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第25話 デート イワンの場合
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夏季休暇中のデート相手も残るはイワンだけとなった。
そして私は何故かレフレリア王国の王城の謁見の間なんてところで片膝立ちさせられ、イワンも私の横で跪いている。
玉座に座っているのは、イワンの両親である王様と王妃様だ。
なんか真顔で私を見ているんですけど。
どっちもイワンと同じ金髪で、イケメンおじさんの王様に超美女の王妃様。
うわ、めっちゃ仕事ができそう。
横にもズラリと貴族のおっさんたちが控えていて、超アウェーなんですけど。
「父上、母上、こちらの女性がリーシャ・リンベル。僕が結婚したいと願う相手です」
イワンの言葉に王様が顎に手を当てて思案している。
王妃様は扇子で口元を隠しながら、私の品定めをするかのように見てくる。
というかなんだこの状況、イワンめ。
デートで両親のところへ挨拶に行くとか聞いてないぞ。
しかも、なんか王様と王妃様の顔つきが怖いんですけど!
私、何かしたっけ?
「ふむ、平民か。イワンよ、本気で結婚したいと申すのか?」
王様が、イワンに向かって重々しく口を開く。
「はい、本気です」
イワンも真剣な眼差しで王様を見つめる。
……いや、イワンよ。
こういう話は、まず私と恋人になってからする話だろうが!
ほら、王様も王妃様も平民相手に何を言ってやがるんだって顔をしてるよ。
「ふむ、リーシャとやら。イワンの嫁になってレフレリア王国の次代の王妃になる覚悟はあるのか?」
ん? 受け入れる前提かよ!
なんだ? この王様、息子の嫁が平民で良いのか⁉
「え~っと、ないです」
私の返事で謁見の間の空気は凍りつく。
なんだこの無礼な平民の女とか、イワン王子を誑かした悪女とか、そんな声が聞こえてくる。
「そもそも私はイワン王子とは恋人でもありませんし、ただの友人でございます。しかもまだ16歳で学生でございます。王妃になるなんて考えたこともございません」
またもどよめく謁見の間。
王子に何たる無礼とか、陛下に何たる口の聞き方だとかが耳に入ってくる。
ん? そんなに変だった?
もしかして国外追放されるとか?
いや、しょうがないじゃん、平民なんだし礼儀作法は知らなかったということにしてくれ。
私の返事で、王様と王妃様は険しい顔を見合わせて頷き合っている。
「父上、母上、それに集まってくださった皆様。本日は僕がリーシャと結婚したいと報告したまでです。僕は彼女の意志を尊重します。彼女が平民出身だろうが、僕の心は彼女への愛を生涯貫く所存です」
立ち上がって堂々と演説するイワンに、静まり返る謁見の間。
な、なんだこれ?
これってもしや公開告白ってやつなのか?
わ、悪い気はしないけど、イワンめ、まさかこんな大胆な手段をしてくるとは。
「ふむ、イワンの気持ちはわかった。そこまで言うのだ! たとえどんな困難が待ち受けていようが、リーシャ・リンベルを手に入れよ! 手に入れられなかったら王子の身分を剥奪の上、平民として追放だ!」
王様の突然の宣言に謁見の間は当然だという雰囲気が漂っていく。
は? おいおい、第一王子だろ?
そんなんでいいのか? この国は。
「お任せください。このイワン・レフレリア。見事、リーシャの心を射止めてみせます」
イワンが右手を上げて高らかに宣言すると、謁見の間は拍手喝采に包まれた。
え? 何これ?
私への公開告白会ってやつだったわけ? いや、別にイワンのことは嫌いじゃないけどさあ。
なんか釈然としないなあ。
イワンの部屋に呼ばれて2人っきりになっていく。
前回、勉強会でみんなと来た時にズラリと並んでいたメイドさんたちは、廊下で待機しているだけで部屋に入ってこない。
王族の護衛はいいのか?
「リーシャ、すまなかったね」
イワンがメイドさんから受け取った紅茶とお菓子を私に差し出してくれる。
私の前に出されたティーカップからは、紅茶のいい匂いが漂ってくる。
「いいの? あんな宣言しちゃって。私と結婚しないと王子じゃなくなって追放されるんでしょ?」
このお菓子美味っ! と思いながら、イワンに質問する。
前世で好きだった味だ。
甘さ控えめで私好みで手作りの味だ。
「こうしないと、君に僕の本気が伝わらないと思ってね。後悔はしてないよ」
爽やかスマイルで答えるイワン。
……こいつ、本当に16歳か? なんか大人びていないか?
