40 / 55
改稿版
28-2 穏やかな日々【第ニ部 スタート】
※第27話の続きになります。これは2つ目のストーリーです。分岐の書き方が分かりにくいなど、ご意見がございましたら感想などでお知らせ下さいませ。
以下、本編をお楽しみ下さい。
――――――――――――――
わたくしは、このまま平民として暮らす道を選びました。貴族として人々の役に立ちたい。そんな気持ちもありました。
だけどわたくしは、今の暮らしが好きなのです。わたくしの身分は平民。これから貴族に戻る事はジェラール様の手を借りれば可能でしょう。ですが、貴族という地位に魅力を感じません。
平民となってからの日々は、短い15年の人生で最も穏やかで、幸せな時間です。あの日、たくさんの人々に睨まれ、親と兄に捨てられても強気に国を出る事が出来ました。だけどもう、貴族に関わろうとは思えません。本当はあの日は、国を出るまでとっても怖かったのです。勿論、ジェラール様やお姉様のように個人的に付き合いたい方はいらっしゃいますけどね。
今は自宅で翻訳の仕事をしております。知識は使用しないと忘れてしまいます。たくさんの言語に触れられる翻訳の仕事はとてもありがたいのです。マックスが言っていました。たくさん学べてラッキーだと。この知識はわたくしの財産です。しっかり使って、守っていかないと勿体ないですわ。
けど、全てが思い通りとはいきません。
残念ですが、今後は通訳の仕事を受けない事にしました。ジェラール様のようにいきなり知り合いに会う可能性もありますからね。
知識が鈍る事はありません。何故なら、わたくしを訪ねてくれる友人達が居るのですから。
「エルザ、これ食うか? 新作だってよ」
「ありがとう。食べるわ。紅茶を淹れるわね」
マックスは、お姉様の依頼だからといつも一緒に居てくれます。いくつか名前を使い分けて冒険者をしているマックスですが、今は本名のマックスとこの街で使っているモーリスだけにしたそうです。
マックスはあちこちの国で仕事をしていたので、3ヶ国語の読み書きが出来ます。喋るだけなら、5カ国も話せます。
以前は別人として仕事をする為ちょこちょこ姿を消していたマックスですが、今は仮の姿を減らしてしまったので、ほとんどわたくしと一緒に居ます。
「僕も貰おうかな」
「ジェラール、静かに現れんのやめろ。ビビるだろうが。王子の癖に暇なのか?」
「良いじゃないか。僕だってエルザ嬢と話したいんだよ」
ジェラール様も、週に3回は訪ねて下さいます。ジェラール様とマックスに協力して頂き、様々な言語で会話をすれば、得られた知識を忘れる事はありません。
「昨日の件ですわよね。わたくしなりにまとめてみましたわ」
ジェラール様は、わたくしが宰相様のお手伝いを楽しんでいたからという理由で、機密に触れないお仕事を頼んで下さるようになりました。
その為、わたくしの家のリビングはいつ誰が来ても良いように整えてあります。マックスの提案で、寝室には鍵をかけるようにしました。我が家にはマックスやジェラール様だけでなく、お姉様もいらっしゃるようになりました。
シモン様はマックスのおかげで諦めて帰って下さったようですけど、心配だからと誰かしら側に居てくれます。
本当に、ありがたいですわ。
少しでも恩返しをしたいと、完成した仕事をジェラール様に渡すと、何故かマックスとジェラール様が苦笑いをしました。
「やっぱ俺の方が有利だよな」
「そんな事無いぞ! エルザ嬢! 好物の焼き菓子を手配したんだ! 受け取ってくれ!」
「ありがとうございます。早速お出ししますわね。マックスから頂いたお菓子も出しますから、ゆっくりティータイムに致しましょう」
「な?」
「な? ではない! マックスだって大して有利ではないぞ!」
「鈍さは、世界トップクラスだからなぁ」
「……残念だが、同意するよ」
「あの? なんのお話ですか?」
「なんでもねぇよ。エルザは俺の買って来た菓子とジェラールが持って来た菓子、どっちが好きだ?」
「どちらもまだ食べてないから分からないわ」
「では! 食べてみてどちらが好きか教えてくれ!」
ジェラール様の必死な様子に、真剣にお菓子を吟味しましたが、どうしても決められませんでした。
「マックスのくれた新作のお菓子は、ラズベリーの酸味がとっても爽やかで美味しいわ。ジェラール様の持って来て下さったお菓子は、わたくしの好物ですわよね。わたくし、子どもの頃から大好きなんですの。おふたりとも、ありがとうございます」
「引き分けか」
「だな。引き分けだ。ま、俺のが有利だけどな」
「そんな事ないぞ!」
マックスはすっかりジェラール様と仲良くなりました。最近、ジェラール様が明るく笑っているお姿を拝見します。
マックスのおかげで、元気になられたようですね。
以下、本編をお楽しみ下さい。
