ずっと一緒だよ。~突然過保護なイケメン幽霊に憑かれたら・・・!?

優奎 日伽 (うけい にちか)

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4. ポルターガイストって普通の事でしたっけ?

ポルターガイストって普通の事でしたっけ? ③

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「え、なに?」

 ゴンッ
 ぱっと見は落ち着いた大人の女性なのに、実は素っ惚けな奈々美が言ったのと、彼女が頭を簡易テーブルに強か打ったのは同時の事で、頭を抱え込んで固まった。
 驚異的なタイミングで幽さんの攻撃を躱したのに、こんな事で頭を強打する姉を弟妹が “なんだかなぁ” という顔で眺める。
 しかしまだ幽さんの意味不明な攻撃は止まっておらず、奈々美の目の前の棚がガタガタいい出した。

「……地震?」

 揺れ出した棚を掴んで、振り返った奈々美の姿に沙和は言葉を失くす。
 緩いパーマの掛かったピンクブラウンの髪が水の中のようにゆらゆらし、棚を抑える傍ら奈々美は邪魔そうに髪を払う。

(お姉ちゃん……地震じゃ普通、髪の毛舞い上がらないからね?)

 何年も付き合っているけど、沙和は不思議だと思っていない姉の思考回路が不思議でならない。
 奈々美は昔から、美人でしっかり者のお姉ちゃんなのに、自分の事はどっか抜けている人だった。そのギャップでよくモテる。

(そんな事より幽さんの方が先だよ!!)

 のんびり考えに耽っている場合ではない。このままでは奈々美が怪我をしてしまう。
 沙和は幽さんを睨みつけ、沸き立つ怒りをぶつけた。

『幽さん! これ以上なんかしたら大っ嫌いになるからねッ!!』

 途端に揺れが収まって、沙和と隼人から安堵の息が漏れる。
 病院の備品で怪我するとかって洒落にもならない。

『ちょっと幽さん。どういう心算ッ?』

 窓際に突っ立って放心していた幽さんはハッとして辺りを見渡し、ベッドに仁王立ちする沙和を恐る恐る振り返る。彼女の怒りの形相に後退って、幽さんは顔を引き攣らせた。

『……あ、あれ?』
『あれ? じゃない! なに惚けてんの!?』

 怒りが冷めやらない沙和が再び吠えると、

『惚けてないって』
『じゃあこの惨状はどう説明してくれるのかしら?』

 沙和に言われ、隼人が大きく頷いて見せると、荒れた室内に幽さんは困惑を浮かべた。
 吊戸棚は全開放で中の物がいたる所に散乱し、ベッド脇の棚にあった物はきれいさっぱりなくなって、床に転がっているか隼人に抱えられている。

『これ…俺がやったのか?』
『あたしと隼人じゃないのは間違いないわね』
『……うそぉ』

 幽霊なのに蒼白になって……というか、そう見えるだけかも知れないけど、呆然とする幽さんが保身のために嘘を吐いているようには見えない。
 確実に奈々美を狙っていたのに。
 その奈々美はテーブルの下から這い出て、「収まったみたいね」と安心したのか表情を緩ませる。そしてベッドに突っ立ている沙和を見て、やれやれと首を振った。

「子供じゃないんだから、隼人と一緒になって散らかしてどうするの? それだけ元気になったことは喜ばしいと思うけどね」
「え? あたし?」

 思わず聞き返した沙和に、奈々美が顔を顰めて頷いた。
 とんだ濡れ衣だ。
 とは言え、視えない奈々美に説明のしようもなく「はい」と消え入りそうに返事をし、ギロリと幽さんを睨んだ。
 顔の前で手を合わせて平謝りする幽さんを、隼人が苦い顔でチラチラ見ながら、腕の中の物を棚に戻している。

(ひっじょーに釈然としないんですけど。あたし被害者!)

 ぼふぼふ音を立てて枕を膨らませ定位置に戻し、沙和に巻き付かんばかりだった毛布を引っ張り上げていると、しょぼくれた幽さんが顔を覗き込んで来た。

『さわぁ。沙和ちゃ~ん? 怒ってる? って聞くまでもないですね。そりゃ怒ってますよね。はい。ごめんなさい』

 直しているベッドの上で土下座する幽さんを通り抜けて、毛布がふわりと広がって落ちる。
 なまじっか触れることが出来るから、幽さんが幽霊なのを忘れがちだけど、こういう光景を見ると改めて思い出し、ふと切なくなる。
 生きている人と見間違えるほど生き生きしているのに、彼に実体がないなんて嘘みたいな話だ。
 だからと言って、今回の件をそう簡単に赦すつもりはないけど。

「ねえ沙和。落ちたタオル、コインランドリーで洗濯するけど、他に洗うものある?」

 奈々美がタオルを抱えて訊いて来た。
 長女は何も言わなくても黙々と片付け始めていたみたいだ。実に有難い。

「大丈夫。最近はリハビリ兼ねて動くようにしてるから、溜まってないよ」
「そお?」

 微笑んだ奈々美に洗濯物用の手提げを渡す。受けった彼女はタオルを突っ込み、財布片手に部屋を出て行った。

「さて幽さん。責任もってこれを片して頂きましょうかね?」

 沙和がにっこりと微笑むと、幽さんは小さく『ひっ』と漏らし、隼人が「大人しく従った方がいいよ?」と含みのある言葉を幽さんに掛けていた。

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