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8.気付いた気持ち
トムは真っ赤な顔のまま、俯いている。
「ねぇトム、どうしたの?」
「お嬢様は、あの時の約束を覚えていますか?」
「もちろん覚えてるわ。わたくしがアルフレッドの婚約者になって城に行く前に交わした約束の事よね?」
「そうです。お嬢様は国の為、民の為、私を守る為に頑張ると言って下さいましたよね?」
「ええ、言ったわ。あの時の約束があったから、辛くても頑張ろうと思えたの」
「……なら、私の気持ちを……ああいや……その……」
「昔のように喋ってくれて構わないわよ。今なら誰もいないし、婚約もなくなるんだから王家の為に頑張る必要もないし」
「あー……もう……」
「トムが男爵になったなんて知らなかったわ。うちの仕事は辞めちゃったの?」
「いえ、辞めてません。けど子爵になったら辞めるしかないので、叙爵をお受けするか迷っていました。家は兄貴が継ぎましたし、旦那様からも自由にして良いとお言葉を頂いていますが、この家を離れるのが辛くて。けど、たった今決めました。叙爵をお受けして子爵になります」
「トムは昔からなんでもできたもんね。ねぇ、今だけ敬語をやめてくれない? 今くらい昔に戻って話しましょうよ。ここを出たらまた監視されちゃうし。お父様達が来るまで、今だけで良いから」
「分かった。あのさ、ミランダ」
「なぁに? トム」
昔のような口調に戻った幼馴染の姿が嬉しくて、微笑むミランダ。トムは相変わらず真っ赤な顔のまま、整った髪をガシガシと掻いた。
「あの時の約束、覚えてるんだよな?」
「うん」
「ミランダは、民と国と、俺の為に頑張るって約束してくれたよな?」
「うん。わたくし、頑張ったと思うの。褒めて」
「ああ、褒める。褒めまくってやるよ。ミランダはすげえ頑張ったよ。頑張りすぎだって何度思ったか……なぁ、なんで俺の為に頑張るなんて言ったんだ?」
「そりゃ、トムは大事なお友達だし……」
「お友達かよ! くっそ! 勘違いしてた俺……恥ずい……」
「トム?」
「俺……めちゃくちゃ勘違いしてんじゃんか……」
「トム? 勘違いって何?」
「なんでもねぇ」
「なんで後ろ向いちゃうの!」
「ミランダが勘違いさせるような事言うからだろ!」
「なにが悪かったか分からない! ちゃんと教えてよ!」
「自分で考えろよ!」
「やだ! 教えてよ!」
「ミランダはいつもそうだ。すぐ諦めて俺に答えを聞こうとする」
「だって! こんなふうに話せるのは今だけじゃない! ちょっとくらい昔に戻っても良いでしょ。もう、色々考えるのは疲れたの」
「そうだよな。ずっと監視されて、馬鹿の尻拭いさせられて……なぁ、頑張ったのは民と国の為と……俺の為だったんだよな?」
「そうよ」
「なんで、旦那様達じゃなくて、俺の為って言ったんだ?」
「だって……あれ……なんで……」
「そんなふうに言われたら、俺はミランダの特別だって自惚れても構わないよな?」
大人になった幼馴染は、昔と変わらない意地悪な笑みを浮かべ微笑んだ。ミランダの頬が赤く染まり、鼓動が早くなっていく。
「……あ……違う……いや……違わなくて……えっと……」
「その反応、今気付いたろ。鈍いのは昔から変わらないな。俺はミランダにああ言われてから、いや、その前からミランダが好きだった。けどまぁ、身分が違うし、王太子妃になるって知って……諦めたんだよ。諦めたのに、最後の最後にあんな事言いやがって。おかげで、諦められなくなっちまっただろうが。貴族になればいつかミランダと一緒になれるかもしれないなんて、大それた夢を見ちまうくらいには諦めきれなくてさ、このザマだ。責任取ってくれよ」
「せせせ……責任?!」
「ミランダは、俺が嫌いか?」
「そんなわけないじゃない! 好きよ! 大好き!」
そう言った瞬間、ミランダは初めて自分の気持ちを自覚した。
「俺もミランダが好きだ。いや、好きなんて言葉じゃ言い尽くせない。愛してるよ」
「……わたくしも、どうやらトムが好き……ううん。トムを愛していたみたい……」
