9 / 45
第九話
しおりを挟む
侍女を下がらせて、ふたりだけになった部屋でフォスは俯いたままのイオスに笑顔で話しかける。
「唯一大事にしていた子に殺されかけた気分はどう? その子を焼き尽くした気分も聞きたいなぁ」
「最低な気分だよ。なぁ、セーラの国が滅んだのも兄貴のせいか?」
僅かに顔を上げたイオスは、涙の跡があり、目が赤い。余程泣いたんだろう。フォスはますます嬉しくなった。
「もう隠す意味はないし教えてあげる。反乱軍に情報や武器、お金を提供したのは僕だよ。お馬鹿なセーラちゃんはイオスのせいだって思ったまま死んだのかな」
イオスの身体から、炎が上がる。なんとかイオスが炎を抑えようとする姿を、フォスは嬉しそうに眺めていた。
「なんで、なんでそんな事したんだよ。セーラは兄貴に何もしてねぇだろ!」
「だからだよ。僕もセーラが好きだったんだよ? だけどセーラはイオスしか見てなかった。もう顔も見たくないから、国内を荒らしてセーラを後宮に閉じ込めようとしたのに、イオスが助けちゃうんだもの。父上もイオスとセーラが想いあってるからってあっさり婚約を認めようとするしさ。時間を稼ぐ為にイオスに仕事を回すように進言して、急いで反乱軍に攻めるよう指示して、武器やお金を回して、父上が援軍を出すって言うから軍の編成してる間に、僕が先行して様子を見に行くって言って全部壊したんだ。色々おかしいと思ってたでしよ? イオスの手紙を止めたのも僕だよ。中身は読まなかったけど、愛の言葉でも書いてあったのかなぁ?」
「クソ兄貴」
「ふふっ、抜け殻になってるイオスは最高だったよ。セーラを探す為に継承権を放棄しようとしてたのも狙い通り。なのに父上は認めないなんてあんな大勢の前で宣言しちゃうから……もうイオスを殺すしかないよね。セーラが望めばあっさり殺されてくれると思ってたのになぁ。セーラだと分かれば、イオスは絶対手を出せないから、覆面なんて与えずに暗殺させれば良かったかなぁ」
「もう黙れよ」
「本当はセーラを僕の妻にしてイオスを絶望させようと思ってたんだけど、セーラは僕の言葉を信じてイオスを恨んでるくせに、イオスが好きみたいでね。ずーっとイオスの名前ばっかり呟いてたんだ。さすがの僕でも、他の男の名前しか呼ばない女は抱けないからね。もう良いやと思って、イオスを殺すか、イオスに殺される駒になって貰う事にしたんだ。残念だよ。僕の愛を受け止めれば、セーラは幸せになれたのにね。ま、僕を信用はしてくれたみたいだから、殺さないでおいてあげたんだ。なのに、イオスがあっさり殺しちゃうんだもんなぁ。それ、セーラの髪の毛でしょ? あとは全部消し炭にしちゃったんだって? あーあ、可哀想なセーラちゃん」
「黙れって言ってんだろ! これ以上セーラを侮辱すんな!」
「ふふっ、どれだけ泣いてもセーラはもういない。もうイオスの大事なものはないよね。生きてるのも辛いでしょ。僕が殺してあげるよ?」
「兄貴に殺されるのだけはごめんだ」
「そう、ここでやり合ってたらすぐ騒ぎになるからね。今日は退散するよ。だけど……皇帝になるのは僕だ」
「そんなに皇帝になるのが大事かよ」
「ああ、皇帝になれば僕を最優先しない人はみんな処刑するんだ。母上と父上、イオスとセーラ。愛しあってるのは良いけど、みんな僕をいちばんに見てくれないんだもの。イオス、安心してね。僕が皇帝になったらすぐにセーラの元に送ってあげる」
そう言ってフォスは、歪んだ笑みを浮かべてイオスの部屋を出て行った。
「上等だ。だったら兄貴が皇帝になるのだけは阻止してやるよ」
イオスは急いで鍵をかけて、部屋に誰も入らないように炎の幕を作成してから、セーラの元に向かった。
「唯一大事にしていた子に殺されかけた気分はどう? その子を焼き尽くした気分も聞きたいなぁ」
「最低な気分だよ。なぁ、セーラの国が滅んだのも兄貴のせいか?」
僅かに顔を上げたイオスは、涙の跡があり、目が赤い。余程泣いたんだろう。フォスはますます嬉しくなった。
「もう隠す意味はないし教えてあげる。反乱軍に情報や武器、お金を提供したのは僕だよ。お馬鹿なセーラちゃんはイオスのせいだって思ったまま死んだのかな」
イオスの身体から、炎が上がる。なんとかイオスが炎を抑えようとする姿を、フォスは嬉しそうに眺めていた。
「なんで、なんでそんな事したんだよ。セーラは兄貴に何もしてねぇだろ!」
「だからだよ。僕もセーラが好きだったんだよ? だけどセーラはイオスしか見てなかった。もう顔も見たくないから、国内を荒らしてセーラを後宮に閉じ込めようとしたのに、イオスが助けちゃうんだもの。父上もイオスとセーラが想いあってるからってあっさり婚約を認めようとするしさ。時間を稼ぐ為にイオスに仕事を回すように進言して、急いで反乱軍に攻めるよう指示して、武器やお金を回して、父上が援軍を出すって言うから軍の編成してる間に、僕が先行して様子を見に行くって言って全部壊したんだ。色々おかしいと思ってたでしよ? イオスの手紙を止めたのも僕だよ。中身は読まなかったけど、愛の言葉でも書いてあったのかなぁ?」
「クソ兄貴」
