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17.アルフレッドの愛
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「ミランダ、遅かったじゃないか」
「アルフレッド……そちらの方は?」
「彼女は、ソフィア・メディス。メディス男爵の一人娘だ。人気の小説家でもある」
「はじめまして。ミランダ様」
ソフィアが挨拶をすると、周囲が騒ついた。初対面の場合、目上の者が先に挨拶をするのがこの国のマナー。まさか、王太子の婚約者が口を開く前に挨拶する男爵令嬢が存在するなんて誰も思わない。
ソフィアの美しさに見惚れていた男性達は、一気に引いていった。ソフィアの噂を知る貴族や、ソフィアを実際に見たことがある貴族達が眉を顰めて小声で噂話を始めた。
ヒースはわざとため息を吐き、険しい表情でソフィアを睨んだ。ヒースの怒りに気付いたアルフレッドはイライラしたが、怒ったヒースがミランダを連れ去ってしまえば計画が台無しだ。
予想外の行動をしたソフィアを睨んでから、アルフレッドは優しく微笑んだ。ソフィアは一瞬だけ怯えたが、アルフレッドの笑顔に安心している様子だ。
ミランダは、またかと思った。これがアルフレッドのやり方だ。
一瞬だけ見える恐怖は、常に存在する恐怖と違い予想がつかない。頭を働かせ、なにが悪かったか探すようになる。知らぬうちに、アルフレッドの意に沿う行動を取るようになる。アルフレッドがため息を吐いて仕事が多いと呟くだけで、ミランダは仕事を手伝うようになった。
国王がアルフレッドの仕事を手伝えと命じれば、ミランダが躊躇う理由はなくなった。
だが、ミランダは優秀過ぎた。手伝いの域を超えたミランダの活躍は、アルフレッドのプライドを傷つけた。
優秀な婚約者がいるなら、自分がもっと優秀になれるよう努力するべきだと考えるヒースやトムのような考えはアルフレッドにはない。
ただミランダを疎ましく思う心だけが膨らんでいった頃、母からソフィアを紹介された。愛読書の作家と会えた母はテンションが高く、ソフィアをすっかり気に入った様子だった。いずれソフィアを側妃にと母が言った時、閃いた。ミランダが妃になれば、これからも自分のプライドはズタズタになるだろう。だが、この子が妃ならどうだ?
母が気に入っていて、見た目も良く、小説という平民達を操る手段も持っているけれど自分より賢くない令嬢にアルフレッドの庇護欲は刺激された。
最初は違った。まるで小説の主人公のようにミランダからいじめられると訴えるソフィアを馬鹿にしていた。ミランダはいじめをするほど暇ではないし、常に影を付けて監視している。王家の影が婚約者に付くことくらい、貴族なら想像できるだろうに。小説家の割に想像力が足りないのだろうかと思っていた。
だがいつしか自分に甘えてくるソフィアを可愛いと思うようになった。完璧なミランダと比べ、ソフィアは隙があり操りやすい。ソフィアを褒めると僅かにミランダの顔が歪むのも心地良かった。ソフィアなら、ミランダのように自分を超えることはないだろう。ああ、自分が求めているのはこんな令嬢だったんだ。側妃なんて可哀想だ。正妃にして、常に側に置いておきたい。そう思った。
その気持ちが愛なのか、それとも違うものなのかアルフレッドには分からなかった。だが、愛だと思う事にした。ソフィアの恋愛小説はいつも王子様が可哀想な主人公を守る。小説の台詞を真似るだけで、頬を染めるソフィアは単純でわかりやすい。ソフィアの笑顔を見ると、幸せな気分になる。
父が母の我儘を聞くように、自分もソフィアの我儘を聞こう。そして、父と同じようにソフィアを叱ろう。ミランダは叱るところなんてない。だからつまらない。
ソフィアにプロポーズをしたのはついさっきだが、調子に乗るのが早すぎるのは良くない。身分は高位貴族の養子にすればいいが、最低限のマナーは覚えさせないと。アルフレッドはもう一度ソフィアを睨んだ。
