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改稿版
13.バレた
「エルザ嬢、彼は誰だ? いきなり女性の部屋に転移して来るなんて危険な男ではないのか?」
「ああ?! お前こそ誰だよ?!」
「ま、マックス、不敬になるから!」
「……不敬? なるほどな。彼女は私の師匠の娘ですよ。誰と思ってるか知りませんが、貴方こそ女性の部屋に侵入して、どのような御用件ですか?」
「マックス、ごめんなさい」
「エル……まさか……」
「わたくしの正体、バレてしまったわ」
「何やってんだよ?! さっきも俺がエルザって言ったちまったけど、認めなきゃどうにかなっただろ?!」
「だって、誤魔化しきれなかったんだもの!」
「はぁぁ……どうすんだよ! 逃げるか?」
「大丈夫、わたくしの気持ちはお伝えしたから」
「シモン様は自分の魔力が減ったからエルザを婚約者から外したのをめちゃくちゃ後悔してるって聞いたぜ。なぁ、逃げるならさっさと逃げようぜ。翻訳の仕事くれぇなら俺が仲介してやるからよ」
「この方はジェラール様よ。通訳のお仕事でたまたま会っただけよ。わたくしの正体に気が付いて、確かめに来られたの。ジェラール様は、悪い人ではないわ。以前お話したでしょ?」
「え?! あの最低最悪なシモン様じゃねぇのか?!」
「不敬! 不敬になるからっ!」
「この部屋で起きた事は不敬とはしない。先ほど名に誓った。だから、彼が何を言っても不敬ではない。安心してくれ。改めて名乗ろう、ジェラール・アルベルト・モワナールだ。モワナール国の王子をしている。失礼だが、名を聞いてもよいだろうか?」
「マックスです。冒険者をしてます。先程は失礼いたしました。不敬とならないなら申し上げますけど、もうエルザに関わらないで下さい。エルザはようやく平民の暮らしに慣れてきたところなのです。貴族に戻されても、魔力がない彼女は迫害され都合の良いように利用されるでしょう。監禁されて仕事だけさせられる日々が幸せですか? シモン様の婚約者をしていた頃の彼女の睡眠時間は3時間だそうですよ。今だと魔力なしなんだからと更に酷使されるでしょうね。寝る事すら出来ず衰弱して倒れる未来が想像出来ますよ。今は睡眠時間も確保でき、生活費も自分で稼げています。彼女を貴族に戻すつもりなら俺は全力で反対します」
「睡眠時間が……3時間だと?」
「ええ、シモン様やエルザの親が散々仕事を押し付けていたそうですよ」
「そうか……僕は何も知らずに失礼な事を……申し訳なかった」
そう言って、ジェラール様は頭を下げてくださいました。王族である彼が、平民の私達に頭を下げるなど、あってはならない事なのに。
「ジェラール様、頭を上げて下さい。王族である貴方がわたくしたち平民に頭を下げるなどあってはなりませんわ」
「そうっすよ。シモン様にはムカついてますけどジェラール様は何も悪くありません。エルザも言ってました。ジェラール様が庇ってくれたおかげで、冷静になれた。だから、シモン様に縋ったりせず上手く家を抜け出せたって。エルザが今こうやって笑っていられるのはジェラール様のおかげですよ」
「マックス殿がエルザ嬢を助けてくれたからだろう。僕は間に合わなかった。貴方が居なければ、エルザ嬢は平民として暮らしていけなかっただろう」
「俺は仕事をしただけです。エルザと関わったのも、彼女から報酬を得たからに過ぎません。ジェラール様みてぇに、無条件で助けるなんて出来ません。ジェラール様みたいな人がエルザの婚約者なら良かったのに」
「マックス、ジェラール様には……」
言いかけて、止まってしまいます。ジェラール様にナタリー様の話をするのは良くないです。辛い事を思い出させてしまいます。マックスの悲しそうな顔を思い出し、黙ってしまいました。
「僕は婚約者が居たんだ。けど、彼女はもうこの世に居ない」
「あー……余計な事言ってすいませんでした」
「良いんだ。気にしないでくれ。僕こそ申し訳なかった。エルザ嬢はシモンを心から愛している様子だったから、シモンの側に居るのが幸せだと思ったんだ」
「あの国は魔力なしへの扱いがエグい。王子ならそんくらい知っとけよ。王族の婚約者だったエルザが魔力なしになるなんて、相当ショックだったと思うぜ。それなのに、婚約者を慰めずに切り捨てるような男、愛想が尽きて当然だろ」
「マックス! 言葉遣い!」
「不敬はねぇってさっき言ったじゃん。まさか王族ともあろう方が前言撤回しねぇだろ」
「その通りだ。言葉遣いはいつもの通りにしてくれ。冒険者はそもそも敬語を使わないからな。エルザ嬢、僕のせいで不安にさせてすまない。マックス殿が慌てて来られた時、貴方のお姉様の名前を言っていた。お姉様に相談する程、僕の事で不安にさせたんだろう? 確かに、シモンと仲の良い僕が貴方に近づけば連れ戻されると思って当然だ。僕は愛が冷めることもあると失念していた。貴方の事は、決して誰にも言わない。約束するよ。だから、マックス殿も安心して欲しい」
「良かったな、とりあえずバレなくて済みそうで。それにしても、ジェラール様が誤解するくらいエルザはシモン様に尽くしてたのか?」
「今思えばバカバカしいけどね。なんであんな男に尽くしたのかしら?」
「ああ?! お前こそ誰だよ?!」
「ま、マックス、不敬になるから!」
「……不敬? なるほどな。彼女は私の師匠の娘ですよ。誰と思ってるか知りませんが、貴方こそ女性の部屋に侵入して、どのような御用件ですか?」
「マックス、ごめんなさい」
「エル……まさか……」
「わたくしの正体、バレてしまったわ」
「何やってんだよ?! さっきも俺がエルザって言ったちまったけど、認めなきゃどうにかなっただろ?!」
「だって、誤魔化しきれなかったんだもの!」
「はぁぁ……どうすんだよ! 逃げるか?」
「大丈夫、わたくしの気持ちはお伝えしたから」
「シモン様は自分の魔力が減ったからエルザを婚約者から外したのをめちゃくちゃ後悔してるって聞いたぜ。なぁ、逃げるならさっさと逃げようぜ。翻訳の仕事くれぇなら俺が仲介してやるからよ」
「この方はジェラール様よ。通訳のお仕事でたまたま会っただけよ。わたくしの正体に気が付いて、確かめに来られたの。ジェラール様は、悪い人ではないわ。以前お話したでしょ?」
「え?! あの最低最悪なシモン様じゃねぇのか?!」
「不敬! 不敬になるからっ!」
「この部屋で起きた事は不敬とはしない。先ほど名に誓った。だから、彼が何を言っても不敬ではない。安心してくれ。改めて名乗ろう、ジェラール・アルベルト・モワナールだ。モワナール国の王子をしている。失礼だが、名を聞いてもよいだろうか?」
「マックスです。冒険者をしてます。先程は失礼いたしました。不敬とならないなら申し上げますけど、もうエルザに関わらないで下さい。エルザはようやく平民の暮らしに慣れてきたところなのです。貴族に戻されても、魔力がない彼女は迫害され都合の良いように利用されるでしょう。監禁されて仕事だけさせられる日々が幸せですか? シモン様の婚約者をしていた頃の彼女の睡眠時間は3時間だそうですよ。今だと魔力なしなんだからと更に酷使されるでしょうね。寝る事すら出来ず衰弱して倒れる未来が想像出来ますよ。今は睡眠時間も確保でき、生活費も自分で稼げています。彼女を貴族に戻すつもりなら俺は全力で反対します」
「睡眠時間が……3時間だと?」
「ええ、シモン様やエルザの親が散々仕事を押し付けていたそうですよ」
「そうか……僕は何も知らずに失礼な事を……申し訳なかった」
そう言って、ジェラール様は頭を下げてくださいました。王族である彼が、平民の私達に頭を下げるなど、あってはならない事なのに。
「ジェラール様、頭を上げて下さい。王族である貴方がわたくしたち平民に頭を下げるなどあってはなりませんわ」
「そうっすよ。シモン様にはムカついてますけどジェラール様は何も悪くありません。エルザも言ってました。ジェラール様が庇ってくれたおかげで、冷静になれた。だから、シモン様に縋ったりせず上手く家を抜け出せたって。エルザが今こうやって笑っていられるのはジェラール様のおかげですよ」
「マックス殿がエルザ嬢を助けてくれたからだろう。僕は間に合わなかった。貴方が居なければ、エルザ嬢は平民として暮らしていけなかっただろう」
「俺は仕事をしただけです。エルザと関わったのも、彼女から報酬を得たからに過ぎません。ジェラール様みてぇに、無条件で助けるなんて出来ません。ジェラール様みたいな人がエルザの婚約者なら良かったのに」
「マックス、ジェラール様には……」
言いかけて、止まってしまいます。ジェラール様にナタリー様の話をするのは良くないです。辛い事を思い出させてしまいます。マックスの悲しそうな顔を思い出し、黙ってしまいました。
「僕は婚約者が居たんだ。けど、彼女はもうこの世に居ない」
「あー……余計な事言ってすいませんでした」
「良いんだ。気にしないでくれ。僕こそ申し訳なかった。エルザ嬢はシモンを心から愛している様子だったから、シモンの側に居るのが幸せだと思ったんだ」
「あの国は魔力なしへの扱いがエグい。王子ならそんくらい知っとけよ。王族の婚約者だったエルザが魔力なしになるなんて、相当ショックだったと思うぜ。それなのに、婚約者を慰めずに切り捨てるような男、愛想が尽きて当然だろ」
「マックス! 言葉遣い!」
「不敬はねぇってさっき言ったじゃん。まさか王族ともあろう方が前言撤回しねぇだろ」
「その通りだ。言葉遣いはいつもの通りにしてくれ。冒険者はそもそも敬語を使わないからな。エルザ嬢、僕のせいで不安にさせてすまない。マックス殿が慌てて来られた時、貴方のお姉様の名前を言っていた。お姉様に相談する程、僕の事で不安にさせたんだろう? 確かに、シモンと仲の良い僕が貴方に近づけば連れ戻されると思って当然だ。僕は愛が冷めることもあると失念していた。貴方の事は、決して誰にも言わない。約束するよ。だから、マックス殿も安心して欲しい」
「良かったな、とりあえずバレなくて済みそうで。それにしても、ジェラール様が誤解するくらいエルザはシモン様に尽くしてたのか?」
「今思えばバカバカしいけどね。なんであんな男に尽くしたのかしら?」
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