――――――――――――――
わたくしは、このまま平民として暮らす道を選びました。貴族として人々の役に立ちたい。そんな気持ちもありました。
だけどわたくしは、今の暮らしが好きなのです。わたくしの身分は平民。これから貴族に戻る事はジェラール様の手を借りれば可能でしょう。ですが、貴族という地位に魅力を感じません。
平民となってからの日々は、短い15年の人生で最も穏やかで、幸せな時間です。あの日、たくさんの人々に睨まれ、親と兄に捨てられても強気に国を出る事が出来ました。だけどもう、貴族に関わろうとは思えません。本当はあの日は、国を出るまでとっても怖かったのです。勿論、ジェラール様やお姉様のように個人的に付き合いたい方はいらっしゃいますけどね。
今は自宅で翻訳の仕事をしております。知識は使用しないと忘れてしまいます。たくさんの言語に触れられる翻訳の仕事はとてもありがたいのです。マックスが言っていました。たくさん学べてラッキーだと。この知識はわたくしの財産です。しっかり使って、守っていかないと勿体ないですわ。
けど、全てが思い通りとはいきません。
残念ですが、今後は通訳の仕事を受けない事にしました。ジェラール様のようにいきなり知り合いに会う可能性もありますからね。
知識が鈍る事はありません。何故なら、わたくしを訪ねてくれる友人達が居るのですから。
「エルザ、これ食うか? 新作だってよ」
「ありがとう。食べるわ。紅茶を淹れるわね」
マックスは、お姉様の依頼だからといつも一緒に居てくれます。いくつか名前を使い分けて冒険者をしているマックスですが、今は本名のマックスとこの街で使っているモーリスだけにしたそうです。
マックスはあちこちの国で仕事をしていたので、3ヶ国語の読み書きが出来ます。喋るだけなら、5カ国も話せます。
以前は別人として仕事をする為ちょこちょこ姿を消していたマックスですが、今は仮の姿を減らしてしまったので、ほとんどわたくしと一緒に居ます。
「僕も貰おうかな」
「ジェラール、静かに現れんのやめろ。ビビるだろうが。王子の癖に暇なのか?」
「良いじゃないか。僕だってエルザ嬢と話したいんだよ」
ジェラール様も、週に3回は訪ねて下さいます。ジェラール様とマックスに協力して頂き、様々な言語で会話をすれば、得られた知識を忘れる事はありません。
「昨日の件ですわよね。わたくしなりにまとめてみましたわ」
ジェラール様は、わたくしが宰相様のお手伝いを楽しんでいたからという理由で、機密に触れないお仕事を頼んで下さるようになりました。
その為、わたくしの家のリビングはいつ誰が来ても良いように整えてあります。マックスの提案で、寝室には鍵をかけるようにしました。我が家にはマックスやジェラール様だけでなく、お姉様もいらっしゃるようになりました。
シモン様はマックスのおかげで諦めて帰って下さったようですけど、心配だからと誰かしら側に居てくれます。
本当に、ありがたいですわ。
少しでも恩返しをしたいと、完成した仕事をジェラール様に渡すと、何故かマックスとジェラール様が苦笑いをしました。
「やっぱ俺の方が有利だよな」
「そんな事無いぞ! エルザ嬢! 好物の焼き菓子を手配したんだ! 受け取ってくれ!」
「ありがとうございます。早速お出ししますわね。マックスから頂いたお菓子も出しますから、ゆっくりティータイムに致しましょう」
「な?」
「な? ではない! マックスだって大して有利ではないぞ!」
「鈍さは、世界トップクラスだからなぁ」
「……残念だが、同意するよ」
「あの? なんのお話ですか?」
「なんでもねぇよ。エルザは俺の買って来た菓子とジェラールが持って来た菓子、どっちが好きだ?」
「どちらもまだ食べてないから分からないわ」
「では! 食べてみてどちらが好きか教えてくれ!」
ジェラール様の必死な様子に、真剣にお菓子を吟味しましたが、どうしても決められませんでした。
「マックスのくれた新作のお菓子は、ラズベリーの酸味がとっても爽やかで美味しいわ。ジェラール様の持って来て下さったお菓子は、わたくしの好物ですわよね。わたくし、子どもの頃から大好きなんですの。おふたりとも、ありがとうございます」
「引き分けか」
「だな。引き分けだ。ま、俺のが有利だけどな」
「そんな事ないぞ!」
マックスはすっかりジェラール様と仲良くなりました。最近、ジェラール様が明るく笑っているお姿を拝見します。
マックスのおかげで、元気になられたようですね。
あなたにおすすめの小説
王妃の仕事なんて知りません、今から逃げます!
gacchi(がっち)
恋愛
側妃を迎えるって、え?聞いてないよ?
王妃の仕事が大変でも頑張ってたのは、レオルドが好きだから。
国への責任感?そんなの無いよ。もういい。私、逃げるから!