予想通り怯えるソフィアに、アルフレッドの支配欲は満たされた。
「アルフレッド……そちらの方は?」
「彼女は、ソフィア・メディス。メディス男爵の一人娘だ。人気の小説家でもある」
「はじめまして。ミランダ様」
ソフィアが挨拶をすると、周囲が騒ついた。初対面の場合、目上の者が先に挨拶をするのがこの国のマナー。まさか、王太子の婚約者が口を開く前に挨拶する男爵令嬢が存在するなんて誰も思わない。
ソフィアの美しさに見惚れていた男性達は、一気に引いていった。ソフィアの噂を知る貴族や、ソフィアを実際に見たことがある貴族達が眉を顰めて小声で噂話を始めた。
ヒースはわざとため息を吐き、険しい表情でソフィアを睨んだ。ヒースの怒りに気付いたアルフレッドはイライラしたが、怒ったヒースがミランダを連れ去ってしまえば計画が台無しだ。
予想外の行動をしたソフィアを睨んでから、アルフレッドは優しく微笑んだ。ソフィアは一瞬だけ怯えたが、アルフレッドの笑顔に安心している様子だ。
ミランダは、またかと思った。これがアルフレッドのやり方だ。
一瞬だけ見える恐怖は、常に存在する恐怖と違い予想がつかない。頭を働かせ、なにが悪かったか探すようになる。知らぬうちに、アルフレッドの意に沿う行動を取るようになる。アルフレッドがため息を吐いて仕事が多いと呟くだけで、ミランダは仕事を手伝うようになった。
国王がアルフレッドの仕事を手伝えと命じれば、ミランダが躊躇う理由はなくなった。
だが、ミランダは優秀過ぎた。手伝いの域を超えたミランダの活躍は、アルフレッドのプライドを傷つけた。
優秀な婚約者がいるなら、自分がもっと優秀になれるよう努力するべきだと考えるヒースやトムのような考えはアルフレッドにはない。
ただミランダを疎ましく思う心だけが膨らんでいった頃、母からソフィアを紹介された。愛読書の作家と会えた母はテンションが高く、ソフィアをすっかり気に入った様子だった。いずれソフィアを側妃にと母が言った時、閃いた。ミランダが妃になれば、これからも自分のプライドはズタズタになるだろう。だが、この子が妃ならどうだ?
母が気に入っていて、見た目も良く、小説という平民達を操る手段も持っているけれど自分より賢くない令嬢にアルフレッドの庇護欲は刺激された。
最初は違った。まるで小説の主人公のようにミランダからいじめられると訴えるソフィアを馬鹿にしていた。ミランダはいじめをするほど暇ではないし、常に影を付けて監視している。王家の影が婚約者に付くことくらい、貴族なら想像できるだろうに。小説家の割に想像力が足りないのだろうかと思っていた。
だがいつしか自分に甘えてくるソフィアを可愛いと思うようになった。完璧なミランダと比べ、ソフィアは隙があり操りやすい。ソフィアを褒めると僅かにミランダの顔が歪むのも心地良かった。ソフィアなら、ミランダのように自分を超えることはないだろう。ああ、自分が求めているのはこんな令嬢だったんだ。側妃なんて可哀想だ。正妃にして、常に側に置いておきたい。そう思った。
その気持ちが愛なのか、それとも違うものなのかアルフレッドには分からなかった。だが、愛だと思う事にした。ソフィアの恋愛小説はいつも王子様が可哀想な主人公を守る。小説の台詞を真似るだけで、頬を染めるソフィアは単純でわかりやすい。ソフィアの笑顔を見ると、幸せな気分になる。
父が母の我儘を聞くように、自分もソフィアの我儘を聞こう。そして、父と同じようにソフィアを叱ろう。ミランダは叱るところなんてない。だからつまらない。
ソフィアにプロポーズをしたのはついさっきだが、調子に乗るのが早すぎるのは良くない。身分は高位貴族の養子にすればいいが、最低限のマナーは覚えさせないと。アルフレッドはもう一度ソフィアを睨んだ。
予想通り怯えるソフィアに、アルフレッドの支配欲は満たされた。
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