興味はないが、皇帝になってやるよ

編端みどり

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第十七話

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「イオス様、ミッドナイト商会でごさいます。いつもご贔屓頂きありがとうございます」

「ああ、ご苦労。お前たちは、秘密を守るから買い物がしやすい」

「光栄でございます。私たちの経営理念です。例え皇帝陛下であろうとも、イオス様の購入した品は秘密に致します」

「だが、王命であれば漏らすのであろう?」

「……王命は、全国民に通知されて、3日後に発令します。その場合は、申し訳ありませんが逆らう術はわたくし共にはありません」

「分かっている。王命でなければ漏らさない。それだけで充分お前たちから品を買う価値はある」

「光栄です」

イオスがミッドナイト商会を作った理由のひとつは、品物を安心して買いたいから。だから、顧客の買い物履歴は、家族にすら漏らさないよう従業員を教育した。従業員が断る時の言い訳にも出来るように、それを経営理念にした。

ミッドナイト商会が、大きくなったのは秘密は守られ、安心して買い物が出来るからだ。そのかわり、他の商会が裏で行うような怪しい取引は一切やらない。あくまでも、安心安全な商品だけを提供する。

フォスは毒薬などを求めてきた事もあるが、不可能だと断った。もちろん、求めた事すら漏らさなかった。だが、商会のトップはイオスだから、フォスの事は筒抜けだった。

その時の毒薬は、自分に使われたのでイオスはホッとしたものだった。毒を盛られて、良かったと思うのはイオスくらいだろう。

最初は安心して品物を買えていたのだが、すぐにフランツを侍従に付けられて買い物には必ず同行するようになった。

「こちら、新しい従業員でございます。5年前より弊社で働いております」

「ミッドナイト商会は、設立6年ほどほどだろう? ずいぶん若い子が、早くから働いていたのだな」

「マリアと申します。私は両親が死んで村から都会に仕事を探しに行くところを野盗に襲われました。その時助けて頂き、ミッドナイト商会で働かせて貰えるようになったんです」

オドオドとした少女は、セーラだ。あれだけセーラが大好きなイオスですら、別人と思える変貌ぶり。それでも、面影はある。

「……そうか、マリアは苦労したんだな」

「いえ、わたしは幸運でした」

ふたりが交わした会話はそれだけだ。

だがその後、滅多に買い物をしないイオスが週に何度もミッドナイト商会を呼ぶようになった。その事はフォスの耳にも入り、イオスがマリアと親しそうに会話をしていると報告も入ったが、しょせん平民だとフォスの興味を引くことはなかった。
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