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それから2週間が経つ頃、クラ―ネルがようやく僕らの訓練に付いて来られる様になった。まあ、付いて来られるだけで、人の領域を超えて居るので、僕らと同等に戦えるようになるには、まだ相当な時間が掛かるだろう。
現在、僕は、朝の7時から9時まで稽古をして、1時間休みを取って、10時からクラ―ネルを交えて稽古をしている。
クラ―ネルの稽古時間は向こうの時間で12時間だ。つまり1日に僕は36時間稽古をしている事になる。
竜王の爺さんとルシルはバトルジャンキーなので問題無いが、僕は結構疲れる。出来れば朝の稽古時間をずらしたいのだが。その提案はバトルジャンキー2人に却下された。
ちなみにポルト商会はリバーシ人気でかなり儲かっているらしい。木工工場と契約して生産しているらしいが、1日の供給台数が1000台らしく、連日客が押し寄せその日の供給数が午前中には売り切れてしまうそうだ。
クラ―ネルの魔道具もポルト商会に置かれている。こちらも価格の割に高性能と言う事でなかなかの売れ行きを見せている様だ。
そもそも万能薬は普通の商会の店先に並ぶような商品では無い。これを作成したと言うだけで、クラ―ネルの名前はかなり知れ渡る事になる。
万能薬は欠損を治す事が可能だ。欠損に悩んでいる人間なら、大金を払ってでも購入するだろう。
ただ、一つ懸念があるとすれば、万能薬の材料がドラゴンだと言う事を知って居る者が少なからず居ると言う事だ。クラ―ネルがドラゴンをどうやって入手しているのかを探られるのは避けたい。
今は名前を売ると言う事で魔道具を放出しているが、ある程度売れる様になったら、月に白金貨50枚とか儲けの金額を決めた方が良いかもしれない。
クラ―ネルの儲けが白金貨50枚ならばポルト商会の儲けはそれよりも多くなる。貴族の息が掛かって居るとは言え、平民の商会が稼ぐ金額としては莫大だ。
公爵派の貴族にどの位の上納金を払っているのかは知らないが、ポルト商会が大儲けする事には変わりないだろう。
ミルアちゃんの他に子供が居るのかどうか聞いていないが、子供を魔法学院に入れる位は出来るかもしれない。
学院と言えば、クラ―ネルとマリーカ嬢は学院を卒業しなくても良いのだろうか?まあ、学歴に拘る習慣は無い様だが、2人がどう考えているのかは確認して置いた方が良いだろう。
そう言えば、セリーは学院には行ってないらしいが、子供は貴族学院へ入れる様だ。この辺は男と女の差なのかもしれない。家庭教師も付けると言って居たし、おそらく全員を貴族にするつもりなのだろう。
貴族の習慣は独特な物がある。僕も貴族になってからセリーにかなり助けられた。出来るならば子供達にはそう言う苦労はさせたくないと考えている。
男の子は良いが、女の子は嫁入り先も僕が決めないと駄目なのかな?リアーナはともかく、シルフィーヌは竜人なんだよな。ルシルはどうするつもりなんだろう?
翌日は狩りに出た。王都の周辺の魔物ならクラ―ネルは瞬殺出来る位になっている。一人頭白金貨15枚程度だと、クラ―ネルだけで1時間程度で狩ってしまう。
「こうやって魔物を狩ると自分の強さを実感するだろう?」
「そうですね。お爺さんやルシルさんに比べると動きがスローに感じます。」
「週に2日だと月に8回しか狩りが出来ない。出来れば8回の狩りで30日分の獲物を確保したい。それには1日で4日分の獲物を狩って置く必要がある。更に言えば、それを保存して置くだけのアイテムボックスの容量が欲しい。」
僕は別にお金が欲しい訳では無いが、クラ―ネルのアイテムボックスの容量をもう少し増やして置きたいと言う目論見だ。
「月に白金貨450枚は稼ぎすぎじゃないですか?」
「それなんだがな、大森林って知ってるだろう?実はあそこの定期討伐は僕が一人でやっている。」
「大森林って、王都の北西にある、果てが無いと言われる森ですよね?」
「いやいや、果てはあるぞ。その先に国もあるし。」
「え?今サラっと重要な事を言いましたよね?」
「まあ、そう言う訳で、他の人間には入って欲しく無い訳だ。まあ、現在の冒険者ギルドのSランカーではパーティーを組んでも踏破は出来ないだろうが、大規模討伐となると事情が変わる。」
「それで、エイジさんが定期討伐をして、魔物の数をコントロールしていると?」
「そう言う事だな。で、それをクラ―ネル。お前が僕に変わってやってみないか?ギルドと国の両方に売れるので儲かるぞ。」
実際、1回につきギルドと国に白金貨20枚ずつ貰ってるんだよね。更に余った魔物も適当な時に売ってるから、小遣いにも困らない。
「面白そうですけど、良いのですか?エイジさんの収入源なんじゃ無いですか?」
「いや、僕は領地持ちの貴族なので何もしなくてもそれなりの収入があるんだよ。それに、時々冒険者もやってるし、Sランクの特別依頼もあるから。」
「しかし、僕は国に魔物を売るルートなんて持って無いですよ?」
「それなら問題無い。定期討伐を引き継いでくれるなら、販売ルートも引き継げる様にして置くよ。」
「でしたら、是非やってみたいです。大森林の魔物は強いって聞きますからね。」
あれ?クラ―ネルまでバトルジャンキーになってる?
