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翌朝、稽古の後、腕輪を外して時間を戻す魔法を試してみる。1秒だけ時間を戻してみる。呆気なく成功した。今まで発動すらしなかった魔法が何の抵抗も無く発動したのだ。
体感的には時間が止まったのとあまり変わりは無いが、やはりこの魔法は人間には扱えない魔法らしい。
こうなると疑問が出て来る。蘇生の魔法は腕輪を着けていても発動する。それは人間が扱える魔法と言う事になるのだろうか?人と神の魔法の線引きが難しい。何処までが人間の領域なのだろうか?
幾つか理由が考えられる。時空魔法は世界全体に影響を与える。おそらく、これが引っかかった理由では無いだろうか?正確に言えば、死ぬはずだった人間が生き返るのも歴史に影響を与えるが、神は人間の生活には干渉しないので、そこはセーフなのだろう。だが、時間を戻す魔法は世界全体に影響を与える。つまり人間以外にも影響があると言う事になる、これがアウトの原因では無いかと分析した。
ともかく時間を戻す魔法が完成したので、救済の箱舟との戦いで有利に立ち回る事が出来そうだ。だが、地上でこの魔法を使った場合、神が何らかのアクションを起こさないかが心配だ。
まあ、短時間なら神も目こぼししてくれるかもしれない。あまり頻繁に使うのは避けよう。どうしても必要な時にだけ使えば良い。
さて、外へ出ると冒険者姿のビアンカが待っていた。今日はボーマット辺境伯に会う約束だったな。
2人でトゥーファルに転移する。時間的にちょっと早いかな?あまり朝早いのも失礼に当たる。喫茶店で少し時間を潰した。
10時を過ぎれば、早すぎると言う事は無いだろう。ボーマット辺境伯の屋敷に向かう。
流石に侯爵と同等の力を持つと言われるだけの事はある。辺境伯の屋敷は僕の公爵家よりも大きい。これは騎士団を独自に持っていると言う理由もある。基本、王都の貴族家には門番は居ても護衛は居ない。だが、辺境伯の屋敷には常に騎士団の小隊が常駐しているのだ。
辺境伯の屋敷の隣には騎士団の本部がある。ここは王城の騎士団の本部と比べても遜色の無い規模だ。人数的には若干王都の騎士団より少ないが、それでも町の規模を考えれば同等の戦力があってもおかしくは無い。
「なんか物々しい警備ですね。」
ビアンカが若干怯えたような声で言う。
「そうか?この町の規模から考えれば当たり前なんじゃ無いかな?辺境伯は言わばこの町の王様の様な物だからな。」
僕はギルマスからの手紙を門の前に立っている兵士に渡す。暫く待てとの事なので大人しく待つ。
7~8分待ったところで近衛兵っぽい姿の人が現れた。付いて来いと言う言葉に従い付いて行く。広い応接室に通された。
思ったより座り心地の良く無いソファに座って少し待っていると、ボーマット辺境伯と副官っぽい人が現れた。
「国王陛下の使いと言うのは其方か?用件を聞こう。」
ボーマット辺境伯は思ったより若い。40歳に行くか行かないかと言った感じだ。金髪碧眼で整った顔立ちをしている。貫禄が無い訳では無いが辺境伯と言うイメージからは離れている。
「王都での事件はこちらにも届いていると思います。新国王陛下は王国全土の治安を気にして居ます。このトゥーファルもしくは周辺で何らかの異変を感じた事はありませんか?」
「ふむ、私の元には特にそう言った情報は来ていないが、異変と言うのはどう言った物を指すのかね?」
「今回、王都ではテロが起きました。また要人の暗殺等も起こりました。この町の治安はどうなのでしょうか?」
ボーマット辺境伯は一瞬だけ眉を顰めた。
「治安と言う面では王都より安全と言って置こう。だが、ここは辺境だ。王都では起こらない様な事件が起こる事もある。」
「例えば?」
「貧民による反乱だな。」
ほう?あれだけの騎士団があるのに反乱を起こすとは余程追い詰められていたのかな?
