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第6章 雪原は鮮血に染まる
第12話 ディンレル王国滅亡 アリスの婚約
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リュンカーラ王宮、白亜宮の謁見の間にアリスとヒイラギは入り、玉座に座る男性へと頭を下げた。
男は頭に王冠を乗せ、豊かな髭を生やした偉丈夫。
ディンレル王国の現国王、アノス王である。
「おう、よく来たなアリスよ。今日はきちんと扉から入って、魔法も連発しないで重臣に怪我はなし。余は嬉しいぞ」
アノス王はほろりと泣いた。
娘の成長が嬉しくて仕方ない様子である。
だがヒイラギは内心、えぇ……と思う。
扉から入るのが当たり前なのに、そんなに魔法が飛び交っている環境なのかと。
そんなヒイラギを無視し、アノス王は立ち上がり満面の笑みで告げる。
「ビオレール公国の第二公子キース殿が、正式な婚約のため、ひと月後にリュンカーラに到着する。皆の者! アリスの婿を迎える準備をせよ」
ひと月後というと、ディンレル王国恒例の武芸大会と被る。
そのことに残念がる重臣も多かったが、王の言葉に割れんばかりの拍手で応じた。
ヒイラギは王の言葉を聞いて内心思う。
(アリス姫との婚約を望む男か……俺にとっても他人ごとではないな。妹に危害を加える輩なら叩き潰すまでだが)
そんなことを考えている間に、今度はアメリア王妃が立ち上がり口を開く。
金髪碧眼の絶世の美女の彼女は謁見の間をキョロキョロして一言。
「あなた。アニスは呼んでないの?」
と、アノス王に尋ねた。
アニス姫? そういえばいないな、妹のマツバもいない。
「必要ない。ひと月後だ。アリスと準備をする者がいれば十分よ。これで西のいざこざも収まるだろう。ディンレル王国の繁栄と両国の友好のために、キース殿を迎えよう!」
アノス王の号令に、重臣たちは更に拍手で答えた。
この婚姻は西方との緊張関係を緩和し、魔女の力を持つディンレル王国の影響力を拡大する重要な政策である。
(このじゃじゃ馬姫が結婚か。……これに嫁が務まるとは思えんが)
「ヒイラギ、あなた今、失礼なことを考えたでしょう?」
アリス姫は魔女だ。
ヒイラギは心を読む魔法を使用されでもしたかと冷や汗が滲んだ。
「いえ、特になにも」
アリス姫に話しかけられ、何気なく返答したヒイラギだったが、彼の声を耳にしたパルパティーン宰相が待ってましたとばかりに叫んだ。
「奴隷の分際で、謁見の間で声を出すとは何事だ! 陛下! これは前代未聞の事態ですぞ! 即刻、この場で処刑するべきでございます!」
ヒイラギは宰相の言葉を聞いて、は? と思う。
謁見の間で声を出すだけで死刑か……危なすぎる。この王国で生きて行くのは想像以上に厳しいと痛感してしまう。
「そもそも、何故奴隷に首枷もせずに騎士の服を着せているのか? アリス姫らと共に入ってきたために、衛兵たちも怯え……コホン。何か余興かと見逃したようですが、流石に見逃せませぬ。即刻この場で処刑すべきです! 陛下!」
パルパティーン宰相の発言を肯定するかのように、周りの重臣たちも頷いていく。
「ふうむ。申し開きはあるか? アリスよ」
アノス王も宰相の言うことはもっともだと思ったのか、はたまたこれは計画通りか、余裕の笑みで娘を見る。
「はて? なんのことでしょう? 空耳では? ね? ローレル、アロマティカス」
「私は耳にしておりません。アリス姫様が言うのですから絶対そうに決まってます。違うと申しますか? それはアリス姫様を嘘つき呼ばわりするということですね? 許すまじ暴言ですぞ宰相様!」
「処刑するなら私にお任せを! ただ抵抗されたら魔法を使わなくてはなりません。この場が焦土になってもいい許可をください!」
アリス姫の従者2人の発言に、アノス王以下重臣が怯む。
ローレルとアロマティカスは魔法の才能だけでなく、アリスへの絶対的な忠誠心が買われて側近に抜擢された。
ただ、過剰な忠誠心が時として問題を引き起こすことも多い。
「まあまあ、あなた。めでたい席です。ひと月後にキース公子がいらっしゃるのですから」