まあ、確かにイワンのことは嫌いじゃないよ。
イケメンだし、優しいし、頭も良いし、王子だから将来性もあるし。
そんな奴に告白されたら嬉しいに決まってるじゃん!
でも……私の前世を殺した上沢恵の転生体が、私の側の誰かなのだ。
警戒しないわけにはいかない。
でも、ホントにいるのかな?
アンゼリカちゃんの勘違いで、イワンたちの中には勇者なんていないんじゃなかろうか?
だって、イワンもボリスもフェリクスもユリウスもニコライも、ソフィアもカリーナも、みんな私に純粋に好意を向けてくれている。
私の抱いている感情が恋愛かはわからないけど、これからもみんなと一緒にいたいと思っているのも本当だ。
この告白でイワンが本気なのはわかった。
なら私も本気で答えなきゃフェアじゃないね!
私はティーカップを置いてイワンに向き直る。
「まだ返答はできないけど、絶対に答えを出すから。待っててくれるかな?」
「ああ、当然待つさ。ただ、これからもアプローチはし続けるさ」
そう言って、イワンはウインクして笑った。
うん、やっぱりイケメンだ。
この笑顔にドキッとしたのは事実だから。
「それよりもうすぐ夏季休暇終わっちゃうねえ。また授業の日々か~」
照れ隠しに話題を変える。
「はは、リーシャの唯一の欠点だね。勉強でわからない箇所があったら、いつでも聞いてくれたまえ」
「うん、頼らせてもらうよ~。あ、そうだ。歴史の狐教師め、私だけに夏季休暇の宿題だしたんだった。教えてもらっていいかな?」
「リーシャにだけかい? まあ、彼女は教育熱心だからね。落ちこぼれを出したくないんだろう」
「あはは、落ちこぼれって酷くない?…………!」
何も考えないで口を開いた私。
頭を空っぽにして笑ったが、愕然へと変わる。
私の表情を見て、イワンは私が気づいたと察したのだろう。
笑顔が消えた。
「……王立学校の歴史の教師のあだ名は狸で、おっさんだよね?」
「……そうだね」
「歴史教師で狐ってあだ名だった教師はたしかに存在する。……けどそれはこの世界じゃない。日本という国の高校教師のあだ名」
イワンは沈黙した。
まさか、イワンが……⁉
「私はよく彼女から宿題を出されていた。それを親友に愚痴ったことがある。その時に親友からも同じように言われたことがある。『まあ、彼女は教育熱心だからね。落ちこぼれを出したくないんだろう』って……」
私の疑念に答えるように、イワンは口を開く。
それは私への告白の時よりも重く、そしてはっきりとした声で……
「真帆はずるいね。悪気が一切ないのだから。狐と狸、まさかこんなアホな引っ掛けに引っかかるなんてね」
そんなイワンの言葉に、私の疑念は確信へと変わるのだった。
「イワン・レフレリア……いえ、上沢恵……」
声が震える。
目の前の人物が、かつての親友であり、自分を殺した犯人だという事実に私の心は激しく揺れる。
豪華絢爛な王宮の一室の中で、2人きりの空間は重苦しい緊張感に包まれていった。
壁面に飾られた歴代王の肖像画が、私たちの出来事を冷めた眼差しで見つめているかのようだった。
「あなたは……私が岩下真帆だった時の親友……そして、私を殺した犯人……」
イワンの表情が一瞬歪むのを目にして、私はついに確信を得てしまった。
彼の目には悲しみや後悔の念が宿っているようだったが、その奥底にはなにか別の感情が渦巻いているようにも感じられた。
私の前世と前前世に何があったのか、その秘密がついに明かされようとしていた。
「よく気づいたね、リーシャ……いや、真帆」
イワンの声は低く、重い。
彼の言葉には、これまでの爽やかさは微塵もなかった。
王宮の豪華な部屋で、私たちの過去が暴かれていく。
イワンが上沢恵だったという事実。
イワンの重厚な声に震えを感じながら、私は彼が上沢恵だったという事実を受け止めていく。
今、この部屋で2人きりになった私たちの行く末が、大きく変わろうとしているのを直感的に感じ取ることができた。
***
『岩下真帆殺害事件
第1容疑者→犯人
イワン・レフレリア
年齢 16歳 王立学校1年生
容姿 サラサラの金髪 イケメン 長身痩せ型
身分 レフレリア王国第一王子
能力 剣技一流 頭脳明晰 一流冒険者もしているのだ
性格 万民を護る王家の使命に燃えている
人生 前世は親友を殺して自殺している
目的 リーシャのファーストキスを奪ったあとに捨てること(なのか⁉)』
そして私は何故かレフレリア王国の王城の謁見の間なんてところで片膝立ちさせられ、イワンも私の横で跪いている。
玉座に座っているのは、イワンの両親である王様と王妃様だ。
なんか真顔で私を見ているんですけど。
どっちもイワンと同じ金髪で、イケメンおじさんの王様に超美女の王妃様。
うわ、めっちゃ仕事ができそう。
横にもズラリと貴族のおっさんたちが控えていて、超アウェーなんですけど。
「父上、母上、こちらの女性がリーシャ・リンベル。僕が結婚したいと願う相手です」
イワンの言葉に王様が顎に手を当てて思案している。
王妃様は扇子で口元を隠しながら、私の品定めをするかのように見てくる。
というかなんだこの状況、イワンめ。
デートで両親のところへ挨拶に行くとか聞いてないぞ。
しかも、なんか王様と王妃様の顔つきが怖いんですけど!
