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第三十二話
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あれから裁判やら、いろいろ面倒なことが続いてしまったのだけれども、どうにかエリックとの結婚まで漕ぎつくことが出来た。周りからはブーイングが巻き起こった。どうせまたエリックはすぐに私のことを捨てるだとか、いろいろ言われていた。
それでもかまわない。周りの意見とか、他人を気にするとか、そういうことをしていると、私の人生は他人の物になってしまうと、あんな苦しい体験をして分かったから。
そのために披露宴は家族や親しい友人だけを集めて行った。でも妹とその家族たちが勢ぞろいした上に、エリックにも多くの友人がいたらしく、関係者は少ないながら、大きな、広いところが必要だったのだけれども、大広間を借りることはトラウマがあったので、春に近くなってきたこともあり、広い平野にテーブルと椅子を持ってきて、そこでパーティーを行った。
これが結構楽しくて、今までの鬱憤が晴らされた。
「お姉様、本当によかったわ。幸せになれてよかったじゃない」
「ええ、その通り」
「ありがとう。今まで以上に幸せになるし、領地の事も、お父様と相談中なの」
妹たちの子供たち総勢、十五人は、みんなで原っぱで大はしゃぎしている。私は甥っ子も、姪っ子も、多すぎてほとんど名前を憶えられていない。
「本当に、ビオラは頑張ったよ。私達がもっと早く助けてあげれればね」
赤ワインを片手に母が申し訳なさそうに言った。これは別に母のせいではない。すべては加害者が悪いこと。縁も切れたことだし何も悪いことは無い。
「終わりよければすべてよしよ。今、私は幸せだから良いの。それに若い時の苦労はかって出もしろっていうでしょ?」
「そんなのデマよ。しなくていい苦労はしない方が良いの」
「それじゃあ、まるで今までのことすべて無駄だって言いたいの?」
「母親なんだから、してほしくなかったに決まってるでしょう?本当に、お父様がもっとしっかりしていればね」
ため息を漏らしながら母は、エリックと話をする父の方を見つめた。
母はこんなことを言っているけれども、私はこんな体験をしてよかったと思っている。いろいろなことを学ぶことが出来たから。困ったときは人に相談して、相談して無理だったら、その場から逃げ出す。他人の目を気にして生きるより、自分勝手に生きる。その方が何倍も楽。
「どうしたの、エリック」
ワイングラスを片手に、エリックが近づいてきた。ワイングラスの中は何色か分からない色をしている。どんなワインが入っているか想像もつかない。
「それ、なに」
「兄貴達に、ワインを一斉に入れられて。赤ワインとか、ジュースとか、白ワインとか、水とか、混ざって」
「飲むの?それ」
「飲むわけないだろ」
持っていたワイングラスを逆さにして、中に入っていた何味か分からない物を草の上へかけてしまった。一応借りている場だというのに、全く綺麗にして使うという心遣いが無いのだから困ったものだ。
温かい深い風が吹いて、エリックの手を握ってみた。
「帰ったら、手紙の整理しよう」
「手紙?」
「私達の数年年続いた文通の整理。私ため込んだままで、いくつか捨てちゃったし」
「は?」
横を見てみるとエリックは、信じられないという風な表情をしていた。眉をひそめて、目を細めているので、私も驚いてしまった。
「捨てた?」
「うん、ほら、半年ぐらい手紙くれなかったときあったじゃない?その時に、もう手紙は来ないと思って、結構捨てちゃったのよね。残ってるのもあると思うけど、エリックほど思い入れなかったし」
「俺は全部残してたってのに」
その言葉に私は小さな怒りを覚えた。
「だってそれは、私が貴方のこと好きって先に書いてたからでしょ。貴方も私に好意の一つぐらい示してくれれば、残してた思うわよ」
むすっとした状態で、エリックは皆の方へ戻って行ってしまった。
それにしても今日は食事が多すぎて食べ過ぎてしまったのかもしれない。お腹の底がムカムカとする。いや、朝から?もっと前からこんな体調だからあまり気にしていなかったけれども、今日はいつもにもまして、気持ちが悪い。コルセットだってつけていないのに。
その時、腹の奥から、何かがこみあげてくる気がした。思わず私は口を押えて、周りを見渡した。でも桶のようなものはどこにもない。
「どうした、ビオラ」
どこか、ゴミ箱とか、何か。ちょっと、おかしいって。
もう我慢ならなくなった私は、勢いよく地面に吐き出してしまった。妹達の悲鳴があり、母がすぐに駆け付けてきてくれた。
腹を触ってみると、今まで感じていた違和感が確信に変わった気がした。
「子供、できたかも……」
