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28.書類はどこへ?
トムは王妃の宮を出て、王太子の宮に向かった。王太子の宮はほとんど人がいなかったが、数人の侍女が掃除をしていた。侍女は全員、真珠のアクセサリーを身に着けていた。トムは侍女の指導をしていたマリアを見つけ、声を掛ける。
「お疲れ様です。新人のトーマスと申します。王太子殿下へのお手紙なのですが……いらっしゃいませんよね?」
トムは、ソフィアの筆跡を真似た偽の手紙を用意していた。内容は歯の浮くような愛の言葉と、正妃になる覚悟が綴ってある。それから、アルフレッドが動きたくなるように思い出の場所で待つと書かれてあった。アルフレッドの思い出の場所はトムも知らないが、アルフレッドが動いて騒動になれば必ずアルフレッドを見つけられると考えていた。
ちなみに、ソフィアは行方不明だ。とっくに始末されていると思われていたが、エドガーに付いた影達は誰一人ソフィアに手出しをしていなかった。別室に連れて行かれたアルフレッドは即座に国王に連行され、ソフィアはオロオロと泣くばかりで、側妃も、正妃も無理だと泣き叫んでいた。エドガーがソフィアを両親に引き渡そうとすると、隙を見て逃げ出した。そうとは知らず、ソフィアの両親は王の前で娘の値段交渉を始めた。正妃になるなら資金を援助してほしいと迫る男爵夫妻に怒った国王は、すぐにソフィアの家を取り潰してしまった。
ソフィアの帰る家は、もうない。ソフィアが稼いだ金を吸い上げていた両親は、狭い部屋で毎日喧嘩をしながら暮らしている。かろうじて残っている財産は、もうそろそろなくなるので、ここからが大変だろう。
ソフィアの行方は分からないままだ。町中に紛れ、平民になってしまえば探すのは難しい。トムはエドガーの許可を得て、兄達の協力を仰ぎソフィアの捜索を行っている。
しかし、城に侵入できるのはエドガーが認めたトムだけだ。そこで、トムはエドガーの影になった事は伏せて、ミランダの為に調査をしたいので協力してくれとマリアに話をした。マリアは喜んで協力を申し出てくれた。侍女の人手不足は深刻で、大変な状況なので結婚を先延ばしにすると言ったマリアは、多くの使用人の尊敬を集めている。
トムが偽名を名乗ると、マリアはニッコリと笑って挨拶をした。
「はじめまして。侍女頭のマリアと申します。見ての通り、ここの主人は不在です。どこにいるか、私たちも知りませんわ」
「新人さんじゃ、事情を知らないわよね」
「ねぇマリアさん、お伝えしていいのかしら?」
「そうですね……アルフレッド殿下は、国王のご命令で再教育中だそうです。どこにいらっしゃるか、我々も知りません。お手紙は時折執務室の書類箱にお届けしていますから、そちらにお持ちになれば良いのではないかしら?」
「アルフレッド殿下は執務室にいらっしゃるのですか?」
「多分、いらっしゃらないわ。人の気配がしないもの。けど、書類箱の書類は消えるから、恐らく誰かがアルフレッド殿下に届けているのだと思うわ」
「それが誰かは、皆様も知らないのですか?」
「ええ、いつの間にか消えてしまうから」
「そう……ですか」
「そのお手紙は急ぎなの?」
「いいえ。ただ、必ず本人に手渡すように命じられてしまいまして」
「あら、困ったわね」
「事情を知らない人が頼んだのかしら」
「殿下の婚約破棄騒動を知らない人なんている?」
「地方の貴族は知らないかもしれないわ」
マリアの言葉は、皆に受け入れられる。あっさりと信じた侍女たちは、困った様子の可愛い新人の為に情報を漏らしてくれた。
「書類箱の書類が消えるのは、いつも夜なの」
「なるほど。ありがとうございます。また、出直して参ります」
「頑張ってね。トーマスさん」
トムが書類を運ぶ男を見つけたのは、その日の夜の事だった。
「お疲れ様です。新人のトーマスと申します。王太子殿下へのお手紙なのですが……いらっしゃいませんよね?」
トムは、ソフィアの筆跡を真似た偽の手紙を用意していた。内容は歯の浮くような愛の言葉と、正妃になる覚悟が綴ってある。それから、アルフレッドが動きたくなるように思い出の場所で待つと書かれてあった。アルフレッドの思い出の場所はトムも知らないが、アルフレッドが動いて騒動になれば必ずアルフレッドを見つけられると考えていた。
ちなみに、ソフィアは行方不明だ。とっくに始末されていると思われていたが、エドガーに付いた影達は誰一人ソフィアに手出しをしていなかった。別室に連れて行かれたアルフレッドは即座に国王に連行され、ソフィアはオロオロと泣くばかりで、側妃も、正妃も無理だと泣き叫んでいた。エドガーがソフィアを両親に引き渡そうとすると、隙を見て逃げ出した。そうとは知らず、ソフィアの両親は王の前で娘の値段交渉を始めた。正妃になるなら資金を援助してほしいと迫る男爵夫妻に怒った国王は、すぐにソフィアの家を取り潰してしまった。
ソフィアの帰る家は、もうない。ソフィアが稼いだ金を吸い上げていた両親は、狭い部屋で毎日喧嘩をしながら暮らしている。かろうじて残っている財産は、もうそろそろなくなるので、ここからが大変だろう。
ソフィアの行方は分からないままだ。町中に紛れ、平民になってしまえば探すのは難しい。トムはエドガーの許可を得て、兄達の協力を仰ぎソフィアの捜索を行っている。
しかし、城に侵入できるのはエドガーが認めたトムだけだ。そこで、トムはエドガーの影になった事は伏せて、ミランダの為に調査をしたいので協力してくれとマリアに話をした。マリアは喜んで協力を申し出てくれた。侍女の人手不足は深刻で、大変な状況なので結婚を先延ばしにすると言ったマリアは、多くの使用人の尊敬を集めている。
トムが偽名を名乗ると、マリアはニッコリと笑って挨拶をした。
「はじめまして。侍女頭のマリアと申します。見ての通り、ここの主人は不在です。どこにいるか、私たちも知りませんわ」
「新人さんじゃ、事情を知らないわよね」
「ねぇマリアさん、お伝えしていいのかしら?」
「そうですね……アルフレッド殿下は、国王のご命令で再教育中だそうです。どこにいらっしゃるか、我々も知りません。お手紙は時折執務室の書類箱にお届けしていますから、そちらにお持ちになれば良いのではないかしら?」
「アルフレッド殿下は執務室にいらっしゃるのですか?」
「多分、いらっしゃらないわ。人の気配がしないもの。けど、書類箱の書類は消えるから、恐らく誰かがアルフレッド殿下に届けているのだと思うわ」
「それが誰かは、皆様も知らないのですか?」
「ええ、いつの間にか消えてしまうから」
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「あら、困ったわね」
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「頑張ってね。トーマスさん」
トムが書類を運ぶ男を見つけたのは、その日の夜の事だった。
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