2 / 16
第二話
キャサリンとの結婚式は僕が十八になった時すぐに取り行った。キャサリンのウェディングドレスにはかなりお金がかかったが、それだけにかなり良い出来となった。身長が高く、スタイルの良いから本当によく似合っていた。父上と母上も喜んでいたし、これでよかった。アンナならこんなうまくいかなかっただろうな。
結婚式の次の日の舞踏会では様々な人に挨拶をして、キャサリンも笑顔を作り続け、かなり疲弊していた。僕も笑顔が引きつって筋肉が強張ってきたとき、白髪の青年が声をかけてきた。翡翠のピアスを付け、キャサリンと同じ青色の瞳をした青年だった。服は刺繍が入った上等な物で、どこからどう見ても僕より偉い人間だ。
「エリック・フィリップ・アシュフォード侯爵、キャサリン・ローズ・アシュフォード夫人。ご結婚おめでとうございます。今宵は舞踏会へのご招待感謝いたします。私、ジェームズ・エドワード・ウィンチェスターと申します」
「よくいらっしゃってくださいました。歓迎いたします」
握手をしながら、ウィンチェスターという苗字に聞き覚えがあり、疲労が重なった脳で記憶の戸棚を探しまくった。ジェームズと言うこの人と会うのは初めてだが、どこかで聞いたことがある苗字だ。
「あ、騎士団の団長していらっしゃるんですよね?私知っているわ。この人元皇子よ。エリック」
食い気味にキャサリンが言った。思わず僕は顔を上げてもう一度ジェームズの顔を見た。そうだ。ウィンチェスターは隣国の公爵の名前。隣国の最強の第一騎士団をまとめる騎士団長。
「はい。一応」
「様々な勇敢なお話お聞きしましたわ。魔族の四天王の一人を倒しているですよね」
「仲間の力があったからです」
今まで全く口を開かなかったキャサリンがこんなに話すとは。それもとても嬉しそうに。なぜ僕以外にそんな恍惚とした表情をするんだ。
「それではお二人のこれからの未来に幸せがありますように」
最後にジェームズはキャサリンの手の甲にキスをして、一礼して立ち去った。人込みに消えていくその瞬間、アンナの姿が見えた気がした。茶色の髪をハーフアップにして、緑のドレスを着たアンナが。
なぜ、あいつが。冷やかしか?
舞踏会でアンナを見てから、ずいぶんとアンナには嫌気がさしていた。のろまで、ぼうっとして人の話を聞いているのかもわからない。食事をするときは、僕が話しかけなければずっと黙ったまま。人を楽しませようという心意気が全く感じられない。
その上アンナの父親の爵位は男爵。金を持っているわけでもない。宮廷魔法使いだから、多少の権力はあれど、他には何もない。目立った功績も聞かない。母親の方も同じ。
顔立ちは中の下。茶色の髪に茶色の瞳。小柄な癖して、精神だけは図太い。良いところが何一つ思い浮かばない。
「誰の事考えているの?」
青色の澄んだ瞳でキャサリンは僕の事を見つめた。キャサリンの肌はシルクの様に真っ白でやわらかで、丁寧に手入れされた金色の髪は彼女をより一層、美しくさせる。
「アンナとやっと分かれることができて、心底嬉しくて」
「あの子ちょっと子供っぽいわよね。何も一人で考えられない子供。あんな子と婚約させられていたエリックが可哀そう。これからはずっと私が隣にいてあげるわ」
そうだ。これから僕の薔薇色の人生が本当に始まるんだ。美しく、物事が分かっている良妻と、侯爵と騎士団長としての地位。子供は一人目が男で、次が女。
逆にここから落ちていくことの方が考えられない。どうやったって成功するしかない。
「あの子どうしてるかしらね。あんなんで結婚相手が見つかるのかしら」
「できるわけないだろう。親のコネもない。適当な爵位の低い、領土を持たない男と結婚するんじゃないか」
「きっとあなたと婚約したことであの子、人生の運をすべて使い果たしちゃったのね」
唇を閉じたままで、くすくすとキャサリンは笑った。
「ねえ、お姫様抱っこして」
「ああ」
ベッドに座っているキャサリンの事を抱き上げようと肩を寄せ、太ももを持ち上げようとした。あれ、なんでだ。全然持ち上がらない。いつもなら力をそんなに入れずとも軽々と持ち上げられるというのに。キャサリンはこんなに重かったか?まるで腕に力が入らない。
「ねえ、どうしたの?」
「今日は、具合が悪いみたいだ」
「疲れたんじゃない?毎日訓練訓練だったから」
僕も一時の出来事だと思った。それなのに、これからどんどんと筋力が悪化していく。
結婚式の次の日の舞踏会では様々な人に挨拶をして、キャサリンも笑顔を作り続け、かなり疲弊していた。僕も笑顔が引きつって筋肉が強張ってきたとき、白髪の青年が声をかけてきた。翡翠のピアスを付け、キャサリンと同じ青色の瞳をした青年だった。服は刺繍が入った上等な物で、どこからどう見ても僕より偉い人間だ。
