29 / 65
6. 心残りは何でしょう?
心残りは何でしょう? ③
しおりを挟む
やっちまいました。
0時に更新予約していたつもりで、予約になってませんでした (ノД`)・゜・。
どうしてこうお間抜けなんだか……(;一_一)
**************************************
辺りの風景を眺め見ながら、いつの間にか隣の町まで歩いていた。
「篤志の家、この近くだけど行ってみる?」
『誰が行くか』
悪戯っぽく聞いてみたら、心底嫌そうな声が返って来た。沙和はくすくす笑いながら続ける。
「じゃあ美鈴んちは? ここから歩いて五分くらい」
『だから何でわざわざ天敵の所に行く必要があるんだ?』
「ついで?」
『そんなついでなんて忘れてしまいなさいね?』
どうせ行ったところで、二人とも大学に行って不在なのだけれど。
ふとそんなことを考えて、寂しさが胸に降ってくる。
「また、学校に通えるかなぁ?」
そんな呟きが意図せず漏れた。
ずっと休学したままの大学に思いを馳せる。
半年も通えなかった。
取り立てて勉強が好きなわけではなかったが、大学で出来た友人たちに会いたいと思う。学部が違う美鈴からの妨害がなかったので、中学以来初めて出来た友人たちだ。
戻れることになったとしても、最初からやり直しだけど。
今年度には間に合わなかった。
無理に押し通そうとしたら家族が半狂乱になりそうで、口に出すのが躊躇われたのが正直なところ。しかも二十四時間三百六十五日、不眠不休で働けるお目付け役まで居る。篤志の二の前が出ることを考えただけで、胃が痛くなる案件だ。
沙和の複雑な心境を知ってか知らずか、幽さんの掌がぽすぽすと頭上に落ちて来る。斜めに見上げれば、幽さんがやんわり微笑んでいた。
釣られて沙和も笑顔になると、
『復学したいなら、復習をちゃんとしないとな?』
思わず絶句した。
(人を誑し込むような微笑みで、そんな厭味など聞きたくなかったです……)
いや。分かっている。
幽さんは厭味のつもりで言っていない。
純粋に、沙和への心配から出た言葉だと。
(ダラダラと寝て過ごしてたもんね)
そうするしかなかったのだけど。
『大丈夫。案ずるな。俺が教えてやるから』
「……幽さん、勉強できるの? 記憶なくてもそうゆーことは覚えてるもの?」
つい胡乱な目で見てしまう。
幽さんは言葉に詰まったまましばらく考えて、『…多分』と頼りなく笑った。
***
それからも毎日のように外出している。
最初は心配ばかりしていた家族も、沙和が日増しに元気になるのを見て、口を出さなくなっていた。ただスマホのGPSは必須だけれど。
この日は通勤通学ラッシュが過ぎてから、電車に乗ってほんの少し遠出していた。
昔、母が再婚する前に住んでいた町に、幽さんが行ってみたいと言ったから。
何で急にそんなことを言い出したのか幽さんに訊いてみたら、何となくと曖昧に答えただけだった。
幽さんには言っていないけれど、あまり気が乗らない。
沙和にとって、その町には苦い思い出しかない。
苦労したとか、苛められたからとかではないけれど、悲しくなる町だった。
それでも幽さんがやたら興味を示すので、沙和は重い腰を上げざる得なかったのだけど。
もしかしたら、幽さんの記憶に関係する何かがあるのかも、そう考えたら行きたくないと言うのは、子供染みた我儘のような気がしてしまったのだ。
自宅最寄りの駅から二つ目の駅に降り立つと、幽さんはお上りさん宛ら、口を半開きにして辺りを見渡した。
『ここ知ってるかも』
言うや幽さんがスーッと移動を始めた。
駅に降りてすぐ正面の商店街に向かっているようだ。
赤信号で沙和が立ち止まっているのに、轢かれる心配のない幽さんは、何かに引き付けられるようにさっさと行ってしまう。
(と言っても、限界距離あるけどね)
置いて行かれても五十メートル以上の単独行動が出来ない幽さんだから、沙和もあまり心配はしていない。
それにしてもやはり気が重い。
この町で大切な人に裏切られた。
ずっと一緒にいてあげるからね、そう言った人はある日突然姿を見せなくなり、母が再婚し、この町を離れることになった。小学三年のちょうど今頃だ。
いま思い出しても悲しくなる。
沙和が物思いに耽っていると、すごい勢いで幽さんの後ろ姿がこちらに戻って来る。どうやら限界値を突破してしまったらしい。
(ホント、コントみたいだわ)
擬音を充てるとしたら、ばびゅーんだろうか?
走る車を突き抜けて、すたっと隣に幽さんが並んだ。
『お帰り』
周りに人がいるので声に出さず言うと、久し振りだったから目を皿のようにした幽さんが沙和を見た。顔にはびっくりしたと書いてある。
『たっ…ただいま戻りました』
『はい。で、何かありましたか?』
『見たことある様なモノばかりで、わくわくする!』
まるで小学生みたいな表情をする幽さんに、沙和はこっそり溜息を吐いた。
出来ればこのまま悲しい記憶は封印していたかったけど、幽さんのこんな顔を見たらそうも言ってられないらしい。
今さら過ぎてしまった過去よりも、優先すべきは幽さんの記憶奪還だと無理矢理納得する。そのために此処まで来たのだから、手ぶらで帰る訳にもいかないだろうと、自分を鼓舞する沙和は、また溜息を漏らした。
0時に更新予約していたつもりで、予約になってませんでした (ノД`)・゜・。
どうしてこうお間抜けなんだか……(;一_一)
**************************************
辺りの風景を眺め見ながら、いつの間にか隣の町まで歩いていた。
「篤志の家、この近くだけど行ってみる?」
『誰が行くか』
悪戯っぽく聞いてみたら、心底嫌そうな声が返って来た。沙和はくすくす笑いながら続ける。
「じゃあ美鈴んちは? ここから歩いて五分くらい」
『だから何でわざわざ天敵の所に行く必要があるんだ?』
「ついで?」
『そんなついでなんて忘れてしまいなさいね?』
どうせ行ったところで、二人とも大学に行って不在なのだけれど。
ふとそんなことを考えて、寂しさが胸に降ってくる。
「また、学校に通えるかなぁ?」
そんな呟きが意図せず漏れた。
ずっと休学したままの大学に思いを馳せる。
半年も通えなかった。
取り立てて勉強が好きなわけではなかったが、大学で出来た友人たちに会いたいと思う。学部が違う美鈴からの妨害がなかったので、中学以来初めて出来た友人たちだ。
戻れることになったとしても、最初からやり直しだけど。
今年度には間に合わなかった。
無理に押し通そうとしたら家族が半狂乱になりそうで、口に出すのが躊躇われたのが正直なところ。しかも二十四時間三百六十五日、不眠不休で働けるお目付け役まで居る。篤志の二の前が出ることを考えただけで、胃が痛くなる案件だ。
沙和の複雑な心境を知ってか知らずか、幽さんの掌がぽすぽすと頭上に落ちて来る。斜めに見上げれば、幽さんがやんわり微笑んでいた。
釣られて沙和も笑顔になると、
『復学したいなら、復習をちゃんとしないとな?』
思わず絶句した。
(人を誑し込むような微笑みで、そんな厭味など聞きたくなかったです……)
いや。分かっている。
幽さんは厭味のつもりで言っていない。
純粋に、沙和への心配から出た言葉だと。
(ダラダラと寝て過ごしてたもんね)
そうするしかなかったのだけど。
『大丈夫。案ずるな。俺が教えてやるから』
「……幽さん、勉強できるの? 記憶なくてもそうゆーことは覚えてるもの?」
つい胡乱な目で見てしまう。
幽さんは言葉に詰まったまましばらく考えて、『…多分』と頼りなく笑った。
***
それからも毎日のように外出している。
最初は心配ばかりしていた家族も、沙和が日増しに元気になるのを見て、口を出さなくなっていた。ただスマホのGPSは必須だけれど。
この日は通勤通学ラッシュが過ぎてから、電車に乗ってほんの少し遠出していた。
昔、母が再婚する前に住んでいた町に、幽さんが行ってみたいと言ったから。
何で急にそんなことを言い出したのか幽さんに訊いてみたら、何となくと曖昧に答えただけだった。
幽さんには言っていないけれど、あまり気が乗らない。
沙和にとって、その町には苦い思い出しかない。
苦労したとか、苛められたからとかではないけれど、悲しくなる町だった。
それでも幽さんがやたら興味を示すので、沙和は重い腰を上げざる得なかったのだけど。