「貧民ですか?失礼ですが、この町に反乱を起こす程の規模の貧民が居るのですか?」
「ああ、この町は王都とは違い貴族が少ない。経済を回しているのは平民になる。当然、王都とは回る金の額が違う。一見活気がある様に見えるかもしれんが、この町は君が思うより裕福では無いのだよ。」
「反乱が起きたら武力で沈静化させるのですよね?その後の処分はどうしているのですか?」
「首謀者は死刑だな。だが、他の者は労働者として町の管轄下に置かれる。全てを処分していたら町の人口が減るだけだ。」
なるほど、意外に冷酷なんだな。どちらかと言うと恐怖支配に近い。評判とは逆に独裁者のイメージだな。
「だいたい解りました。最後に一つ『救済の箱舟』と言う言葉に聞き覚えはありませんか?」
「いや、そう言った組織は知らんな。」
僕はボーマット辺境伯に礼を言って辺境伯の屋敷を後にした。
「どうしたんですか?そんなに急いで。」
僕は知らない内に早足になって居た様だ。ビアンカが追い付けずに駆け寄って来た。
「黒だ。ボーマット辺境伯は救済の箱舟と通じている。もしかしたら長老の一人と言う可能性もある。」
「え?どう言う事ですか?」
「僕は辺境伯に『救済の箱舟』と言う『言葉』を知らないかと尋ねた。帰って来た返事は、そんな『組織』は知らないと言って居た、後は解るな?」
「ボーマット辺境伯は救済の箱舟の事を知って居ると言う事ですね。しかし、それだけで黒と言うのはどうなんでしょう?」
「知っていて隠す理由ってあるか?」
「なるほど、関係者でない限りはありませんね。」
そう、関係者でなければ隠す理由は無い。しかもこんな辺境で、救済の箱舟の情報を持っていると言うのは明らかにおかしい。結論は一つだ、ボーマット辺境伯が救済の箱舟のメンバーであると言う事になる。
ボーマット辺境伯は何時から辺境伯をやっているのだろう?あの若さはやはり若返りの秘薬を飲んでいるから?だとすれば辺境伯が長老の一人と言う可能性が強くなる。
急いで王都に帰って元公爵に話を聞く必要があるな。
僕は辺境伯の屋敷から見えない位置まで移動して、人気のない場所を探し、ビアンカを連れて王都へ転移で帰る。
王都に着いてすぐに元公爵の拠点に飛ぶ。拠点では元公爵が慌ただしく指示を飛ばしていた。今日はクラ―ネルは居ない様だ。まあ、ここの所王都は平和だからな。
僕に気付いた元公爵が手を挙げて、ちょっと待ってくれと言う合図をした。
ビアンカと一緒に適当に空いている椅子に腰かけて皆の様子を眺めていると、区切りの良い所で元公爵がこちらに来た。
「どうした?急用か?」
「急用と言えば急用ですね。トゥーファルのボーマット辺境伯って知ってますか?」
「ああ、知ってるぞ。トゥーファルは王都に次ぐ大都市だからな。」
「面識はありますか?」
「確か、1度か2度王城で会った事があるはずだ。それがどうした?」
元公爵が何が言いたいんだ?と言う顔をする。
「ボーマット辺境伯は何時から辺境伯をやってるのでしょうか?それと出来れば辺境伯の年齢を知りませんか?」
「まだ私が現役の公爵の時から辺境伯をやっているな、詳しい年齢は知らんが、おそらく60歳は超えて居るはずだ。」
「そうですか。実は今日、辺境伯に会って来たのですが、どう見ても40歳位でしたよ。」
「何?それは本当に辺境伯だったのか?だとすると、若返りの秘薬か?」
「まあ、それが引っかかったので鎌をかけてみたのですが、どうやら辺境伯は救済の箱舟に関係がありそうです。明かに嘘をついていましたので。」
ボーマット辺境伯との会談の様子を詳しく説明する。
「もしそれが本当なら、トゥーファルの住民45万人が敵と言う可能性も出て来るぞ?何にせよ詳しい情報を調べさせる必要があるな。」
「トゥーファルの住人だけなら良いのですが、北東部の町を全部押さえられて居たら王都の人口を超える数の敵が居る事になりますよ?」
「今の王都はガタガタだ。戦える人間は3万人程度だぞ。更に言えば、救済の箱舟に対抗出来る戦力と言う事になれば1万人が良い所だ。」
まあ、純粋な戦闘力なら僕とクラ―ネルが居れば60万人程度は簡単に片づけられるんだけどね。
問題は長老の厄介な能力なんだよね。これによって敵の戦力が大きく変わって来る可能性がある。
体感的には時間が止まったのとあまり変わりは無いが、やはりこの魔法は人間には扱えない魔法らしい。
こうなると疑問が出て来る。蘇生の魔法は腕輪を着けていても発動する。それは人間が扱える魔法と言う事になるのだろうか?人と神の魔法の線引きが難しい。何処までが人間の領域なのだろうか?