私、何かしたっけ?
「ふむ、平民か。イワンよ、本気で結婚したいと申すのか?」
王様が、イワンに向かって重々しく口を開く。
「はい、本気です」
イワンも真剣な眼差しで王様を見つめる。
……いや、イワンよ。
こういう話は、まず私と恋人になってからする話だろうが!
ほら、王様も王妃様も平民相手に何を言ってやがるんだって顔をしてるよ。
「ふむ、リーシャとやら。イワンの嫁になってレフレリア王国の次代の王妃になる覚悟はあるのか?」
ん? 受け入れる前提かよ!
なんだ? この王様、息子の嫁が平民で良いのか⁉
「え~っと、ないです」
私の返事で謁見の間の空気は凍りつく。
なんだこの無礼な平民の女とか、イワン王子を誑かした悪女とか、そんな声が聞こえてくる。
「そもそも私はイワン王子とは恋人でもありませんし、ただの友人でございます。しかもまだ16歳で学生でございます。王妃になるなんて考えたこともございません」
またもどよめく謁見の間。
王子に何たる無礼とか、陛下に何たる口の聞き方だとかが耳に入ってくる。
ん? そんなに変だった?
もしかして国外追放されるとか?
いや、しょうがないじゃん、平民なんだし礼儀作法は知らなかったということにしてくれ。
私の返事で、王様と王妃様は険しい顔を見合わせて頷き合っている。
「父上、母上、それに集まってくださった皆様。本日は僕がリーシャと結婚したいと報告したまでです。僕は彼女の意志を尊重します。彼女が平民出身だろうが、僕の心は彼女への愛を生涯貫く所存です」
立ち上がって堂々と演説するイワンに、静まり返る謁見の間。
な、なんだこれ?
これってもしや公開告白ってやつなのか?
わ、悪い気はしないけど、イワンめ、まさかこんな大胆な手段をしてくるとは。
「ふむ、イワンの気持ちはわかった。そこまで言うのだ! たとえどんな困難が待ち受けていようが、リーシャ・リンベルを手に入れよ! 手に入れられなかったら王子の身分を剥奪の上、平民として追放だ!」
王様の突然の宣言に謁見の間は当然だという雰囲気が漂っていく。
は? おいおい、第一王子だろ?
そんなんでいいのか? この国は。
「お任せください。このイワン・レフレリア。見事、リーシャの心を射止めてみせます」
イワンが右手を上げて高らかに宣言すると、謁見の間は拍手喝采に包まれた。
え? 何これ?
私への公開告白会ってやつだったわけ? いや、別にイワンのことは嫌いじゃないけどさあ。
なんか釈然としないなあ。
イワンの部屋に呼ばれて2人っきりになっていく。
前回、勉強会でみんなと来た時にズラリと並んでいたメイドさんたちは、廊下で待機しているだけで部屋に入ってこない。
王族の護衛はいいのか?
「リーシャ、すまなかったね」
イワンがメイドさんから受け取った紅茶とお菓子を私に差し出してくれる。
私の前に出されたティーカップからは、紅茶のいい匂いが漂ってくる。
「いいの? あんな宣言しちゃって。私と結婚しないと王子じゃなくなって追放されるんでしょ?」
このお菓子美味っ! と思いながら、イワンに質問する。
前世で好きだった味だ。
甘さ控えめで私好みで手作りの味だ。
「こうしないと、君に僕の本気が伝わらないと思ってね。後悔はしてないよ」
爽やかスマイルで答えるイワン。
……こいつ、本当に16歳か? なんか大人びていないか?
