聖女は世界を愛する

編端みどり

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9.お祭り騒ぎふたたび

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「聖女様! 素晴らしい祈りでしたわ!」

シスターコリンナが、嬉しそうに笑う。わたしには悪魔の笑みにしか見えない。さっきのお兄さんも追い出されたから、周りは敵しか居ないと思った方がいい。なぜか身体がちゃんと動いて、話ができるから、これなら、いけるのでは?!

「おなか……」

そう言いかけてシスターコリンナを見ると、わたしを睨みつけている。んー、ここでごはん要求したらまた鞭打ちかも。怪我は治ったけど、あれ痛いからヤダ。

「シスターコリンナのご指導のおかげです」

とりあえず、あのラスボスの機嫌をとろう。なぜかわからないが、空腹が限界だったはずなのに元気になっているし、ちょっと余裕が出てきた。

「そうでしょう! やはりわたくしの指導は正しいのですわっ!」

いや、正しくねーよ。いい加減にしろよこのババア。しかし、コイツはわたしの敵だが、今はまだ戦う力はないから、逆らうのは得策じゃない。

「聖女様、お祈りをありがとうございます。お食事を拒否されているとのことですが、そろそろなにかお召し上がりになりませんか?」

あ、さっきの優しそうなおじさんだ。返事したいけどしゃべったらダメなんかな? ちらっとシスターコリンナの顔色を伺う。

「聖女様、お食事はいかがですか?」

「いただきます。お願いします!」

シスターコリンナが、なにやら指示を飛ばすと、スープと、パンがきた! やっと食べられる!

「お召し上がりください」

「いただきます」

数日ぶりに食べたスープと、パンはとっても薄くてとっても固かったけど、いままででいちばんおいしかった。

その日はお祭り騒ぎで、わたしは一睡も出来なかった。そして、朝になると……

「おはようございます。聖女様。お祈りのお時間です。お支度を」

はい、もう聞き飽きましたこのセリフ!!!
しかし、今のわたしは無敵だ! 身体が動く!

「かしこまりました。よろしくお願いします」

はじめてこの部屋から出る。なんかきれいな服も着せられた。傷跡とかも全然ない! 神様ありがとー! あ、昨日のお兄さんもいるんだ。それだけで嬉しいなぁ。でも、会話したら多分アウトよね。仕方ない、ちらっと見るだけにしよう。

「聖女様たるもの、キョロキョロせずにまっすぐ前を見て歩きなさい」

やべ、また鞭打ちですか。

「お祈りが終わってから懲罰です」

なるほど、いま鞭跡とかあるとヤバいってことね。こいつマジで屑だな。ところで、お祈りのやり方はあのお兄さんが教えてくれたけど、みんなの前でも同じ祈り方で良いのかな? 余計なこと聞いて、鞭きたらイヤだし、どうしよう。

「さあ! 聖女様の晴れ舞台ですわ!!!」

まるで自分の晴れ舞台のように、先にドア開けて進みやがったんですけど! なんなのあの女!

「昨日と同じ祈り方で問題ありません」

激しく開くドアの音に紛れて、私にしか聞こえない声で優しくお兄さんがつぶやいた。

「神様、魔物がいなくなりますように」

なにを祈れば良いかわからないし、昨日と同じ内容を祈ってみる。

「おお! なんとまぶしい光!!!」

「そうでしょう! 素晴らしいですわ聖女様!」

うるさいですわ、鞭女。おっと、余裕出てきたら素が出そうだ。あの女はシスターコリンナ、敵っと。さて、そろそろ状況を把握していかないと。まず、周りを見て……ほぼ敵だよね。味方は……あのお兄さんは優しかったしカッコ良かったけど、完全な味方かは分からんな。ひとまず味方ゼロと思って動くことにするか。

わたしは、いつまでもこんなとこにいるつもりはない。みんなの歓声を聞きながら、どうやってここから逃げるか、その事だけを考えていた。
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