前世と前前世で私を殺した犯人はこの中にいます!~今世で犯人にファーストキスを奪われちゃったら、今回も死亡エンド確定なのです~

ハムえっぐ

文字の大きさ
31 / 34

第30話 アンゼリカちゃん(前編)

しおりを挟む
「私の答えは……」

 アンゼリカちゃんの姿を薄っすらと重ねている変態に向けて指を差す。

「今からアンゼリカちゃんと直接話してきます!」

 そう、私が宣言した瞬間、アンゼリカちゃんが⁉ って顔をしたのを見逃さなかったぞ。

「リーシャ、どうやってだい? まさか自害して再び転生する気かい? もしそうだとしたら全力で君を止めよう」

 イワンの言葉に他のみんなも表情を変える。

「自害? そんなの許しませんわ! もししたら、わたくしもあとを追いますわ!」

 いや、ソフィアが自害したら先王である変態が責任を取らされて処刑されそうだからしないでよ?

「うっしゃあ! その前に先王様をボコってアンゼリカとやらを切り離せばいいんだよなあ!」

 ユリウス? 変態が戦闘態勢に入っちゃったんだけど?

「そういうことなら仕方がないな。勝てるかわからんが、リーシャの盾になってやるぜ!」

 ボリス? さらに変態が気合を入れちゃったんだけど⁉

「冷静に! リーシャ嬢も先王様もみんなも落ち着いてください」

 ニコライ? 私は落ち着いてるぞ。
 そっちが落ち着いてくれ。

「フッ、要はリーシャ・リンベルの問題を解決してから恋愛の決断を下すということですね」

 フェリクス? そこまでは考えてないよ?

「リーシャ~、どうするの~」

 カリーナ! よくぞ聞いてくれた!
 変態が自衛のために、ゴゴゴってオーラを出し始めたからどうしようかと思ったよ。

「へんた……爺やさんも落ち着いてください。私は魔法を使えるようになったんです! その魔法で、アンゼリカちゃんを召喚します!」

 イワンとの窮地の際に、何も考えずに変態を呼び出してしまった感覚を思い出す。

「ほう? リーシャ殿、たしかにそれがしを召喚した時は驚きましたぞ。ですがそれがしと違い、アンゼリカ様は別の時空に存在しているとのこと。魔力は戻っても魔王の記憶を思い出していないリーシャ殿に、そのような人智を超えた召喚魔法ができますかな?」

 メイド部隊が変態を護るために私たちと対峙する。

「思ったんですが、このメイドさんたちってアンゼリカちゃんに鍛えられたんじゃないんですか?」

 これは直感だった。
 表向きはレフレリア王国の王宮に仕えるメイドたちだが、裏では1年で凄腕に育てられ、変態の先王に仕える部隊が裏の顔だ。

 この状況下で、次期国王のイワンの護りを固めないのは不自然極まりない。

「ほう? リーシャ殿、何故そのように思うのですかな?」

「だって、神々と戦う準備をしていたんでしょ? この世界を完全に人の物とするために。なら人手はいくらいても足りないよね? 私も時々真っ白い空間に呼ばれたからなんとなくわかったんですよねえ。……メイドさんたちから、アンゼリカちゃんの匂いが微かながらするんです」

 私は確信を持って言い放った。

 すると変態が叫ぶ。

「『私の匂いってなんですか!』と、アンゼリカ様が仰っております。……ですが、それがなんだというのでしょう?」

「リーシャ……どうするんだい? あの白い空間は魔王である君を喪った直後に、神々がアンゼリカを閉じ込めた場所だよ」

 イワンが私の横に立って呟いた。

 なぬ⁉ ということは以前アンゼリカちゃんが私に告げた、天地創造の神々を騙すための場所って嘘だったってこと?

 それともう1つ。

「ファーストキスを狙ってこないのね? 私の味方でいいの?」

「ことここまで来たら君をどうこうするより、君がどうするのかを見届けたい」

 爽やかスマイルでイワンは囁いた。

 それを見て私はなんとなく察した。

「イワン……いえ、恵……前世で私を殺したのって理由が別にあるんでしょ?」

 そう囁き返すと、イワンは悲しげに首を横に振った。

「僕が……恵だった私が君を殺したのは事実さ」

「私を殺さなければ、アンゼリカちゃんがこっちの世界で人質にした変態とメイドさんたちを使って、神々に無謀な戦いを挑むって脅したんじゃないのかな? ……そうだよね? アンゼリカちゃん。考えてみたら前世を殺されて、初めて出逢った時から変だった。なんで宿敵である勇者が、あの空間に入れたんだろうって。……それはアンゼリカちゃんと勇者の転生体だった恵が裏で繋がっていたからじゃないかな? 反論どうぞ、アンゼリカちゃん!」

 みんながポカーンとするも、私の言葉で事情はわかってくれたのだろう。

 全員が変態から薄く浮かんでいる銀髪ロングヘアの美少女、アンゼリカちゃんへと視線を向ける。

『言いたいことはそれだけですか魔王様。大体あなた様が悪いのです。ですが私はあなた様の側近中の側近、愚痴は申しません。もし、まだ何か言いたいのであれば、どうぞ私を召喚するなり、私のいる空間を訪ねてくださいませ。……魔王様の記憶も戻らないあなたには、どうせできないでしょうけど』

 薄く存在するアンゼリカちゃんが消えようとしていた。

「待って、アンゼリカちゃん!」

 私の声が部屋中に響く。

「私の側近……いえ、私の大切な友人でしょう? だから信じて! 私は必ずあなたを召喚する。ここで、今すぐに!」

 私の決意に満ちた言葉に部屋全体の空気が変わる。
 イワンたちだけではない、変態もメイドさんたちも、その真剣さに心を動かされているようだった。

「私はアンゼリカちゃんが大魔導師だからじゃない。アンゼリカちゃんがアンゼリカちゃんだから、側にいてほしいの。だから……絶対に召喚してみせる!」

 私の体から魔力が溢れ出す。
 その瞬間、イワン、ボリス、フェリクス、ユリウス、ニコライ、ソフィア、カリーナが私の手に自分たちの手を重ねてきた。

 イワンたちの手が私の手に重なる。
 その温もりが、私の魔力をさらに増幅させているのがわかる。
 みんなの思いが、私の中で一つになっていく。

 私の体から溢れ出す魔力は、まるで生き物のように部屋中を満たしていく。
 それは私の決意と、みんなの思いが形になったかのようだった。

「信じて、アンゼリカちゃん。みんなの力を借りて、必ず呼び寄せる」

 私の中で何かが目覚めていく。
 これが魔王の力なのか、それとも私自身の力なのか。
 それはわからない。
 ただ、アンゼリカちゃんを呼び寄せるという一点に、全てを賭けていく。

 私の体内で何かが動き始めた。
 儚く途切れていた魔力の流れが、今ここで再び活性化されていくのを感じる。
 指先から伝わる力強い感触に、私は魔王としての本質を取り戻していくのだと確信した。
 この身に宿る力を、いざ解き放とうとする時がついに来たのだ。

 薄く見えるアンゼリカちゃんが、呆れたかのように笑みを浮かべた気がした。
 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

女性が少ない世界に転生した控えめ伯爵令嬢、なぜか五人の婚約候補に選ばれて少しずつ恋を知っていきます

ノッポ
恋愛
女性が極端に少ない異世界に転生した私は、気づけば伯爵令嬢になっていた。 前世は日本で普通に生きていたせいか、貴族令嬢らしい強気な振る舞いがどうしても苦手。 社交界デビューを迎えても、「どうして私が選ばれるの?」と戸惑うばかりだった。 けれど今年デビューする高位令嬢はわずか三人。 家同士の思惑も重なり、騎士団長家の息子、宰相子息、魔術師団長の息子、幼なじみの侯爵子息、そして英雄騎士―― 五人の若きエリートとのお見合いが次々と始まってしまう。 遠慮がちで控えめな性格は、この世界では珍しく、気づけば少しずつ距離を縮めていく彼ら。 異世界での恋愛に戸惑う日々。けれど出会いを重ねるたびに、私は少しずつ変わっていく――。 女性希少世界で、自分の幸せを選べるようになるまでの逆ハーレム恋愛ファンタジー。