幾つか理由が考えられる。時空魔法は世界全体に影響を与える。おそらく、これが引っかかった理由では無いだろうか?正確に言えば、死ぬはずだった人間が生き返るのも歴史に影響を与えるが、神は人間の生活には干渉しないので、そこはセーフなのだろう。だが、時間を戻す魔法は世界全体に影響を与える。つまり人間以外にも影響があると言う事になる、これがアウトの原因では無いかと分析した。
ともかく時間を戻す魔法が完成したので、救済の箱舟との戦いで有利に立ち回る事が出来そうだ。だが、地上でこの魔法を使った場合、神が何らかのアクションを起こさないかが心配だ。
まあ、短時間なら神も目こぼししてくれるかもしれない。あまり頻繁に使うのは避けよう。どうしても必要な時にだけ使えば良い。
さて、外へ出ると冒険者姿のビアンカが待っていた。今日はボーマット辺境伯に会う約束だったな。
2人でトゥーファルに転移する。時間的にちょっと早いかな?あまり朝早いのも失礼に当たる。喫茶店で少し時間を潰した。
10時を過ぎれば、早すぎると言う事は無いだろう。ボーマット辺境伯の屋敷に向かう。
流石に侯爵と同等の力を持つと言われるだけの事はある。辺境伯の屋敷は僕の公爵家よりも大きい。これは騎士団を独自に持っていると言う理由もある。基本、王都の貴族家には門番は居ても護衛は居ない。だが、辺境伯の屋敷には常に騎士団の小隊が常駐しているのだ。
辺境伯の屋敷の隣には騎士団の本部がある。ここは王城の騎士団の本部と比べても遜色の無い規模だ。人数的には若干王都の騎士団より少ないが、それでも町の規模を考えれば同等の戦力があってもおかしくは無い。
「なんか物々しい警備ですね。」
ビアンカが若干怯えたような声で言う。
「そうか?この町の規模から考えれば当たり前なんじゃ無いかな?辺境伯は言わばこの町の王様の様な物だからな。」
僕はギルマスからの手紙を門の前に立っている兵士に渡す。暫く待てとの事なので大人しく待つ。
7~8分待ったところで近衛兵っぽい姿の人が現れた。付いて来いと言う言葉に従い付いて行く。広い応接室に通された。
思ったより座り心地の良く無いソファに座って少し待っていると、ボーマット辺境伯と副官っぽい人が現れた。
「国王陛下の使いと言うのは其方か?用件を聞こう。」
ボーマット辺境伯は思ったより若い。40歳に行くか行かないかと言った感じだ。金髪碧眼で整った顔立ちをしている。貫禄が無い訳では無いが辺境伯と言うイメージからは離れている。
「王都での事件はこちらにも届いていると思います。新国王陛下は王国全土の治安を気にして居ます。このトゥーファルもしくは周辺で何らかの異変を感じた事はありませんか?」
「ふむ、私の元には特にそう言った情報は来ていないが、異変と言うのはどう言った物を指すのかね?」
「今回、王都ではテロが起きました。また要人の暗殺等も起こりました。この町の治安はどうなのでしょうか?」
ボーマット辺境伯は一瞬だけ眉を顰めた。
「治安と言う面では王都より安全と言って置こう。だが、ここは辺境だ。王都では起こらない様な事件が起こる事もある。」
「例えば?」
「貧民による反乱だな。」
ほう?あれだけの騎士団があるのに反乱を起こすとは余程追い詰められていたのかな?
