3 / 55
改稿版
3.お姉様
使用人のおかげで、最後にこっそりお姉様とお会い出来ました。お姉様は、泣きながら1匹の鳥を預けて下さいました。
お姉様は、魔力を動物に変えて扱う事ができます。偵察も出来ますし、おしゃべりも出来ます。
「エルザ、この子を連れて行って。少しなら危険から守ってくれるし、おでこにエメラルドのような宝石があるでしょう? ここを押すとわたくしと話せるわ。わたくしからお話しする時は、この宝石が光るから、話せたらお話ししましょう。困った事があったらすぐ相談してね!」
「ありがとうございます。ですがこの鳥をずっと出しているのは負担でしょう?」
「毎日、魔力が100くらい減るけど大した事ないわ」
普通の人なら半分程度は魔力を消費する事になります。お姉様は魔力が高いですから、あちこちで魔力の提供を求められている筈です。
それなのに……わたくしの為にこんな鳥を用意して下さるなんて……。わたくしに……魔力があれば……お姉様にご負担をかけなくても良かったのに……。
わたくしが泣き出したら、お姉様は扉を開けて部屋を出ようとしました。
「やっぱりお父様を説得しましょう。エルザが出て行く事ないわ」
「いえ、お父様も、お母様も、お兄様も……わたくしに魔力がなければ価値がないとお考えのようですから……この家に居ても冷遇されるだけです。下手したら家の恥だと殺されますわ」
「そんな……そんな事しないわ……」
「わたくし、王妃教育で習ったのです。魔力無しでも才能を開花させる方も居る一方で、一部の貴族や王族は、魔力こそが人の価値だと考えていると。そんな人は、魔力無しの身内を容赦なく殺すそうです。今では、そのような事をしないようにと法律は変わりましたが、まだそのような価値観をお持ちの方はいらっしゃるそうですわ。特に、魔力の高い方にそのような選民思考がおありだとの事。王妃様は、魔力があろうとなかろうとそれだけで人の価値を判断するなと教えて下さいました。シモン様も王妃様からそう聞いていた筈なのに、わたくしを捨てました。シモン様は魔力無しを婚約者にするなんて王家に敵対する意思があるのかと仰いました。国王陛下や王妃様もその場にいらっしゃったのにシモン様を諌めませんでした。どんなに取り繕っても王家の本音はそうなのでしょう。わたくしが家に居れば、王家から睨まれるとなれば事故に見せかけて殺すくらいしますわ。わたくしが家に居るのはデメリットしかありません。それに、わたくし自由になりたいのですわ。幸い、王家の秘密はまだ教わっておりませんでしたから、王家から追手が来る事は無いでしょう。国から出て行けば、誰からも命を狙われる事なく暮らせます」
「……そんな……そんな考えがあるの……?」
「ええ、今では表立って言う方は居ませんが、シモン様がわたくしに婚約破棄を命じた時、意見を言って下さったのはジェラール様だけでした。親友だった筈のマリアンヌからも睨みつけられましたわ。きっとマリアンヌのお家も、うちと同じなんでしょうね。わたくしも魔力無しと言われなければ、魔力無しの方を蔑んだのかもしれません」
「そんな事ないわ。エルザはわたくしの恋人が魔力無しでも仲良くしてくれたじゃない。エルザのおかげで宰相様の助手になれたのよ。……婚約は認められないけど……」
「お姉様が、好きな方と添い遂げられれば良いなと思ってサポートしておりましたが、お父様達の本日の態度を見ると厳しいかもしれませんね。実の娘も捨てるのですから。お役に立てなくてごめんなさい。あまり長居をするとまずいので早々に姿を消しますわ。お姉様、お姉様だけはわたくしの家族で居て下さいますか?」
割り切っていたつもりなのに、お姉様の優しさに触れていたら涙が溢れて参りました。お姉様だけでも、わたくしを家族と呼んで下さるでしょうか。
「もちろんよ、エルザはわたくしの可愛い妹だもの」
そう言って、お姉様はわたくしを抱きしめて下さいました。
「そのお言葉だけで充分ですわ。お姉様のおかげで、荷物も持っていけます。恐らく、お姉様が反対しなければ着の身着のまま追い出されたでしょうから」
