この婚約破棄は、神に誓いますの

編端みどり

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嫌いかと問われれば

「嫌い……ではない」

「そう。嬉しいわ。それじゃあデヴィッド様がお好きなのは、どなた?」

静かに話すエミリー様の声はなんだかとても悲しそうだ。

「好きなのは……」

「ジェシカ様ではないの? 靴を隠したりしたのでしょう?」

「確かに、ジェシカ……様に好きになって貰いたくて、靴を隠して困ってるところに近づこうとしたり、制服の裾をわざと引っ掛けて指摘してあげようとしたり、水をかけてタオルを差し入れたりしようとした。だけど、うまくいかなかったんだ。隠した靴は、ジェシカ様に持っていこうとしたら無くなっていつの間にか落とし物入れにあるし、制服はちょっと端にハサミ入れるだけだったのに、ズタボロになっちゃって怖くて逃げたし、水もコップ1杯くらいのを用意したのにまるでバケツの水かぶったみたいになるし、階段なんてちょっとぶつかるつもりがなんか嫌な予感してやめちゃったんだよね。それに、僕を愛してるって言ってたから」

だ か ら、それは勘違いだよっ!
勘違いでも、本人に悪気がなければおでこは無事だから、こんなことになってるのね。でもこんな壮絶な勘違いなんて神様も予想してないわよっ!

「そう。どうしてわたくしとの婚約を破棄したいと思ったの?」

「それは、みんながエミリー様は素晴らしいって言うんだ。僕もそう思う。でも、エミリー様と並び立つようにと、国王様が先生を派遣してくださったけど、なかなか覚えられなかった。向いてないんだ。先生にも、このままではエミリー様に婚約破棄されてしまいますよと言われたんだ。どの先生も同じことを言っていた。だけど、婚約破棄を申し立てた相手は契約を重視しないと批判されるから、エミリー様が批判されてかわいそうだと。それなら、僕から破棄すればいいと思って」

「なんでそうなるのよ」

「エミリー様は僕に婚約破棄を突きつけたりしないだろ?」

「するわけないでしょっ!」

「だから、僕から言えばいいと思った。神に誓えば、撤回できないし、エミリー様の性格を考えても、破棄すると言い出すと思ったんだ」

「そう……」

ちょっと! めちゃくちゃエミリー様泣きそうなんですけどっ!!!
もう訳がわからなくなってきたけど、デヴィッド様のおでこが無事な理由は分かった。デヴィッド様は、ほんとに悪気はないんだ。じゃあつまり、デヴィッド様はエミリー様のために破棄したって事?!
ジェシカ様へのイジメはどうなったのさ?! もうわかんないよー!!
全部ホントなんだから、まとめると……

①デヴィッド様とエミリー様は、婚約破棄した
②デヴィッド様が、ジェシカ様にイジメをした
③ジェシカ様はデヴィッド様と挨拶しかしてない
④デヴィッド様は、ジェシカ様が自分の事を好きだと思っている→勘違い
⑤デヴィッド様はトーマス様とジェシカ様の婚約を知らなかった
⑥デヴィッド様は、自分から婚約破棄することを望んだ
⑦でもそれは、エミリー様のため?

これ、デヴィッド様の裏に誰かいませんか?
そう思った瞬間、パリパリっと音がした。
私が気づく事、あの天才エミリー様が気がつかない訳ないわけで……

「デヴィ、あなたに私と婚約破棄されると言ったのは、誰?」

扇子が、粉になったんですけどっっ!!!
まずい、まずい、まずいっっ!!!

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