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14. A・Dの夏休み 【R18】
A・Dの夏休み ⑭
しおりを挟む二日目は、十一時に謙人が迎えに来て、別荘でバーべキューになった。
残念なことに、竜助と麻美、クワトロの四人は一足先に帰って行ってしまったが。
食後にプライベートビーチで、ナンパもSNSも気にせず遊びまくった。
謙人に招待されなければ、今日もTシャツを着て泳がなければならないと思っていた美空のはしゃぎ様はなかった。
十玖も昨日堪能できなかった美空の水着姿に、満足したらしい。
心配の種であった萌父 佳貴の電話攻撃は、次々写メすることで先手を打って躱した。
美空と佐保が一緒と言うだけで、佳貴は安心しているようだ。
佐保のたらし込み効果が未だ有効らしい。
疲れ切っている女子たちが、頭を並べて居眠りをしている間に、野郎三人が仕事を淡々とこなしていたが、お疲れなのは何も女子だけではなかったらしい。
男三人が殺人現場の死体のように転がって爆睡しているところを、女子が現場さながらに脚色してA・D公式サイトにUPすると、速攻、筒井と竜助から爆笑コメントが送られてきた。
発案者の美空は、ケチャップ塗まみれになっていた晴日に後で思い切り怒られたが、負けじと頭からケチャップを垂らして茫然としている写真をアップして、筒井に褒められたからチャラだろう。
全員で夕飯の準備をしていると、十玖の包丁さばきに女子の感嘆の声が上がる。
「トーク。何でそんなに上手い訳?」
手元を覗き込んでくる佐保。
「小学生の時から合宿とかキャンプでやってたんで。消防に入ったら、食事当番あるって聞いてたし」
「嫌味なくらい使える奴だな」
「掃除も料理も得意で子供好きって、お買い得物件手に入れたね。クーちゃん」
包丁要らずの下ごしらえ担当二人が言うと、美空が大きく頷いた。
「うん。あたしもそう思う」
「本当に!? 本当にそう思う?」
「思ってるよぉ。手際が良いし、十玖に任せたら安心だね」
にっこり美空が微笑むと、十玖は一層きびきび働きだした。
「クーちゃんて、トークの扱いが上手いわよね」
佐保がぽそりと呟くと、美空がピースする。
「扱いってより、手玉に取ってるって感じ」
玉ねぎの皮をペリペリ剥く謙人が訂正し、萌が腕を組んで十玖を見、ため息をついてポロリと零す。
「逃がした魚はデカかったなあ」
「も…萌ッ!?」
「ん…大丈夫。晴さんもちゃんと好きだから」
「はあ? …俺にも包丁貸せ」
「無理! さっきのが洒落じゃなくなっちゃうよ、お兄ちゃん。本物の流血は避けようよ」
「そうだよ晴さん。ギタリストが指ケガしたら大変だよ!」
「いいから!」
美空に向かって手を出す晴日。彼女は後ろに隠して首を振った。
萌が晴日にしがみ付く。
「萌はズボラで使えない晴さん好きだから!」
しーんとする。
一身に注目を集め、萌は「あれ?」と首を傾げた。
「ズボラで使えないって、言い切った」
「言い切ったね」
玉ねぎを終了し、今度はピーラーで人参を剥き始めた謙人に肯定され、晴日はふらふらとキッチンを出て行ってしまう。萌は慌てて追いかけた。
凹んだ晴日が復活するまで暫くかかったが、その間に滞りなく支度が済み、食べる頃にはすっかり機嫌も直っていた。
男子がガツガツ食べるのを眺めながら、気落ちした美空が呟く。
「明日、帰るのかあ」
コンソメスープを啜り、深いため息。
途端女子たちが全員手を止めて俯き、ため息をついた。
明後日の午後からツアーに出たら、しばらく帰って来られない。
「明日も時間一杯まで楽しもう」
消沈する美空の頭を撫で、十玖は「ねっ?」と顔を覗き込んだ。
佐保や萌も慰められていた。
折角の休日を落ち込んで過ごすのは止めようと、晴日が場を盛り上げ、二十一時にはお開きになって、十玖たち四人は謙人の車でホテルに戻った。
翌日の午前中はゆっくりし、車で来ていた謙人たちが一足先に帰って行き、十玖たち四人は昼食後に観光施設を訪れ、その足で名残惜しそうに帰路についた。
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