アメリア王妃の取り成しで、この場は収まった。
アノス王は強面だが、アメリア王妃の前では柔和な表情を見せる。
2人の関係は政治的な結婚から始まったが、今では深い愛情で結ばれているのだ。
やれやれ、とヒイラギは嘆息した。
どうやら俺の存在は異質であり、アノス王と宰相パルパティーンら、国家を運営している者たちは俺を殺したがっているようだ。
謁見の間を出て、ヒイラギはアリス姫とともに白亜宮の廊下を歩く。
横に、紫髪の少女ローレルと緑髪の少女アロマティカスもついてくる。
「なんで俺を連れて来たんだ?」
「何故って、まあ、こういう話だって知らなかったし、あとはノリで」
「ノリって……」
「にしても、お父様も大人げないなあ~もう。キルア族を攻めて奴隷にしようとしたり、それを私とアニスで逃がしちゃって、ヒイラギとマツバの兄妹以外しか残らなくって、そんでもって2人は私とアニスの管理下に置かれたというのに。全く! あの手この手で、チャチャ入れてくるんだから」
プンスカするアリス姫。どうも自分が悪いとは毛ほども思っていないようだ。
「そもそもどうして、アリス姫様はこの男をお側に? キルアの地を手に入れるのでしたら、私たちが攻め入りますよ?」
「アロマティカスの言う通りです。狩猟民族で定住しない野蛮な部族ということですが、私たちが魔法を放ってお願いすれば、死者1人も出さずに版図を拡大してみせます」
「我々キルア族は太陽と女神のみを信仰する。ディンレルに攻め込まれても、全滅するまで戦うさ」
キルア族は厳しい自然の中で生き抜く術を代々受け継いできた。
彼らの魂には自由を愛し、権力に屈しない強さが宿っている。
「ブロッケン将軍の1万の軍勢で、捕虜になった分際でよく言うわ~」
「まあ1万派兵して戦果は捕虜2人、それを姫様たちに取られたんですもの。そりゃあ陛下も重臣たちも、おかんむりになるのも当然ですね」
「それでアリス姫様、今後これやマツバってのをどうするつもりなんです?」
「そうですそうです。マツバという娘は可愛いって聞きましたから早く愛でたいですけど、これは無愛想で不気味です!」
これ扱いか、と思いつつもヒイラギも気になるのでアリス姫を見つめる。
「う~ん……テヘッ♪」
あっ、これ何も考えてないな。こんな第一王女が他国から婿を迎えてやっていけるのだろうか?
不安で頭を抱えるヒイラギであった。
男は頭に王冠を乗せ、豊かな髭を生やした偉丈夫。
ディンレル王国の現国王、アノス王である。
「おう、よく来たなアリスよ。今日はきちんと扉から入って、魔法も連発しないで重臣に怪我はなし。余は嬉しいぞ」
アノス王はほろりと泣いた。
娘の成長が嬉しくて仕方ない様子である。
だがヒイラギは内心、えぇ……と思う。
扉から入るのが当たり前なのに、そんなに魔法が飛び交っている環境なのかと。
そんなヒイラギを無視し、アノス王は立ち上がり満面の笑みで告げる。
「ビオレール公国の第二公子キース殿が、正式な婚約のため、ひと月後にリュンカーラに到着する。皆の者! アリスの婿を迎える準備をせよ」
ひと月後というと、ディンレル王国恒例の武芸大会と被る。
そのことに残念がる重臣も多かったが、王の言葉に割れんばかりの拍手で応じた。
ヒイラギは王の言葉を聞いて内心思う。
(アリス姫との婚約を望む男か……俺にとっても他人ごとではないな。妹に危害を加える輩なら叩き潰すまでだが)
そんなことを考えている間に、今度はアメリア王妃が立ち上がり口を開く。
金髪碧眼の絶世の美女の彼女は謁見の間をキョロキョロして一言。
「あなた。アニスは呼んでないの?」
と、アノス王に尋ねた。
アニス姫? そういえばいないな、妹のマツバもいない。
「必要ない。ひと月後だ。アリスと準備をする者がいれば十分よ。これで西のいざこざも収まるだろう。ディンレル王国の繁栄と両国の友好のために、キース殿を迎えよう!」
アノス王の号令に、重臣たちは更に拍手で答えた。
この婚姻は西方との緊張関係を緩和し、魔女の力を持つディンレル王国の影響力を拡大する重要な政策である。
(このじゃじゃ馬姫が結婚か。……これに嫁が務まるとは思えんが)
「ヒイラギ、あなた今、失礼なことを考えたでしょう?」
アリス姫は魔女だ。
