魔力なしの役立たずだと婚約破棄されました

編端みどり

文字の大きさ
29 / 55
改稿版

29-1 魔力量

「あれ? マックスはどうしたのですか?」

「急用が出来たと帰ったよ」

紅茶を淹れて帰って来たら、マックスの姿がありませんでした。

「エルザ嬢、今から時間はあるかい?」

「え、ええ。仕事もありませんし、明日も休みですから暇ですわ」

「そう。良かった。なら僕に少し付き合ってくれないか? ああ、せっかく淹れて頂いた紅茶は飲むよ。その後で良いから」

「はい。かしこまりました」

ジェラール様が転移で連れて来て下さったのは、王都の外れにある美しい丘でした。

夜になり、街の明かりが美しく輝いています。

「綺麗……!」

「ここはね、王族が認めた者だけが入れるんだ」

「えっ! そんな貴重な場所にわたくしなんかを入れてよろしいのですか?」

「僕が連れて来たんだから、良いんだよ」

「ありがとうございます。とても美しいですわ」

「ここに来るとね、王族としての自覚が生まれるんだ。以前はナタリーと良くここに来た。僕らは子どもで魔法が使えなかったから、いつも城の魔術師に転移して貰っていた。ここにひとりで居ると時間の流れが遅くなるように感じるんだ。だけど、ナタリーと話しているとあっという間に時が過ぎてしまう。迎えの時間になっても帰りたくなくて、予定を変更しようとして叱られた事もある」

「ナタリー様とお話ししていると、すぐ時間が過ぎてしまうのですよね。明るくて、優しくて……素晴らしい方でしたわ」

最近はずいぶん明るくなられましたけど、ナタリー様がいらっしゃった頃のジェラール様はいつも笑っておられました。

いつもはナタリー様の話をする時は切なそうな顔をなさっておられるジェラール様ですが、本日はとてもお優しい笑みを浮かべていらっしゃいます。

「ナタリーは早朝の静かな街並みが好きだと聞いて、朝早くに城の魔術師を叩き起こしてここに転移して貰った事もあるよ。後で父上に散々叱られた」

「まぁ、そんな事もあったのですね」

今の理性的なジェラール様からは想像がつきませんわ。

「あの頃の僕は我儘な子どもだったからね。ナタリーの方が大人だった。早朝にいきなり来た僕に笑顔で付き合ってくれて、喜んでくれた。最後に優しく準備もあるから今後は事前連絡が欲しいと諭してくれたんだ」

「ナタリー様らしいですね」

「……ああ、彼女はいつも優しかった。ナタリーが死ぬ間際に言われたんだ。自分のことは忘れて幸せになってくれって」

ナタリー様は、ジェラール様の事を心から愛しておられた。ジェラール様の贈り物を肌身離さず持っていたし、ジェラール様の為だと沢山の事を学んでおられた。

そんなナタリー様だから、ジェラール様は今もナタリー様の事を……。

あれ……?
どうしたのでしょうか。

なんだか、胸が痛いです。

「……ここに来たのは、ナタリーにも知らせたかったんだ。僕はちゃんと、前に進んでいるって」

ジェラール様のお顔が近いです。優しくわたくしの手を取りました。

いつも堂々となさっているジェラール様は、今日は何故か不安そうな顔をなさっています。

「あ、あの……どうされたのですか?」

「エルザ嬢。僕は……貴女の事が好きなんだ」

「え……今……なんと……」

ジェラール様がわたくしの事を好き?

「そそそ、それは……友人としてですか?」

「友人としてとか、人として尊敬してるとかじゃない。僕は、貴女を愛している。シモンより、マックスより……僕を愛して欲しい」

「け、けど! わたくしは魔力無しです!」

「魔力なんて無くても良い!」

「わたくしは……特殊能力があります。厄介な力ですわ。特殊能力目当てに近付いた人が分かってしまいます。今は隠していますけど、ジェラール様とお付き合いするとなれば公にしないといけないでしょう。よからぬ輩も呼び寄せるかもしれません。ジェラール様にはもっと相応しい方が……」

「僕は!! 貴女が好きなんだ!!!」

ジェラール様が真っ直ぐわたくしの目を見て叫びました。暗いのに分かります。耳まで真っ赤な顔をなさっておられます。

「貴女が魔力無しでも気にしない。特殊能力は有り難いけど、無くたって構わない。特殊能力があるから不利になる事なんてない! むしろ敵が分かって良いじゃないか! エルザ嬢だって、僕の事が好きだろう!!! 僕の魔力は、8000もあったんだぞ!!!」

「へ……? 魔力が……8000……?」

「だから、マックスは手を引いてくれたんだ! さっきこっそりマックスから通信があった。テレーズ様の魔力も7000だったそうだ。つまり、僕が一番魔力が高い! エルザ嬢は僕の事が一番好きだろう!」

厄介な特殊能力。以前マックスが言っていた言葉を思い出しました。な、なんですかコレ!

自分の気持ちを自覚する前に、魔力で分かってしまうなんて恥ずかし過ぎます!
感想 4

あなたにおすすめの小説

王妃の仕事なんて知りません、今から逃げます!

gacchi(がっち)
恋愛
側妃を迎えるって、え?聞いてないよ? 王妃の仕事が大変でも頑張ってたのは、レオルドが好きだから。 国への責任感?そんなの無いよ。もういい。私、逃げるから! 12/16加筆修正したものをカクヨムに投稿しました。

教養が足りない、ですって

たくわん
恋愛
侯爵令嬢エリーゼは、公爵家の長男アレクシスとの婚約披露宴で突然婚約破棄される。理由は「教養が足りず、公爵夫人として恥ずかしい」。社交界の人々の嘲笑の中、エリーゼは静かに会場を去る。

【完結】能力が無くても聖女ですか?

天冨 七緒
恋愛
孤児院で育ったケイトリーン。 十二歳になった時特殊な能力が開花し、体調を崩していた王妃を治療する事に… 無事に王妃を完治させ、聖女と呼ばれるようになっていたが王妃の治癒と引き換えに能力を使い果たしてしまった。能力を失ったにも関わらず国王はケイトリーンを王子の婚約者に決定した。 周囲は国王の命令だと我慢する日々。 だが国王が崩御したことで、王子は周囲の「能力の無くなった聖女との婚約を今すぐにでも解消すべき」と押され婚約を解消に… 行く宛もないが婚約解消されたのでケイトリーンは王宮を去る事に…門を抜け歩いて城を後にすると突然足元に魔方陣が現れ光に包まれる… 「おぉー聖女様ぁ」 眩い光が落ち着くと歓声と共に周囲に沢山の人に迎えられていた。ケイトリーンは見知らぬ国の聖女として召喚されてしまっていた… タイトル変更しました 召喚されましたが聖女様ではありません…私は聖女様の世話係です

居候と婚約者が手を組んでいた!

すみ 小桜(sumitan)
恋愛
 グリンマトル伯爵家の一人娘のレネットは、前世の記憶を持っていた。前世は体が弱く入院しそのまま亡くなった。その為、病気に苦しむ人を助けたいと思い薬師になる事に。幸いの事に、家業は薬師だったので、いざ学校へ。本来は17歳から通う学校へ7歳から行く事に。ほらそこは、転生者だから!  って、王都の学校だったので寮生活で、数年後に帰ってみると居候がいるではないですか!  父親の妹家族のウルミーシュ子爵家だった。同じ年の従姉妹アンナがこれまたわがまま。  アンアの母親で父親の妹のエルダがこれまたくせ者で。  最悪な事態が起き、レネットの思い描いていた未来は消え去った。家族と末永く幸せと願った未来が――。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

【完結】病弱な妹に魔力を分け続け死ぬ寸前の私を、宮廷魔術師になった旧友が攫ってくれました。家族を捨てて幸せになっていいんですか?

未知香
恋愛
「あなたはもう十分楽しんだでしょう? 今度はミアーラの番よ」 膨大な魔力と知識を持ち、聖女候補とまで言われた、天才魔術師エリアーナ。 彼女は、病弱な妹ミアーラの為、家族に言われるまま自らの膨大な魔力を差し出すことにした。 「そうだ。私は健康で、今まで十分に楽しんできた。だから、あげるのは当然だ」 魔力を与え続けた結果、彼女は魔力を失い、容姿も衰え、社交界から姿を消してしまう事となった。 一方、妹ミアーラは姉から与えられた魔力を使い、聖女候補として称賛されるように。 家族の呪縛に縛られ、「今まで多くを貰いすぎていたのだ」と信じ、利用され続けるエリアーナ。 そんな彼女の前に現れたのは、かつての旧友であり宮廷魔術師となった青年だった。 ハッピーエンドです!

俺の婚約者は地味で陰気臭い女なはずだが、どうも違うらしい。

ミミリン
恋愛
ある世界の貴族である俺。婚約者のアリスはいつもボサボサの髪の毛とぶかぶかの制服を着ていて陰気な女だ。幼馴染のアンジェリカからは良くない話も聞いている。 俺と婚約していても話は続かないし、婚約者としての役目も担う気はないようだ。 そんな婚約者のアリスがある日、俺のメイドがふるまった紅茶を俺の目の前でわざとこぼし続けた。 こんな女とは婚約解消だ。 この日から俺とアリスの関係が少しずつ変わっていく。

辺境は独自路線で進みます! ~見下され搾取され続けるのは御免なので~

紫月 由良
恋愛
 辺境に領地を持つマリエ・オリオール伯爵令嬢は、貴族学院の食堂で婚約者であるジョルジュ・ミラボーから婚約破棄をつきつけられた。二人の仲は険悪で修復不可能だったこともあり、マリエは快諾すると学院を早退して婚約者の家に向かい、その日のうちに婚約が破棄された。辺境=田舎者という風潮によって居心地が悪くなっていたため、これを機に学院を退学して領地に引き籠ることにした。  魔法契約によりオリオール伯爵家やフォートレル辺境伯家は国から離反できないが、関わり合いを最低限にして独自路線を歩むことに――。   ※小説家になろう、カクヨムにも投稿しています