【R18】不器用な僕たちの恋愛事情

優奎 日伽 (うけい にちか)

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17. それがA・Dだろ 【R18】

それがA・Dだろ ②

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 晴日と竜助が生徒会長のしつこさに辟易していた放課後、十玖が今年もまんまと苑子に嵌められ、憔悴した面持ちでふらふらと三年のクラスにやって来て、そして柳田の顔を見るや、青褪めて一目散に走り去った。

「…何したんだ奴は」

 首を傾げる竜助を見、晴日は柳田を指さした。

「コイツ見て逃げなかったか?」
「野生の勘か?」
「十玖の危機察知能力、パねえな」

 言って晴日が立ち上がる。

「十玖が逃げ出すとは、ある意味すげえよ」

 竜助も立ち上がって柳田の肩を叩き、

「諦めろ。十玖がアレじゃ歌ってくれんぞ?」
「百パー無理だな。メンバー中一番の頑固もんだかんな」

 二人はカバンを手にすると、「そんなあ」と情けない顔をした柳田を振り返りもせず、教室を出た。
 晴日が十玖に電話する。

「よお。どこだ? 話あるんだろ?」

 でなければ十玖が三年のクラスにやって来ることはない。必要以上に騒がれたくない十玖らしい。

『下駄箱前にいました』
「いま行く。待ってろ」
『…はい』

 晴日たちは急いで下に降り、十玖と合流した。心なしかやつれて見える。
 三人は斉木家に移動する事にした。
 その道中、十玖が話し始めた内容に晴日と竜助は呆然とした。

「何とゆーか、周到だね。お苑ちゃん」

 竜助は口元を抑えて呟いた。
 苑子のことだから何か仕掛けてくるとは思っていたが。

「筒井マネも抜け目ねえな。学祭如きにここまでするとは」
「稼げるチャンスを逃さない仕事っぷりは賞賛するけど、くうちゃんまで丸め込んだら、十玖に逃げ道ないな」
「大人って汚い」

 涙目で呟く十玖に、言葉もなく苦い笑みを浮かべた。

 三人は地下鉄を降り、晴日の家に向かう。
 しばらく歩いたところで、十玖がため息交じりに口を開いた。

「そう言えば、思わず逃げてしまいましたけど、柳田会長、何の用だったんですか?」

 顔を見た瞬間、寒気がして咄嗟に踵を返していた。

「逃げて正解。今年もライヴやってくれって」

 頭がくらりとした。
 片眉をそびやかした晴日を見詰め、キャパオーバーの頭を抱えた十玖。

「ちょ…ちょっと僕、いま本気で気絶しそうになった」
「そうだろうとも。去年の十玖が悲惨だったから、晴と断り入れてるんだけどな」
「諦め悪くてよぉ。でもまあ、柳田にはお苑ちゃんみたいなコネはないから安心じゃん?」

 苑子にコネを作らせてしまったのは、他でもない自分である事に十玖は頭が痛い。

「去年ので味を占めたんだろうけど、簡単に考えすぎなんだよ」

 玄関扉を開いた晴日は、竜助と十玖を招き入れ、まっすぐキッチンに向かう。十玖たちは勝手に晴日の部屋でくつろぎ始めた。

 程なくして五百ペットのお茶を持って来た晴日が「ほれ」と二人に投げた。どっかりと胡坐をかき、「しかし何だなあ」とキャップをこじ開ける。

「ここまで周囲固めてくるお苑ちゃんの執念はスゲエよな」
「母さんの教えの賜物でしょうかね。華子さんの教えまで乞うてるとは、思わなかったけど」
「使えるものは何でも使うあの根性と押しの強さ、女にしとくの勿体ないよな」

 分かっちゃいても、大体の男が退く。
 免疫のある十玖と太一だから、付き合えると言っても過言じゃないが、最近チャレンジャーが一人加わった。

「みんな十玖にここまでさせたい理由って何だ?」

 竜助が言う。

「苑子曰く、みんな僕 “で” 遊びたいらしいです」
「……分からなくも…ない」

 確かに十玖を揶揄うと面白い。二人とも否定はしない。

「遊んで得になるなら誰でも遊ぶわな」

 いつも先頭きって十玖で遊ぶ晴日だが、今年も大学祭までぎっちり入った一日だ。ベストなライヴを最優先している。
 十玖は立てた膝の上に頬杖をつき、見るともなしに二人を見た。

「でもタロさんとせっちゃんが得する事ってなんだろ?」

 十玖の良い写真が撮れたら、DUNEで何枚か使って貰えるとして、慎太郎のメリットってあるのだろうか?
 SERIにしても同じことが言える。
 晴日たちはしばらく首を傾げ、竜助が最もあり得る事を口にした。

「そこは純粋に遊んでるだけとか?」
「せっちゃんは多分。……僕と淳弥が圏外なのって、せっちゃんの初期設定で、僕らが女の子の恰好をさせられていたせいだと思うんですよね。だからやっぱり僕たちに女装させるの好きだし。タロさんは美空の師匠だから?」

 晴日は一瞬天井を仰いでから十玖を見、

「そこは直接本人に訊いてみたらいいんでない?」
「なんか、墓穴掘りそうで怖い」

 慎太郎自身は、人当たりの良い穏やかな人だが、今回何故だか裏で暗躍しているアノ華子の旦那なのだから、安心してはいけない気がする。
 三人はあらぬ想像してどこか虚ろに笑った。

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