なりゆきで妻になった割に大事にされている……と思ったら溺愛されてた

たぬきち25番
恋愛
男爵家の三女イリスに転生した七海は、貴族の夜会で相手を見つけることができずに女官になった。 女官として認められ、夜会を仕切る部署に配属された。 そして今回、既婚者しか入れない夜会の責任者を任せられた。 夜会当日、伯爵家のリカルドがどうしても公爵に会う必要があるので夜会会場に入れてほしいと懇願された。 だが、会場に入るためには結婚をしている必要があり……? ※本当に申し訳ないです、感想の返信できないかもしれません…… ※他サイト様にも掲載始めました!

転生したら乙女ゲームの主人公の友達になったんですが、なぜか私がモテてるんですが?

山下小枝子
恋愛
田舎に住むごく普通のアラサー社畜の私は車で帰宅中に、 飛び出してきた猫かたぬきを避けようとしてトラックにぶつかりお陀仏したらしく、 気付くと、最近ハマっていた乙女ゲームの世界の『主人公の友達』に転生していたんだけど、 まぁ、友達でも二次元女子高生になれたし、 推しキャラやイケメンキャラやイケオジも見れるし!楽しく過ごそう!と、 思ってたらなぜか主人公を押し退け、 攻略対象キャラからモテまくる事態に・・・・ ちょ、え、これどうしたらいいの!!!嬉しいけど!!!

大根令嬢の雑学無双、王弟殿下を添えて。~ 前世を思い出したので、許婚をほったらかして人助けしまくります!!

古森真朝
恋愛
気弱な伯爵令嬢のカレンは、自分勝手な婚約者レナートに振り回されていた。耐え続けていたある日、舞踏会で何者かに突き飛ばされ、階段から落ちてしまう。 その傷が元で儚く……なるかと思いきや。衝撃で前世を思い出したカレンは一転、かの『ド根性大根』みたいな超・ポジティブ人間になっていた。 『モラハラ婚約者の思惑なんぞ知るか!! 今度こそ好きなことやって、目いっぱい幸せに長生きするんだから!!!』 昔ひたすら読書に耽って身に着けた『雑学』を武器に、うっかり採れ過ぎた作物や、開墾しようとすると不幸に見舞われる土地、不治の病にかかった王族、等々の問題をどんどん解決。 領地の内外で心強い友人が出来たり、いつの間にかものすごく有名になっていたり、何かと協力してくれる王弟ヴィクトルから好意を寄せられたり(注:気付いてない)する中、温かい家族と共に仕事に励んでいく。 一方、前世から因縁のある人々もまた、こちらに転生していて――

【大賞・完結】地味スキル《お片付け》は最強です!社畜OL、異世界でうっかり国を改革しちゃったら、騎士団長と皇帝陛下に溺愛されてるんですが!?

旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
【第18回ファンタジー小説大賞で大賞をいただきました】→【規約変更で書籍化&コミカライズ「確約」は取り消しになりました。】 佐藤美佳子(サトウ・ミカコ)、享年28歳。死因は、過労。連日の徹夜と休日出勤の果てに、ブラック企業のオフィスで静かに息を引き取った彼女が次に目覚めたのは、剣と魔法のファンタジー世界だった。 新たな生を受けたのは、田舎のしがない貧乏貴族の娘、ミカ・アシュフィールド、16歳。神様がくれた転生特典は、なんと《完璧なる整理整頓》という、とんでもなく地味なスキルだった。 「せめて回復魔法とかが良かった……」 戦闘にも生産にも役立たないスキルに落胆し、今度こそは静かに、穏やかに生きたいと願うミカ。しかし、そんな彼女のささやかな望みは、王家からの突然の徴収命令によって打ち砕かれる。 「特殊技能持ちは、王宮へ出仕せよ」 家族を守るため、どうせ役立たずと追い返されるだろうと高をくくって王都へ向かったミカに与えられた任務は、あまりにも無謀なものだった。 「この『開かずの倉庫』を、整理せよ」 そこは、数百年分の備品や資材が山と積まれ、あまりの混沌ぶりに探検隊が遭難したとまで噂される、王家最大の禁足地。 絶望的な光景を前に、ミカが覚悟を決めてスキルを発動した瞬間――世界は、彼女の「お片付け」が持つ真の力に震撼することになる。 これは、地味スキルでうっかり国のすべてを最適化してしまった元社畜令嬢が、カタブツな騎士団長や有能すぎる皇帝陛下にその価値を見出され、なぜか過保護に甘やかされてしまう、お仕事改革ファンタジー。

