創造魔法で想像以上に騒々しい異世界ライフ

埼玉ポテチ

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第九十九話

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 月が変わり、『聞く物語』の第3弾の発売日が近づいて来た。

 バートさんの実家の商会もだいぶ落ち着いて来たのでバートさんもやっとこちらの仕事に専念できる。ちなみにパン屋は口コミで徐々に評判になり、パン専用小麦粉の販売数も伸びている。

 グラストフでは南部を開拓し広大な小麦畑を作り、そこでパンに向いた品種の小麦を何種類か育てて貰っている。収穫までまだ数か月かかるので、それまでに輸送の革命の為の魔道具を作るつもりだ。

 今日は『聞く物語』第3弾の恋愛物『ときめき魔法学院』を一足先にバート商会の皆にお披露目した。

「いやー、笑った笑った。涙が出るくらい笑ったよ。」

「そうですね。恋愛物なのに笑えるシーンを多く取り入れているので家族で聞いても恥ずかしくありませんね。」

「まあ、厳密に言うとラブコメって言って純粋な恋愛物とは違うジャンルになるんだけど、これはこれでアリでしょ?」

「そうですね。恋愛物って言うと何処か悲壮感が漂う物が多いので、娯楽と言う意味ではこの路線は良いと思いますよ。」

「ゆくゆくは純粋な恋愛物も出すんでしょ?」

「需要があればね。」

 皆に好評なのでホッとするユーリであった。まあ、ここでラブコメにしたのは次への布石でもあるんだけどね。

「それで、第4弾の話に移るんだけど。これは皆が今までに聞いた事が無いジャンルなので、各自家で、出来れば家族で聞いて欲しいんだ。出来るだけ多くの感想が欲しいからね。」

 そう言ってユーリは各自に第4弾の『聞く物語』を渡して行く。

「惨劇の館ですか?タイトルはミステリーっぽいですね。」

「パッケージは黒が基調で、ちょっと怖そうな雰囲気です。」

「裏表紙の女の人綺麗、誰?」

「表紙も裏表紙も実在の建物や人物に見えるかもしれないけど、実はそれ、精密に書かれた絵なんだよ。」

「これ、絵なの?」

「中身の小冊子に描かれている登場人物なども全て絵だよ。」

「信じられない。またユーリ君の魔法で実在の人物を紙に写したのかと思った。」

「しかし、パッケージにも小冊子にも内容に結びつく情報が全然無いですね?」

「あ、それは態とそうしています。今回は未知のジャンルなので出来るだけ予備知識無しで聞いて貰いたくてね。」

「なるほど、では販売時もその方向で?」

「聞く物語がだいぶ浸透して来ているので、それでも売れると考えています。第4弾に持って来たのもその為ですし。」

「ちなみに第5弾は考えてあるの?」

「第5弾は1回冒険物に戻すつもりだよ。あ、そうだ!1つだけ注意点を忘れてた。」

「何?」

「第4弾を聞いたら明日まで感想の通信禁止ね!感想は商会に全員集まってから話を聞きます。特にユーカとイルミは僕に通信して来ない様に!!」

「「はーい」」

「じゃあ、今日はこんな所かな。皆、早く聞きたいだろうからお開きにするね。」

 皆、笑顔でバート商会を後にする。バートさんが最後に鍵を掛けて、それぞれ家路につく。この後アレを聞いてどんな反応をするだろう?ユーリは悪戯っ子の様な笑みを浮かべながら転移で家に帰る。





 翌朝、用事を済ませ、10時にバート商会へ着くと何やら騒がしい、バートさんとチェスカさんだけではなく、ユーカとイルミの声も聞こえる。

「また、学院休んだのか?しょうがないなぁ。」

「しょうがないなぁじゃないよ。何よあれ?」

「ん?」

「あれは怖すぎです。死ぬかと思いました。」

「私も何度停止ボタンを押そうかと。」

 チェスカさんが幽霊みたいな顔をしている。眠れなかったのか?

「確かに衝撃的な内容でしたね。恐怖感を体験するジャンルですか?」

 バートさんはちゃんと理解している様だ。

「ホラーと言うジャンルでね。恐怖感や不安感を体験するジャンルです。」

「あれは反則だよ、聞いた後トイレに行けなくて困ったわ」

「私も聞いてる間中ずっと父にしがみ付いていました。」

「でも、なんだかんだ言って全部聞いたんでしょ?」

「主人公の女性が気になって、途中で止められないのよね。」

 これはチェスカさんの発言だ。

「じゃあ、問題無いね。きっと売れるよ。」

「前に人間の感情に直接訴えかける物は売れるって言ってましたが、恐怖感もそうだと?」

 真面目なバートさんらしい発言だ。

「現にユーカは父親にずっとしがみ付いていたらしいですよ。親子でこれですから、若い男女ならどうでしょう?」

「ああ、そう言う事か?」

 イルミが気が付いた様だ。

「これは女性が男性にしがみ付くきっかけを与えてくれます。恐怖感が売り物にならないなんて事はありません。現にユーカの中では父親の株が上がったはずです。家族で聞けば絆も深まりますし。適度なドキドキって健康に良いらしいですよ。」

「そう言うもんなんですか?」

「まあ、皆が最後まで聞いたって事は物語として面白いって事ですよね?面白い物は売れます。」

「なんかユーリ君に騙されてる気がする。」

「ゾンビって魔物ですよね?人間がゾンビ化するって実際にありえるんですか?」

「地上では無いと言われていますが、ダンジョンでは結構あるみたいですよ。このお話はあくまでも僕の作り物ですが、ありえないとも言い切れない所がまた、恐怖に繋がるんですよ。」

「主人公を女性冒険家にしたのには何か意味が?」

 チェスカさんは恐怖より創作秘話が気になるらしい。

「男性の冒険家だとゾンビをバンバンやっつけちゃいそうでしょ?普通の女性では1発で死んでしまいます。そこで、女性で冒険家ならギリギリ、ゾンビに勝てるか勝てないかって言う気がしません?」

「そう言う所まで計算して作ってるんですね?」

「まあ、そうだね。」

 一段落したので早めのおやつにする事になった。議論が白熱したので皆、喉が渇いたらしい。

 今日のおやつは温かいミルクティーとモンブランにしてみた。

「そう言えば、この第4弾が発売する頃には僕は14歳になりますね。」

 この国には誕生日を祝う習慣は無い、ただし15歳になると成人の儀式と言う物を行うらしい。これは誕生日ではなく15歳を迎えた次の月の1日に行う事が多いそうだ。なので、毎月1日には何処かで成人祝いのパーティーが開かれる。

「まだ14歳なんですよね。なんかバートより年上に感じます。」

 チェスカさんが何気に酷い事を言っている。バートさんの精神力が削られて行くのが解る。

「第3弾は明後日発売すると言う事で各商会と話を付けて置きました。既に商品も納入済です。」

「そう言えば小説は売れてるんですか?」

「聞く物語の影響で売り上げが下がるかと思ったのですが、逆に物語の面白さを知ったのか、文字が読める人には好評で売り上げが少しですが上がってます。国立図書館に初期の9冊が置かれていると言うのも大きいみたいです。」

 商売は順調だ、問題は見合いだな。ユーリは見合いの事を考えると憂鬱な気分になるのであった。

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