【勢い小説】転生したらただの〇〇〇〇でした

しゅーげつ

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第一章 とある牢獄でひっそり横たわる男へ

最終話

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…………さい


………なさい



……きなさい!




っんだよ……うっるせえな……


「起きんかいボケェ!!!」


脳天直撃!するバリトンボイスに叩き起こされ、
ゆっくりと瞼を開いた、

気がした。

薄っすらと浮かび上がる石積みの壁を、
ぼんやりと松明の灯かりが照らして暗く輝く。



ゆっくり浮かび上がる景色は、何かの昇華と共に少しづつ遠ざかる。

パチパチと爆ぜる松明の微音から、
耳を背けたくて鼻音を鳴らして再び目を閉じた。

気がした。


意識を闇に横たえたまま、これまでの事を顧みる。
走馬灯のように。


そうだ。
オレは確かに見た。


青き衣をまといて金色の野に――


いや、違う。


青い鎧に身を包んで、高らかに剣を掲げ、
薄暮れの牢獄の中で、金色に輝く勇者の背中を。




言い知れない充足と達成感、そして寂寥。
幾重にも折り重なり、マドラーで緩やかに混ざるように、


ドブ色の心が、少しづつ、
本当に少しづつだが、クリーム色に白みがかる。



やがて真っ白に塗りつぶされた心の中に、
フッと現れたレトロ猛者鎧に身を纏った男は、背を向けて――
“ありがとう” と。



聴こえたような気がした。



他人から感謝などされた事の無いオレに、
初めてかけられた感謝の言葉は、

まるで何かのジョークかのように、オレの心の奥を気まずそうに漂い、

去って行く奴の背中に、そっと呟き返した。


「……丸投げだったなぁお前」


***


それを最後に記憶は途切れ、

割と最近聞いた『教会風ファンファーレ』に、
半強制的に覚醒された。


確定演出かのように、
見渡す限り360度一面を、見覚えのある草花が埋め尽くす。

青に割り込んだ白から黄、緑、赤の野へと、
今までの人生で一度も見たこともない寄る辺が一帯に広がり、



デジャヴを纏った美女が降りたつ。


「えっと……いかがでしたk」
          「いかがじゃねえええええ!!!!」


生前の姿を取り戻していたオレは、食い気味に言葉尻をキャンセルし、
猛然とポンコツ女神に突進――

女神の身体を素通りして、もんどり打って転げまわる。



「あの……実体ありませんから触れませんよ?」



おずおずと覗き込む女神の向こうに、
無限に広がる青い空が見える。

実体のない背中で草花の感触を確かに感じながら、
夢幻の中の出来事を振り返った。


ほんの一瞬、それでいて永遠のような、
絶望であり、希望でもある、
切ない事が楽しい、

よく分からない時間を、オレは思い返していた。


「あの……大丈夫ですか?」

サラサラと流れて光る金色の髪に、勇者の姿を重ねたオレは、
不意に笑いが込み上げて来て、耐えきれずに身体を起こす。

大きく溜息をついて、オレをおもんばかる女神に、

こんな風に答えた。




「――ぁー……そうだなぁ……
 本当、ロクでもない転生をさせられたけど……思うところはあった」

「と……いいますと?」


「オレは……多分今まで、誰の話もちゃんと聞いてこなかったんだな」



ずっと思っていた。
と言うより憤っていた。


どうして誰もオレの話を聞いてくれないんだ。
なんで誰もオレの事を理解してくれないんだ、と。

何の事は無い。


オレ自身、誰にも何も伝える気が無かった。
誰の言葉にも耳を貸す気が無かっただけだ。


オレの世界には、

オレしか居なかった。


「そうですか……何か貴方の為になったのなら、
 私も心から嬉しく思います」
 
女神はそう言って、ニッコリと、オレに笑った顔を見せてくれた。

初めての事に面を喰らったオレは、挙動りながら視線を外す。


「あ、ああああ、あれだ! まぁ今回は結果オーライって事で……!
 つ、次はもうちょいマシな転職先、見つけてくれよな!!」


「はい!任せて下さい! 良いのがあるんです!」


「お!マジか!!それ!!おなしゃす!!!」


***



コー……コケーッ!!!

ニワトリらしき騒音に朝の訪れを感じた、
ような気がした俺は、


鉄格子の向こうに糸を引いて流れる白雲を眺める。


諦め気味に目を閉じた、ような気がしたオレは、
意識を自らの中、心の奥に澄ませた、

気がした。



『………………私の名は…………いや、名前なんてどうでもいい!!』




『魔王城から立派な緑の珠を盗んできた俺は決死の思いで岩山の洞窟を越え
この村に辿り着いたまでは良かったがそこで魔物の襲撃に――』


うるせえ!!!
句読点を……打て!!!!



ノンブレス奏法で捲くし立てるオッサンの声に、

オレは、こう返すんだ。




「オーケー!分かった、とりあえず落ち着け。



まずはお前の名前を教えてくれないか?


そう、


オレの名は――」
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