「定期討伐は3か月に1回だ。次回の討伐時にクラ―ネルを連れて行くよ。まあ、1回に白金貨50枚程度しか稼げないが、安定収入にはなるぞ。」
「いやいや、白金貨50枚あれば普通の貴族なら1年は暮らせますって。」
いかんなぁ、クラ―ネルにはもう少し金銭感覚を麻痺させる必要がありそうだ。
「と言う事で明日は王城に行くぞ。」
「え?王城ですか?僕、王城って行った事が無いのですが、何を着て行けば良いのでしょう?」
「冒険者として行くのだから、今の格好で大丈夫だぞ。」
そう言えば僕ってまともな格好で王城に行った経験が少ないな。一応侯爵なんだけど、変じゃ無い?
と言う事で、翌日訓練の後に王城へと向かった。
門番に挨拶をすると、顔を覚えていたのか、すぐに宰相に取り次いでくれた。
そう言えばクラ―ネルってまだ、貴族の証を持って無いんだったな。
5分程待つと宰相の執務室に通された。
「久しぶりだな。まだ定期討伐には時間があると思うのだが、今日は何の用だ?」
「えっと、今日は弟子の紹介と、定期討伐の交代について相談に来ました。」
そう言うと宰相が少し思案してから答える。
「弟子の紹介はともかく、定期討伐に関しては私の一存では決められんな。」
お?この流れは?
「陛下の指示を仰ぐ事になるな。しばし待て。」
そう言って宰相が出て行く。何時も思うが、僕らを置き去りにして不用心だとは思わないのかな?
「あの、陛下の指示を仰ぐって言ってましたが、国王陛下に直接会うなんて事は無いですよね?」
「どうかな?あの王様意外とフットワーク軽いからなぁ。」
あれ?どうしたクラ―ネル?立ち眩みか?
10分程待って、そろそろ暇だなと思った時に宰相が戻って来た。
「何時もの応接室だ。私はちょっと用事があるので後から行く。」
そう言ってから、近衛兵に何やら告げた。僕とクラ―ネルは、近衛兵の後に続く。
僕は何時もの応接室は行き慣れているから問題無いが、クラ―ネルは心臓に手を当てて深呼吸をしている。
近衛兵がドアをノックして開ける。僕とクラ―ネルが中に入るとドアが閉まった。あれ?近衛兵は入らないの?
「久しいのぉ。今日は子供達は連れて来ていないのか?」
「今日は仕事の話なので。帰ったらセレスティアに話をして置きますよ。」
姪っ子の子供なのに孫扱いって、どうなん?本当の孫に恨まれないか?