「あの様子だとあり得るわね。そうだ、エルザは成人したばかりだから知らないだろうけど、わたくしのお抱えの商会があるの。紹介状と地図をあげるから、そこで荷物をお金に変えると良いわ。これは、魔力がなくても荷物を入れられるブレスレットよ。わたくしが作ったものだから、お父様に取り上げられる事もないし、これから旅をするなら必要になるでしょう? お父様達は、エルザが部屋から持ち出せる物は僅かだと思ってるけど、あの部屋の物はエルザの物なんだから、全部持って行きなさい」
「お姉様……これは、プレゼントに用意されていた物でしょう?」
もうすぐ、お姉様の恋人の誕生日だった筈です。魔力無しでも使えるなんて、プレゼント用に決まっています。
「構わないわ。また作るし、彼にはこれからも会えるもの。でも、エルザにはもう会えないかもしれない……魔力なんてどうでも良いのに。わたくしも、やりたくもない仕事ばかりさせられるし……」
お姉様は、毎日のように王城で魔力を提供しています。お姉様1人で何十人分もの魔力があり、提供された魔力は、様々な事に使われております。上下水道や、台所で使う火など庶民の生活にも欠かせません。ですから、魔力の高い人はそれだけで価値があるとみなされます。
王妃様も毎日魔力を提供しております。義務ではありませんが、慣例というものもありますし、わたくしが魔力を提供出来ないと婚約破棄されても仕方ないのでしょう。
ああ……いけませんわ。なんだか気持ちが沈んでしまいます。この国に居ては、ずっとこんな気持ちのままでしょう。
気持ちを切り替えて、さっさと出て行って幸せになりましょう。お姉様も、その方が喜んで下さるわ。わたくしを気にかけて下さっているのはお姉様だけですものね。
……ああ、あとジェラール様も……ですね。わたくしの頑張りを認めて下さって嬉しかったですわ。もうお会いする事もないでしょうが、素敵な伴侶と出会える事を祈ります。
「お姉様、この鳥さんでいっぱいお話ししましょうね。わたくし、お姉様が大好きですわ」
「わたくしも、エルザが大好きよ。お願い、無理だけはしないでね」
「はい! 必ず連絡します。どうかお元気で」
お姉様は、魔力を動物に変えて扱う事ができます。偵察も出来ますし、おしゃべりも出来ます。
「エルザ、この子を連れて行って。少しなら危険から守ってくれるし、おでこにエメラルドのような宝石があるでしょう? ここを押すとわたくしと話せるわ。わたくしからお話しする時は、この宝石が光るから、話せたらお話ししましょう。困った事があったらすぐ相談してね!」
「ありがとうございます。ですがこの鳥をずっと出しているのは負担でしょう?」
「毎日、魔力が100くらい減るけど大した事ないわ」
普通の人なら半分程度は魔力を消費する事になります。お姉様は魔力が高いですから、あちこちで魔力の提供を求められている筈です。
それなのに……わたくしの為にこんな鳥を用意して下さるなんて……。わたくしに……魔力があれば……お姉様にご負担をかけなくても良かったのに……。
わたくしが泣き出したら、お姉様は扉を開けて部屋を出ようとしました。
「やっぱりお父様を説得しましょう。エルザが出て行く事ないわ」
「いえ、お父様も、お母様も、お兄様も……わたくしに魔力がなければ価値がないとお考えのようですから……この家に居ても冷遇されるだけです。下手したら家の恥だと殺されますわ」
「そんな……そんな事しないわ……」
「わたくし、王妃教育で習ったのです。魔力無しでも才能を開花させる方も居る一方で、一部の貴族や王族は、魔力こそが人の価値だと考えていると。そんな人は、魔力無しの身内を容赦なく殺すそうです。今では、そのような事をしないようにと法律は変わりましたが、まだそのような価値観をお持ちの方はいらっしゃるそうですわ。特に、魔力の高い方にそのような選民思考がおありだとの事。王妃様は、魔力があろうとなかろうとそれだけで人の価値を判断するなと教えて下さいました。シモン様も王妃様からそう聞いていた筈なのに、わたくしを捨てました。シモン様は魔力無しを婚約者にするなんて王家に敵対する意思があるのかと仰いました。国王陛下や王妃様もその場にいらっしゃったのにシモン様を諌めませんでした。どんなに取り繕っても王家の本音はそうなのでしょう。わたくしが家に居れば、王家から睨まれるとなれば事故に見せかけて殺すくらいしますわ。わたくしが家に居るのはデメリットしかありません。それに、わたくし自由になりたいのですわ。幸い、王家の秘密はまだ教わっておりませんでしたから、王家から追手が来る事は無いでしょう。国から出て行けば、誰からも命を狙われる事なく暮らせます」
