25 / 35
25.策を巡らす辺境伯夫人
しおりを挟む
「ロバート様はお見合いを何度も断られているんですって。でも、真面目で誠実なお方らしいわ。キャダール王国の貴族女性は贅沢よ。わたくしなら、ロバート様に誠心誠意尽くすのに。でも、だからこそ付け入る隙があるわよね。今度ね、お父様に頼んでロバート様と会う機会を作って頂くの。うちは薔薇を輸出していてね。最近取引が増えたから会えるんじゃないかって」
その薔薇はわたくしの為にロバート様が集めて下さったものよ! フローレンス様の婚活に利用するためではないわっ!!!
落ち着いて、怒ってはダメ。わたくしの正体がバレたらリリアン様やレイモンド公爵にご迷惑がかかる。
ああでも! これだけは言わないとっ!
「残念ですが、ロバート様はご結婚なさったそうですわよ」
「そうなの?! 聞いてないわ!」
「ガルシア殿下から伺いましたので、間違いありませんわ。とても奥様を大事にしておられて、他の人が入り込む隙間はないそうですよ」
「第二夫人でも良いから嫁ぎたいのに……!」
「ロバート様は正妻一筋だそうですわ」
だから諦めて! 諦めてよっ!
「正妻を大事にしてるなんてやっぱり他国の男性が良いわ。なんとかならないかしら。ガルシア殿下もマチルダ王女をとても大事にしておられるし」
探ろうとする目にゾクリとする。フローレンス様は知ってるんだ。ガルシア殿下と、マチルダ王女が婚約していることを。
「そうなんですか? なにぶん寝たきりだったもので世情に疎くて……」
イラっとしたけど、悟られるわけにいかない。
ロバート様から頂いたブレスレットに触れると不思議と落ち着いた。そうだ! これは利用できるかもしれない。
「なら今の話は忘れて下さいな。わたくしも確証はないの。なんだか夜会で親しそうにしている気がしたものだから。いつも王女様は他国に嫁いでしまわれるし。もしそうなら羨ましいなと思ってしまったのよ。はぁー……わたくしはやっぱり徳がないのかしら」
「徳、ですか」
「そうよ。あの子達も、あんな男に引っかかっちゃって徳がないんだわ」
徳、徳、徳って……。
イライラしてきたわ。
落ち着いて、国が違えば考えも変わる。
彼女の積み上げた人生を、否定なんてできない。でも、理解する気はないわ。目的を見失ってはダメ。
「フローレンス様は徳がおありになりますわ。わたくし実は……キャダール王国に嫁ぐかもしれませんの。ロバート様ではありませんわ。まだお名前はお伝えできないのですけど、わたくしは身体が弱いので遠くに行くのは駄目だと父が反対していて……」
「その話、詳しく聞かせて頂けませんか?」
「喜んで。父と話をして、使いを送りますわ」
聖帝国は国境の警備が厳しい。入国した時のようにこっそり森を移動して味方を連れて帰るつもりだったけど、堂々と国を出られるならその方が良い。
公爵令嬢の見合いなら、外交として王や王妃が付き添っても不自然ではない。味方が誰かまだ分からない。でも、なんとなく予想はできている。あの方を密かに連れ出すのは難しい。それなら、領地にご招待する理由を作れば良い。
急いで王太子殿下にフローレンス様と合いそうな方を探して頂きましょう。フローレンス様はロバート様じゃなくても構わない。誠実で妻一筋な貴族は我が国にたくさんいる。
でもわたくしは、ロバート様じゃなきゃ駄目なの。
その薔薇はわたくしの為にロバート様が集めて下さったものよ! フローレンス様の婚活に利用するためではないわっ!!!
落ち着いて、怒ってはダメ。わたくしの正体がバレたらリリアン様やレイモンド公爵にご迷惑がかかる。
ああでも! これだけは言わないとっ!
「残念ですが、ロバート様はご結婚なさったそうですわよ」
「そうなの?! 聞いてないわ!」
「ガルシア殿下から伺いましたので、間違いありませんわ。とても奥様を大事にしておられて、他の人が入り込む隙間はないそうですよ」
「第二夫人でも良いから嫁ぎたいのに……!」
「ロバート様は正妻一筋だそうですわ」
だから諦めて! 諦めてよっ!