転生してモブだったから安心してたら最恐王太子に溺愛されました。

琥珀
恋愛
ある日突然小説の世界に転生した事に気づいた主人公、スレイ。 ただのモブだと安心しきって人生を満喫しようとしたら…最恐の王太子が離してくれません!! スレイの兄は重度のシスコンで、スレイに執着するルルドは兄の友人でもあり、王太子でもある。 ヒロインを取り合う筈の物語が何故かモブの私がヒロインポジに!? 氷の様に無表情で周囲に怖がられている王太子ルルドと親しくなってきた時、小説の物語の中である事件が起こる事を思い出す。ルルドの為に必死にフラグを折りに行く主人公スレイ。 このお話は目立ちたくないモブがヒロインになるまでの物語ーーーー。

中身は80歳のおばあちゃんですが、異世界でイケオジ伯爵に溺愛されています

浅水シマ
ファンタジー
【完結しました】 ーー人生まさかの二週目。しかもお相手は年下イケオジ伯爵!? 激動の時代を生き、八十歳でその生涯を終えた早川百合子。 目を覚ますと、そこは異世界。しかも、彼女は公爵家令嬢“エマ”として新たな人生を歩むことに。 もう恋愛なんて……と思っていた矢先、彼女の前に現れたのは、渋くて穏やかなイケオジ伯爵・セイルだった。 セイルはエマに心から優しく、どこまでも真摯。 戸惑いながらも、エマは少しずつ彼に惹かれていく。 けれど、中身は人生80年分の知識と経験を持つ元おばあちゃん。 「乙女のときめき」にはとっくに卒業したはずなのに――どうしてこの人といると、胸がこんなに苦しいの? これは、中身おばあちゃん×イケオジ伯爵の、 ちょっと不思議で切ない、恋と家族の物語。 ※小説家になろうにも掲載中です。

乙女ゲームのモブに転生していると断罪イベント当日に自覚した者ですが、ようやく再会できた初恋の男の子が悪役令嬢に攻略され済みなんてあんまりだ

弥生 真由
恋愛
『貴女との婚約は今夜を持って破棄させて貰おう!』  学園卒業祝いの夜会の場に、凛と響いた王太子殿下の一声。  その瞬間、私は全てを思い出した。  私が前世ではただの手芸とゲームが好きなインドア派女子大生だったこと。そして、ゲーム世界に転生して尚も趣味は変わらず、ライバルキャラですらないモブになってしまっていたことを。  幼い頃に一度出会ったきりの初恋の彼と学園で再会出来たらなぁ、なんて淡い期待を抱いて通っていたのに、道理で卒業式までなんにも起きなかったわけだ。  ーーなんて、ひとり納得していたら。  何故だが私が悪役令嬢の断罪イベントの目撃者として名指しされ、一気に渦中の人物に!?  更に、王太子以外の男性陣は皆様悪役令嬢に骨抜き。なので自然と私には、彼女の潔白に繋がる証言が求められる。  しかしながら、私は肝心の事件の日の記憶が訳あって曖昧だったので、致し方なく記憶を呼び覚ます治療を受けさせられる羽目に。  タイムリミットは1年間。  その1年間の私への護衛につけられたのは、悪役令嬢に心奪われた初恋の彼でした。

処理中です...