「……そんな……そんな考えがあるの……?」
「ええ、今では表立って言う方は居ませんが、シモン様がわたくしに婚約破棄を命じた時、意見を言って下さったのはジェラール様だけでした。親友だった筈のマリアンヌからも睨みつけられましたわ。きっとマリアンヌのお家も、うちと同じなんでしょうね。わたくしも魔力無しと言われなければ、魔力無しの方を蔑んだのかもしれません」
「そんな事ないわ。エルザはわたくしの恋人が魔力無しでも仲良くしてくれたじゃない。エルザのおかげで宰相様の助手になれたのよ。……婚約は認められないけど……」
「お姉様が、好きな方と添い遂げられれば良いなと思ってサポートしておりましたが、お父様達の本日の態度を見ると厳しいかもしれませんね。実の娘も捨てるのですから。お役に立てなくてごめんなさい。あまり長居をするとまずいので早々に姿を消しますわ。お姉様、お姉様だけはわたくしの家族で居て下さいますか?」
割り切っていたつもりなのに、お姉様の優しさに触れていたら涙が溢れて参りました。お姉様だけでも、わたくしを家族と呼んで下さるでしょうか。
「もちろんよ、エルザはわたくしの可愛い妹だもの」
そう言って、お姉様はわたくしを抱きしめて下さいました。
「そのお言葉だけで充分ですわ。お姉様のおかげで、荷物も持っていけます。恐らく、お姉様が反対しなければ着の身着のまま追い出されたでしょうから」
「あの様子だとあり得るわね。そうだ、エルザは成人したばかりだから知らないだろうけど、わたくしのお抱えの商会があるの。紹介状と地図をあげるから、そこで荷物をお金に変えると良いわ。これは、魔力がなくても荷物を入れられるブレスレットよ。わたくしが作ったものだから、お父様に取り上げられる事もないし、これから旅をするなら必要になるでしょう? お父様達は、エルザが部屋から持ち出せる物は僅かだと思ってるけど、あの部屋の物はエルザの物なんだから、全部持って行きなさい」
「お姉様……これは、プレゼントに用意されていた物でしょう?」
もうすぐ、お姉様の恋人の誕生日だった筈です。魔力無しでも使えるなんて、プレゼント用に決まっています。
「構わないわ。また作るし、彼にはこれからも会えるもの。でも、エルザにはもう会えないかもしれない……魔力なんてどうでも良いのに。わたくしも、やりたくもない仕事ばかりさせられるし……」
お姉様は、毎日のように王城で魔力を提供しています。お姉様1人で何十人分もの魔力があり、提供された魔力は、様々な事に使われております。上下水道や、台所で使う火など庶民の生活にも欠かせません。ですから、魔力の高い人はそれだけで価値があるとみなされます。
王妃様も毎日魔力を提供しております。義務ではありませんが、慣例というものもありますし、わたくしが魔力を提供出来ないと婚約破棄されても仕方ないのでしょう。
ああ……いけませんわ。なんだか気持ちが沈んでしまいます。この国に居ては、ずっとこんな気持ちのままでしょう。
気持ちを切り替えて、さっさと出て行って幸せになりましょう。お姉様も、その方が喜んで下さるわ。わたくしを気にかけて下さっているのはお姉様だけですものね。
……ああ、あとジェラール様も……ですね。わたくしの頑張りを認めて下さって嬉しかったですわ。もうお会いする事もないでしょうが、素敵な伴侶と出会える事を祈ります。
「お姉様、この鳥さんでいっぱいお話ししましょうね。わたくし、お姉様が大好きですわ」
「わたくしも、エルザが大好きよ。お願い、無理だけはしないでね」
「はい! 必ず連絡します。どうかお元気で」
あなたにおすすめの小説
王妃の仕事なんて知りません、今から逃げます!
gacchi(がっち)
恋愛
側妃を迎えるって、え?聞いてないよ?
王妃の仕事が大変でも頑張ってたのは、レオルドが好きだから。
国への責任感?そんなの無いよ。もういい。私、逃げるから!
12/16加筆修正したものをカクヨムに投稿しました。
教養が足りない、ですって
たくわん
恋愛
侯爵令嬢エリーゼは、公爵家の長男アレクシスとの婚約披露宴で突然婚約破棄される。理由は「教養が足りず、公爵夫人として恥ずかしい」。社交界の人々の嘲笑の中、エリーゼは静かに会場を去る。
【完結】能力が無くても聖女ですか?