「で、用件は何じゃ?」
「まずは、弟子の紹介です。クラ―ネル・フォン・レンツェルと言います。今のうちに目をかけて置くと良い事があるかもしれませんよ。」
国王陛下の目つきが鋭くなる。クラ―ネルは緊張で固まっている。
「お主の弟子にしては弱そうじゃが?」
「そうですね、まだ弱いですが、この間一人でレッドドラゴンを退治しました。」
「ほう?しかし、レンツェルと言う名前に聞き覚えがあるのじゃが、何処で聞いたかな?」
「陛下、自分の派閥の子爵の名前くらいは覚えて置いた方が良いですよ。」
「あのレンツェル子爵の子供か?いや、確かあそこは娘しかいなかったはず。」
どうやら陛下はレンツェル子爵を知っている様だ。
現在、僕は、朝の7時から9時まで稽古をして、1時間休みを取って、10時からクラ―ネルを交えて稽古をしている。
クラ―ネルの稽古時間は向こうの時間で12時間だ。つまり1日に僕は36時間稽古をしている事になる。
竜王の爺さんとルシルはバトルジャンキーなので問題無いが、僕は結構疲れる。出来れば朝の稽古時間をずらしたいのだが。その提案はバトルジャンキー2人に却下された。
ちなみにポルト商会はリバーシ人気でかなり儲かっているらしい。木工工場と契約して生産しているらしいが、1日の供給台数が1000台らしく、連日客が押し寄せその日の供給数が午前中には売り切れてしまうそうだ。
クラ―ネルの魔道具もポルト商会に置かれている。こちらも価格の割に高性能と言う事でなかなかの売れ行きを見せている様だ。
そもそも万能薬は普通の商会の店先に並ぶような商品では無い。これを作成したと言うだけで、クラ―ネルの名前はかなり知れ渡る事になる。
万能薬は欠損を治す事が可能だ。欠損に悩んでいる人間なら、大金を払ってでも購入するだろう。
ただ、一つ懸念があるとすれば、万能薬の材料がドラゴンだと言う事を知って居る者が少なからず居ると言う事だ。クラ―ネルがドラゴンをどうやって入手しているのかを探られるのは避けたい。
今は名前を売ると言う事で魔道具を放出しているが、ある程度売れる様になったら、月に白金貨50枚とか儲けの金額を決めた方が良いかもしれない。
クラ―ネルの儲けが白金貨50枚ならばポルト商会の儲けはそれよりも多くなる。貴族の息が掛かって居るとは言え、平民の商会が稼ぐ金額としては莫大だ。
公爵派の貴族にどの位の上納金を払っているのかは知らないが、ポルト商会が大儲けする事には変わりないだろう。
ミルアちゃんの他に子供が居るのかどうか聞いていないが、子供を魔法学院に入れる位は出来るかもしれない。
学院と言えば、クラ―ネルとマリーカ嬢は学院を卒業しなくても良いのだろうか?まあ、学歴に拘る習慣は無い様だが、2人がどう考えているのかは確認して置いた方が良いだろう。
そう言えば、セリーは学院には行ってないらしいが、子供は貴族学院へ入れる様だ。この辺は男と女の差なのかもしれない。家庭教師も付けると言って居たし、おそらく全員を貴族にするつもりなのだろう。
貴族の習慣は独特な物がある。僕も貴族になってからセリーにかなり助けられた。出来るならば子供達にはそう言う苦労はさせたくないと考えている。
男の子は良いが、女の子は嫁入り先も僕が決めないと駄目なのかな?リアーナはともかく、シルフィーヌは竜人なんだよな。ルシルはどうするつもりなんだろう?
翌日は狩りに出た。王都の周辺の魔物ならクラ―ネルは瞬殺出来る位になっている。一人頭白金貨15枚程度だと、クラ―ネルだけで1時間程度で狩ってしまう。
「こうやって魔物を狩ると自分の強さを実感するだろう?」
「そうですね。お爺さんやルシルさんに比べると動きがスローに感じます。」
「週に2日だと月に8回しか狩りが出来ない。出来れば8回の狩りで30日分の獲物を確保したい。それには1日で4日分の獲物を狩って置く必要がある。更に言えば、それを保存して置くだけのアイテムボックスの容量が欲しい。」
僕は別にお金が欲しい訳では無いが、クラ―ネルのアイテムボックスの容量をもう少し増やして置きたいと言う目論見だ。
「月に白金貨450枚は稼ぎすぎじゃないですか?」
「それなんだがな、大森林って知ってるだろう?実はあそこの定期討伐は僕が一人でやっている。」
「大森林って、王都の北西にある、果てが無いと言われる森ですよね?」
「いやいや、果てはあるぞ。その先に国もあるし。」
「え?今サラっと重要な事を言いましたよね?」
「まあ、そう言う訳で、他の人間には入って欲しく無い訳だ。まあ、現在の冒険者ギルドのSランカーではパーティーを組んでも踏破は出来ないだろうが、大規模討伐となると事情が変わる。」
「それで、エイジさんが定期討伐をして、魔物の数をコントロールしていると?」
「そう言う事だな。で、それをクラ―ネル。お前が僕に変わってやってみないか?ギルドと国の両方に売れるので儲かるぞ。」
実際、1回につきギルドと国に白金貨20枚ずつ貰ってるんだよね。更に余った魔物も適当な時に売ってるから、小遣いにも困らない。
「面白そうですけど、良いのですか?エイジさんの収入源なんじゃ無いですか?」
「いや、僕は領地持ちの貴族なので何もしなくてもそれなりの収入があるんだよ。それに、時々冒険者もやってるし、Sランクの特別依頼もあるから。」
「しかし、僕は国に魔物を売るルートなんて持って無いですよ?」
「それなら問題無い。定期討伐を引き継いでくれるなら、販売ルートも引き継げる様にして置くよ。」
「でしたら、是非やってみたいです。大森林の魔物は強いって聞きますからね。」
あれ?クラ―ネルまでバトルジャンキーになってる?