そうつぶやいた瞬間に、周囲から歓声のような驚きのような声が上がった。それに私も驚き、エリックも目を丸くしていた。そしてゆっくりと近づいてくると、私のことを強く抱きしめてきた。
「これから頑張る」
「よろしく」
それでもかまわない。周りの意見とか、他人を気にするとか、そういうことをしていると、私の人生は他人の物になってしまうと、あんな苦しい体験をして分かったから。
そのために披露宴は家族や親しい友人だけを集めて行った。でも妹とその家族たちが勢ぞろいした上に、エリックにも多くの友人がいたらしく、関係者は少ないながら、大きな、広いところが必要だったのだけれども、大広間を借りることはトラウマがあったので、春に近くなってきたこともあり、広い平野にテーブルと椅子を持ってきて、そこでパーティーを行った。
これが結構楽しくて、今までの鬱憤が晴らされた。
「お姉様、本当によかったわ。幸せになれてよかったじゃない」
「ええ、その通り」
「ありがとう。今まで以上に幸せになるし、領地の事も、お父様と相談中なの」
妹たちの子供たち総勢、十五人は、みんなで原っぱで大はしゃぎしている。私は甥っ子も、姪っ子も、多すぎてほとんど名前を憶えられていない。
「本当に、ビオラは頑張ったよ。私達がもっと早く助けてあげれればね」
赤ワインを片手に母が申し訳なさそうに言った。これは別に母のせいではない。すべては加害者が悪いこと。縁も切れたことだし何も悪いことは無い。
「終わりよければすべてよしよ。今、私は幸せだから良いの。それに若い時の苦労はかって出もしろっていうでしょ?」
「そんなのデマよ。しなくていい苦労はしない方が良いの」
「それじゃあ、まるで今までのことすべて無駄だって言いたいの?」
「母親なんだから、してほしくなかったに決まってるでしょう?本当に、お父様がもっとしっかりしていればね」
ため息を漏らしながら母は、エリックと話をする父の方を見つめた。
母はこんなことを言っているけれども、私はこんな体験をしてよかったと思っている。いろいろなことを学ぶことが出来たから。困ったときは人に相談して、相談して無理だったら、その場から逃げ出す。他人の目を気にして生きるより、自分勝手に生きる。その方が何倍も楽。
「どうしたの、エリック」
ワイングラスを片手に、エリックが近づいてきた。ワイングラスの中は何色か分からない色をしている。どんなワインが入っているか想像もつかない。
「それ、なに」
「兄貴達に、ワインを一斉に入れられて。赤ワインとか、ジュースとか、白ワインとか、水とか、混ざって」
「飲むの?それ」
「飲むわけないだろ」
持っていたワイングラスを逆さにして、中に入っていた何味か分からない物を草の上へかけてしまった。一応借りている場だというのに、全く綺麗にして使うという心遣いが無いのだから困ったものだ。
温かい深い風が吹いて、エリックの手を握ってみた。
「帰ったら、手紙の整理しよう」
「手紙?」
「私達の数年年続いた文通の整理。私ため込んだままで、いくつか捨てちゃったし」
「は?」
横を見てみるとエリックは、信じられないという風な表情をしていた。眉をひそめて、目を細めているので、私も驚いてしまった。
「捨てた?」
「うん、ほら、半年ぐらい手紙くれなかったときあったじゃない?その時に、もう手紙は来ないと思って、結構捨てちゃったのよね。残ってるのもあると思うけど、エリックほど思い入れなかったし」
「俺は全部残してたってのに」
その言葉に私は小さな怒りを覚えた。
「だってそれは、私が貴方のこと好きって先に書いてたからでしょ。貴方も私に好意の一つぐらい示してくれれば、残してた思うわよ」
むすっとした状態で、エリックは皆の方へ戻って行ってしまった。
それにしても今日は食事が多すぎて食べ過ぎてしまったのかもしれない。お腹の底がムカムカとする。いや、朝から?もっと前からこんな体調だからあまり気にしていなかったけれども、今日はいつもにもまして、気持ちが悪い。コルセットだってつけていないのに。
その時、腹の奥から、何かがこみあげてくる気がした。思わず私は口を押えて、周りを見渡した。でも桶のようなものはどこにもない。
「どうした、ビオラ」
どこか、ゴミ箱とか、何か。ちょっと、おかしいって。
もう我慢ならなくなった私は、勢いよく地面に吐き出してしまった。妹達の悲鳴があり、母がすぐに駆け付けてきてくれた。
腹を触ってみると、今まで感じていた違和感が確信に変わった気がした。
「子供、できたかも……」
そうつぶやいた瞬間に、周囲から歓声のような驚きのような声が上がった。それに私も驚き、エリックも目を丸くしていた。そしてゆっくりと近づいてくると、私のことを強く抱きしめてきた。
「これから頑張る」
「よろしく」
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