【魔女ローゼマリー伝説】~5歳で存在を忘れられた元王女の私だけど、自称美少女天才魔女として世界を救うために冒険したいと思います!~

ハムえっぐ

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第3章 公爵令嬢の選択

第16話 公爵令嬢シャルロッテ

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 運動服と呼ばれる白い布地の上着と赤色のズボンを着込んで、私たちは剣の授業のために屋外へ移動した。

 へえ、男子のズボンは青色なんだ。
 って! リョウ? なんで男子連中に囲まれて、険悪な雰囲気になっているんだよ!

 絡んでいるのはウイルヘルムっていう、金髪オールバックのボンボンか。
 ったく、リョウの奴、何をやらかしてこの状況になったんだよぉ~。

「貴族でもねえテメエがこの学校にいるなんて、どんな手を使ったんだ? あ~ん?」

 うわ~典型的な絡み方だ。
 ああいうのが貴族社会で幅をきかせていると思うと、正直寒気を感じるぞ。

 てかリョウもへりくだれとは言わないけど、相手してやれって。
 一言も喋らないのは目立たないようにしているつもりなのだろうが、それは逆効果を生んでいるようだぞ?

「失礼。ウイルヘルム様。この方はわたくしの護衛でございます。何か不都合があれば、わたくしに申し上げてください」

「ちっ! ヴィレッタか。良いよなあ女は。王の側室になれるんだもんなあ。ただ美人てだけで得なもんだ。おっと、一応力が皆無とはいえ、4大公爵家の御令嬢だったな」

 揶揄するウイルヘルムにヴィレッタは怒った様子もなく平然としている。
 貴族社会で揉まれているからなのか、こういう手合いの相手に慣れているようだった。

「そっちの金髪の女も護衛かあ? 授業にしゃしゃり出てくんじゃあねえぞ。どうせ冒険者の駆け出しで、年齢が若いから学校に潜入させたんだろうが、ここはシャイニング公爵家が支配する学校だ。平民出の冒険者如きには分不相応だぜえ」

 ギャハハと笑う、ウイルヘルムの取り巻きたち。

 私はつい、カチンとして睨んで口を開く。

「弱い犬程吠えるって言うけど本当ね。どうせ剣の腕も大したことがないんでしょ? どうせ剣の授業でも、参加しないでアーダコーダ言って騒ぐだけなんじゃない? あっ! 下手っぴで他の生徒に迷惑だから、剣の授業は受けないんでしたか。これは大変失礼しました、ウイルヘルム公子様」

「な、なんだと⁉ テメエ! この俺を誰だと思ってやがる!」

「キャンキャン吠えることしかできないウイルヘルム・シャイニング様でございます。何か間違ってますか?」

「このおっ!」

 まだ丸腰の私に、ウイルヘルムは授業用の木剣を構えた。
 横では私に怒りの視線を向ける男子たちに、ため息を吐くヴィレッタ、呆れ顔のリョウ。

 ま、なるようになるでしょ。
 力を見せておいて周囲の反応を見るのも悪くない。

 魔法一発ド派手に撃ちますか♪
 と身構えていくが……

「おやめなさい! 授業は男女別です。クラス責任者である、このシャルロッテ・ルインズベリーが見ている前で私闘をするなど、見過ごすことはできません! それに、ここは王立学校です。騒ぎを起こすならば、退学に処される覚悟をしてください!」

 凛とした声が響き渡り、ウイルヘルムの取り巻きたちが怯む。

 声の主はシャルロッテだ。
 彼女の長い赤髪のポニーテールが風になびき、貴族令嬢というより、騎士の気風を漂わせていた。

 あっ! そういえばシャルロッテって昔からザ、正義って感じだったっけ。

 ラシルが私たちに意地悪をしても、真っ向から噛み付いていったしなあ。

「ちっ! なら授業が始まったら、あの黒髪の男をボコボコにしてやるよ。テメエのせいで事故死するお仲間を見て、キャンキャン泣き叫ぶんだなあ」

 うーわ、性格悪いなあ。
 でもリョウに勝てると思っている時点でアホだな。

 まあ、アランの傭兵の皮鎧を着ていないリョウって、なんか弱そうだし、木剣を握って軽く素振りする姿も弱そうだし、ウイルヘルムの勘違いも仕方がないかな?

「申し訳ございません、シャルロッテ様。お手を煩わせてしまいました」

「どういたしましてヴィレッタ様。女子は今日は見学よ。そこの護衛さんもね」

 シャルロッテが普通に話しかけてきたが……私のことをどう思っているんだろう?