12/16加筆修正したものをカクヨムに投稿しました。
教養が足りない、ですって
たくわん
恋愛
侯爵令嬢エリーゼは、公爵家の長男アレクシスとの婚約披露宴で突然婚約破棄される。理由は「教養が足りず、公爵夫人として恥ずかしい」。社交界の人々の嘲笑の中、エリーゼは静かに会場を去る。
【完結】能力が無くても聖女ですか?
天冨 七緒
恋愛
孤児院で育ったケイトリーン。
十二歳になった時特殊な能力が開花し、体調を崩していた王妃を治療する事に…
無事に王妃を完治させ、聖女と呼ばれるようになっていたが王妃の治癒と引き換えに能力を使い果たしてしまった。能力を失ったにも関わらず国王はケイトリーンを王子の婚約者に決定した。
周囲は国王の命令だと我慢する日々。
だが国王が崩御したことで、王子は周囲の「能力の無くなった聖女との婚約を今すぐにでも解消すべき」と押され婚約を解消に…
行く宛もないが婚約解消されたのでケイトリーンは王宮を去る事に…門を抜け歩いて城を後にすると突然足元に魔方陣が現れ光に包まれる…
「おぉー聖女様ぁ」
眩い光が落ち着くと歓声と共に周囲に沢山の人に迎えられていた。ケイトリーンは見知らぬ国の聖女として召喚されてしまっていた…
タイトル変更しました
召喚されましたが聖女様ではありません…私は聖女様の世話係です
居候と婚約者が手を組んでいた!
すみ 小桜(sumitan)
恋愛
グリンマトル伯爵家の一人娘のレネットは、前世の記憶を持っていた。前世は体が弱く入院しそのまま亡くなった。その為、病気に苦しむ人を助けたいと思い薬師になる事に。幸いの事に、家業は薬師だったので、いざ学校へ。本来は17歳から通う学校へ7歳から行く事に。ほらそこは、転生者だから!
って、王都の学校だったので寮生活で、数年後に帰ってみると居候がいるではないですか!
父親の妹家族のウルミーシュ子爵家だった。同じ年の従姉妹アンナがこれまたわがまま。
アンアの母親で父親の妹のエルダがこれまたくせ者で。
最悪な事態が起き、レネットの思い描いていた未来は消え去った。家族と末永く幸せと願った未来が――。
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
【完結】病弱な妹に魔力を分け続け死ぬ寸前の私を、宮廷魔術師になった旧友が攫ってくれました。家族を捨てて幸せになっていいんですか?
未知香
恋愛
「あなたはもう十分楽しんだでしょう? 今度はミアーラの番よ」
膨大な魔力と知識を持ち、聖女候補とまで言われた、天才魔術師エリアーナ。
彼女は、病弱な妹ミアーラの為、家族に言われるまま自らの膨大な魔力を差し出すことにした。
「そうだ。私は健康で、今まで十分に楽しんできた。だから、あげるのは当然だ」
魔力を与え続けた結果、彼女は魔力を失い、容姿も衰え、社交界から姿を消してしまう事となった。
一方、妹ミアーラは姉から与えられた魔力を使い、聖女候補として称賛されるように。
家族の呪縛に縛られ、「今まで多くを貰いすぎていたのだ」と信じ、利用され続けるエリアーナ。
そんな彼女の前に現れたのは、かつての旧友であり宮廷魔術師となった青年だった。
ハッピーエンドです!
俺の婚約者は地味で陰気臭い女なはずだが、どうも違うらしい。
ミミリン
恋愛
ある世界の貴族である俺。婚約者のアリスはいつもボサボサの髪の毛とぶかぶかの制服を着ていて陰気な女だ。幼馴染のアンジェリカからは良くない話も聞いている。
俺と婚約していても話は続かないし、婚約者としての役目も担う気はないようだ。
そんな婚約者のアリスがある日、俺のメイドがふるまった紅茶を俺の目の前でわざとこぼし続けた。
こんな女とは婚約解消だ。
この日から俺とアリスの関係が少しずつ変わっていく。
辺境は独自路線で進みます! ~見下され搾取され続けるのは御免なので~
紫月 由良
恋愛
辺境に領地を持つマリエ・オリオール伯爵令嬢は、貴族学院の食堂で婚約者であるジョルジュ・ミラボーから婚約破棄をつきつけられた。二人の仲は険悪で修復不可能だったこともあり、マリエは快諾すると学院を早退して婚約者の家に向かい、その日のうちに婚約が破棄された。辺境=田舎者という風潮によって居心地が悪くなっていたため、これを機に学院を退学して領地に引き籠ることにした。
魔法契約によりオリオール伯爵家やフォートレル辺境伯家は国から離反できないが、関わり合いを最低限にして独自路線を歩むことに――。
※小説家になろう、カクヨムにも投稿しています