「エリック・フィリップ・アシュフォード侯爵、キャサリン・ローズ・アシュフォード夫人。ご結婚おめでとうございます。今宵は舞踏会へのご招待感謝いたします。私、ジェームズ・エドワード・ウィンチェスターと申します」
「よくいらっしゃってくださいました。歓迎いたします」
握手をしながら、ウィンチェスターという苗字に聞き覚えがあり、疲労が重なった脳で記憶の戸棚を探しまくった。ジェームズと言うこの人と会うのは初めてだが、どこかで聞いたことがある苗字だ。
「あ、騎士団の団長していらっしゃるんですよね?私知っているわ。この人元皇子よ。エリック」
食い気味にキャサリンが言った。思わず僕は顔を上げてもう一度ジェームズの顔を見た。そうだ。ウィンチェスターは隣国の公爵の名前。隣国の最強の第一騎士団をまとめる騎士団長。
「はい。一応」
「様々な勇敢なお話お聞きしましたわ。魔族の四天王の一人を倒しているですよね」
「仲間の力があったからです」
今まで全く口を開かなかったキャサリンがこんなに話すとは。それもとても嬉しそうに。なぜ僕以外にそんな恍惚とした表情をするんだ。
「それではお二人のこれからの未来に幸せがありますように」
最後にジェームズはキャサリンの手の甲にキスをして、一礼して立ち去った。人込みに消えていくその瞬間、アンナの姿が見えた気がした。茶色の髪をハーフアップにして、緑のドレスを着たアンナが。
なぜ、あいつが。冷やかしか?
舞踏会でアンナを見てから、ずいぶんとアンナには嫌気がさしていた。のろまで、ぼうっとして人の話を聞いているのかもわからない。食事をするときは、僕が話しかけなければずっと黙ったまま。人を楽しませようという心意気が全く感じられない。
その上アンナの父親の爵位は男爵。金を持っているわけでもない。宮廷魔法使いだから、多少の権力はあれど、他には何もない。目立った功績も聞かない。母親の方も同じ。
顔立ちは中の下。茶色の髪に茶色の瞳。小柄な癖して、精神だけは図太い。良いところが何一つ思い浮かばない。
「誰の事考えているの?」
青色の澄んだ瞳でキャサリンは僕の事を見つめた。キャサリンの肌はシルクの様に真っ白でやわらかで、丁寧に手入れされた金色の髪は彼女をより一層、美しくさせる。
「アンナとやっと分かれることができて、心底嬉しくて」
「あの子ちょっと子供っぽいわよね。何も一人で考えられない子供。あんな子と婚約させられていたエリックが可哀そう。これからはずっと私が隣にいてあげるわ」
そうだ。これから僕の薔薇色の人生が本当に始まるんだ。美しく、物事が分かっている良妻と、侯爵と騎士団長としての地位。子供は一人目が男で、次が女。
逆にここから落ちていくことの方が考えられない。どうやったって成功するしかない。
「あの子どうしてるかしらね。あんなんで結婚相手が見つかるのかしら」
「できるわけないだろう。親のコネもない。適当な爵位の低い、領土を持たない男と結婚するんじゃないか」
「きっとあなたと婚約したことであの子、人生の運をすべて使い果たしちゃったのね」
唇を閉じたままで、くすくすとキャサリンは笑った。
「ねえ、お姫様抱っこして」
「ああ」
ベッドに座っているキャサリンの事を抱き上げようと肩を寄せ、太ももを持ち上げようとした。あれ、なんでだ。全然持ち上がらない。いつもなら力をそんなに入れずとも軽々と持ち上げられるというのに。キャサリンはこんなに重かったか?まるで腕に力が入らない。
「ねえ、どうしたの?」
「今日は、具合が悪いみたいだ」
「疲れたんじゃない?毎日訓練訓練だったから」
僕も一時の出来事だと思った。それなのに、これからどんどんと筋力が悪化していく。
あなたにおすすめの小説
あなたにわたくしは相応しくないようです
らがまふぃん
恋愛
物語の中だけの話だと思っていました。
現実に起こることでしたのね。
※本編六話+幕間一話と後日談一話の全八話、ゆるゆる話。何も考えずにお読みください。
HOTランキング入りをしまして、たくさんの方の目に触れる機会を得られました。たくさんのお気に入り登録など、本当にありがとうございました。
完結表示をしようとして、タグが入っていなかったことに気付きました。何となく今更な感じがありますが、タグ入れました。
皇太子殿下の御心のままに~悪役は誰なのか~
桜木弥生
恋愛
「この場にいる皆に証人となって欲しい。私、ウルグスタ皇太子、アーサー・ウルグスタは、レスガンティ公爵令嬢、ロベリア・レスガンティに婚約者の座を降りて貰おうと思う」
ウルグスタ皇国の立太子式典の最中、皇太子になったアーサーは婚約者のロベリアへの急な婚約破棄宣言?
