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20.王太子【ロバート視点1】
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半月後、王太子殿下が直接訪ねてきた。
うちの領地は王都から馬車で半月、馬を使っても1週間はかかる。おそらく報告を受けてすぐに王太子殿下が動かれたのだろう。王太子殿下とガルシア殿下は仲が良い。両国の関係を更に強固にする為に王太子殿下が適任だったのだ。さすが国王陛下、判断が早い。
王太子殿下が来て下さったおかげで、意思決定がスムーズになった。使者を送らなくても、王太子殿下に相談すればいいからな。
歓迎の宴が開かれ、和やかな雰囲気で食事は終わった。
マチルダ様は、ガルシア殿下がいらしてから明るく笑うようになられた。元気のなかったミーシャ様も最近は笑顔が増えた。
間違いなくマリアのおかげだろう。ミーシャ様はずいぶんマリアが気に入ったらしく、常に一緒にいる。
寝る時まで一緒だ。怖い思いをした王女様の慰めになるならと、マリアは出来る限りミーシャ様と過ごしている。
それ自体は喜ばしいことなのだが、せっかくマリアと仲良くなったのに夫婦の時間が取れないのは少しだけ寂しい。
だが、会うたびに私の手を握ったり、軽く肩を叩いたりしてくれるようになった。これは進歩だろう。
ジョージに子どもじゃないのだからと呆れられたが、王女様の前でマリアといちゃいちゃするわけにもいかないんだ! これが精一杯なんだ!
マリアはいつも私の事を好きだと言ってくれるし、少しだけスキンシップも増えた。
以前のようなぎくしゃくした関係ではない。夫婦として信頼関係が芽生えたと思うのだ!
本当はもっとゆっくり話したいが、王女様の件が片付くまでは無理だろう。なかなか2人で話せないので、マリアと手紙の交換をするようになった。最初は報告書のような文しか書けなかったが、最近ようやく愛の言葉も書けるようになりマリアは喜んでくれる。
寝る前の習慣になったマリアへの手紙を書いていると、ひっそりと王太子殿下が訪ねてきた。
「どうぞ」
供を連れていないので、内密の話だな。部屋に入った殿下は裏返した便せんに目を留めた。
「すまん。仕事中だったか」
「いえ。これは私的な手紙です。妻と2人になる時間が取れませんので、手紙を交換しているのです」
「そうだったのか。新婚なのに大変な仕事を任せてすまないな。この件が終わったら、ゆっくり夫婦の時間を取ってくれ」
「はっ。お気遣いありがとうございます」
「ロバートも頑張ってくれているが、マリアにも助けられているよ。マリアが王女達の信頼を得たおかげで、色々とやりやすい。そうだ、良い情報源を捕まえたらしいな。よくやった」
王太子殿下からお褒めの言葉を賜った。
ジョージの調査が終わり、王女様たちを監禁していた男達は王太子殿下の手でオキ共和国に引き渡された。
男たちに依頼した人物を確保できたので、彼等は必要なくなったからだ。
「はっ。部下が頑張ってくれました」
「うむ。存分に労ってやってくれ。尋問は済んでいるか?」
「いえ、まだです。話は聞いたのですが、一言も話さなくて……」
「やはりそうか。ロバート、今回の件の黒幕は誰だと思う?」
「聖帝国の誰かでしょうね。周辺国は関係ないと思います」
「そうだよな。俺はな、王女達を攫った奴等と監禁した奴等は別だと思っている」
「別……ですか?」
「ああ。聖帝国で令嬢が誘拐されると、ほとんどの場合は二度と帰ってくる事はない」
「それは……家を追い出されるからでは?」
「それもある。だが、そもそも誘拐された令嬢が生きて助け出される例が少ないんだよ」
「攫われてしまえば、ほぼ命を奪われているという事ですか?」
「そうだ。誘拐犯達が王女達を丁重に扱っていたのは、かなり違和感がある」
「彼らに依頼した人物は確保しています。厳しく尋問しましょう」
「俺がやるよ。ロバートには別の仕事を頼みたい。渡された報酬の額から察するに、依頼人の更に上がいるのは間違いない。王女達を探して葬りたい勢力と、王女達を監禁と称して保護しようとする勢力があるような気がするんだ。彼女達を助けるには、王女達を守ろうとする人物を調べる必要がある。しかしまぁ……他国だからやりにくい。ガルシアは婚約者がいるから堂々と介入できるが、我々には大義名分がない。とはいえ、ここまで関わって放り出したらガルシアに恨まれる」
「そうですね。ガルシア様に協力するという形を取るのがよろしいかと」
「そうだな。ガルシアはずいぶんマチルダ王女を好いているようだし、同盟国を助けるという大義名分で恩を売ろう。ロバートも同じように考えたから、先にガルシアを呼んだのだろう?」
ニヤリと王太子殿下が笑う。バレてしまったか。こうなると認めた方が良いな。
「同盟国との関係を強固にするのが我々の仕事ですから。おかげでガルシア殿下と王女様達の信頼を得られました」
「ははっ、その通りだ。堅物だったのに、ずいぶん柔軟な対応をするようになったじゃないか。マリアのおかげかな?」
うちの領地は王都から馬車で半月、馬を使っても1週間はかかる。おそらく報告を受けてすぐに王太子殿下が動かれたのだろう。王太子殿下とガルシア殿下は仲が良い。両国の関係を更に強固にする為に王太子殿下が適任だったのだ。さすが国王陛下、判断が早い。
王太子殿下が来て下さったおかげで、意思決定がスムーズになった。使者を送らなくても、王太子殿下に相談すればいいからな。
歓迎の宴が開かれ、和やかな雰囲気で食事は終わった。
マチルダ様は、ガルシア殿下がいらしてから明るく笑うようになられた。元気のなかったミーシャ様も最近は笑顔が増えた。
間違いなくマリアのおかげだろう。ミーシャ様はずいぶんマリアが気に入ったらしく、常に一緒にいる。
寝る時まで一緒だ。怖い思いをした王女様の慰めになるならと、マリアは出来る限りミーシャ様と過ごしている。
それ自体は喜ばしいことなのだが、せっかくマリアと仲良くなったのに夫婦の時間が取れないのは少しだけ寂しい。
だが、会うたびに私の手を握ったり、軽く肩を叩いたりしてくれるようになった。これは進歩だろう。
ジョージに子どもじゃないのだからと呆れられたが、王女様の前でマリアといちゃいちゃするわけにもいかないんだ! これが精一杯なんだ!