「ふふっ、抜け殻になってるイオスは最高だったよ。セーラを探す為に継承権を放棄しようとしてたのも狙い通り。なのに父上は認めないなんてあんな大勢の前で宣言しちゃうから……もうイオスを殺すしかないよね。セーラが望めばあっさり殺されてくれると思ってたのになぁ。セーラだと分かれば、イオスは絶対手を出せないから、覆面なんて与えずに暗殺させれば良かったかなぁ」
「もう黙れよ」
「本当はセーラを僕の妻にしてイオスを絶望させようと思ってたんだけど、セーラは僕の言葉を信じてイオスを恨んでるくせに、イオスが好きみたいでね。ずーっとイオスの名前ばっかり呟いてたんだ。さすがの僕でも、他の男の名前しか呼ばない女は抱けないからね。もう良いやと思って、イオスを殺すか、イオスに殺される駒になって貰う事にしたんだ。残念だよ。僕の愛を受け止めれば、セーラは幸せになれたのにね。ま、僕を信用はしてくれたみたいだから、殺さないでおいてあげたんだ。なのに、イオスがあっさり殺しちゃうんだもんなぁ。それ、セーラの髪の毛でしょ? あとは全部消し炭にしちゃったんだって? あーあ、可哀想なセーラちゃん」
「黙れって言ってんだろ! これ以上セーラを侮辱すんな!」
「ふふっ、どれだけ泣いてもセーラはもういない。もうイオスの大事なものはないよね。生きてるのも辛いでしょ。僕が殺してあげるよ?」
「兄貴に殺されるのだけはごめんだ」
「そう、ここでやり合ってたらすぐ騒ぎになるからね。今日は退散するよ。だけど……皇帝になるのは僕だ」
「そんなに皇帝になるのが大事かよ」
「ああ、皇帝になれば僕を最優先しない人はみんな処刑するんだ。母上と父上、イオスとセーラ。愛しあってるのは良いけど、みんな僕をいちばんに見てくれないんだもの。イオス、安心してね。僕が皇帝になったらすぐにセーラの元に送ってあげる」
そう言ってフォスは、歪んだ笑みを浮かべてイオスの部屋を出て行った。
「上等だ。だったら兄貴が皇帝になるのだけは阻止してやるよ」
イオスは急いで鍵をかけて、部屋に誰も入らないように炎の幕を作成してから、セーラの元に向かった。
2
あなたにおすすめの小説
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
とっていただく責任などありません
まめきち
恋愛
騎士団で働くヘイゼルは魔物の討伐の際に、
団長のセルフイスを庇い、魔法陣を踏んでしまう。
この魔法陣は男性が踏むと女性に転換するもので、女性のヘイゼルにはほとんど影響のない物だった。だか国からは保証金が出たので、騎士を辞め、念願の田舎暮らしをしようとしたが!?
ヘイゼルの事をずっと男性だと思っていたセルフイスは自分のせいでヘイゼルが職を失っただと思って来まい。
責任を取らなければとセルフイスから、
追いかけられる羽目に。
地味な薬草師だった俺が、実は村の生命線でした
阿里
ファンタジー
恋人に裏切られ、村を追い出された青年エド。彼の地味な仕事は誰にも評価されず、ただの「役立たず」として切り捨てられた。だが、それは間違いだった。旅の魔術師エリーゼと出会った彼は、自分の能力が秘めていた真の価値を知る。魔術と薬草を組み合わせた彼の秘薬は、やがて王国を救うほどの力となり、エドは英雄として名を馳せていく。そして、彼が去った村は、彼がいた頃には気づかなかった「地味な薬」の恩恵を失い、静かに破滅へと向かっていくのだった。
【完結】私の見る目がない?えーっと…神眼持ってるんですけど、彼の良さがわからないんですか?じゃあ、家を出ていきます。
西東友一
ファンタジー
えっ、彼との結婚がダメ?
なぜです、お父様?
彼はイケメンで、知性があって、性格もいい?のに。
「じゃあ、家を出ていきます」
友人の結婚式で友人兄嫁がスピーチしてくれたのだけど修羅場だった
海林檎
恋愛
え·····こんな時代錯誤の家まだあったんだ····?
友人の家はまさに嫁は義実家の家政婦と言った風潮の生きた化石でガチで引いた上での修羅場展開になった話を書きます·····(((((´°ω°`*))))))
【完結】番としか子供が産まれない世界で
さくらもち
恋愛
番との間にしか子供が産まれない世界に産まれたニーナ。
何故か親から要らない子扱いされる不遇な子供時代に番と言う概念すら知らないまま育った。
そんなニーナが番に出会うまで
4話完結
出会えたところで話は終わってます。
「魔道具の燃料でしかない」と言われた聖女が追い出されたので、結界は消えます
七辻ゆゆ
ファンタジー
聖女ミュゼの仕事は魔道具に力を注ぐだけだ。そうして国を覆う大結界が発動している。
「ルーチェは魔道具に力を注げる上、癒やしの力まで持っている、まさに聖女だ。燃料でしかない平民のおまえとは比べようもない」
そう言われて、ミュゼは城を追い出された。
しかし城から出たことのなかったミュゼが外の世界に恐怖した結果、自力で結界を張れるようになっていた。
そしてミュゼが力を注がなくなった大結界は力を失い……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる