12 / 32
第一章 うちの娘は、世界一美しいわ!
12.夫婦喧嘩
しおりを挟む
「宰相の様子がおかしいからだ。やたら君を褒めちぎる。美しさを武器に国を乗っ取る気だろう。このまま国を君に任せる訳にはいかん」
やっぱりそうか。彼はわたくしを警戒している。出会ったばかりの頃の宰相や騎士団長と同じ目をしていたもの。
「結婚式の日に、わたくしに仕事をしろと命じて全ての権限を渡したでしょう? 権限を返せと?」
「ああそうだ」
「良いですよ。ただし、白雪の養育権は渡しません。冷遇するような父親に任せられませんから」
「白雪は……マルガレータは私の大事な娘だ」
「大事と言う割には放置でしたわよね?」
「病弱だと聞いていたし、構わない方が良いと思って……」
「責任を放棄した言い訳ですか? わたくしも白雪が挨拶に来てくれるまであの子の存在を知らなかったのですよ。おかしいでしょう」
「宰相が、再婚相手は気難しいから、子どもがいると伝えない方が良いと……」
ああ、どうしてこんな男の愛を欲しがっていたのかしら。
「人のせいにして、言い訳ばかりですね。それで、奥様が亡くなったのは白雪のせいですか?」
「そんな事言ってない!」
「言ってないけど、思ってますわよね? 宰相がわたくしを試した事、白雪を大事にするわたくしを信頼した事、使用人の態度からも、貴方が白雪を大事にしてなかったのは分かります」
「違う……そんな事はない……!」
「じゃあどうして、わたくしに白雪を紹介しなかったのですか?」
「だからそれは……宰相が……!」
「いい加減、人のせいにするのをおやめなさい!」
「お前に私の何が分かる!」
「分かりませんわよ。お会いするのは3回目、まともに会話したのは今日が初めてなんですから。だけど、白雪の事は貴方より分かる自信がありますわ!」
「白雪は私の子だ!」
「わたくしの子でもあります! 貴方が奥様を偲んで嘆いている間、使用人や貴族達が白雪を蔑ろにしていたのですよ! 貴方が、白雪を放置していたからです。わたくしが命じなければ、最低な家庭教師は今も白雪に鞭を振るっていたでしょうし、料理長は粗食しか出せないままだったでしょうし、使用人の半分は白雪を馬鹿にしたままだったでしょう! そんな人に可愛い娘を任せられません!」
「それは……」
「正直に仰って下さい。貴方は、白雪を……マルガレータをどう思っておられるのですか?」
「分からない」
お父様もそうだった。わたくしは、単なる駒として扱われるだけ。お兄様は可愛がってくれたけど、お父様はわたくしに無関心だったわ。
この男も、同じなんだ。
白雪の事を、気にしてなかった。食事の命令は、単純に亡き奥様と同じ事をしろという意味しかなかったんだわ。
でも、料理長の命令を解除しているし、わたくしから白雪を守ろうとしている。それなら……わたくしが物語の通り悪役になれば、白雪は実の父親から愛されるのではないかしら。
やっぱりそうか。彼はわたくしを警戒している。出会ったばかりの頃の宰相や騎士団長と同じ目をしていたもの。
「結婚式の日に、わたくしに仕事をしろと命じて全ての権限を渡したでしょう? 権限を返せと?」
「ああそうだ」
「良いですよ。ただし、白雪の養育権は渡しません。冷遇するような父親に任せられませんから」
「白雪は……マルガレータは私の大事な娘だ」
「大事と言う割には放置でしたわよね?」
「病弱だと聞いていたし、構わない方が良いと思って……」
「責任を放棄した言い訳ですか? わたくしも白雪が挨拶に来てくれるまであの子の存在を知らなかったのですよ。おかしいでしょう」
「宰相が、再婚相手は気難しいから、子どもがいると伝えない方が良いと……」
ああ、どうしてこんな男の愛を欲しがっていたのかしら。
「人のせいにして、言い訳ばかりですね。それで、奥様が亡くなったのは白雪のせいですか?」
「そんな事言ってない!」
「言ってないけど、思ってますわよね? 宰相がわたくしを試した事、白雪を大事にするわたくしを信頼した事、使用人の態度からも、貴方が白雪を大事にしてなかったのは分かります」
「違う……そんな事はない……!」
「じゃあどうして、わたくしに白雪を紹介しなかったのですか?」
「だからそれは……宰相が……!」
「いい加減、人のせいにするのをおやめなさい!」
「お前に私の何が分かる!」
「分かりませんわよ。お会いするのは3回目、まともに会話したのは今日が初めてなんですから。だけど、白雪の事は貴方より分かる自信がありますわ!」
「白雪は私の子だ!」
「わたくしの子でもあります! 貴方が奥様を偲んで嘆いている間、使用人や貴族達が白雪を蔑ろにしていたのですよ! 貴方が、白雪を放置していたからです。わたくしが命じなければ、最低な家庭教師は今も白雪に鞭を振るっていたでしょうし、料理長は粗食しか出せないままだったでしょうし、使用人の半分は白雪を馬鹿にしたままだったでしょう! そんな人に可愛い娘を任せられません!」
「それは……」
「正直に仰って下さい。貴方は、白雪を……マルガレータをどう思っておられるのですか?」
「分からない」
お父様もそうだった。わたくしは、単なる駒として扱われるだけ。お兄様は可愛がってくれたけど、お父様はわたくしに無関心だったわ。
この男も、同じなんだ。
白雪の事を、気にしてなかった。食事の命令は、単純に亡き奥様と同じ事をしろという意味しかなかったんだわ。