まあ、確かにイワンのことは嫌いじゃないよ。
イケメンだし、優しいし、頭も良いし、王子だから将来性もあるし。
そんな奴に告白されたら嬉しいに決まってるじゃん!
でも……私の前世を殺した上沢恵の転生体が、私の側の誰かなのだ。
警戒しないわけにはいかない。
でも、ホントにいるのかな?
アンゼリカちゃんの勘違いで、イワンたちの中には勇者なんていないんじゃなかろうか?
だって、イワンもボリスもフェリクスもユリウスもニコライも、ソフィアもカリーナも、みんな私に純粋に好意を向けてくれている。
私の抱いている感情が恋愛かはわからないけど、これからもみんなと一緒にいたいと思っているのも本当だ。
この告白でイワンが本気なのはわかった。
なら私も本気で答えなきゃフェアじゃないね!
私はティーカップを置いてイワンに向き直る。
「まだ返答はできないけど、絶対に答えを出すから。待っててくれるかな?」
「ああ、当然待つさ。ただ、これからもアプローチはし続けるさ」
そう言って、イワンはウインクして笑った。
うん、やっぱりイケメンだ。
この笑顔にドキッとしたのは事実だから。
「それよりもうすぐ夏季休暇終わっちゃうねえ。また授業の日々か~」
照れ隠しに話題を変える。
「はは、リーシャの唯一の欠点だね。勉強でわからない箇所があったら、いつでも聞いてくれたまえ」
「うん、頼らせてもらうよ~。あ、そうだ。歴史の狐教師め、私だけに夏季休暇の宿題だしたんだった。教えてもらっていいかな?」
「リーシャにだけかい? まあ、彼女は教育熱心だからね。落ちこぼれを出したくないんだろう」
「あはは、落ちこぼれって酷くない?…………!」
何も考えないで口を開いた私。
頭を空っぽにして笑ったが、愕然へと変わる。
私の表情を見て、イワンは私が気づいたと察したのだろう。
笑顔が消えた。
「……王立学校の歴史の教師のあだ名は狸で、おっさんだよね?」
「……そうだね」
「歴史教師で狐ってあだ名だった教師はたしかに存在する。……けどそれはこの世界じゃない。日本という国の高校教師のあだ名」
イワンは沈黙した。
まさか、イワンが……⁉
「私はよく彼女から宿題を出されていた。それを親友に愚痴ったことがある。その時に親友からも同じように言われたことがある。『まあ、彼女は教育熱心だからね。落ちこぼれを出したくないんだろう』って……」
私の疑念に答えるように、イワンは口を開く。
それは私への告白の時よりも重く、そしてはっきりとした声で……
「真帆はずるいね。悪気が一切ないのだから。狐と狸、まさかこんなアホな引っ掛けに引っかかるなんてね」
そんなイワンの言葉に、私の疑念は確信へと変わるのだった。
「イワン・レフレリア……いえ、上沢恵……」
声が震える。
目の前の人物が、かつての親友であり、自分を殺した犯人だという事実に私の心は激しく揺れる。
豪華絢爛な王宮の一室の中で、2人きりの空間は重苦しい緊張感に包まれていった。
壁面に飾られた歴代王の肖像画が、私たちの出来事を冷めた眼差しで見つめているかのようだった。
「あなたは……私が岩下真帆だった時の親友……そして、私を殺した犯人……」
イワンの表情が一瞬歪むのを目にして、私はついに確信を得てしまった。
彼の目には悲しみや後悔の念が宿っているようだったが、その奥底にはなにか別の感情が渦巻いているようにも感じられた。
私の前世と前前世に何があったのか、その秘密がついに明かされようとしていた。
「よく気づいたね、リーシャ……いや、真帆」
イワンの声は低く、重い。
彼の言葉には、これまでの爽やかさは微塵もなかった。
王宮の豪華な部屋で、私たちの過去が暴かれていく。
イワンが上沢恵だったという事実。
イワンの重厚な声に震えを感じながら、私は彼が上沢恵だったという事実を受け止めていく。
今、この部屋で2人きりになった私たちの行く末が、大きく変わろうとしているのを直感的に感じ取ることができた。
***
『岩下真帆殺害事件
第1容疑者→犯人
イワン・レフレリア
年齢 16歳 王立学校1年生
容姿 サラサラの金髪 イケメン 長身痩せ型
身分 レフレリア王国第一王子
能力 剣技一流 頭脳明晰 一流冒険者もしているのだ
性格 万民を護る王家の使命に燃えている
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