婚約破棄計画書を見つけた悪役令嬢は

編端みどり

文字の大きさ
26 / 49

26.誰も来ない

「バーナード侯爵家の屋敷に、誰もいません」

「なんだと! どういうことだ……。いくらなんでも戻るのが早すぎるだろう。仕方ない、領地に早馬を走らせろ! ミランダの居場所をなんとしても把握するんだ!」

「はっ! かしこまりました!」

「どこに行ったんだ……。はっ! 真珠は?!」

 国王は大慌てで影を呼んだ。ところが、いつもすぐに現れる影は誰一人現れなかった。

「……なぜ、誰も来ないのだ……まさか……」




「今頃、兄上は大慌てだろうね」

「この展開を予想しておられたのですか?」

「まさか、こんな未来予想外だよ。影が全員、こちらに付くなんてね」

「ご機嫌ですけど、簡単に主人を鞍替えするような人達を信用していいのですか?」

「辛辣だねぇ。トム」

「思った事をなんでも言えとお命じになったのはエドガー様でしょう?」

「まぁね。けどなんか嬉しくてさ。こっちからお願いしても君みたいになんでも言ってくれる人は少ないから」

「俺は平民でしたから貴族のめんどくさいしがらみはありませんし」

「言うね。今じゃ公爵子息なのに」

「あれも、エドガー様のおかげでしょう? あ、おかげでミランダと婚約が調いました。ありがとうございます。三ヶ月後に公表します。それまで、バーナード侯爵家は無人です」

「どこに隠れたのかな?」

「それは、秘密です」

「そっか。連絡が取れるなら、戻って来たら大々的に真珠の養殖をお願いしたいと伝えてくれるかな?」

「もちろんです。お気遣いありがとうございます」

「良かったね。これでトムも心置きなく影の仕事に専念できるね」

「そうです……ね」

「何その顔? 不満でもある?」

「いや、不満は一切ないです。ただ、ちょっと体力がもたないだけで」

「トムはみんなの評判もいいよ。いい訓練相手ができたってみんな大喜びさ」

「その訓練がキツイです」

「強くなれば、ミランダを守れるよ」

「そうでした。全力でやりますから、これからもよろしくお願いします!」

「本当に単純だな」

「そのくらいの方が裏を考えなくていいから楽でしょう?」

「それもそうか、トムの大事な人達を守ってやればいいだけだからな」

「ミランダに苦労をさせたくないのでそれなりの給金は下さいよ」

「もちろん。さて、給金を払うのだから、そろそろ働いてもらおう」

「喜んで。どこに行けばいいですか?」

「王城に侵入して、アルフレッドの幽閉先を調べて。ついでに、あの子の居場所も調査して」

「多くないですか?」

「影は増えたけど、まだ単独行動させられないからさ。しばらくセルのメンバーは動けない」

「それってつまり……」

「調査関係は、ほとんどトムにお願いする事になるね。君はまだ正式なメンバーじゃないからさ。色々と都合がいいのさ」

「人使い粗すぎでしょうよ」

「報酬は充分前払いしていると思うけど」

「そうですね。頂いた前払い分くらいは働きますよ」

「裁定者に気を付けてね」

「誰か分からないのでしょう? どう気を付ければ?」

「気を抜かなければ良い。トムなら、異常に気付ける筈だ」

「ずいぶん信用して頂いたようで。期待に応えられるように頑張りますよ」
感想 78

あなたにおすすめの小説

10年もあなたに尽くしたのに婚約破棄ですか?

水空 葵
恋愛
 伯爵令嬢のソフィア・キーグレスは6歳の時から10年間、婚約者のケヴィン・パールレスに尽くしてきた。  けれど、その努力を裏切るかのように、彼の隣には公爵令嬢が寄り添うようになっていて、婚約破棄を提案されてしまう。  悪夢はそれで終わらなかった。  ケヴィンの隣にいた公爵令嬢から数々の嫌がらせをされるようになってしまう。  嵌められてしまった。  その事実に気付いたソフィアは身の安全のため、そして復讐のために行動を始めて……。  裏切られてしまった令嬢が幸せを掴むまでのお話。 ※他サイト様でも公開中です。 2023/03/09 HOT2位になりました。ありがとうございます。 本編完結済み。番外編を不定期で更新中です。

婚約者をないがしろにする人はいりません

にいるず
恋愛
 公爵令嬢ナリス・レリフォルは、侯爵子息であるカリロン・サクストンと婚約している。カリロンは社交界でも有名な美男子だ。それに引き換えナリスは平凡でとりえは高い身分だけ。カリロンは、社交界で浮名を流しまくっていたものの今では、唯一の女性を見つけたらしい。子爵令嬢のライザ・フュームだ。  ナリスは今日の王家主催のパーティーで決意した。婚約破棄することを。侯爵家でもないがしろにされ婚約者からも冷たい仕打ちしか受けない。もう我慢できない。今でもカリロンとライザは誰はばかることなくいっしょにいる。そのせいで自分は周りに格好の話題を提供して、今日の陰の主役になってしまったというのに。  そう思っていると、昔からの幼馴染であるこの国の次期国王となるジョイナス王子が、ナリスのもとにやってきた。どうやらダンスを一緒に踊ってくれるようだ。この好奇の視線から助けてくれるらしい。彼には隣国に婚約者がいる。昔は彼と婚約するものだと思っていたのに。