でも、料理長の命令を解除しているし、わたくしから白雪を守ろうとしている。それなら……わたくしが物語の通り悪役になれば、白雪は実の父親から愛されるのではないかしら。
18
あなたにおすすめの小説
そんなに義妹が大事なら、番は解消してあげます。さようなら。
雪葉
恋愛
貧しい子爵家の娘であるセルマは、ある日突然王国の使者から「あなたは我が国の竜人の番だ」と宣言され、竜人族の住まう国、ズーグへと連れて行かれることになる。しかし、連れて行かれた先でのセルマの扱いは散々なものだった。番であるはずのウィルフレッドには既に好きな相手がおり、終始冷たい態度を取られるのだ。セルマはそれでも頑張って彼と仲良くなろうとしたが、何もかもを否定されて終わってしまった。
その内、セルマはウィルフレッドとの番解消を考えるようになる。しかし、「竜人族からしか番関係は解消できない」と言われ、また絶望の中に叩き落とされそうになったその時──、セルマの前に、一人の手が差し伸べられるのであった。
*相手を大事にしなければ、そりゃあ見捨てられてもしょうがないよね。っていう当然の話。
子供にしかモテない私が異世界転移したら、子連れイケメンに囲まれて逆ハーレム始まりました
もちもちのごはん
恋愛
地味で恋愛経験ゼロの29歳OL・春野こはるは、なぜか子供にだけ異常に懐かれる特異体質。ある日突然異世界に転移した彼女は、育児に手を焼くイケメンシングルファザーたちと出会う。泣き虫姫や暴れん坊、野生児たちに「おねえしゃん大好き!!」とモテモテなこはるに、彼らのパパたちも次第に惹かれはじめて……!? 逆ハーレム? ざまぁ? そんなの知らない!私はただ、子供たちと平和に暮らしたいだけなのに――!
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
【改稿版】夫が男色になってしまったので、愛人を探しに行ったら溺愛が待っていました
妄夢【ピッコマノベルズ連載中】
恋愛
外観は赤髪で派手で美人なアーシュレイ。
同世代の女の子とはうまく接しられず、幼馴染のディートハルトとばかり遊んでいた。
おかげで男をたぶらかす悪女と言われてきた。しかし中身はただの魔道具オタク。
幼なじみの二人は親が決めた政略結婚。義両親からの圧力もあり、妊活をすることに。
しかしいざ夜に挑めばあの手この手で拒否する夫。そして『もう、女性を愛することは出来ない!』とベットの上で謝られる。
実家の援助をしてもらってる手前、離婚をこちらから申し込めないアーシュレイ。夫も誰かとは結婚してなきゃいけないなら、君がいいと訳の分からないことを言う。
それなら、愛人探しをすることに。そして、出会いの場の夜会にも何故か、毎回追いかけてきてつきまとってくる。いったいどういうつもりですか!?そして、男性のライバル出現!? やっぱり男色になっちゃたの!?
貴方なんて大嫌い
ララ愛
恋愛
婚約をして5年目でそろそろ結婚の準備の予定だったのに貴方は最近どこかの令嬢と
いつも一緒で私の存在はなんだろう・・・2人はむつまじく愛し合っているとみんなが言っている
それなら私はもういいです・・・貴方なんて大嫌い
最愛の番に殺された獣王妃
望月 或
恋愛
目の前には、最愛の人の憎しみと怒りに満ちた黄金色の瞳。
彼のすぐ後ろには、私の姿をした聖女が怯えた表情で口元に両手を当てこちらを見ている。
手で隠しているけれど、その唇が堪え切れず嘲笑っている事を私は知っている。
聖女の姿となった私の左胸を貫いた彼の愛剣が、ゆっくりと引き抜かれる。
哀しみと失意と諦めの中、私の身体は床に崩れ落ちて――
突然彼から放たれた、狂気と絶望が入り混じった慟哭を聞きながら、私の思考は止まり、意識は閉ざされ永遠の眠りについた――はずだったのだけれど……?
「憐れなアンタに“選択”を与える。このままあの世に逝くか、別の“誰か”になって新たな人生を歩むか」
謎の人物の言葉に、私が選択したのは――
無表情な黒豹騎士に懐かれたら、元の世界に戻れなくなった私の話を切実に聞いて欲しい!
カントリー
恋愛
「懐かれた時はネコちゃんみたいで可愛いなと思った時期がありました。」
でも懐かれたのは、獲物を狙う肉食獣そのものでした。by大空都子。
大空都子(おおぞら みやこ)。食べる事や料理をする事が大好きな小太した女子高校生。
今日も施設の仲間に料理を振るうため、買い出しに外を歩いていた所、暴走車両により交通事故に遭い異世界へ転移してしまう。
ダーク
「…美味そうだな…」ジュル…
都子「あっ…ありがとうございます!」
(えっ…作った料理の事だよね…)
元の世界に戻るまで、都子こと「ヨーグル・オオゾラ」はクモード城で料理人として働く事になるが…
これは大空都子が黒豹騎士ダーク・スカイに懐かれ、最終的には逃げられなくなるお話。
小説の「異世界でお菓子屋さんを始めました!」から20年前の物語となります。
辺境のスローライフを満喫したいのに、料理が絶品すぎて冷酷騎士団長に囲い込まれました
腐ったバナナ
恋愛
異世界に転移した元会社員のミサキは、現代の調味料と調理技術というチート能力を駆使し、辺境の森で誰にも邪魔されない静かなスローライフを送ることを目指していた。
しかし、彼女の作る絶品の料理の香りは、辺境を守る冷酷な「鉄血」騎士団長ガイウスを引き寄せてしまった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる