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番外編
10.スラムに行ってみよう
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「ん、美味かった。愛梨沙は休んでな。片付けするからよ」
「……今日はもう離れたくない。片付け一緒にやろ。ズルしていい?」
「ああ、良いぜ。スラムの事、気になってんだろ?」
「ニックは、なんでもお見通しだね……」
そう言って、重ねた食器に浄化をかける。ついでにわたしたちにもかけて、ニックにべったりくっつく。もう今日は、離れたくない。
「なぁ、愛梨沙。愛梨沙は何を後悔してる?」
「……もっと早く、スラムに行けば死なないで済んだ人居るんじゃないかって、どうしても思っちゃう……」
「愛梨沙が、スラムの事を知ったのはオレが教えたからだよな?」
「……うん」
「あの時点からなら、死人はひとりも出てねぇぞ」
「……え?」
「愛梨沙がこうなる事は分かってて、癒すの待てって言ったのはオレだからな。対策はしてある」
「ど、どういうこと?!」
「今からスラムに行って教えてやるよ。ただし、行った先に居る男とはあんま話すな。オレの手を繋いで、絶対離すなよ?」
ニックはそれだけ言うと、わたしの手をしっかり握って瞬間移動をかけた。
「……よぉ、様子はどうだ?」
「おかげさまでみんな元気になったよ。食料まで大量にあるからね。あの野菜をちゃんと育てたら、飢える者も居なくなるだろう」
だ、誰?! 真っ白な髪の、ものすごい美少年が居ますけど?!
「あなたが愛梨沙さんだね。ここで世話役をしているルネと申します。この度は、我々を救って下さってありがとうございます」
「……いや、あの、わたしではなくて……」
「ああ、コイツは知ってるから問題ねぇよ。愛梨沙の魔道具で、部屋も音漏れや覗き見出来ねぇように対策してあるから、バレたとしたらコイツのせいだな」
「恩を仇で返したりしないよ。それに、ニックの怒りを買うのは怖いからね。僕だって命は惜しいんだ」
「オレと同じくらい強いくせに何言ってやがる」
「今の君には勝てないよ。相手の力量は見極められるんだ。もともと強かったのに、どうやったらそんなに強くなる訳?」
どういうこと?! パニックになっているわたしに、ニックが優しく微笑みかける。
「愛梨沙にスラムの話をした日の夜に、愛梨沙が寝てからスラムに来て様子を確認したんだ。コイツに魔道具預けて愛梨沙が癒すまでは死人を出すなって言ったんだよ」
「ニックが僕たちを助けてくれるのは2度目だけど、まさか癒しの魔道具なんて貴重な物を大量に持ってくるとは思わなかったよ」
「愛梨沙が作ったものでオレは何もしてねぇけどな」
「……ど、どういうこと?! あの日、騎士団で使いたいからって癒しの魔道具100個くらい作ったよね?! それは、スラムに持っていく為だったの?」
「ああ、愛梨沙をスラムに連れてきたら迷わず癒しちまうと思ったから連れてこれねぇけど、死人出たら絶対気にするだろ? 愛梨沙が来るまで病人や怪我人が保てば良いなら魔道具で良いし、コイツは住民を全員把握してるから間違いなく全員生かしてくれる」
「本当に、感謝しているよ」
「オレらが手助けすんのはここまでだ。あとはお前らの責任だからな」
「分かってる。もうスラムなんて言わせない。今後はみんなで協力して生きていくよ」
「あの国王は、曲者だぞ」
「……ふふ、国王の弱点は分かってるからね。必ず自治権のある街として認めさせてみせるよ」
「……今日はもう離れたくない。片付け一緒にやろ。ズルしていい?」
「ああ、良いぜ。スラムの事、気になってんだろ?」
「ニックは、なんでもお見通しだね……」
そう言って、重ねた食器に浄化をかける。ついでにわたしたちにもかけて、ニックにべったりくっつく。もう今日は、離れたくない。
「なぁ、愛梨沙。愛梨沙は何を後悔してる?」
「……もっと早く、スラムに行けば死なないで済んだ人居るんじゃないかって、どうしても思っちゃう……」
「愛梨沙が、スラムの事を知ったのはオレが教えたからだよな?」
「……うん」
「あの時点からなら、死人はひとりも出てねぇぞ」
「……え?」
「愛梨沙がこうなる事は分かってて、癒すの待てって言ったのはオレだからな。対策はしてある」
「ど、どういうこと?!」
「今からスラムに行って教えてやるよ。ただし、行った先に居る男とはあんま話すな。オレの手を繋いで、絶対離すなよ?」
ニックはそれだけ言うと、わたしの手をしっかり握って瞬間移動をかけた。
「……よぉ、様子はどうだ?」
「おかげさまでみんな元気になったよ。食料まで大量にあるからね。あの野菜をちゃんと育てたら、飢える者も居なくなるだろう」
だ、誰?! 真っ白な髪の、ものすごい美少年が居ますけど?!
「あなたが愛梨沙さんだね。ここで世話役をしているルネと申します。この度は、我々を救って下さってありがとうございます」
「……いや、あの、わたしではなくて……」
「ああ、コイツは知ってるから問題ねぇよ。愛梨沙の魔道具で、部屋も音漏れや覗き見出来ねぇように対策してあるから、バレたとしたらコイツのせいだな」
「恩を仇で返したりしないよ。それに、ニックの怒りを買うのは怖いからね。僕だって命は惜しいんだ」
「オレと同じくらい強いくせに何言ってやがる」
「今の君には勝てないよ。相手の力量は見極められるんだ。もともと強かったのに、どうやったらそんなに強くなる訳?」
どういうこと?! パニックになっているわたしに、ニックが優しく微笑みかける。
「愛梨沙にスラムの話をした日の夜に、愛梨沙が寝てからスラムに来て様子を確認したんだ。コイツに魔道具預けて愛梨沙が癒すまでは死人を出すなって言ったんだよ」
「ニックが僕たちを助けてくれるのは2度目だけど、まさか癒しの魔道具なんて貴重な物を大量に持ってくるとは思わなかったよ」
「愛梨沙が作ったものでオレは何もしてねぇけどな」
「……ど、どういうこと?! あの日、騎士団で使いたいからって癒しの魔道具100個くらい作ったよね?! それは、スラムに持っていく為だったの?」
「ああ、愛梨沙をスラムに連れてきたら迷わず癒しちまうと思ったから連れてこれねぇけど、死人出たら絶対気にするだろ? 愛梨沙が来るまで病人や怪我人が保てば良いなら魔道具で良いし、コイツは住民を全員把握してるから間違いなく全員生かしてくれる」
「本当に、感謝しているよ」
「オレらが手助けすんのはここまでだ。あとはお前らの責任だからな」
「分かってる。もうスラムなんて言わせない。今後はみんなで協力して生きていくよ」
「あの国王は、曲者だぞ」
「……ふふ、国王の弱点は分かってるからね。必ず自治権のある街として認めさせてみせるよ」
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