天冨 七緒
恋愛
孤児院で育ったケイトリーン。
十二歳になった時特殊な能力が開花し、体調を崩していた王妃を治療する事に…
無事に王妃を完治させ、聖女と呼ばれるようになっていたが王妃の治癒と引き換えに能力を使い果たしてしまった。能力を失ったにも関わらず国王はケイトリーンを王子の婚約者に決定した。
周囲は国王の命令だと我慢する日々。
だが国王が崩御したことで、王子は周囲の「能力の無くなった聖女との婚約を今すぐにでも解消すべき」と押され婚約を解消に…
行く宛もないが婚約解消されたのでケイトリーンは王宮を去る事に…門を抜け歩いて城を後にすると突然足元に魔方陣が現れ光に包まれる…
「おぉー聖女様ぁ」
眩い光が落ち着くと歓声と共に周囲に沢山の人に迎えられていた。ケイトリーンは見知らぬ国の聖女として召喚されてしまっていた…
タイトル変更しました
召喚されましたが聖女様ではありません…私は聖女様の世話係です
居候と婚約者が手を組んでいた!
すみ 小桜(sumitan)
恋愛
グリンマトル伯爵家の一人娘のレネットは、前世の記憶を持っていた。前世は体が弱く入院しそのまま亡くなった。その為、病気に苦しむ人を助けたいと思い薬師になる事に。幸いの事に、家業は薬師だったので、いざ学校へ。本来は17歳から通う学校へ7歳から行く事に。ほらそこは、転生者だから!
って、王都の学校だったので寮生活で、数年後に帰ってみると居候がいるではないですか!
父親の妹家族のウルミーシュ子爵家だった。同じ年の従姉妹アンナがこれまたわがまま。
アンアの母親で父親の妹のエルダがこれまたくせ者で。
最悪な事態が起き、レネットの思い描いていた未来は消え去った。家族と末永く幸せと願った未来が――。
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
【完結】病弱な妹に魔力を分け続け死ぬ寸前の私を、宮廷魔術師になった旧友が攫ってくれました。家族を捨てて幸せになっていいんですか?
未知香
恋愛
「あなたはもう十分楽しんだでしょう? 今度はミアーラの番よ」
膨大な魔力と知識を持ち、聖女候補とまで言われた、天才魔術師エリアーナ。
彼女は、病弱な妹ミアーラの為、家族に言われるまま自らの膨大な魔力を差し出すことにした。
「そうだ。私は健康で、今まで十分に楽しんできた。だから、あげるのは当然だ」
魔力を与え続けた結果、彼女は魔力を失い、容姿も衰え、社交界から姿を消してしまう事となった。
一方、妹ミアーラは姉から与えられた魔力を使い、聖女候補として称賛されるように。
家族の呪縛に縛られ、「今まで多くを貰いすぎていたのだ」と信じ、利用され続けるエリアーナ。
そんな彼女の前に現れたのは、かつての旧友であり宮廷魔術師となった青年だった。
ハッピーエンドです!
俺の婚約者は地味で陰気臭い女なはずだが、どうも違うらしい。
ミミリン
恋愛
ある世界の貴族である俺。婚約者のアリスはいつもボサボサの髪の毛とぶかぶかの制服を着ていて陰気な女だ。幼馴染のアンジェリカからは良くない話も聞いている。
俺と婚約していても話は続かないし、婚約者としての役目も担う気はないようだ。
そんな婚約者のアリスがある日、俺のメイドがふるまった紅茶を俺の目の前でわざとこぼし続けた。
こんな女とは婚約解消だ。
この日から俺とアリスの関係が少しずつ変わっていく。
辺境は独自路線で進みます! ~見下され搾取され続けるのは御免なので~
紫月 由良
恋愛
辺境に領地を持つマリエ・オリオール伯爵令嬢は、貴族学院の食堂で婚約者であるジョルジュ・ミラボーから婚約破棄をつきつけられた。二人の仲は険悪で修復不可能だったこともあり、マリエは快諾すると学院を早退して婚約者の家に向かい、その日のうちに婚約が破棄された。辺境=田舎者という風潮によって居心地が悪くなっていたため、これを機に学院を退学して領地に引き籠ることにした。
魔法契約によりオリオール伯爵家やフォートレル辺境伯家は国から離反できないが、関わり合いを最低限にして独自路線を歩むことに――。
※小説家になろう、カクヨムにも投稿しています