、女性ばかり3人のパーティーなのか?
椅子に座ってエールを呑んでいる2人の女性がこちらを見る。多分、2人共アデルとあまり年齢は変わらないはずだが、少女と言うよりは女性と言うのが合っている。
何が違うんだろうとアデルと2人を見比べる。なるほど、胸だな。
2人の戦士は、レモーネとバレッタと言うらしい。2人共金髪なので見分けが難しい。
「もしかして、女性ばかりのパーティーなのか?そこに僕が入って大丈夫なのかな?」
「有能なら問題無い。」
レモーネが答えて、アデルがうんうんと頷いている。
ハンターの男女比は4対1位だ。女性だけのパーティーと言うのは珍しい。
「有能かどうかと言うのはどうやって判断するんですか?」
「一度一緒に狩りに出れば判るんだが、その前に面接かな?」
なんだ?このゆるさは、それで良いのか?
「パーティーメンバーを募集するのが初めてだからね。勝手が判らないんだよ。」
アデルがそう言った。
なるほど、そう言えば僕も正式にこう言う風にパーティーメンバーに応募するの初めてだな。
「じゃあ、とりあえず、どんな魔法が使えるのか教えて貰えるかな?」
今まで黙っていたバレッタが切り出した。
「攻撃魔法と支援魔法、あと回復魔法と一通りは使えます。」
「ほう?回復魔法が使えるのか?それはポイント高いな。」
何時からポイント制になったんだ?まあ、良いけど、回復魔法が使えるのって珍しいのかな?
「うちらのパーティーは基本攻撃2枚で、それなりに成り立っている。だから、最初の内は防御の面で活躍して貰いたい。回復と言うのもありがたいが、攻撃を受けない方が効率的だ。可能か?」
今度はレモーネが発言する。どうやらリーダーはレモーネらしい。
「物理防御も魔法防御もイケますよ。」
「どうやら本当に有能な魔法使いらしいな。今までは何処のパーティーに居たんだ?」
「基本、ソロでやってました。あと一時期ですが、『緋色の風』と言うパーティーに在籍していました。」
「ほう?『緋色の風』と言えば今、注目のCランクパーティーじゃ無いか。」
あれ?あいつらいつの間にCランクに上がってるんだ?
「僕からも質問良いですか?」
「構わないぞ、なんでも聞いてくれ。」
「まず、条件面ですね。報酬とか。」
「報酬は基本山分けだ。誰が何匹倒したとかそう言った事で分配を変える気は無いな。」
ふむ、悪く無いな。多分アデルに配慮した結果だろうな。斥候に攻撃力は期待できないからね。
「休みとかあるんですか?」
「狩りに出るのは週3日だ。それ以外の日は練習や昇級試験に充てて貰って構わない。もちろん休みに使ってもOKだ。」
「週3日でどの位稼ぐんですか?」
「そうだな、月に一人頭、白金貨10枚って所かな。十分な暮らしが出来る金額だと思うが?」
月に白金貨10枚と言えば、パーティーならBランク相当以上だな。この戦士2人はかなり強いんじゃ無いだろうか?
「条件はかなり良いですね。是非お願いしたいです。どうすれば良いですか?」
「じゃあ、明日。一緒に狩りに出てみよう。それで使える様ならパーティーに入ってもらう事にする。明日の朝、ここへ来てくれ。」
「解りました。あ、ちなみにパーティー名は?」
「ああ、うちらは『鈍色の刃』と言う。一応Cランクパーティーだ。」
ん?Cランクなの?稼ぎはBランク以上なのに何故?もしかして意図的にランクを上げて居ないのか?
「なんか稼ぎとランクが合って無い気がするのですが、何か理由でも?」
「大した理由では無いのだが、私はBランクなんだが、バレッタとアデルがDランクでな。その気になれば、バレッタは私より強いのだが、昇級試験が面倒と言う理由でランクを上げて居ないのだ。」
なるほど、バレッタは面倒くさがりなのか。
「納得しました。では、明日来ますのでよろしくお願いします。」
翌日、食堂に行くと既に3人が来ていた。どうやら近くに3人で共同の家を借りているらしい。
ギルドに行くのかと思ったら、直接狩りに行くらしい。依頼を受けずに討伐だけするスタイルは僕に似ている。
今日は東の森に行く様だ。ターゲットは特に決めて居ないらしい。
東門を出て暫く街道を歩き、適当なところで森に入って行く。
このスタイルだと魔石位しか金にならない。あれ?もしかして、この3人かなり強いんじゃ無いか?
斥候のアデルが先行して索敵、敵を見つけると戦士の2人とスイッチする。かなり速いペースで狩りが進む。
どうやらアデルは斥候としてかなり優秀らしいが、攻撃力が無い彼女はランクが上がりにくい。
魔石を取り出すのもアデルの役目らしいが、今日は僕が片っ端から得物をストレージに放り込んで行く。
「アイテムボックスも持っているなんて、本当に有能なんですね。」
「アデルも斥候としてはかなり有能だと思うぞ。剣技でも習ってランクを上げたらどうだ?」
「剣技は苦手なんですよね。レモーネとバレッタにさんざん鍛えられてやっとDランクなんですよ。」
「じゃあ、魔法を覚えるか?教えるぞ?」
「私に魔法が覚えられますかね?」
「やってみないと判らないが、索敵魔法を覚えれば斥候としても成長するんじゃ無いか?」
「んー、確かに一理ありますね。」
「おっと、右からベア系の魔物が2匹来るぞ。注意しろ!」
パーティー全員に聞こえる様に声を上げる。
「索敵魔法ですか?」
アデルの質問と同時に魔物が現れる。僕はパラライズでベア2匹を麻痺させる。レモーネとバレッタが止めを刺した。
「一応魔法が使える所も見せて置かないとね。」
「と言うか、アイテムボックスを持っている時点で合格だと思いますよ。」
ん?そんな簡単に合格できるの?
「今まで、魔石や持ち帰れる素材は換金していましたが、肉が素材の魔物は捨ててましたからね。持ち帰れるとなると収入がかなりアップします。」
なるほど、収入アップはパーティーに貢献している事になるから、アイテムボックス持ちは優遇されるのか。そう言えば、最初にギルドに登録した時にアイテムボックス持ちだと言う事は隠した方が良いと言われたな。
「じゃあ、昨日、アイテムボックス持ちだって言って居たら、即、合格だったとか?」
「ああ、その可能性もありますね。」
んー、失敗したな。Sランクになったんだから、アイテムボックス持ちを隠す必要無かったんだよな。
「まあ、折角来たんだから、少しばかり実力を見せましょう。」
そう言って、次に出たベア系の魔物を剣で仕留めて見せる。
「ほう?君は剣も使えるのだな。」
レモーネが感心した様に言う。
「まあ、ソロが長かったので、剣も魔法も使えないと厳しいですからね。」
「戦力としても使えるし、何よりアイテムボックス持ちと言うのはありがたい。」
「それじゃあ、合格ですか?」
レモーネがバレッタと視線を合わせる。バレッタが頷く。
「良いだろう。合格だ。」
「ありがとうございます。」
良し。パーティーに潜り込めれば成功だ。後は彼女たちをSランクに育ててみよう。
見た所、レモーネとバレッタは既にAランク相当の腕前を持っている。問題はアデルだな。魔法の素質があれば面白いのだが。
パーティーに入る事で、だいぶ目立たなくなるはずなんだが、どうだろう?
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
4,255
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる