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改稿版
29-1 魔力量
「あれ? マックスはどうしたのですか?」
「急用が出来たと帰ったよ」
紅茶を淹れて帰って来たら、マックスの姿がありませんでした。
「エルザ嬢、今から時間はあるかい?」
「え、ええ。仕事もありませんし、明日も休みですから暇ですわ」
「そう。良かった。なら僕に少し付き合ってくれないか? ああ、せっかく淹れて頂いた紅茶は飲むよ。その後で良いから」
「はい。かしこまりました」
ジェラール様が転移で連れて来て下さったのは、王都の外れにある美しい丘でした。
夜になり、街の明かりが美しく輝いています。
「綺麗……!」
「ここはね、王族が認めた者だけが入れるんだ」
「えっ! そんな貴重な場所にわたくしなんかを入れてよろしいのですか?」
「僕が連れて来たんだから、良いんだよ」
「ありがとうございます。とても美しいですわ」
「ここに来るとね、王族としての自覚が生まれるんだ。以前はナタリーと良くここに来た。僕らは子どもで魔法が使えなかったから、いつも城の魔術師に転移して貰っていた。ここにひとりで居ると時間の流れが遅くなるように感じるんだ。だけど、ナタリーと話しているとあっという間に時が過ぎてしまう。迎えの時間になっても帰りたくなくて、予定を変更しようとして叱られた事もある」
「ナタリー様とお話ししていると、すぐ時間が過ぎてしまうのですよね。明るくて、優しくて……素晴らしい方でしたわ」
最近はずいぶん明るくなられましたけど、ナタリー様がいらっしゃった頃のジェラール様はいつも笑っておられました。
いつもはナタリー様の話をする時は切なそうな顔をなさっておられるジェラール様ですが、本日はとてもお優しい笑みを浮かべていらっしゃいます。
「ナタリーは早朝の静かな街並みが好きだと聞いて、朝早くに城の魔術師を叩き起こしてここに転移して貰った事もあるよ。後で父上に散々叱られた」
「まぁ、そんな事もあったのですね」
今の理性的なジェラール様からは想像がつきませんわ。
「あの頃の僕は我儘な子どもだったからね。ナタリーの方が大人だった。早朝にいきなり来た僕に笑顔で付き合ってくれて、喜んでくれた。最後に優しく準備もあるから今後は事前連絡が欲しいと諭してくれたんだ」
「ナタリー様らしいですね」
「……ああ、彼女はいつも優しかった。ナタリーが死ぬ間際に言われたんだ。自分のことは忘れて幸せになってくれって」
ナタリー様は、ジェラール様の事を心から愛しておられた。ジェラール様の贈り物を肌身離さず持っていたし、ジェラール様の為だと沢山の事を学んでおられた。
そんなナタリー様だから、ジェラール様は今もナタリー様の事を……。
あれ……?
どうしたのでしょうか。
なんだか、胸が痛いです。
「……ここに来たのは、ナタリーにも知らせたかったんだ。僕はちゃんと、前に進んでいるって」
ジェラール様のお顔が近いです。優しくわたくしの手を取りました。
いつも堂々となさっているジェラール様は、今日は何故か不安そうな顔をなさっています。
「あ、あの……どうされたのですか?」
「エルザ嬢。僕は……貴女の事が好きなんだ」
「え……今……なんと……」
ジェラール様がわたくしの事を好き?
「そそそ、それは……友人としてですか?」
「友人としてとか、人として尊敬してるとかじゃない。僕は、貴女を愛している。シモンより、マックスより……僕を愛して欲しい」
「け、けど! わたくしは魔力無しです!」
「魔力なんて無くても良い!」
「わたくしは……特殊能力があります。厄介な力ですわ。特殊能力目当てに近付いた人が分かってしまいます。今は隠していますけど、ジェラール様とお付き合いするとなれば公にしないといけないでしょう。よからぬ輩も呼び寄せるかもしれません。ジェラール様にはもっと相応しい方が……」
「僕は!! 貴女が好きなんだ!!!」
ジェラール様が真っ直ぐわたくしの目を見て叫びました。暗いのに分かります。耳まで真っ赤な顔をなさっておられます。
「貴女が魔力無しでも気にしない。特殊能力は有り難いけど、無くたって構わない。特殊能力があるから不利になる事なんてない! むしろ敵が分かって良いじゃないか! エルザ嬢だって、僕の事が好きだろう!!! 僕の魔力は、8000もあったんだぞ!!!」
「へ……? 魔力が……8000……?」
「だから、マックスは手を引いてくれたんだ! さっきこっそりマックスから通信があった。テレーズ様の魔力も7000だったそうだ。つまり、僕が一番魔力が高い! エルザ嬢は僕の事が一番好きだろう!」
厄介な特殊能力。以前マックスが言っていた言葉を思い出しました。な、なんですかコレ!
自分の気持ちを自覚する前に、魔力で分かってしまうなんて恥ずかし過ぎます!