 何故か、怒っているように思ってしまった。

「ローゼ、リョウ様ですけど」

「ああ~大丈夫大丈夫。リョウなら心配ないって」

「ですがどうやら授業内容が、リョウ様以外と男子生徒での模擬戦になったそうですが……」

 なんと……ウイルヘルムが教師を脅してそう変えたっぽい。
 まあ、だからなんだって話だけど。

「おやめなさい! 騎士道精神に欠如した行為! 例え教師が許そうとルインズベリー家の名において、私が許しません!」

 シャルロッテが凛とした声を出し、木剣片手に今にも飛び出そうとするのを私が止める。

「余裕の表情なのね。貴女のお仲間なのではなくて?」

「ええ、ですので心配していません」

 シャルロッテの相変わらずザ、正義って感じの姿を見て、ちょっと嬉しく思いつつ口にする。

「そこまで言うのでしたら、暫し様子を見ましょう」

 おや? シャルロッテも私の横に。
 これは、リョウに興味ありって感じだけど、なんかヴィレッタとシャルロッテに囲まれているって昔を思い出すよ。

「まあ、見ててください」

 私の返答に訝しむ2人の公爵令嬢だったが、模擬戦開始と同時にその意味がわかったようだ。

 数秒だった。
 リョウめ、少しは手加減しろっての。
 15人いた対戦相手の男子が全員、地を這って蹲っていくのにかかった時間は。

「て、テメエ……ざけんな」

 なんか言っているウイルヘルムの頭を、リョウは木剣でポコンと叩いた。

 場の空気は最悪だ。

 シーンとなっているし、先生なんてアワアワしちゃって腰を抜かしているぞ。
 私に目立つなとか言っておいて、何をしているんだよ、リョウ。

 まあ、スッとしたけどね。

「……実力が違いすぎですね。なるほど、ヴィレッタ様の護衛に相応しい腕前」

 そう呟くと、シャルロッテは教師に近づいていった。

「残りの授業時間いかが致しましょうか? もし案がなければ、私が場を仕切って授業を続行してもよろしいですか?」

 シャルロッテの提案に、教師は首がもげそうな勢いで頷いた。

「では女子の皆様、好きに身体を動かしていてくださいな。そして唯一男子で大地に足を付けている貴方。私の剣の修行に付き合って下さらないかしら?」

 ん? シャルロッテ、木剣を構えているけど……まさか。

「リョウ! 怪我をさせちゃ駄目だからね!」

 そんな私の叫びに、ああ、とリョウが返答した。

「リョウ……黒髪の少年。アランの傭兵で聞いたことのある名前ですね。まさか、あの?」

 シャルロッテの呟きに私は口元を緩ませる。
 公爵令嬢のシャルロッテに知られているって、リョウの知名度が轟いている証だから♪

 リョウとシャルロッテの戦いが始まる。
 まあ、剣技だけなら当然リョウの方が上だった。
 でも、シャルロッテも強い。
 というか、戦い慣れしている。
 多分だけど、私と同じで実戦経験があるっぽいな。
 それに……

「……驚いたな。君の剣技は十分に一流だ。控えめなしの評価で、この男子生徒たちを合わせても一番強い」

 リョウの言葉に、そうかしら? とシャルロッテが笑う。

 その笑顔は、年相応の女の子のものだ。
 なんか可愛いな。
 私やヴィレッタ以外の女子たちも注目して2人の戦いを眺めていた。

「シャルロッテ様は息切れしていますが、リョウ様は息切れしていませんね。……これほど強い御方だったとは」

 おお、ヴィレッタのリョウへの評価も上がったぞ。
 うんうん。これは良い傾向だ。

 リョウ様というらしいですわ、と、他の女子たちの頬も染まっている。
 ……これは由々しき事態だ。

 そしてシャルロッテの木剣が宙を舞った。

「ご教授ありがとうございました」

「いや、こちらこそ良い訓練になった」

 そして、こっちへ来るリョウだが。
 取り敢えず魔法を撃っておくか。
 爆音が上がり、リョウが吹っ飛ぶ。

 うん。想定外過ぎて防げなかったようだね♪

「何故魔法を?」

「イヤだって、私も実力を見せておかなきゃなあと思ってさ。ほら、目覚めていたウイルヘルムも顔面蒼白になっているよ」

「やり方が他にあったと思いますが……」

 きょとんとするヴィレッタに、そう告げるとため息を吐かれた。

「魔女なのね。……今のは自分より目立つからというより、彼に対する女生徒の視線への嫉妬からかしら?」

 ギクッ⁉ いえ、違います。
 嫉妬ではないぞ~シャルロッテ。
 あれだよ~。

 ていうかシャルロッテ、私は見逃さなかったぞ。
 身体強化の魔法を使っていたよね?
 シャルロッテも魔女の資質があったんだ~、いつか魔女談義したいな♪

 と思いつつ、リョウを起こして怪我を治療する私であった。
 
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