「定期討伐は3か月に1回だ。次回の討伐時にクラ―ネルを連れて行くよ。まあ、1回に白金貨50枚程度しか稼げないが、安定収入にはなるぞ。」
「いやいや、白金貨50枚あれば普通の貴族なら1年は暮らせますって。」
いかんなぁ、クラ―ネルにはもう少し金銭感覚を麻痺させる必要がありそうだ。
「と言う事で明日は王城に行くぞ。」
「え?王城ですか?僕、王城って行った事が無いのですが、何を着て行けば良いのでしょう?」
「冒険者として行くのだから、今の格好で大丈夫だぞ。」
そう言えば僕ってまともな格好で王城に行った経験が少ないな。一応侯爵なんだけど、変じゃ無い?
と言う事で、翌日訓練の後に王城へと向かった。
門番に挨拶をすると、顔を覚えていたのか、すぐに宰相に取り次いでくれた。
そう言えばクラ―ネルってまだ、貴族の証を持って無いんだったな。
5分程待つと宰相の執務室に通された。
「久しぶりだな。まだ定期討伐には時間があると思うのだが、今日は何の用だ?」
「えっと、今日は弟子の紹介と、定期討伐の交代について相談に来ました。」
そう言うと宰相が少し思案してから答える。
「弟子の紹介はともかく、定期討伐に関しては私の一存では決められんな。」
お?この流れは?
「陛下の指示を仰ぐ事になるな。しばし待て。」
そう言って宰相が出て行く。何時も思うが、僕らを置き去りにして不用心だとは思わないのかな?
「あの、陛下の指示を仰ぐって言ってましたが、国王陛下に直接会うなんて事は無いですよね?」
「どうかな?あの王様意外とフットワーク軽いからなぁ。」
あれ?どうしたクラ―ネル?立ち眩みか?
10分程待って、そろそろ暇だなと思った時に宰相が戻って来た。
「何時もの応接室だ。私はちょっと用事があるので後から行く。」
そう言ってから、近衛兵に何やら告げた。僕とクラ―ネルは、近衛兵の後に続く。
僕は何時もの応接室は行き慣れているから問題無いが、クラ―ネルは心臓に手を当てて深呼吸をしている。
近衛兵がドアをノックして開ける。僕とクラ―ネルが中に入るとドアが閉まった。あれ?近衛兵は入らないの?
「久しいのぉ。今日は子供達は連れて来ていないのか?」
「今日は仕事の話なので。帰ったらセレスティアに話をして置きますよ。」
姪っ子の子供なのに孫扱いって、どうなん?本当の孫に恨まれないか?
「で、用件は何じゃ?」
「まずは、弟子の紹介です。クラ―ネル・フォン・レンツェルと言います。今のうちに目をかけて置くと良い事があるかもしれませんよ。」
国王陛下の目つきが鋭くなる。クラ―ネルは緊張で固まっている。
「お主の弟子にしては弱そうじゃが?」
「そうですね、まだ弱いですが、この間一人でレッドドラゴンを退治しました。」
「ほう?しかし、レンツェルと言う名前に聞き覚えがあるのじゃが、何処で聞いたかな?」
「陛下、自分の派閥の子爵の名前くらいは覚えて置いた方が良いですよ。」
「あのレンツェル子爵の子供か?いや、確かあそこは娘しかいなかったはず。」
どうやら陛下はレンツェル子爵を知っている様だ。
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