「貧民ですか?失礼ですが、この町に反乱を起こす程の規模の貧民が居るのですか?」
「ああ、この町は王都とは違い貴族が少ない。経済を回しているのは平民になる。当然、王都とは回る金の額が違う。一見活気がある様に見えるかもしれんが、この町は君が思うより裕福では無いのだよ。」
「反乱が起きたら武力で沈静化させるのですよね?その後の処分はどうしているのですか?」
「首謀者は死刑だな。だが、他の者は労働者として町の管轄下に置かれる。全てを処分していたら町の人口が減るだけだ。」
なるほど、意外に冷酷なんだな。どちらかと言うと恐怖支配に近い。評判とは逆に独裁者のイメージだな。
「だいたい解りました。最後に一つ『救済の箱舟』と言う言葉に聞き覚えはありませんか?」
「いや、そう言った組織は知らんな。」
僕はボーマット辺境伯に礼を言って辺境伯の屋敷を後にした。
「どうしたんですか?そんなに急いで。」
僕は知らない内に早足になって居た様だ。ビアンカが追い付けずに駆け寄って来た。
「黒だ。ボーマット辺境伯は救済の箱舟と通じている。もしかしたら長老の一人と言う可能性もある。」
「え?どう言う事ですか?」
「僕は辺境伯に『救済の箱舟』と言う『言葉』を知らないかと尋ねた。帰って来た返事は、そんな『組織』は知らないと言って居た、後は解るな?」
「ボーマット辺境伯は救済の箱舟の事を知って居ると言う事ですね。しかし、それだけで黒と言うのはどうなんでしょう?」
「知っていて隠す理由ってあるか?」
「なるほど、関係者でない限りはありませんね。」
そう、関係者でなければ隠す理由は無い。しかもこんな辺境で、救済の箱舟の情報を持っていると言うのは明らかにおかしい。結論は一つだ、ボーマット辺境伯が救済の箱舟のメンバーであると言う事になる。
ボーマット辺境伯は何時から辺境伯をやっているのだろう?あの若さはやはり若返りの秘薬を飲んでいるから?だとすれば辺境伯が長老の一人と言う可能性が強くなる。
急いで王都に帰って元公爵に話を聞く必要があるな。
僕は辺境伯の屋敷から見えない位置まで移動して、人気のない場所を探し、ビアンカを連れて王都へ転移で帰る。
王都に着いてすぐに元公爵の拠点に飛ぶ。拠点では元公爵が慌ただしく指示を飛ばしていた。今日はクラ―ネルは居ない様だ。まあ、ここの所王都は平和だからな。
僕に気付いた元公爵が手を挙げて、ちょっと待ってくれと言う合図をした。
ビアンカと一緒に適当に空いている椅子に腰かけて皆の様子を眺めていると、区切りの良い所で元公爵がこちらに来た。
「どうした?急用か?」
「急用と言えば急用ですね。トゥーファルのボーマット辺境伯って知ってますか?」
「ああ、知ってるぞ。トゥーファルは王都に次ぐ大都市だからな。」
「面識はありますか?」
「確か、1度か2度王城で会った事があるはずだ。それがどうした?」
元公爵が何が言いたいんだ?と言う顔をする。
「ボーマット辺境伯は何時から辺境伯をやってるのでしょうか?それと出来れば辺境伯の年齢を知りませんか?」
「まだ私が現役の公爵の時から辺境伯をやっているな、詳しい年齢は知らんが、おそらく60歳は超えて居るはずだ。」
「そうですか。実は今日、辺境伯に会って来たのですが、どう見ても40歳位でしたよ。」
「何?それは本当に辺境伯だったのか?だとすると、若返りの秘薬か?」
「まあ、それが引っかかったので鎌をかけてみたのですが、どうやら辺境伯は救済の箱舟に関係がありそうです。明かに嘘をついていましたので。」
ボーマット辺境伯との会談の様子を詳しく説明する。
「もしそれが本当なら、トゥーファルの住民45万人が敵と言う可能性も出て来るぞ?何にせよ詳しい情報を調べさせる必要があるな。」
「トゥーファルの住人だけなら良いのですが、北東部の町を全部押さえられて居たら王都の人口を超える数の敵が居る事になりますよ?」
「今の王都はガタガタだ。戦える人間は3万人程度だぞ。更に言えば、救済の箱舟に対抗出来る戦力と言う事になれば1万人が良い所だ。」
まあ、純粋な戦闘力なら僕とクラ―ネルが居れば60万人程度は簡単に片づけられるんだけどね。
問題は長老の厄介な能力なんだよね。これによって敵の戦力が大きく変わって来る可能性がある。
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