興味はないが、皇帝になってやるよ

編端みどり

文字の大きさ
45 / 45
番外編 誰が兄上壊したの?

第十四話

しおりを挟む
「さて、貴族は全員揃っておるな」

「はい、当主または当主代理が全員来ております」

いよいよ皇帝指名の日がやってきた。イオスとフォスは、それぞれ皇帝の右隣と左隣に正装して座っている。進行は宰相であるデュバル公爵。貴族は、各家の代表が全員来ている。投票は、滞りなく進められた。

「投票は終了しましたね。開票致します」

開票は、不正がないようにすぐに同じ場所で行われる。以前はあっさりイオスの支持が過半数を超えたが、今回は接戦だった。

「フォス様125票、イオス様125票 同数です。我々は、どちらが皇帝になっても全力でお支え致します」

宰相であるデュバルが、そう言って跪くと貴族達は全員それに倣った。

「同数か……今まではなかったが、なんとなくこうなる気がしておった。例外ではあるが、皇帝はフォスとイオスの両方を指名する」

「「えっ?!」」

「父上! それはあり得ません! イオスの方が皇帝に向いているに決まっています。イオスは優しいし、民の事を第一に考えています! 僕のように冷酷ではない。皇帝は、イオスが相応しい」

「いや、オレは甘いから兄上の方が皇帝に相応しいです。もちろん、兄上の治世を全力で支えます」

「だからだ」

父の威厳のある声に、フォスもイオスも背筋を正す。

「フォスは皇帝に相応しい判断力があるが、温かみに欠ける。イオスは、国中を見て的確な仕事をするが、確かに甘い。どちらが皇帝になるにも素晴らしいところがあり、欠けたところがある。貴族の支持が高い方を指名しようと思ったが、同数だ。それならふたりで最高権力者となり国家を運営しろ。ひとりでやるより厳しいが、フォスとイオスなら可能だろう。それに……」

「それに?」

「ふたりとも妻が第一なところがあるからな、皇帝にならなかった方が、いつの間にか隠居してしまいそうだ」

「「う……」」

フォスもイオスも、皇帝になりたいわけではなかった。イオスは一度経験しているからこそ大変なのは分かっているし、今のフォスなら皇帝に相応しいから自分はサポートをすれば良いと思っていた。

フォスも、自分のような冷たい人間には皇帝は出来ない。皇帝を経験したイオスが相応しいと思っていた。

どちらも、妻との時間を出来るだけ長く取りたいという欲望があった事は、否定できなかった。

「戴冠式の準備をする。冠もマントもふたつあるからな」

「父上……冠もマントもひとつしかなかった筈では?」

「デュバルが、ふたつ要るかもしれんから作れと言っていたからな。作っておいた」

「「なっ……!」」

「皇帝陛下は支持数が同数に近ければおふたりを指名するつもりだったそうですからな。まさか、完璧に同数とは思いませんでしたが」

そう言って笑うデュバルを見て、フォスとイオスは本当の黒幕を知った。

「……どちらの父上も、手強すぎる……」

「兄上……もう諦めましょう」

「まだまだ若いな。ふたりなら私よりも素晴らしい皇帝になる。皆もふたりの皇帝を支えていってくれ」

前代未聞のふたりの皇帝陛下は、最初は不安視されたが、すぐに受け入れられた。ふたりの意思疎通が損なわれず、意思決定がブレる事がなかったからだ。それどころか、2倍の仕事を可能にした。

真似をして、最高権力者をふたり置いた国もあったが、成功した国はなかった。兄弟でも、双子でも上手くいかなかった。何故フォスとイオスは上手くいくのか、みんなが不思議がった。

ひとりの皇帝陛下は民の為にさまざまな事を行った。道は整備され、子どもは教育を受けられるようになった。民は賢く豊かになり、国はますます豊かになった。

だが、それを快く思わない者もいた。

民を虐げ、私腹を肥やす貴族は簡単には居なくならなかった。

もうひとりの皇帝陛下は、そのような貴族を容赦なく粛正した。特に、サッシャー侯爵家のように貴族は選ばれた血筋だと思い好き勝手していた貴族は、容赦なく挿げ替えられた。サッシャー侯爵家は、平民から能力がある者が継いだが、他の貴族も同様に怠惰な者はどんどん挿げ替えられた。