「急用が出来たと帰ったよ」
紅茶を淹れて帰って来たら、マックスの姿がありませんでした。
「エルザ嬢、今から時間はあるかい?」
「え、ええ。仕事もありませんし、明日も休みですから暇ですわ」
「そう。良かった。なら僕に少し付き合ってくれないか? ああ、せっかく淹れて頂いた紅茶は飲むよ。その後で良いから」
「はい。かしこまりました」
ジェラール様が転移で連れて来て下さったのは、王都の外れにある美しい丘でした。
夜になり、街の明かりが美しく輝いています。
「綺麗……!」
「ここはね、王族が認めた者だけが入れるんだ」
「えっ! そんな貴重な場所にわたくしなんかを入れてよろしいのですか?」
「僕が連れて来たんだから、良いんだよ」
「ありがとうございます。とても美しいですわ」
「ここに来るとね、王族としての自覚が生まれるんだ。以前はナタリーと良くここに来た。僕らは子どもで魔法が使えなかったから、いつも城の魔術師に転移して貰っていた。ここにひとりで居ると時間の流れが遅くなるように感じるんだ。だけど、ナタリーと話しているとあっという間に時が過ぎてしまう。迎えの時間になっても帰りたくなくて、予定を変更しようとして叱られた事もある」
「ナタリー様とお話ししていると、すぐ時間が過ぎてしまうのですよね。明るくて、優しくて……素晴らしい方でしたわ」
最近はずいぶん明るくなられましたけど、ナタリー様がいらっしゃった頃のジェラール様はいつも笑っておられました。
いつもはナタリー様の話をする時は切なそうな顔をなさっておられるジェラール様ですが、本日はとてもお優しい笑みを浮かべていらっしゃいます。
「ナタリーは早朝の静かな街並みが好きだと聞いて、朝早くに城の魔術師を叩き起こしてここに転移して貰った事もあるよ。後で父上に散々叱られた」
「まぁ、そんな事もあったのですね」
今の理性的なジェラール様からは想像がつきませんわ。
「あの頃の僕は我儘な子どもだったからね。ナタリーの方が大人だった。早朝にいきなり来た僕に笑顔で付き合ってくれて、喜んでくれた。最後に優しく準備もあるから今後は事前連絡が欲しいと諭してくれたんだ」
「ナタリー様らしいですね」
「……ああ、彼女はいつも優しかった。ナタリーが死ぬ間際に言われたんだ。自分のことは忘れて幸せになってくれって」
ナタリー様は、ジェラール様の事を心から愛しておられた。ジェラール様の贈り物を肌身離さず持っていたし、ジェラール様の為だと沢山の事を学んでおられた。
そんなナタリー様だから、ジェラール様は今もナタリー様の事を……。
あれ……?
どうしたのでしょうか。
なんだか、胸が痛いです。
「……ここに来たのは、ナタリーにも知らせたかったんだ。僕はちゃんと、前に進んでいるって」
ジェラール様のお顔が近いです。優しくわたくしの手を取りました。
いつも堂々となさっているジェラール様は、今日は何故か不安そうな顔をなさっています。
「あ、あの……どうされたのですか?」
「エルザ嬢。僕は……貴女の事が好きなんだ」
「え……今……なんと……」
ジェラール様がわたくしの事を好き?
「そそそ、それは……友人としてですか?」
「友人としてとか、人として尊敬してるとかじゃない。僕は、貴女を愛している。シモンより、マックスより……僕を愛して欲しい」
「け、けど! わたくしは魔力無しです!」
「魔力なんて無くても良い!」
「わたくしは……特殊能力があります。厄介な力ですわ。特殊能力目当てに近付いた人が分かってしまいます。今は隠していますけど、ジェラール様とお付き合いするとなれば公にしないといけないでしょう。よからぬ輩も呼び寄せるかもしれません。ジェラール様にはもっと相応しい方が……」
「僕は!! 貴女が好きなんだ!!!」
ジェラール様が真っ直ぐわたくしの目を見て叫びました。暗いのに分かります。耳まで真っ赤な顔をなさっておられます。
「貴女が魔力無しでも気にしない。特殊能力は有り難いけど、無くたって構わない。特殊能力があるから不利になる事なんてない! むしろ敵が分かって良いじゃないか! エルザ嬢だって、僕の事が好きだろう!!! 僕の魔力は、8000もあったんだぞ!!!」
「へ……? 魔力が……8000……?」
「だから、マックスは手を引いてくれたんだ! さっきこっそりマックスから通信があった。テレーズ様の魔力も7000だったそうだ。つまり、僕が一番魔力が高い! エルザ嬢は僕の事が一番好きだろう!」
厄介な特殊能力。以前マックスが言っていた言葉を思い出しました。な、なんですかコレ!
自分の気持ちを自覚する前に、魔力で分かってしまうなんて恥ずかし過ぎます!
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