短編集

耽創

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「あ、穴」
 隣で海水を足で蹴っていたカナは、立ち止まった。
 目の前を同じように歩いていたレイが、変なことを言ったから。
「どこ?」
「ほら」
 レイが指差すところには何もない。ただ、空の色が滲む海が、ゆらりゆらり、揺れているだけだ。
「ないよ穴」
「ん~? 見えるんだけどなあ、ほら、光で反射してる白い部分が、海をくり抜いてるみたいでしょ」
 なるほど、確かに言われてみれば白い光で隔てられた海がいくつもくっついているように見える。
「なんか、ツギハギみたいに見えてきた」
 頭がクラクラしてきたカナを、レイがくすくす口に手を当てながら笑う。
「帰ろっか」
 レイの手をとって、2人で帰路をゆっくり歩いた。
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