真実の愛がどうなろうと関係ありません。

希猫 ゆうみ
恋愛
伯爵令息サディアスはメイドのリディと恋に落ちた。 婚約者であった伯爵令嬢フェルネは無残にも婚約を解消されてしまう。 「僕はリディと真実の愛を貫く。誰にも邪魔はさせない!」 サディアスの両親エヴァンズ伯爵夫妻は激怒し、息子を勘当、追放する。 それもそのはずで、フェルネは王家の血を引く名門貴族パートランド伯爵家の一人娘だった。 サディアスからの一方的な婚約解消は決して許されない裏切りだったのだ。 一ヶ月後、愛を信じないフェルネに新たな求婚者が現れる。 若きバラクロフ侯爵レジナルド。 「あら、あなたも真実の愛を実らせようって仰いますの?」 フェルネの曾祖母シャーリンとレジナルドの祖父アルフォンス卿には悲恋の歴史がある。 「子孫の我々が結婚しようと関係ない。聡明な妻が欲しいだけだ」 互いに塩対応だったはずが、気づくとクーデレ夫婦になっていたフェルネとレジナルド。 その頃、真実の愛を貫いたはずのサディアスは…… (予定より長くなってしまった為、完結に伴い短編→長編に変更しました)

【完結】都合のいい女ではありませんので

風見ゆうみ
恋愛
アルミラ・レイドック侯爵令嬢には伯爵家の次男のオズック・エルモードという婚約者がいた。 わたしと彼は、現在、遠距離恋愛中だった。 サプライズでオズック様に会いに出かけたわたしは彼がわたしの親友と寄り添っているところを見てしまう。 「アルミラはオレにとっては都合のいい女でしかない」 レイドック侯爵家にはわたししか子供がいない。 オズック様は侯爵という爵位が目的で婿養子になり、彼がレイドック侯爵になれば、わたしを捨てるつもりなのだという。 親友と恋人の会話を聞いたわたしは彼らに制裁を加えることにした。 ※独特の異世界の世界観であり、設定はゆるゆるで、ご都合主義です。 ※誤字脱字など見直して気を付けているつもりですが、やはりございます。申し訳ございません。教えていただけますと有り難いです。

我が家の乗っ取りを企む婚約者とその幼馴染みに鉄槌を下します!

真理亜
恋愛
とある侯爵家で催された夜会、伯爵令嬢である私ことアンリエットは、婚約者である侯爵令息のギルバートと逸れてしまい、彼の姿を探して庭園の方に足を運んでいた。 そこで目撃してしまったのだ。 婚約者が幼馴染みの男爵令嬢キャロラインと愛し合っている場面を。しかもギルバートは私の家の乗っ取りを企んでいるらしい。 よろしい! おバカな二人に鉄槌を下しましょう!  長くなって来たので長編に変更しました。

【完結】女王と婚約破棄して義妹を選んだ公爵には、痛い目を見てもらいます。女王の私は田舎でのんびりするので、よろしくお願いしますね。

五月ふう
恋愛
「シアラ。お前とは婚約破棄させてもらう。」 オークリィ公爵がシアラ女王に婚約破棄を要求したのは、結婚式の一週間前のことだった。 シアラからオークリィを奪ったのは、妹のボニー。彼女はシアラが苦しんでいる姿を見て、楽しそうに笑う。 ここは南の小国ルカドル国。シアラは御年25歳。 彼女には前世の記憶があった。 (どうなってるのよ?!)   ルカドル国は現在、崩壊の危機にある。女王にも関わらず、彼女に使える使用人は二人だけ。賃金が払えないからと、他のものは皆解雇されていた。 (貧乏女王に転生するなんて、、、。) 婚約破棄された女王シアラは、頭を抱えた。前世で散々な目にあった彼女は、今回こそは幸せになりたいと強く望んでいる。 (ひどすぎるよ、、、神様。金髪碧眼の、誰からも愛されるお姫様に転生させてって言ったじゃないですか、、、。) 幸せになれなかった前世の分を取り返すため、女王シアラは全力でのんびりしようと心に決めた。 最低な元婚約者も、継妹も知ったこっちゃない。 (もう婚約破棄なんてされずに、幸せに過ごすんだーー。)

【完結】貴方の後悔など、聞きたくありません。

なか
恋愛
学園に特待生として入学したリディアであったが、平民である彼女は貴族家の者には目障りだった。 追い出すようなイジメを受けていた彼女を救ってくれたのはグレアルフという伯爵家の青年。 優しく、明るいグレアルフは屈託のない笑顔でリディアと接する。 誰にも明かさずに会う内に恋仲となった二人であったが、 リディアは知ってしまう、グレアルフの本性を……。 全てを知り、死を考えた彼女であったが、 とある出会いにより自分の価値を知った時、再び立ち上がる事を選択する。 後悔の言葉など全て無視する決意と共に、生きていく。

そちらから縁を切ったのですから、今更頼らないでください。

木山楽斗
恋愛
伯爵家の令嬢であるアルシエラは、高慢な妹とそんな妹ばかり溺愛する両親に嫌気が差していた。 ある時、彼女は父親から縁を切ることを言い渡される。アルシエラのとある行動が気に食わなかった妹が、父親にそう進言したのだ。 不安はあったが、アルシエラはそれを受け入れた。 ある程度の年齢に達した時から、彼女は実家に見切りをつけるべきだと思っていた。丁度いい機会だったので、それを実行することにしたのだ。 伯爵家を追い出された彼女は、商人としての生活を送っていた。 偶然にも人脈に恵まれた彼女は、着々と力を付けていき、見事成功を収めたのである。 そんな彼女の元に、実家から申し出があった。 事情があって窮地に立たされた伯爵家が、支援を求めてきたのだ。 しかしながら、そんな義理がある訳がなかった。 アルシエラは、両親や妹からの申し出をきっぱりと断ったのである。 ※8話からの登場人物の名前を変更しました。1話の登場人物とは別人です。(バーキントン→ラナキンス)