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第一章 とある牢獄でひっそり横たわる男へ
第七話
しおりを挟む通貨単位……『G(ゴールド)』だわなぁ……
宿屋……『INN』だわなぁ……
最初に出くわすモンスター……
『Suraimu』だわなああああ!
綴りは知らんが、確かに英語圏だわこりゃ。
「うーん……何を書いてるのかサッパリ解らないよ」
洋画(吹き替え版)で良く見るホワイのポーズを決める勇者。
『ナ』のポーズで硬直するオレ。
……どうすりゃいいんだ!!
もう何も思い浮かばん!!
「デブッ(覚醒」
悟りを開いた文字通りのブッタ遊び人が、
瞑目してスッと壁を指さす。
「なにこいつ~なんか見てるだけでウザいんだけど~」
「……なんだ?何か意味があるのか?」
遊び人の挙動に違和感を感じたであろう女戦士が、
切れ長の目を細めて壁に映るオレの影を見つめる。
………………
…………
……
「勇者……これ……似てないか?
若干先が曲がってはいるが……」
そ、そう!!!多分それだ!!!
「え……っと、何だろ……大根?」
ちげえ!!!!!
手!いや、手じゃない!!柄だよ柄!!!
俺はクイックイッと両手をすぼめて主張する。
「……解った!! マンドラゴラだ!!」
バカ!!!!
腹へってんのか!?!?
つか食えなくなってんじゃねえか!!!
いや食い物じゃねえんだよ!!!
あ!?
文字に見せる為に折り腰になってっから駄目なのか!
こう!こうだ!!
俺は下半身をピンッと、床に付くほどに伸ばして
思いっきり背伸びして長く見せる。
†
軟体なのか気体なのかゲル状なのかは分からないが、
思ったより伸びる身体で少しでも似せる。
「……これは」
勇者が壁とオレを交互に見直して言った。
「剣……?」
それだトンスラ!!!
オレは勢いよく小さな突起でサムズアップして、
すかさず隣の、オレの白骨がある牢屋を指さした。
『オレのしかばねの下を調べるんだ!!』
キシャーという声にしかならなかったが、
やっとオレの思いが通じたような気がした。
「向こうの部屋に何かあるという事なのか?勇者」
オレはポールの牧ばりに鳴らない指で2回グッドを示して、
肯定の意を表した。
「デブッ(賢者」
何かもうお前にすらも汚い後光が射して見えるよ。
「よくわかんないけど~じゃあとっとと見にいって帰ろう~」
お前はブレないなハム女。
「そうだね……じゃあ行ってみようか」
クルっと踵を返す勇者を見やった刹那、
オレは勢いよく魂型モンスターから抜け出す。
ありがとよ――誰も見て居ないのにかっこよく呟いたオレは
そのままのノリで牢屋を隔てる壁に突っ込んだ!!
ところまでは良かった!!
***
「特に何も無いな……勇者」
「うーん……白骨があるだけだよね」
「だから言ったじゃ~ん」
奪われた松明を手に隣に戻り捜索する一行。
それを眺めるオレ。
そう。
壁にめり込んで頭だけ出してるだけのオレの魂は、
最早何も伝える事も出来ずに、
ただ目の前で繰り広げられる『ドリフの盆回り』を見続けるしかなかった。
……幽霊なら壁抜け出来ると思うじゃん!?
なんで引っかかるかね!
「勇者……剣があったなら最初に来た時に気づくだろう」
「そうだよねぇ……」
「はい!何もないってことで終了~とっとと帰ろう!」
待――
って……本当にベッドの下に剣があるのか??
そもそもサイモンの一方的な昔語りを聞いただけで、
オレ自身、本当に剣があるのかどうかは……確認していない!?
無いのかこれ??
だったら今までのオレの苦労はなんだったんだって話になるだるあ!!
どうする!!どうすりゃいいんだ!!
誰か何とかしてくれええええええええええ!!
ジャラジャラジャラジャラー
フィーバーが来たような軽快な金の音に意識を向けたオレは、
大量の金貨が宙を舞うのを、スローモーションのように眺めていた。
緩やかに振り向く三人の視線の先には――ドヤ顔のピエロ。
「デブッ(ゴール〇シャワー!」
ザ・ワールド 時は動き出す。
的なアレで次第に加速する風景と同化するかの如く
女戦士の鉄拳が遊び人の顔にめり込んだ。
「ちょ~!!なにやってんのよ!アタシらの全財産!!」
床を跳ねる金貨の鳴るチャリンの合間に――
確かに聴こえた、ような気がした。
カツンッ という鈍い音。
オレには知覚出来ないが、勇者はそれに気づいたようだった。
「あ!!ちょっとタンマ……!!」
キョロキョロと周囲を見渡して、僧侶の松明を持ち、
ベットの下に転がった金貨を探る為に覗き込む勇者――
「これかあああああ!!」
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