もしかしたら、幽さんの記憶に関係する何かがあるのかも、そう考えたら行きたくないと言うのは、子供染みた我儘のような気がしてしまったのだ。
自宅最寄りの駅から二つ目の駅に降り立つと、幽さんはお上りさん宛ら、口を半開きにして辺りを見渡した。
『ここ知ってるかも』
言うや幽さんがスーッと移動を始めた。
駅に降りてすぐ正面の商店街に向かっているようだ。
赤信号で沙和が立ち止まっているのに、轢かれる心配のない幽さんは、何かに引き付けられるようにさっさと行ってしまう。
(と言っても、限界距離あるけどね)
置いて行かれても五十メートル以上の単独行動が出来ない幽さんだから、沙和もあまり心配はしていない。
それにしてもやはり気が重い。
この町で大切な人に裏切られた。
ずっと一緒にいてあげるからね、そう言った人はある日突然姿を見せなくなり、母が再婚し、この町を離れることになった。小学三年のちょうど今頃だ。
いま思い出しても悲しくなる。
沙和が物思いに耽っていると、すごい勢いで幽さんの後ろ姿がこちらに戻って来る。どうやら限界値を突破してしまったらしい。
(ホント、コントみたいだわ)
擬音を充てるとしたら、ばびゅーんだろうか?
走る車を突き抜けて、すたっと隣に幽さんが並んだ。
『お帰り』
周りに人がいるので声に出さず言うと、久し振りだったから目を皿のようにした幽さんが沙和を見た。顔にはびっくりしたと書いてある。
『たっ…ただいま戻りました』
『はい。で、何かありましたか?』
『見たことある様なモノばかりで、わくわくする!』
まるで小学生みたいな表情をする幽さんに、沙和はこっそり溜息を吐いた。
出来ればこのまま悲しい記憶は封印していたかったけど、幽さんのこんな顔を見たらそうも言ってられないらしい。
今さら過ぎてしまった過去よりも、優先すべきは幽さんの記憶奪還だと無理矢理納得する。そのために此処まで来たのだから、手ぶらで帰る訳にもいかないだろうと、自分を鼓舞する沙和は、また溜息を漏らした。
0
あなたにおすすめの小説
10年引きこもりの私が外に出たら、御曹司の妻になりました
専業プウタ
恋愛
25歳の桜田未来は中学生から10年以上引きこもりだったが、2人暮らしの母親の死により外に出なくてはならなくなる。城ヶ崎冬馬は女遊びの激しい大手アパレルブランドの副社長。彼をストーカーから身を張って助けた事で未来は一時的に記憶喪失に陥る。冬馬はちょっとした興味から、未来は自分の恋人だったと偽る。冬馬は未来の純粋さと直向きさに惹かれていき、嘘が明らかになる日を恐れながらも未来の為に自分を変えていく。そして、未来は恐れもなくし、愛する人の胸に飛び込み夢を叶える扉を自ら開くのだった。
椿の国の後宮のはなし
犬噛 クロ
キャラ文芸
架空の国の後宮物語。
若き皇帝と、彼に囚われた娘の話です。
有力政治家の娘・羽村 雪樹(はねむら せつじゅ)は「男子」だと性別を間違われたまま、自国の皇帝・蓮と固い絆で結ばれていた。
しかしとうとう少女であることを気づかれてしまった雪樹は、蓮に乱暴された挙句、後宮に幽閉されてしまう。
幼なじみとして慕っていた青年からの裏切りに、雪樹は混乱し、蓮に憎しみを抱き、そして……?
あまり暗くなり過ぎない後宮物語。
雪樹と蓮、ふたりの関係がどう変化していくのか見守っていただければ嬉しいです。
※2017年完結作品をタイトルとカテゴリを変更+全面改稿しております。
靴屋の娘と三人のお兄様
こじまき
恋愛
靴屋の看板娘だったデイジーは、母親の再婚によってホークボロー伯爵令嬢になった。ホークボロー伯爵家の三兄弟、長男でいかにも堅物な軍人のアレン、次男でほとんど喋らない魔法使いのイーライ、三男でチャラい画家のカラバスはいずれ劣らぬキラッキラのイケメン揃い。平民出身のにわか伯爵令嬢とお兄様たちとのひとつ屋根の下生活。何も起こらないはずがない!?
