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第7章 絶望の鐘
第23話 ディンレル王国滅亡 邪法
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ヒイラギの遺体と共に、リュンカーラへと戻ったアリス姫と魔女たち。
王宮のみならず王都全土が騒然とする中、中庭で闇夜を見上げるクレマンティーヌの前にアレゼルが現れた。
「どうしたさね? また凶兆でも見たかね?」
「凶兆、か。生易しい表現だ。これは……死だ。それも、世界全てに死が降りかかる」
「どういう意味さね?」
「よいかクレマンティーヌ。これから世界を死に満たす者が出現するのだ。情なく、殺せ」
アレゼルはそう告げると消えた。
「ホント……どういう意味さね……」
クレマンティーヌは嘆息する。
アレゼルが告げたのは、アリス姫が悲嘆の果てに闇に飲まれる前に始末しろということ。
アリス姫を殺せという命令だ。
すでにアリス姫が闇に飲まれているかはわからない。
だが、アレゼルは可能性を全て消すつもりなのだと、クレマンティーヌは理解した。
アリスは自室に引きこもり、ヒイラギの遺体に抱きつき泣き続けている。
ローレルとアロマティカスの言葉にも耳を貸さず、強固な結界魔法で自室を封鎖し、部屋には誰も入ることができない。
「クレア! ここにいたの!」
「アニスかい? 進展があったのかね?」
「無理。姉様の結界魔法は解けない。しくじった。まさか姉様が、転移で直接自室に戻るなんて! クレアなら結界を破れるでしょ! 姉様は身重なんだよ!」
「破れるには破れるが、それで転移されたらどうしようもないさね」
「結界を破った直後に、私たちでなんとかする!」
力強く言い放つアニスの姿から溢れ出る輝かしい魔力。
まだ未熟だが、いずれ自分を凌駕するかもしれないと、クレマンティーヌは感じた。
「わかったさね。結界を破ったら後は任せる。それでいいかね?」
アニスは一瞬微笑み、先に行って待っていると走り出す。
アリス姫の部屋の前にはアリス姫に声をかけ続け、結界魔法を破るべく、力を合わせていた7人の宮廷魔術師見習いが揃っている。
「アリス姫様! お願い申し上げます! お開けくだされ!」
「御身をお大事に! このままではお腹の子に障りますぞ!」
ローレルの叫びとアロマティカスの説得が耳に届く。
チャービル、ディル、タイム、フェンネル、マツバ、アニスが懸命に魔力を練っている。
そんな様子を目の当たりにしたクレマンティーヌは、全てが遅かったと悟る。
「開けるさね」
アリス姫の部屋の扉の前に立つと、クレマンティーヌは神聖魔法で結界を破った。
なだれ込む魔女たちが見たのは流産したアリスと、目覚めていないが肉塊ではないヒイラギの姿。
「ねえ……さま……」
アニスは絶句する。これが、あの心優しい姉の笑顔なのかと。
(己の子を媒体に、ヒイラギの魂と肉体を修復した……?)
恐るべき事実に気づいたアニスはアリスに駆け寄り、両肩に手を置いて揺さぶる。
「姉様! アリス姉様! 私です、アニスです!」
けれど反応がない。
まるで人形のようなアリスに恐怖を覚えつつも、アニスは揺さぶり続ける。
焦点の合わない瞳で虚空を見つめ、アリスはヒイラギに手を伸ばした。
壊れてしまったアリスを見て絶句する魔女たち。
みんなを尻目に、虚空を見つめたままアリスが動き出す。
「何をする気さね?」
クレマンティーヌの問いに、アリスは嗤う。
「決まってるわ先生。ブロッケンたちを殺しに行くの」
「少し……休むがいい」
クレマンティーヌはアリスに睡眠魔法をかけた。
「アリス姫様……」
崩れ落ちるアリスを、ローレルとアロマティカスが抱えていく。
ヒイラギの遺体が肉塊ではなくなっているのを衛兵が見て、慌てて王に報告しに行ったのか、はたまた単にアリス姫の部屋が開いたから報告に行ったのかはわからない。
アノス王がやってきたのはそれからすぐのことだった。
「クレマンティーヌ。アリスを幽閉せねばなるまい。頼めぬか?」
「お父様! 何を言ってるのです!」
アニスが瞬時に反論する。
「アニス! わかっているはずだ! アリスは心が壊れ、禁忌を犯した! この事実は知られてはならん! ディンレル王国の評判失墜を怖れるのではない! 魔女に対する恐怖を人々が抱かない為だ!」
「ならば幽閉ではなく、対話で正気に戻し、根気強く向き合うべきです! お父様が魔女に対する恐怖をお持ちでしたら、私が、私たちが引き受けましょう! ブロッケンたちについても、私たち魔女にお任せください! ガーデリアに赴き、今回の件の首謀者を暴いてみせます!」
「うぬう! 我が娘ながら、何たる口の聞き方! 余が王なのだ! ええい! 魔女をリュンカーラから追放する! 但し! クレマンティーヌに関しては、アリスを幽閉する相応しき結界を張るまで猶予とする!」
