【完結】婚約破棄に感謝します。貴方のおかげで今私は幸せです

コトミ

文字の大きさ
1 / 16

第一話

しおりを挟む
「僕とアンナとの婚約が破棄されることとなった」
「はあ」

 今まで私は上手くやっていたつもりだったけれど、なぜだか今私は結婚する相手がいなくなってしまった。七歳の時に婚約をして、十七の今まで婚約が続いていた。今年か来年挙式の予定だったために、もう結婚できないなんて事ないと、思い込んでいた。

「君では役不足だと、僕の父上と母上がご判断なさったんだ」
「役不足」

 では役を全うできるのが今エリック様のお隣にいる女性なのかしら。金髪の美しい髪をしてにっこりと笑っている。私より何倍も胸が大きいし、ウエストが細いし、簡単に言えば私よりスタイルが良い。でも品があるというより、自信があふれているような人。

「どうやら君は魔法使いとしてとても優秀なそうだが。どうもアンナはいつも上の空だ。今だってまともに僕の話を聞いているのか?」

 眉間にしわを寄せていつも私と顔を合わせている。エリック様は眉目秀麗な部類なはずなのだけれど、その顔はいつも中心によっている。隣の女性はニコニコと私を見ている。

「いえ、今は。唐突なことで頭が追い付いていないだけです」

 私にはっきりと聞こえるようにエリック様は頭を抱えて、ため息を吐いた。

「それにアンナより、このキャサリンの方が随分と僕と釣り合っている。両親の権力と言い、財力といい、優秀なのもキャサリンだ。僕と釣り合っている」

 ずっと笑っているだけだったキャサリンが、目を細く、眉を困ったように下げて申し訳なさそうに笑って口を開いた。

「ごめんなさい。アンナさん。唐突な出来事になってしまって」 
「貴族の権力や財力と言うのは結構繊細な物ですから、仕方がありません。それに私は素直に受け入れる以外の選択肢はありませんし」

 実際に私には大声を荒げてキャサリンを怒鳴り散らかすこともできないし、エリック様を責め立てることもできない。したところで何も意味が無いし、きっとそんなことをしてしまったら、もっと私の立場が不利になってしまう。お父様はしがない男爵だし、お母様は気が弱いし。きっとことを荒げてしまっては、両親にまで叱られて何の良いこともない。 この婚約破棄がエリック様とキャサリンの恋愛結婚だとしても、私は何も言えない。

「これから僕は侯爵となり、騎士団の団長としての座も約束されている。領土もあるというのに、お前のような人間に領土を任せておけない」

 そういえばエリック様の剣術は優れているらしい。その剣術を見たことはないけど。その実力はこの国で一番強いといわれている筋肉だるまの騎士団長に勝ったほどであるらしい。細い腕だというのになぜあそこまでのパワーが出るのか皆が不思議そうに話しているのを聞いた。きっとエリック様は鼻高々だったでしょうね。 女性二人を抱えたとかも聞いた、ような?

 これは話しておかなければ大きな歪を産むかもしれない。

「あ、そのことですけど」
「そのこと?何の話だ」

 口をはさんだから、エリック様は貧乏ゆすりを始めた。こういう時は何を言っても彼は聞き入れてくれないかもしれない。それに大した話では無いし。話す必要はないか。

「いえ、口をはさんですみません。何でもありません」 
「そうやって、いつも口をはさむしな。結婚したのちの会食などができたものか。冷や冷やして見ていられない」 
「あら、可哀そうよ。エリック」

 ずっと私の事を批判し続けていたエリック様の事をキャサリンが止めた。話が長すぎて聞いていられなかったのかしら。案外良い人なのかも。

「そんないい方しないで。こういう子には何を言っても通じないんだから」

 前言撤回。この女性を今私は嫌いになった。そういう言い方しなくてもいいのに。私だって領土の運営ぐらいできる。そうするために教育されて来たんだから。

「はは!そうだな。もう行っていいぞ。両親たちは両親たちで話をするだろう」 
「失礼いたします」

 不満と、小さな怒りのわだかまりを抱えたままで、私はソファから立ち上がり、一礼してから部屋から出た。部屋の外はさっきよりも空気が吸いやすかった。窓から差し込む太陽の光が眩しい。

「うん。まあ。いいか。この魔法も解いてしまおう」

何もない宙に『cancelキャンセル』の文字が浮かび上がり、私はそれをタップした。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

【短編】婚約解消を望もうとも、婚約者から言葉を聞かない限りは応じませんわ

あさぎかな@コミカライズ決定
恋愛
 伯爵令嬢のディアナ・アルヴィエは実家と絶縁し、婚約者であるアーレントの実家である辺境領の屋敷で暮らしていた。魔物討伐や結界の管理などを担う即戦力としていたディアナは、アーレンが成人したら結婚する。  はずだった。  王都に突如現れた黒竜討伐へと赴いた婚約者アーレンと様の部下だと名乗る使いから婚約解消の知らせが届く。それと同時に辺境地の結界に亀裂が入り、答え合わせは後回しとなるのだが、同時にカルト集団の奇襲を受けてしまい──!?  両親に愛されなかった令嬢が幸せを受け入れるまでのお話。  年下情緒不安定ヤンデレ騎士×自尊心の低い年上大魔法使いのお話。