マリアはいつも私の事を好きだと言ってくれるし、少しだけスキンシップも増えた。
以前のようなぎくしゃくした関係ではない。夫婦として信頼関係が芽生えたと思うのだ!
本当はもっとゆっくり話したいが、王女様の件が片付くまでは無理だろう。なかなか2人で話せないので、マリアと手紙の交換をするようになった。最初は報告書のような文しか書けなかったが、最近ようやく愛の言葉も書けるようになりマリアは喜んでくれる。
寝る前の習慣になったマリアへの手紙を書いていると、ひっそりと王太子殿下が訪ねてきた。
「どうぞ」
供を連れていないので、内密の話だな。部屋に入った殿下は裏返した便せんに目を留めた。
「すまん。仕事中だったか」
「いえ。これは私的な手紙です。妻と2人になる時間が取れませんので、手紙を交換しているのです」
「そうだったのか。新婚なのに大変な仕事を任せてすまないな。この件が終わったら、ゆっくり夫婦の時間を取ってくれ」
「はっ。お気遣いありがとうございます」
「ロバートも頑張ってくれているが、マリアにも助けられているよ。マリアが王女達の信頼を得たおかげで、色々とやりやすい。そうだ、良い情報源を捕まえたらしいな。よくやった」
王太子殿下からお褒めの言葉を賜った。
ジョージの調査が終わり、王女様たちを監禁していた男達は王太子殿下の手でオキ共和国に引き渡された。
男たちに依頼した人物を確保できたので、彼等は必要なくなったからだ。
「はっ。部下が頑張ってくれました」
「うむ。存分に労ってやってくれ。尋問は済んでいるか?」
「いえ、まだです。話は聞いたのですが、一言も話さなくて……」
「やはりそうか。ロバート、今回の件の黒幕は誰だと思う?」
「聖帝国の誰かでしょうね。周辺国は関係ないと思います」
「そうだよな。俺はな、王女達を攫った奴等と監禁した奴等は別だと思っている」
「別……ですか?」
「ああ。聖帝国で令嬢が誘拐されると、ほとんどの場合は二度と帰ってくる事はない」
「それは……家を追い出されるからでは?」
「それもある。だが、そもそも誘拐された令嬢が生きて助け出される例が少ないんだよ」
「攫われてしまえば、ほぼ命を奪われているという事ですか?」
「そうだ。誘拐犯達が王女達を丁重に扱っていたのは、かなり違和感がある」
「彼らに依頼した人物は確保しています。厳しく尋問しましょう」
「俺がやるよ。ロバートには別の仕事を頼みたい。渡された報酬の額から察するに、依頼人の更に上がいるのは間違いない。王女達を探して葬りたい勢力と、王女達を監禁と称して保護しようとする勢力があるような気がするんだ。彼女達を助けるには、王女達を守ろうとする人物を調べる必要がある。しかしまぁ……他国だからやりにくい。ガルシアは婚約者がいるから堂々と介入できるが、我々には大義名分がない。とはいえ、ここまで関わって放り出したらガルシアに恨まれる」
「そうですね。ガルシア様に協力するという形を取るのがよろしいかと」
「そうだな。ガルシアはずいぶんマチルダ王女を好いているようだし、同盟国を助けるという大義名分で恩を売ろう。ロバートも同じように考えたから、先にガルシアを呼んだのだろう?」
ニヤリと王太子殿下が笑う。バレてしまったか。こうなると認めた方が良いな。
「同盟国との関係を強固にするのが我々の仕事ですから。おかげでガルシア殿下と王女様達の信頼を得られました」
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