「はあああああああああ? ふざけんな⁉」
踵を返すアノス王へ暴れようとするアニスを、クレマンティーヌは制止した。
「承知しました陛下。して、追放場所はどこへ?」
「クレマンティーヌに任せる」
そう呟いてアノス王は立ち去った。
先生! と叫ぶ弟子たちに目を向け、クレマンティーヌは嘆息する。
「陛下は私たちに好き勝手動いて、この陰謀を暴いてくれと頼んだのさね。パルパティーンの陰謀を防いだように」
「先生、ならばアリス様と兄様も……」
マツバが囁く。
「いや、今の姉様では想定外が起きるかもしれない。クレア、絶対に安全な幽閉場所をお願い。私の魔力を使っても構わないから」
アニスは明るく告げた。
「ちょっ⁉ 今の陛下の言葉の裏に、そういう意図があるって気づいてたの? アニスのくせに」
「マジで、アニスと陛下のガチゲンカまで始まってしまうかと焦ったわ。アニスがリュンカーラを、火の海にすると思っちゃったよ」
「って! ディル! チャービル! 一言多い! 私だってそのくらいわかるって。もう15歳なんだし」
プンスカするアニスに場が少し和んだ。
「それで先生。アリス姫様は幽閉しちゃうの?」
「可哀想だよ……」
「タイム、フェンネル。それがアリスに一番いい。アリスには落ち着かせる時間が必要だ。誰にも開けられず、邪な言葉も耳にせず、傷つけられないように。……そうさね、私かアニスの魔力だけでしか開けられないように組み立てるとしようかね」
クレマンティーヌはアリスの部屋に結界の術式を発動させ、アニスも魔力を加えていく。
「向かうのはガーデリア領……ですよね先生。ですが……」
「アリス姫様を1人にしておくのは気が引けます」
「ローレル、アロマティカス。気持ちはわかるさね。ただ、ここにいてもやれることはないねえ」
クレマンティーヌが告げると、8人の魔女たちは力強く頷く。
必ず解決してみせると気合いを入れて。
こうして、アニスたちはガーデリア領へと旅立った。
直後、アレゼルがアリスを殺すべく侵入を試みる。
(クレマンティーヌの結界を破ることは出来ぬか。楽観主義も、ここまでくると頭を抱えてしまう。……頼んだぞ9人の魔女よ。こうなれば必ずや状況をひっくり返せ)
アレゼルはクレマンティーヌたちが失敗した場合、彼女たちに賭けた責を負うために、未来へと道を残すために、この場に残ることを決めた。
王宮のみならず王都全土が騒然とする中、中庭で闇夜を見上げるクレマンティーヌの前にアレゼルが現れた。
「どうしたさね? また凶兆でも見たかね?」
「凶兆、か。生易しい表現だ。これは……死だ。それも、世界全てに死が降りかかる」
「どういう意味さね?」
「よいかクレマンティーヌ。これから世界を死に満たす者が出現するのだ。情なく、殺せ」
アレゼルはそう告げると消えた。
「ホント……どういう意味さね……」
クレマンティーヌは嘆息する。
アレゼルが告げたのは、アリス姫が悲嘆の果てに闇に飲まれる前に始末しろということ。
アリス姫を殺せという命令だ。
すでにアリス姫が闇に飲まれているかはわからない。
だが、アレゼルは可能性を全て消すつもりなのだと、クレマンティーヌは理解した。
アリスは自室に引きこもり、ヒイラギの遺体に抱きつき泣き続けている。
ローレルとアロマティカスの言葉にも耳を貸さず、強固な結界魔法で自室を封鎖し、部屋には誰も入ることができない。
「クレア! ここにいたの!」
「アニスかい? 進展があったのかね?」
「無理。姉様の結界魔法は解けない。しくじった。まさか姉様が、転移で直接自室に戻るなんて! クレアなら結界を破れるでしょ! 姉様は身重なんだよ!」
「破れるには破れるが、それで転移されたらどうしようもないさね」
「結界を破った直後に、私たちでなんとかする!」
力強く言い放つアニスの姿から溢れ出る輝かしい魔力。
まだ未熟だが、いずれ自分を凌駕するかもしれないと、クレマンティーヌは感じた。
「わかったさね。結界を破ったら後は任せる。それでいいかね?」
アニスは一瞬微笑み、先に行って待っていると走り出す。
アリス姫の部屋の前にはアリス姫に声をかけ続け、結界魔法を破るべく、力を合わせていた7人の宮廷魔術師見習いが揃っている。
「アリス姫様! お願い申し上げます! お開けくだされ!」
「御身をお大事に! このままではお腹の子に障りますぞ!」
ローレルの叫びとアロマティカスの説得が耳に届く。
チャービル、ディル、タイム、フェンネル、マツバ、アニスが懸命に魔力を練っている。
そんな様子を目の当たりにしたクレマンティーヌは、全てが遅かったと悟る。
「開けるさね」
アリス姫の部屋の扉の前に立つと、クレマンティーヌは神聖魔法で結界を破った。
なだれ込む魔女たちが見たのは流産したアリスと、目覚めていないが肉塊ではないヒイラギの姿。
「ねえ……さま……」
アニスは絶句する。これが、あの心優しい姉の笑顔なのかと。
(己の子を媒体に、ヒイラギの魂と肉体を修復した……?)
恐るべき事実に気づいたアニスはアリスに駆け寄り、両肩に手を置いて揺さぶる。
「姉様! アリス姉様! 私です、アニスです!」
けれど反応がない。
まるで人形のようなアリスに恐怖を覚えつつも、アニスは揺さぶり続ける。
焦点の合わない瞳で虚空を見つめ、アリスはヒイラギに手を伸ばした。
壊れてしまったアリスを見て絶句する魔女たち。
みんなを尻目に、虚空を見つめたままアリスが動き出す。
「何をする気さね?」
クレマンティーヌの問いに、アリスは嗤う。
「決まってるわ先生。ブロッケンたちを殺しに行くの」
「少し……休むがいい」
クレマンティーヌはアリスに睡眠魔法をかけた。
「アリス姫様……」
崩れ落ちるアリスを、ローレルとアロマティカスが抱えていく。
ヒイラギの遺体が肉塊ではなくなっているのを衛兵が見て、慌てて王に報告しに行ったのか、はたまた単にアリス姫の部屋が開いたから報告に行ったのかはわからない。
アノス王がやってきたのはそれからすぐのことだった。
「クレマンティーヌ。アリスを幽閉せねばなるまい。頼めぬか?」
「お父様! 何を言ってるのです!」
アニスが瞬時に反論する。
「アニス! わかっているはずだ! アリスは心が壊れ、禁忌を犯した! この事実は知られてはならん! ディンレル王国の評判失墜を怖れるのではない! 魔女に対する恐怖を人々が抱かない為だ!」
「ならば幽閉ではなく、対話で正気に戻し、根気強く向き合うべきです! お父様が魔女に対する恐怖をお持ちでしたら、私が、私たちが引き受けましょう! ブロッケンたちについても、私たち魔女にお任せください! ガーデリアに赴き、今回の件の首謀者を暴いてみせます!」
「うぬう! 我が娘ながら、何たる口の聞き方! 余が王なのだ! ええい! 魔女をリュンカーラから追放する! 但し! クレマンティーヌに関しては、アリスを幽閉する相応しき結界を張るまで猶予とする!」
「はあああああああああ? ふざけんな⁉」
踵を返すアノス王へ暴れようとするアニスを、クレマンティーヌは制止した。
「承知しました陛下。して、追放場所はどこへ?」
「クレマンティーヌに任せる」
そう呟いてアノス王は立ち去った。
先生! と叫ぶ弟子たちに目を向け、クレマンティーヌは嘆息する。
「陛下は私たちに好き勝手動いて、この陰謀を暴いてくれと頼んだのさね。パルパティーンの陰謀を防いだように」
「先生、ならばアリス様と兄様も……」
マツバが囁く。
「いや、今の姉様では想定外が起きるかもしれない。クレア、絶対に安全な幽閉場所をお願い。私の魔力を使っても構わないから」
アニスは明るく告げた。
「ちょっ⁉ 今の陛下の言葉の裏に、そういう意図があるって気づいてたの? アニスのくせに」
「マジで、アニスと陛下のガチゲンカまで始まってしまうかと焦ったわ。アニスがリュンカーラを、火の海にすると思っちゃったよ」
「って! ディル! チャービル! 一言多い! 私だってそのくらいわかるって。もう15歳なんだし」
プンスカするアニスに場が少し和んだ。
「それで先生。アリス姫様は幽閉しちゃうの?」
「可哀想だよ……」
「タイム、フェンネル。それがアリスに一番いい。アリスには落ち着かせる時間が必要だ。誰にも開けられず、邪な言葉も耳にせず、傷つけられないように。……そうさね、私かアニスの魔力だけでしか開けられないように組み立てるとしようかね」
クレマンティーヌはアリスの部屋に結界の術式を発動させ、アニスも魔力を加えていく。
「向かうのはガーデリア領……ですよね先生。ですが……」
「アリス姫様を1人にしておくのは気が引けます」
「ローレル、アロマティカス。気持ちはわかるさね。ただ、ここにいてもやれることはないねえ」
クレマンティーヌが告げると、8人の魔女たちは力強く頷く。
必ず解決してみせると気合いを入れて。
こうして、アニスたちはガーデリア領へと旅立った。
直後、アレゼルがアリスを殺すべく侵入を試みる。
(クレマンティーヌの結界を破ることは出来ぬか。楽観主義も、ここまでくると頭を抱えてしまう。……頼んだぞ9人の魔女よ。こうなれば必ずや状況をひっくり返せ)
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【作者より、感謝を込めて】
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そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。
本当に、ありがとうございます。
【これまでの主な実績】
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小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得
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