悪役令嬢は断罪後、物語の外で微笑む【完結】

あめとおと
恋愛
断罪され、国外追放となった悪役令嬢エレノア。 けれど彼女は、泣かなかった。 すべてを失ったはずのその瞬間、彼女を迎えに来たのは、 隣国最大商会の会頭であり、“共犯者”の青年だった。 これは、物語の舞台を降りた悪役令嬢が、 自由と恋、そして本当の幸せを手に入れるまでの、 ざまぁと甘さを少しだけ含んだショートショート。

【完結】従姉妹と婚約者と叔父さんがグルになり私を当主の座から追放し婚約破棄されましたが密かに嬉しいのは内緒です!

ジャン・幸田
恋愛
 私マリーは伯爵当主の臨時代理をしていたけど、欲に駆られた叔父さんが、娘を使い婚約者を奪い婚約破棄と伯爵家からの追放を決行した!     でも私はそれでよかったのよ! なぜなら・・・家を守るよりも彼との愛を選んだから。

新婚初夜に『白い結婚にしてほしい』と言われたので論理的に詰めたら夫が泣きました

ささい
恋愛
「愛人がいるから、白い結婚にしてほしい」 政略結婚の初夜にそう告げた夫ルーファス。 妻カレンの反応は—— 「それ、契約不履行ですよね?」 「あなたの感情論、論理的に破綻してますよ?」 泣き落としは通じない。 そして初夜の翌朝、夫は泣いていた。 逃げ道は全部塞がれ、気づけば毎日論破されていた。 これは、論破され続けた夫がなぜか幸せになる話。

【完結】欲をかいて婚約破棄した結果、自滅した愚かな婚約者様の話、聞きます?

水月 潮
恋愛
ルシア・ローレル伯爵令嬢はある日、婚約者であるイアン・バルデ伯爵令息から婚約破棄を突きつけられる。 正直に言うとローレル伯爵家にとっては特に旨みのない婚約で、ルシアは父親からも嫌になったら婚約は解消しても良いと言われていた為、それをあっさり承諾する。 その1ヶ月後。 ルシアの母の実家のシャンタル公爵家にて次期公爵家当主就任のお披露目パーティーが主催される。 ルシアは家族と共に出席したが、ルシアが夢にも思わなかったとんでもない出来事が起きる。 ※設定は緩いので、物語としてお楽しみ頂けたらと思います *HOTランキング10位(2021.5.29) 読んで下さった読者の皆様に感謝*.* HOTランキング1位(2021.5.31)

(完結)家族にも婚約者にも愛されなかった私は・・・・・・従姉妹がそんなに大事ですか?

青空一夏
恋愛
 私はラバジェ伯爵家のソフィ。婚約者はクランシー・ブリス侯爵子息だ。彼はとても優しい、優しすぎるかもしれないほどに。けれど、その優しさが向けられているのは私ではない。  私には従姉妹のココ・バークレー男爵令嬢がいるのだけれど、病弱な彼女を必ずクランシー様は夜会でエスコートする。それを私の家族も当然のように考えていた。私はパーティ会場で心ない噂話の餌食になる。それは愛し合う二人を私が邪魔しているというような話だったり、私に落ち度があってクランシー様から大事にされていないのではないか、という憶測だったり。だから私は・・・・・・  これは家族にも婚約者にも愛されなかった私が、自らの意思で成功を勝ち取る物語。  ※貴族のいる異世界。歴史的配慮はないですし、いろいろご都合主義です。  ※途中タグの追加や削除もありえます。  ※表紙は青空作成AIイラストです。

学園では婚約者に冷遇されていますが、有能なので全く気になりません。〜学園でお山の大将されてても、王宮では私の方が有能ですから〜

織り子
恋愛
王都カラディナにある国立魔術学園では、満十六歳の生徒たちの社交界デビューを兼ねた盛大なパーティーが開かれていた。 侯爵令嬢タレイア・オルトランは、婚約者である第二王子アスラン・オグセリアの迎えを待つも、結局ひとりで会場へ向かうことになる。 学園では身分の差がないとはいえ、アスランが公然とタレイアを侮辱し続けてきたことで、彼女は生徒たちから冷笑と蔑視の的となっていた。しかしタレイアは、王城で政務を担ってきた聡明さと矜持を失わず、毅然と振る舞う。

【完結】私のことが大好きな婚約者さま

咲雪
恋愛
 私は、リアーナ・ムスカ侯爵子女。第二王子アレンディオ・ルーデンス殿下の婚約者です。アレンディオ殿下の5歳上の第一王子が病に倒れて3年経ちました。アレンディオ殿下を王太子にと推す声が大きくなってきました。王子妃として嫁ぐつもりで婚約したのに、王太子妃なんて聞いてません。悩ましく、鬱鬱した日々。私は一体どうなるの? ・sideリアーナは、王太子妃なんて聞いてない!と悩むところから始まります。 ・sideアレンディオは、とにかくアレンディオが頑張る話です。 ※番外編含め全28話完結、予約投稿済みです。 ※ご都合展開ありです。

処理中です...