※小説家になろうにも投稿しています。
苦手な冷徹専務が義兄になったかと思ったら極あま顔で迫ってくるんですが、なんででしょう?~偽家族恋愛~
霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
「こちら、再婚相手の息子の仁さん」
母に紹介され、なにかの間違いだと思った。
だってそこにいたのは、私が敵視している専務だったから。
それだけでもかなりな不安案件なのに。
私の住んでいるマンションに下着泥が出た話題から、さらに。
「そうだ、仁のマンションに引っ越せばいい」
なーんて義父になる人が言い出して。
結局、反対できないまま専務と同居する羽目に。
前途多難な同居生活。
相変わらず専務はなに考えているかわからない。
……かと思えば。
「兄妹ならするだろ、これくらい」
当たり前のように落とされる、額へのキス。
いったい、どうなってんのー!?
三ツ森涼夏
24歳
大手菓子メーカー『おろち製菓』営業戦略部勤務
背が低く、振り返ったら忘れられるくらい、特徴のない顔がコンプレックス。
小1の時に両親が離婚して以来、母親を支えてきた頑張り屋さん。
たまにその頑張りが空回りすることも?
恋愛、苦手というより、嫌い。
淋しい、をちゃんと言えずにきた人。
×
八雲仁
30歳
大手菓子メーカー『おろち製菓』専務
背が高く、眼鏡のイケメン。
ただし、いつも無表情。
集中すると周りが見えなくなる。
そのことで周囲には誤解を与えがちだが、弁明する気はない。
小さい頃に母親が他界し、それ以来、ひとりで淋しさを抱えてきた人。
ふたりはちゃんと義兄妹になれるのか、それとも……!?
*****
千里専務のその後→『絶対零度の、ハーフ御曹司の愛ブルーの瞳をゲーヲタの私に溶かせとか言っています?……』
*****
表紙画像 湯弐様 pixiv ID3989101
あまりさんののっぴきならない事情
菱沼あゆ
キャラ文芸
強引に見合い結婚させられそうになって家出し、憧れのカフェでバイトを始めた、あまり。
充実した日々を送っていた彼女の前に、驚くような美形の客、犬塚海里《いぬづか かいり》が現れた。
「何故、こんなところに居る? 南条あまり」
「……嫌な人と結婚させられそうになって、家を出たからです」
「それ、俺だろ」
そーですね……。
カフェ店員となったお嬢様、あまりと常連客となった元見合い相手、海里の日常。
【完結】イケメンが邪魔して本命に告白できません
竹柏凪紗
青春
高校の入学式、芸能コースに通うアイドルでイケメンの如月風磨が普通科で目立たない最上碧衣の教室にやってきた。女子たちがキャーキャー騒ぐなか、風磨は碧衣の肩を抱き寄せ「お前、今日から俺の女な」と宣言する。その真意とウソつきたちによって複雑になっていく2人の結末とは──
記憶なし、魔力ゼロのおっさんファンタジー
コーヒー微糖派
ファンタジー
勇者と魔王の戦いの舞台となっていた、"ルクガイア王国"
その戦いは多くの犠牲を払った激戦の末に勇者達、人類の勝利となった。
そんなところに現れた一人の中年男性。
記憶もなく、魔力もゼロ。
自分の名前も分からないおっさんとその仲間たちが織り成すファンタジー……っぽい物語。
記憶喪失だが、腕っぷしだけは強い中年主人公。同じく魔力ゼロとなってしまった元魔法使い。時々訪れる恋模様。やたらと癖の強い盗賊団を始めとする人々と紡がれる絆。
その先に待っているのは"失われた過去"か、"新たなる未来"か。
◆◆◆
元々は私が昔に自作ゲームのシナリオとして考えていたものを文章に起こしたものです。
小説完全初心者ですが、よろしくお願いします。
※なお、この物語に出てくる格闘用語についてはあくまでフィクションです。
表紙画像は草食動物様に作成していただきました。この場を借りて感謝いたします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる