【R18】不器用な僕たちの恋愛事情

優奎 日伽 (うけい にちか)

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15. GAME OVER 【R18】

GAME OVER ②

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 竜助と晴日は、見た目が大人っぽかったのも幸いして、割と早くからライヴハウスに出入りしていた。
 アマチュア、インディーズバンドのオーディションを受けまくって、取り合えず一つのバンドに落ち着いたようだが、あまりしっくり行ってないようだった。

 二人に転機が訪れたのは、中学三年の夏休み。
 クワトロ・レジーナの後押しもあって、バンドの助っ人に重宝されていた二人は、謙人と涼に声を掛けられ、Angel Dustが結成された。

 受験生でありながら、路上ライヴに明け暮れる二人を麻美は心配していたが、杞憂だったとすぐ気付かされた。



 卒業した春休み、麻美は度肝を抜かされた。
 テーブルにお冷を置いて、ガン見した。

「……りゅう…すけ?」

 間違いないとは思うのだが、確認せずにはいられなかった。

「おう」
「何があったの?」
「気分転換」
「気分転換…し過ぎじゃない? いきなりそんな…」

 マジマジと竜助を見入る。
 元々、そんなに黒い方ではなかったが、いきなり変わり過ぎだと思う。
 竜助は前髪を抓み、上目遣いでそれを見た。

「似合わない? 晴にはウケが良かったけど」

 向かいに座る晴日にチラリと視線を向け、麻美を見上げる。

「似合わないとかじゃなくて……何と言うか、驚いた」 

 オレンジだった。
 昨日までの見慣れた竜助は、今日になってオレンジ少年に変わってしまっていた。

「だけど、二人並ぶと派手ねえ」

 黄色とオレンジ。

「目立ってなんぼでしょ」
「そうだけど、学校ヤバいんじゃない?」
「進学校のワリに、その辺は緩いみたいだから平気じゃない?」

 二人とも本当に気にしてないようだ。
 BEAT BEASTのワンマンをオーナーから持ち掛けられ、気合が入っているのは分かってる。
 路上からワンマンまで、飛ぶ鳥を落とす勢いで駆け上がって来た。

 ワンマンを熟しインディーズレーベルでCDを出す様になっていた彼らが、半年も経たず、筒井の目に留まった。
 事務所が付くことで信用度は増し、格段に売り上げ枚数は上がり、ライヴも増え、とんとん拍子で知名度を上げ、これからと勇んでいたのに。

 翌年の春、彼らの足元を掬う出来事が起こった。
 涼の発病――――喉頭ガン。

「このまま無くちまうのかな? 涼が築いてきたもの」

 散々泣き明かしたあと、竜助が呟いた。
 兄貴と、とても慕っていた彼の脱退は、竜助のみならず、打撃が大きかったと思う。

 全ては涼が始まりだった。
 涼がいなければ、謙人がバンドに興味を持つ事も、竜助と晴日が涼たちに出会う事もなかっただろう。
 A・Dを無くせないと思いながら、新しいヴォーカルを立てる事に乗り気ではなかった竜助が、頬を紅潮させ、「晴がとんでもねえ奴、見付けたッ」と店に報告に来た時の、子供ような顔が忘れられない。
 A・Dを残すことは、涼の達ての願いだったから。

 涼が新しい人生を歩み始め、十玖の加入で、A・Dは変わり始めていた。
 十玖のことを、最初は物静かで、自己顕示を知らないかのような少年だと思っていたのだが、大間違いだった。
 一度ステージに上がると別人の十玖。そのくせ生真面目で几帳面で、掃除好き。美空が大好きな彼を竜助は可愛がって、麻美にもよく話を聞かせてくれた。

 どこから生まれたのか分からない違和感が、少しずつ大きくなっていく。
 違和感の正体が分からないまま時は流れて行き、十玖の彼女であり、晴日の妹で、大切な幼馴染みの女の子によって、麻美はその正体が何なのか知った。

 A・Dが原因で美空が事件に巻き込まれ、深く傷ついた竜助を麻美は見守るしか出来なかった。
 どんな慰めの言葉も通用しない。

 美空が竜助にとって、特別な女の子なのは当の昔に気付いていた。
 とても大切な女の子。それが恋愛感情から発生しているものなのか、竜助すら掴めていないようだったが、それでも十玖と付き合い始めたのを心底喜んでいたのに…。

 献身的に美空を支える十玖を、竜助は「静かで激しい愛し方、俺には良く分からない」と言っていたのを覚えている。

 竜助が、好きでいてくれているとは感じている。
 好きと言えば、好きと答える。
 けどそれが自分と同じものなのか、独り相撲なのか。
 不安の色が滲み始めた麻美の心を、それはどんどん膨らんで侵食して行った。



 A・Dの知名度が上がるにつけ、竜助と一緒にいる時間は減って行った。

 以前はライヴハウスにもよく顔を出していたのに、ファンが増えていくにつれ屈託ない竜助の対応で、人目に晒されるのが怖くなっていった。

 きっかけは二人で歩いていた時。
 姉と間違われた。竜助はすぐに訂正しようとしたのだが、麻美がそれを止めた。実際竜助には六歳上に姉がいるから、そのお姉さんと間違えたのだろうと思う。

 麻美が嫌だと言えば、竜助が無理強いする事はない。
 居たたまれなかった。
 世間には姉としか見て貰えず、恋人として隣に立つには気後れしかない。

 だから、正直言って十玖が嫌いだ。
 美空を恋人と公言する彼が、妬ましくて、憎くて、羨ましい。

 もう少し、自分が竜助と年が近かったら、こんな気持ちにならなかった。
 堂々と隣に並んで見せた。
 謙人が婚約し、ふらふらと一人の女性に落ち着かなかった晴日に、本命の彼女が出来た。
 竜助は、麻美との関係に疑問も持っていない。

 けど、このままズルズルと続けて行っても良いのだろうか?
 いつか竜助にもお似合いの彼女が出来たら?

 竜助とは何の約束も出来ない。
 自ら望んではいけない。



 A・Dの短い夏休み、竜助がアリバイの為に転がり込んできた。その事をついポロリと恭子に漏らしたため、彼女に連れられてビーチフェスに来ることになり、偶然にもA・Dのメンバーが勢ぞろいし、謙人の集合が掛かった竜助を送り出した。
 竜助は一緒に行こうと言ってくれたけど、素直に頷けなくて、一人クワトロ・レジーナの控え室で悶々としていた。

 年相応の恋人たちを持つメンバーと比較する、周囲の目が怖い。
 竜助は全く気にしないだろうことは解っているのに、その中に混じって、溶け込めない自分を再確認したくない。
 どうしたって恋人には見えない。良くて保護者だ。

 竜助を変わらず愛しいと思う。
 出来ればずっと一緒にいたい。その気持ちに偽りはないけれど、今の自分がとても嫌。

 寝付けなくて何度も寝返りを打ち、諦めて朝の散歩に出ると十玖に会った。
 走らないと調子が出ないと言う。
 麻美を気に掛けて、振り返った十玖を追い払い、麻美は嘆息した。

 十玖が嫌い。
 みじめな気分になる。

(十玖は悪くないのに…ごめんね…)

 彼がいい子なのは知っている。
 A・Dじゃなかったら、きっと好きになっていた。

(あたしが、自信なくてダメな奴だから…)

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