「ねぇトム、どうしたの?」
「お嬢様は、あの時の約束を覚えていますか?」
「もちろん覚えてるわ。わたくしがアルフレッドの婚約者になって城に行く前に交わした約束の事よね?」
「そうです。お嬢様は国の為、民の為、私を守る為に頑張ると言って下さいましたよね?」
「ええ、言ったわ。あの時の約束があったから、辛くても頑張ろうと思えたの」
「……なら、私の気持ちを……ああいや……その……」
「昔のように喋ってくれて構わないわよ。今なら誰もいないし、婚約もなくなるんだから王家の為に頑張る必要もないし」
「あー……もう……」
「トムが男爵になったなんて知らなかったわ。うちの仕事は辞めちゃったの?」
「いえ、辞めてません。けど子爵になったら辞めるしかないので、叙爵をお受けするか迷っていました。家は兄貴が継ぎましたし、旦那様からも自由にして良いとお言葉を頂いていますが、この家を離れるのが辛くて。けど、たった今決めました。叙爵をお受けして子爵になります」
「トムは昔からなんでもできたもんね。ねぇ、今だけ敬語をやめてくれない? 今くらい昔に戻って話しましょうよ。ここを出たらまた監視されちゃうし。お父様達が来るまで、今だけで良いから」
「分かった。あのさ、ミランダ」
「なぁに? トム」
昔のような口調に戻った幼馴染の姿が嬉しくて、微笑むミランダ。トムは相変わらず真っ赤な顔のまま、整った髪をガシガシと掻いた。
「あの時の約束、覚えてるんだよな?」
「うん」
「ミランダは、民と国と、俺の為に頑張るって約束してくれたよな?」
「うん。わたくし、頑張ったと思うの。褒めて」
「ああ、褒める。褒めまくってやるよ。ミランダはすげえ頑張ったよ。頑張りすぎだって何度思ったか……なぁ、なんで俺の為に頑張るなんて言ったんだ?」
「そりゃ、トムは大事なお友達だし……」
「お友達かよ! くっそ! 勘違いしてた俺……恥ずい……」
「トム?」
「俺……めちゃくちゃ勘違いしてんじゃんか……」
「トム? 勘違いって何?」
「なんでもねぇ」
「なんで後ろ向いちゃうの!」
「ミランダが勘違いさせるような事言うからだろ!」
「なにが悪かったか分からない! ちゃんと教えてよ!」
「自分で考えろよ!」
「やだ! 教えてよ!」
「ミランダはいつもそうだ。すぐ諦めて俺に答えを聞こうとする」
「だって! こんなふうに話せるのは今だけじゃない! ちょっとくらい昔に戻っても良いでしょ。もう、色々考えるのは疲れたの」
「そうだよな。ずっと監視されて、馬鹿の尻拭いさせられて……なぁ、頑張ったのは民と国の為と……俺の為だったんだよな?」
「そうよ」
「なんで、旦那様達じゃなくて、俺の為って言ったんだ?」
「だって……あれ……なんで……」
「そんなふうに言われたら、俺はミランダの特別だって自惚れても構わないよな?」
大人になった幼馴染は、昔と変わらない意地悪な笑みを浮かべ微笑んだ。ミランダの頬が赤く染まり、鼓動が早くなっていく。
「……あ……違う……いや……違わなくて……えっと……」
「その反応、今気付いたろ。鈍いのは昔から変わらないな。俺はミランダにああ言われてから、いや、その前からミランダが好きだった。けどまぁ、身分が違うし、王太子妃になるって知って……諦めたんだよ。諦めたのに、最後の最後にあんな事言いやがって。おかげで、諦められなくなっちまっただろうが。貴族になればいつかミランダと一緒になれるかもしれないなんて、大それた夢を見ちまうくらいには諦めきれなくてさ、このザマだ。責任取ってくれよ」
「せせせ……責任?!」
「ミランダは、俺が嫌いか?」
「そんなわけないじゃない! 好きよ! 大好き!」
そう言った瞬間、ミランダは初めて自分の気持ちを自覚した。
「俺もミランダが好きだ。いや、好きなんて言葉じゃ言い尽くせない。愛してるよ」
「……わたくしも、どうやらトムが好き……ううん。トムを愛していたみたい……」
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