「正妻を大事にしてるなんてやっぱり他国の男性が良いわ。なんとかならないかしら。ガルシア殿下もマチルダ王女をとても大事にしておられるし」
探ろうとする目にゾクリとする。フローレンス様は知ってるんだ。ガルシア殿下と、マチルダ王女が婚約していることを。
「そうなんですか? なにぶん寝たきりだったもので世情に疎くて……」
イラっとしたけど、悟られるわけにいかない。
ロバート様から頂いたブレスレットに触れると不思議と落ち着いた。そうだ! これは利用できるかもしれない。
「なら今の話は忘れて下さいな。わたくしも確証はないの。なんだか夜会で親しそうにしている気がしたものだから。いつも王女様は他国に嫁いでしまわれるし。もしそうなら羨ましいなと思ってしまったのよ。はぁー……わたくしはやっぱり徳がないのかしら」
「徳、ですか」
「そうよ。あの子達も、あんな男に引っかかっちゃって徳がないんだわ」
徳、徳、徳って……。
イライラしてきたわ。
落ち着いて、国が違えば考えも変わる。
彼女の積み上げた人生を、否定なんてできない。でも、理解する気はないわ。目的を見失ってはダメ。
「フローレンス様は徳がおありになりますわ。わたくし実は……キャダール王国に嫁ぐかもしれませんの。ロバート様ではありませんわ。まだお名前はお伝えできないのですけど、わたくしは身体が弱いので遠くに行くのは駄目だと父が反対していて……」
「その話、詳しく聞かせて頂けませんか?」
「喜んで。父と話をして、使いを送りますわ」
聖帝国は国境の警備が厳しい。入国した時のようにこっそり森を移動して味方を連れて帰るつもりだったけど、堂々と国を出られるならその方が良い。
公爵令嬢の見合いなら、外交として王や王妃が付き添っても不自然ではない。味方が誰かまだ分からない。でも、なんとなく予想はできている。あの方を密かに連れ出すのは難しい。それなら、領地にご招待する理由を作れば良い。
急いで王太子殿下にフローレンス様と合いそうな方を探して頂きましょう。フローレンス様はロバート様じゃなくても構わない。誠実で妻一筋な貴族は我が国にたくさんいる。
でもわたくしは、ロバート様じゃなきゃ駄目なの。
35
あなたにおすすめの小説
幸せは、歩いて来ない。ならば、迎えに行きましょう。
緋田鞠
恋愛
【完結】 『もしも、あの時、あの決断をしていなければ』。誰しも一度くらいは、考えた事があるのではないだろうか。
不仲の夫に突き飛ばされ昏倒した事で、実加と言う名で生きた人生を思い出した男爵家の娘ミカエラ。実加もまた、夫にモラハラを受け、不幸な結婚生活を送っていた。疎遠になっていた幼馴染の公爵ダリウスとの再会をきっかけに、実加のように人生を諦めたくない、と決意したミカエラは、離婚、自立への道を歩み始める。「可愛い妹分だから」と、ミカエラを何かと気に掛けるダリウスに対し、募っていく恋心。身分差を理由に距離を置かざるを得なかった彼への想いは、ミカエラを変えていく。
《完結》金貨5000枚で売られた王太子妃
ぜらちん黒糖
恋愛
「愛している。必ず迎えに行くから待っていてくれ」
甘い言葉を信じて、隣国へ「人質」となった王太子妃イザベラ。
旅立ちの前の晩、二人は愛し合い、イザベラのお腹には新しい命が宿った。すぐに夫に知らせた イザベラだったが、夫から届いた返信は、信じられない内容だった。
「それは本当に私の子供なのか?」
あなたは私を愛さない、でも愛されたら溺愛されました。
桔梗
恋愛
結婚式当日に逃げた妹の代わりに
花嫁になった姉
新郎は冷たい男だったが
姉は心ひかれてしまった。
まわりに翻弄されながらも
幸せを掴む
ジレジレ恋物語
政略結婚だけど溺愛されてます
紗夏
恋愛
隣国との同盟の証として、その国の王太子の元に嫁ぐことになったソフィア。
結婚して1年経っても未だ形ばかりの妻だ。
ソフィアは彼を愛しているのに…。
夫のセオドアはソフィアを大事にはしても、愛してはくれない。
だがこの結婚にはソフィアも知らない事情があって…?!
不器用夫婦のすれ違いストーリーです。
氷の騎士様は実は太陽の騎士様です。
りつ
恋愛
イリスの婚約者は幼馴染のラファエルである。彼と結婚するまで遠い修道院の寄宿学校で過ごしていたが、十八歳になり、王都へ戻って来た彼女は彼と結婚できる事実に胸をときめかせていた。しかし両親はラファエル以外の男性にも目を向けるよう言い出し、イリスは戸惑ってしまう。
王女殿下や王太子殿下とも知り合い、ラファエルが「氷の騎士」と呼ばれていることを知ったイリス。離れている間の知らなかったラファエルのことを令嬢たちの口から聞かされるが、イリスは次第に違和感を抱き始めて……
※他サイトにも掲載しています
※表紙は「かんたん表紙メーカー」様で作成しました
どうぞお好きになさってください
はなまる
恋愛
ミュリアンナ・ベネットは20歳。母は隣国のフューデン辺境伯の娘でミュリアンナは私生児。母は再婚してシガレス国のベネット辺境伯に嫁いだ。
兄がふたりいてとてもかわいがってくれた。そのベネット辺境伯の窮地を救うための婚約、結婚だった。相手はアッシュ・レーヴェン。女遊びの激しい男だった。レーヴェン公爵は結婚相手のいない息子の相手にミュリアンナを選んだのだ。
結婚生活は2年目で最悪。でも、白い結婚の約束は取り付けたし、まだ令息なので大した仕事もない。1年目は社交もしたが2年目からは年の半分はベネット辺境伯領に帰っていた。
だが王女リベラが国に帰って来て夫アッシュの状況は変わって行くことに。
そんな時ミュリアンナはルカが好きだと再認識するが過去に取り返しのつかない失態をしている事を思い出して。
なのにやたらに兄の友人であるルカ・マクファーレン公爵令息が自分に構って来て。
どうして?
個人の勝手な創作の世界です。誤字脱字あると思います、お見苦しい点もありますがどうぞご理解お願いします。必ず最終話まで書きますので最期までよろしくお願いします。
偽りのの誓い
柴田はつみ
恋愛
会社社長の御曹司である高見沢翔は、女性に言い寄られるのが面倒で仕方なく、幼馴染の令嬢三島カレンに一年間の偽装結婚を依頼する
人前で完璧な夫婦を演じるよう翔にうるさく言われ、騒がしい日々が始まる
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる