興味はないが、皇帝になってやるよ

編端みどり

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第八話

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「よし、毒抜けたな」

まだ眠っているセーラをベッドに寝かせて、イオスは用意したシチューを確認する。

「冷めちまってるよなぁ。セーラが起きたら温めるか」

イオスがシチューを確認しようとすると、部屋に鈴の音が響いた。

「ちっ……今日は入るなって命令したのに来るって事は兄貴だな」

イオスは急いで部屋を出て、鍵をかけて自分の部屋に戻ると床に座り込んで顔を伏せる。

「イオス、イオス……入るよ」

部屋には、鍵がかかっているが10分ほどすると鍵の開く音がした。

「兄貴なら、合鍵用意するなんて楽勝だよなぁ」

ドアが開く前に小声で呟いたイオスは、そのまま顔を伏せて落ち込んでるフリをする。セーラの髪の毛と、毒を焼き払ったセーラのナイフを手に持ち、打ちひしがれた男を演じる。

「イオス、心配だから鍵を勝手に開けたよ。大丈夫かい?」

フォスは、優しい兄の顔をしてイオスに話しかける。

「……ひとりにしてくれ……」

「そんな事言っても心配なんだよ。食事を持ってきたよ。食べてくれよ」

そう言いながら、フォスはイオスの手の甲を確認する。爛れは治っており、瘡蓋が出来上がっていた。

「この手は、どうしたんだい?」

「……問題ねぇ」

「暗殺者がまた来たんだって? そいつにやられたの?」

「もう始末した。問題ねぇよ」

「ならどうしてそんなにつらそうなの? 暗殺者が、イオスの知ってる子だったのかなぁ?」

フォスが意地悪そうに笑う。いつものイオスなら、ここまで言われると怒りで炎を出して大騒ぎになる。そしてイオスの評価が下がり、フォスの評価が上がる。

だが、今のイオスはフォスの挑発にも冷静に対応できた。

「兄貴はさ、分かってたんだよな?」

「……何をだい?」

「オレがセーラを探していたこと。彼女をなんでオレにけしかけた?」

「思ったより冷静だねぇ。もっと取り乱すと思ったんだけどなぁ」

「彼女はもういない。残ってんのはこんだけだ」

フォスは、イオスの冷静な様子にセーラは生きているのではと疑ったが、イオスが大事そうに握りしめる髪の毛は確かにセーラのものだった。イオスが部屋から出ていないのは確認している。この状態で食事を作る余裕があったのは気になるが、作っていたのがセーラの好物のシチューだった事もあり、泣きながら作ったのだろうと想像してほくそ笑んだ。

イオスの部屋は3部屋あり、3代前の皇帝が私室として使っていたがその後は誰も使っていない空き部屋だった。埃だらけのこの部屋を手配するよう指示したのはフォスだ。

フォスは、イオスと話しながら侍女に全ての部屋を確認させた。侍女が戻り、部屋に誰も居ないと分かると、フォスは微かな笑みを浮かべた。やはりセーラはイオスが殺したのか。自分の信奉者であるフランツが嘘の報告をするとは思えないが、自ら確認して良かった、おかげでこんな顔のイオスが見れたと歪んだ喜びで身体が震えていた。
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