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17. それがA・Dだろ 【R18】
それがA・Dだろ ⑨
しおりを挟む十玖カーミラを探し回る追手に発見され、追い詰められた十玖は教室の窓から飛び降りた。
頑張ってと応援した美空に手を振って走り出すこと二十分。十玖の身体能力に負けず劣らずの人に見つかった。
「ちょっと十玖! むざむざ写真撮らせるってどーゆー事ッ!? あんたなら絶対に死んでも逃げ切ると思ったのに!」
十玖と並走しながらSERI――――瀬里が喚き散らす。
「しかもヘッドロックされてるって、それでもあたしの従弟なのッ!?」
言い様、瀬里の飛び蹴りが来る。十玖はそれをひらりと躱し、立て続けに繰り出される拳を受けて流す。
「勝手にそんな条件出さないでよ! お陰でもの凄く気持ち悪かったんだけどッ」
「あんたを信じてたのにッ」
「なら前もって刺客を教えといてよ。そしたら死んだって逃げ切った」
「油断するからでしょッ」
突然始まった格闘戦に人が集まりだした。彼女がSERIとバレて囲まれては万事休す。
「その話はまた後で」
踵を返して走り出した。瀬里はさせじと追い駆けてくる。その最中にも瀬里の攻撃は続いていた。
「十玖。何でドレスの中にハーフパンツ?」
「飛び降りる時困るじゃん。パンツだと」
「暑くない?」
「非常に!」
走りながら応戦し、どうでもいい会話。
巻き込まれたくない一般人には近付く事さえ出来ない。十玖にしてみれば有難い状況と言えた。
校舎の壁掛け時計の針は、制限時間まで十分を切っていた。
(このまま逃げ切る…ッ!)
さらに速度を上げ、それでも付いて来る瀬里を振り返った。
「せっちゃん。汗掻いたら大変じゃない? 僕は着替えあるけど」
「そう言われたらそうね」
「保健室に有理がいるから、行ってみたら?」
「…そうね。有理姉さんに会いたいかも」
瀬里を連れて保健室までダッシュした。
保健室の大窓を開け、中を覗き込んで養護教諭の所在を目視する。
「有理! お客だよ。タオル貸してあげて」
昨年のように有理にスタンプを取られないうちにさっと立ち去ると、後方で有理が「スタンプ押してけッ!」と喚いていたが、そんなこと知らない。
追手を躱しつつ、そこかしこにある壁掛け時計で時間を確認し、十一時を回ると同時に教室に飛び込んだ。
苑子がホイッスルを鳴らし、「とーく終了~っ」と声を上げた。
仮装スタンプラリーが終了したら、今度は合唱部だ。
十玖、太一、苑子は時間を合わせて教室で落ち合い、揃って西棟の部室に向かっていた。
スマホで時間を確認すると、十玖は「寄り道してく」と二人を先に行かせ、写真部の展示室を覗き込んだ。美空は見当たらない。
十玖の写真を展示することは予め聞いていたが、どんな写真かは知らない。先日、美空から涼の写真が展示されていることを聞き、それも気になっていた。
順路通りにパネルを眺め歩いていると、後ろから肩を叩かれ振り返った。
「よっ。久し振り」
デザインセーターにチノパン。見ていたら気の抜けるような笑顔の中年男性が手を挙げていた。本郷慎太郎だった。
十玖が会釈すると「今からか?」と訊かれ頷く。
「タロさんも今からですか?」
「いや。十玖が入ってくの見えたから。僕は一通り見たよ」
「どうでした?」
美空と言わずとも分かる。慎太郎はニコニコして先を歩いていく。
慎太郎が足を止めたパネルに十玖は目をやった。
「いつの間に」
近所の子供たちと全開で遊んでいた時のものだと、直ぐに分かった。
「良い写真だよ。十玖の子供好きが見て取れる。何して遊んでいたの?」
「…この時は確か、グルグル回したり上に放り投げたり? あまり続くんで、逃げ出したら捕まって囲まれたんだったかな」
美空との約束もあったし、と肩を竦めて笑う。
「ちっちゃくはないよね、この子たち」
「大体が三~四年生。このくらいになっちゃうとお父さんにはして貰えなくなるから、公園で見つかるとよくやらされるんですよね」
最初は数年前。
転んで泣いていた子を宥めるためにやった事だった。それがだんだん広がって、写真のような状態にまでなってしまった。
「常連さんたちなんだ?」
「まあそうですね」
美空が来なかったら、ずっと付き合わされていた事だろう。
「DUNEイケそうですか?」
使って貰えるか、ここで決まる。
探るような目で覗き込んでくる十玖を、慎太郎が喉を鳴らして笑った。
「美空の写真は、僕も好きだよ。些細な風景でも物語を感じさせてくれるし、暖かい。彼女の人柄がよく出ている。育て甲斐があるよ」
「じゃあ決まりですか?」
「まだまだ勉強の余地は有るけど、充分その価値はあると思う」
「やったッ」
自分のことのように喜ぶ十玖を見て、慎太郎も笑顔になる。先を急ぐ十玖が足を止めたのは、親子の写真。涼と真秀が向き合って笑っている微笑ましい光景。
「リョウ元気そうだね。パパになったって聞いてたけど、幸せそうだ」
「幸せにならなきゃ嘘ですよ」
身を切る思いで歌を諦めた。諦めた先にあった光明が真秀だった。
「真秀ちゃんがまた可愛いんですよ。持って帰りたいくらい懐いてくれて、涼さんがヤキモチ妬いて大変」
「本当に子供好きだなあ」
「自分の子、直ぐに欲しいくらいです」
「そりゃいくら何でも早いでしょ」
「分かってますって」
十玖はスマホを確認する。
「そろそろ行かないと」
「ライヴはまだだろ?」
「その前に合唱部行かないと。ミュージックカフェやってるんで、タロさんもどうですか? 苑子と太一もいますよ」
美空も顔を出すし、そう言うと慎太郎は頷いて同行した。
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