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5.幸せは自分で掴む
「ルリィおかえり」
「ただいま」
「ルナに後始末をしてもらっている。ルリィの物は全てこの部屋に運んでいる。他にも欲しい物があれば……」
必死でわたくしの機嫌を取ろうとする姿は、父と同じ。だけど……。
「欲しいものは手に入ったわ。裏切らない、わたくしを愛してくれるお父様が欲しかったの」
「ルリィ……!」
もう良いわよね。お父様と呼んでも良いわよね。母と呼ばず、お母様と呼んでも良いわよね。祖父と呼ばず、お祖父様と甘えても構わないわよね。
「お母様とわたくしの為に異国の地に来てくれて、命がけでお祖父様に訴えてくれたお父様がいるから。わたくしはもう、なにもいらないの。お母様が助かったのも、お父様のおかげ。お祖父様とお母様とお父様がいれば、わたくしは幸せなの。今まで信じなくてごめんなさい。わたくしと、家族になって下さい。これからはお父様と呼んでも良いですか?」
「ルリィ……!」
わたくしの名を呼びながら、ボロボロと涙をこぼすお父様。12歳になった時、お父様の子だと教えられたわ。見知らぬ男の父と言われても、受け入れられなかった。
だから頑なに、父を信じようとしてしまったのだろう。
だけどお父様は、何度わたくしが拒絶しても必死で歩み寄ろうとしてくれた。
お母様もそう。信じられないと罵倒しても、わたくしを産んで良かったんだと言ってくれた。姿を消す時も、一緒に行こうと言ってくれた。けど父を信じようとしたわたくしは、お母様を拒絶してしまった。
お母様が姿を消しても、お父様はわたくしを守ってくれた。わたくしが間違った事をすればきちんと叱ってくれた。色々失敗するわたくしに、たくさんの事を教えてくれた。
あの頃のわたくしは、それを鬱陶しいと拒絶してしまった。それでもお父様は、こっそりとわたくしを守ってくれていた。
今思えば、父に叱られたり、なにかを教わった記憶は一切ない。
あの男は、父ではなかったのだ。
「お父様、内緒のお願いがあるの」
「内緒? 悪い事はしないぞ」
「酷いわお父様。わたくしが悪い事をすると思ってるの?」
「すまん。今のは失言だった。そんな事、思ってないよ」
お父様は笑いながら頭を撫でてくれた。
あったかい。こういうのが欲しかった。
あの男なら、こんな顔をすれば必死で媚を売ってくるだけだ。頭なんて撫でてくれない。幼い頃からずっとそう。頭を撫でられたり、抱きしめられた記憶なんてない。口だけ、言葉だけはわたくしを大事だと言ってくれたけど、わたくしの後ろにあるお祖父様のお金が大事だっただけなのだろう。
お父様は違う。嬉しそうにわたくしのお願いを聞いてくれる。悪い事はダメだと、ちゃんと諭してくれる。
命がけで、わたくしを守ってくれる。だからきっと、今回も助けてくれるわ。
「もし今のお父様があの頃に戻れたら、どうやってお祖父様を説得する? あの頃のお祖父様は政敵だらけだったのでしょう?」
「諦めるとは思わないんだね」
「思わないわ。お父様はお母様が大好きでしょ?」
「ああ、その通り。今の俺があの頃に戻ったなら、まず敵を……」
嬉しそうに話してくれるお父様。
やっぱりお父様は凄い。わたくし達も必死で策を練っていた。でも、お父様みたいに見事な案は出なかったわ。
「やっぱりお父様は凄いわ! その方法なら、お祖父様も納得して下さる。わたくし、好きな殿方がいるの。お父様とお母様みたいに身分が違うの。だから協力して下さいな」
鳩が豆鉄砲を喰らったような顔をしたお父様が、相手は誰だ! と叫んだ。
end
「ただいま」
「ルナに後始末をしてもらっている。ルリィの物は全てこの部屋に運んでいる。他にも欲しい物があれば……」
必死でわたくしの機嫌を取ろうとする姿は、父と同じ。だけど……。
「欲しいものは手に入ったわ。裏切らない、わたくしを愛してくれるお父様が欲しかったの」
「ルリィ……!」
もう良いわよね。お父様と呼んでも良いわよね。母と呼ばず、お母様と呼んでも良いわよね。祖父と呼ばず、お祖父様と甘えても構わないわよね。
「お母様とわたくしの為に異国の地に来てくれて、命がけでお祖父様に訴えてくれたお父様がいるから。わたくしはもう、なにもいらないの。お母様が助かったのも、お父様のおかげ。お祖父様とお母様とお父様がいれば、わたくしは幸せなの。今まで信じなくてごめんなさい。わたくしと、家族になって下さい。これからはお父様と呼んでも良いですか?」
「ルリィ……!」
わたくしの名を呼びながら、ボロボロと涙をこぼすお父様。12歳になった時、お父様の子だと教えられたわ。見知らぬ男の父と言われても、受け入れられなかった。
だから頑なに、父を信じようとしてしまったのだろう。
だけどお父様は、何度わたくしが拒絶しても必死で歩み寄ろうとしてくれた。
お母様もそう。信じられないと罵倒しても、わたくしを産んで良かったんだと言ってくれた。姿を消す時も、一緒に行こうと言ってくれた。けど父を信じようとしたわたくしは、お母様を拒絶してしまった。
お母様が姿を消しても、お父様はわたくしを守ってくれた。わたくしが間違った事をすればきちんと叱ってくれた。色々失敗するわたくしに、たくさんの事を教えてくれた。
あの頃のわたくしは、それを鬱陶しいと拒絶してしまった。それでもお父様は、こっそりとわたくしを守ってくれていた。
今思えば、父に叱られたり、なにかを教わった記憶は一切ない。
あの男は、父ではなかったのだ。
「お父様、内緒のお願いがあるの」
「内緒? 悪い事はしないぞ」
「酷いわお父様。わたくしが悪い事をすると思ってるの?」
「すまん。今のは失言だった。そんな事、思ってないよ」
お父様は笑いながら頭を撫でてくれた。
あったかい。こういうのが欲しかった。
あの男なら、こんな顔をすれば必死で媚を売ってくるだけだ。頭なんて撫でてくれない。幼い頃からずっとそう。頭を撫でられたり、抱きしめられた記憶なんてない。口だけ、言葉だけはわたくしを大事だと言ってくれたけど、わたくしの後ろにあるお祖父様のお金が大事だっただけなのだろう。
お父様は違う。嬉しそうにわたくしのお願いを聞いてくれる。悪い事はダメだと、ちゃんと諭してくれる。
命がけで、わたくしを守ってくれる。だからきっと、今回も助けてくれるわ。
「もし今のお父様があの頃に戻れたら、どうやってお祖父様を説得する? あの頃のお祖父様は政敵だらけだったのでしょう?」
「諦めるとは思わないんだね」
「思わないわ。お父様はお母様が大好きでしょ?」
「ああ、その通り。今の俺があの頃に戻ったなら、まず敵を……」
嬉しそうに話してくれるお父様。
やっぱりお父様は凄い。わたくし達も必死で策を練っていた。でも、お父様みたいに見事な案は出なかったわ。
「やっぱりお父様は凄いわ! その方法なら、お祖父様も納得して下さる。わたくし、好きな殿方がいるの。お父様とお母様みたいに身分が違うの。だから協力して下さいな」
鳩が豆鉄砲を喰らったような顔をしたお父様が、相手は誰だ! と叫んだ。
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