ヒイラギは心を読む魔法を使用されでもしたかと冷や汗が滲んだ。
「いえ、特になにも」
アリス姫に話しかけられ、何気なく返答したヒイラギだったが、彼の声を耳にしたパルパティーン宰相が待ってましたとばかりに叫んだ。
「奴隷の分際で、謁見の間で声を出すとは何事だ! 陛下! これは前代未聞の事態ですぞ! 即刻、この場で処刑するべきでございます!」
ヒイラギは宰相の言葉を聞いて、は? と思う。
謁見の間で声を出すだけで死刑か……危なすぎる。この王国で生きて行くのは想像以上に厳しいと痛感してしまう。
「そもそも、何故奴隷に首枷もせずに騎士の服を着せているのか? アリス姫らと共に入ってきたために、衛兵たちも怯え……コホン。何か余興かと見逃したようですが、流石に見逃せませぬ。即刻この場で処刑すべきです! 陛下!」
パルパティーン宰相の発言を肯定するかのように、周りの重臣たちも頷いていく。
「ふうむ。申し開きはあるか? アリスよ」
アノス王も宰相の言うことはもっともだと思ったのか、はたまたこれは計画通りか、余裕の笑みで娘を見る。
「はて? なんのことでしょう? 空耳では? ね? ローレル、アロマティカス」
「私は耳にしておりません。アリス姫様が言うのですから絶対そうに決まってます。違うと申しますか? それはアリス姫様を嘘つき呼ばわりするということですね? 許すまじ暴言ですぞ宰相様!」
「処刑するなら私にお任せを! ただ抵抗されたら魔法を使わなくてはなりません。この場が焦土になってもいい許可をください!」
アリス姫の従者2人の発言に、アノス王以下重臣が怯む。
ローレルとアロマティカスは魔法の才能だけでなく、アリスへの絶対的な忠誠心が買われて側近に抜擢された。
ただ、過剰な忠誠心が時として問題を引き起こすことも多い。
「まあまあ、あなた。めでたい席です。ひと月後にキース公子がいらっしゃるのですから」
アメリア王妃の取り成しで、この場は収まった。
アノス王は強面だが、アメリア王妃の前では柔和な表情を見せる。
2人の関係は政治的な結婚から始まったが、今では深い愛情で結ばれているのだ。
やれやれ、とヒイラギは嘆息した。
どうやら俺の存在は異質であり、アノス王と宰相パルパティーンら、国家を運営している者たちは俺を殺したがっているようだ。
謁見の間を出て、ヒイラギはアリス姫とともに白亜宮の廊下を歩く。
横に、紫髪の少女ローレルと緑髪の少女アロマティカスもついてくる。
「なんで俺を連れて来たんだ?」
「何故って、まあ、こういう話だって知らなかったし、あとはノリで」
「ノリって……」
「にしても、お父様も大人げないなあ~もう。キルア族を攻めて奴隷にしようとしたり、それを私とアニスで逃がしちゃって、ヒイラギとマツバの兄妹以外しか残らなくって、そんでもって2人は私とアニスの管理下に置かれたというのに。全く! あの手この手で、チャチャ入れてくるんだから」
プンスカするアリス姫。どうも自分が悪いとは毛ほども思っていないようだ。
「そもそもどうして、アリス姫様はこの男をお側に? キルアの地を手に入れるのでしたら、私たちが攻め入りますよ?」
「アロマティカスの言う通りです。狩猟民族で定住しない野蛮な部族ということですが、私たちが魔法を放ってお願いすれば、死者1人も出さずに版図を拡大してみせます」
「我々キルア族は太陽と女神のみを信仰する。ディンレルに攻め込まれても、全滅するまで戦うさ」
キルア族は厳しい自然の中で生き抜く術を代々受け継いできた。
彼らの魂には自由を愛し、権力に屈しない強さが宿っている。
「ブロッケン将軍の1万の軍勢で、捕虜になった分際でよく言うわ~」
「まあ1万派兵して戦果は捕虜2人、それを姫様たちに取られたんですもの。そりゃあ陛下も重臣たちも、おかんむりになるのも当然ですね」
「それでアリス姫様、今後これやマツバってのをどうするつもりなんです?」
「そうですそうです。マツバという娘は可愛いって聞きましたから早く愛でたいですけど、これは無愛想で不気味です!」
これ扱いか、と思いつつもヒイラギも気になるのでアリス姫を見つめる。
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