興味はないが、皇帝になってやるよ

編端みどり

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第十話

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温かいシチューの匂いで、セーラは目を覚ました。

「よお、起きたか?」

「イオス、いい匂いする」

「シチュー温めたぜ。さっき毒見もしておいた。兄貴が部屋に来たから、シチューに何か仕掛けられるかと思ったけど毒入りディナーで満足してくれて助かったぜ」

「聞いていいのか分かんないんだけど、いつも毒殺されかかってたの?」

「以前は週に数回程度だったんだけど、最近は毎食だな。そこまで頻繁に仕掛けてたら食わなくなるって分かんねえもんかねぇ」

イオスは提供される食事は一切手をつけていない。残すと面倒だから、全て焼き尽くして苦しそうにしながら侍女に食器を下げるのが定番だ。対応が面倒な時は、今日のように部屋の外に食器だけを置く。毒が残っていないかもしっかり確認している。一度置いていた食器を舐めてしまった犬が死にかけて大問題になった事があるからだ。その時は、疑われたくないフォスがうまく収めたが、数ヶ月間は暗殺者を毎日仕向けられた。さすがにあんな日々はもう勘弁だとイオスは思う。

「部屋は鍵をかけたし、内扉の前に明日の朝までは炎の幕を張ったから誰も来ねぇよ。シチュー、温めたけど食うか?」

「うん! イオスは料理も出来るんだね」

「あんだけ毒を仕掛けられると安全なもん食いたくなるからな。この生活も長いし、色々作れるからセーラが好きなもの作るぜ。何が食いたい?」

「んー……今はシチュー食べたい!」

「そうか、すぐ用意するから寝てな。全部毒見は済んでるから」

「イオスはさっきまで毒で倒れてたでしょ! 私がやるよ!」

そう言ってセーラはシチューをふたり分用意すると、パンとサラダを並べる。

「一緒に食べよう? イオスはもう食べられる?」

「ああ、もう毒は抜けたら安心してくれ」

「嬉しいなぁ。誰かとご飯食べるのは久しぶりだよ」

「オレもだ。仕事以外ではセーラと食べたのが最後だな」

「そっか。私は家族で食べたのが最後だよ……」

「悪りぃ、思い出させるような事言って」

「ううん! もう大丈夫! イオス、私が今までどうしてたか全部話すね。イオスには嫌な事聞かせちゃうけど、今後の事を考えると話さない訳にはいかないから。私が、もっとフォス様を疑えば良かったんだけど……ごめんなさい」

「いや、それで良かったぜ。セーラが兄貴を全面的に信じたから、セーラは生きていたんだ。ちょっとでも疑ってたら暗殺者に仕立てるなんて面倒な事しないぜ。セーラの遺体をオレに見せるだけで良いんだから」

「……え、もしかして私って結構ギリギリだった?」

「そうだな。セーラが純粋で良かったぜ。酷い事はされなかったか?」

「う、うん。食事と寝床は与えられてたし、暗殺訓練も厳しかったけど怪我したりとかはなかったよ」

「……そうか、良かった」

そう言ってセーラの頭を撫でるイオスは、とても嬉しそうだった。
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