◆本編◆
婚約破棄を回避しようとしたけれど物語の強制力に巻き込まれた公爵令嬢ロベリア。
物語の通りに進めようとして画策したヒロインエリー。
そして攻略者達の後日談の三部作です。
◆番外編◆
番外編を随時更新しています。
全てタイトルの人物が主役となっています。
ありがちな設定なので、もしかしたら同じようなお話があるかもしれません。もし似たような作品があったら大変申し訳ありません。
なろう様にも掲載中です。
そういう時代でございますから
Ruhuna
恋愛
私の婚約者が言ったのです
「これは真実の愛だ」ーーと。
そうでございますか。と返答した私は周りの皆さんに相談したのです。
その結果が、こうなってしまったのは、そうですね。
そういう時代でございますからーー
*誤字脱字すみません
*ゆるふわ設定です
*辻褄合わない部分があるかもしれませんが暇つぶし程度で見ていただけると嬉しいです
ついで姫の本気
ちくわぶ(まるどらむぎ)
恋愛
国の間で二組の婚約が結ばれた。
一方は王太子と王女の婚約。
もう一方は王太子の親友の高位貴族と王女と仲の良い下位貴族の娘のもので……。
綺麗な話を書いていた反動でできたお話なので救いなし。
ハッピーな終わり方ではありません(多分)。
※4/7 完結しました。
ざまぁのみの暗い話の予定でしたが、読者様に励まされ闇精神が復活。
救いのあるラストになっております。
短いです。全三話くらいの予定です。
↑3/31 見通しが甘くてすみません。ちょっとだけのびます。
4/6 9話目 わかりにくいと思われる部分に少し文を加えました。
王子が親友を好きになり婚約破棄「僕は本当の恋に出会えた。君とは結婚できない」王子に付きまとわれて迷惑してる?衝撃の真実がわかった。
佐藤 美奈
恋愛
セシリア公爵令嬢とヘンリー王子の婚約披露パーティーが開かれて以来、彼の様子が変わった。ある日ヘンリーから大事な話があると呼び出された。
「僕は本当の恋に出会ってしまった。もう君とは結婚できない」
もうすっかり驚いてしまったセシリアは、どうしていいか分からなかった。とりあえず詳しく話を聞いてみようと思い尋ねる。
先日の婚約披露パーティーの時にいた令嬢に、一目惚れしてしまったと答えたのです。その令嬢はセシリアの無二の親友で伯爵令嬢のシャロンだったというのも困惑を隠せない様子だった。
結局はヘンリーの強い意志で一方的に婚約破棄したいと宣言した。誠実な人柄の親友が裏切るような真似はするはずがないと思いシャロンの家に会いに行った。
するとヘンリーがシャロンにしつこく言い寄っている現場を目撃する。事の真実がわかるとセシリアは言葉を失う。
ヘンリーは勝手な思い込みでシャロンを好きになって、つきまとい行為を繰り返していたのだ。
婚約破棄が国を亡ぼす~愚かな王太子たちはそれに気づかなかったようで~
みやび
恋愛
冤罪で婚約破棄などする国の先などたかが知れている。
全くの無実で婚約を破棄された公爵令嬢。
それをあざ笑う人々。
そんな国が亡びるまでほとんど時間は要らなかった。
婚約破棄ですか? ならば国王に溺愛されている私が断罪致します。
久方
恋愛
「エミア・ローラン! お前との婚約を破棄する!」
煌びやかな舞踏会の真っ最中に突然、婚約破棄を言い渡されたエミア・ローラン。
その理由とやらが、とてつもなくしょうもない。
だったら良いでしょう。
私が綺麗に断罪して魅せますわ!
令嬢エミア・ローランの考えた秘策とは!?
【完結】伯爵令嬢は婚約を終わりにしたい〜次期公爵の幸せのために婚約破棄されることを目指して悪女になったら、なぜか溺愛されてしまったようです〜
よどら文鳥
恋愛
伯爵令嬢のミリアナは、次期公爵レインハルトと婚約関係である。
二人は特に問題もなく、順調に親睦を深めていった。
だがある日。
王女のシャーリャはミリアナに対して、「二人の婚約を解消してほしい、レインハルトは本当は私を愛しているの」と促した。
ミリアナは最初こそ信じなかったが王女が帰った後、レインハルトとの会話で王女のことを愛していることが判明した。
レインハルトの幸せをなによりも優先して考えているミリアナは、自分自身が嫌われて婚約破棄を宣告してもらえばいいという決断をする。
ミリアナはレインハルトの前では悪女になりきることを決意。
もともとミリアナは破天荒で活発な性格である。
そのため、悪女になりきるとはいっても、むしろあまり変わっていないことにもミリアナは気がついていない。
だが、悪女になって様々な作戦でレインハルトから嫌われるような行動をするが、なぜか全て感謝されてしまう。
それどころか、レインハルトからの愛情がどんどんと深くなっていき……?
※前回の作品同様、投稿前日に思いついて書いてみた作品なので、先のプロットや展開は未定です。今作も、完結までは書くつもりです。
※第一話のキャラがざまぁされそうな感じはありますが、今回はざまぁがメインの作品ではありません。もしかしたら、このキャラも更生していい子になっちゃったりする可能性もあります。(このあたり、現時点ではどうするか展開考えていないです)