中には、冤罪だと主張する者も居たが、皇帝陛下は完璧な証拠を揃えており、往生際が悪いと更に罪が重くなった。

貴族の義務は明文化され、無駄に私腹を肥やす事は禁止された。

「義務を果たさない者は貴族を名乗らないでね」

冷たく笑う皇帝陛下を民は讃え、貴族は恐れた。もうひとりの皇帝陛下は、自分ではこんな事は出来ないと兄を讃えた。

国は発展し、ふたりの皇帝陛下は民にも慕われた。皇帝陛下はふたりとも愛妻家で、憧れた民が妻を大事にするので国には愛妻家が増えたという。
しおりを挟む

この作品は感想を受け付けておりません。

あなたにおすすめの小説

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

父が再婚しました

Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に 父が再婚しました

とっていただく責任などありません

まめきち
恋愛
騎士団で働くヘイゼルは魔物の討伐の際に、 団長のセルフイスを庇い、魔法陣を踏んでしまう。 この魔法陣は男性が踏むと女性に転換するもので、女性のヘイゼルにはほとんど影響のない物だった。だか国からは保証金が出たので、騎士を辞め、念願の田舎暮らしをしようとしたが!? ヘイゼルの事をずっと男性だと思っていたセルフイスは自分のせいでヘイゼルが職を失っただと思って来まい。 責任を取らなければとセルフイスから、 追いかけられる羽目に。

地味な薬草師だった俺が、実は村の生命線でした

阿里
ファンタジー
恋人に裏切られ、村を追い出された青年エド。彼の地味な仕事は誰にも評価されず、ただの「役立たず」として切り捨てられた。だが、それは間違いだった。旅の魔術師エリーゼと出会った彼は、自分の能力が秘めていた真の価値を知る。魔術と薬草を組み合わせた彼の秘薬は、やがて王国を救うほどの力となり、エドは英雄として名を馳せていく。そして、彼が去った村は、彼がいた頃には気づかなかった「地味な薬」の恩恵を失い、静かに破滅へと向かっていくのだった。

【完結】私の見る目がない?えーっと…神眼持ってるんですけど、彼の良さがわからないんですか?じゃあ、家を出ていきます。

西東友一
ファンタジー
えっ、彼との結婚がダメ? なぜです、お父様? 彼はイケメンで、知性があって、性格もいい?のに。 「じゃあ、家を出ていきます」

友人の結婚式で友人兄嫁がスピーチしてくれたのだけど修羅場だった

海林檎
恋愛
え·····こんな時代錯誤の家まだあったんだ····? 友人の家はまさに嫁は義実家の家政婦と言った風潮の生きた化石でガチで引いた上での修羅場展開になった話を書きます·····(((((´°ω°`*))))))

【完結】番としか子供が産まれない世界で

さくらもち
恋愛
番との間にしか子供が産まれない世界に産まれたニーナ。 何故か親から要らない子扱いされる不遇な子供時代に番と言う概念すら知らないまま育った。 そんなニーナが番に出会うまで 4話完結 出会えたところで話は終わってます。

「魔道具の燃料でしかない」と言われた聖女が追い出されたので、結界は消えます

七辻ゆゆ
ファンタジー
聖女ミュゼの仕事は魔道具に力を注ぐだけだ。そうして国を覆う大結界が発動している。 「ルーチェは魔道具に力を注げる上、癒やしの力まで持っている、まさに聖女だ。燃料でしかない平民のおまえとは比べようもない」 そう言われて、ミュゼは城を追い出された。 しかし城から出たことのなかったミュゼが外の世界に恐怖した結果、自力で結界を張れるようになっていた。 そしてミュゼが力を注がなくなった大結界は力を失い……

処理中です...