母は強し!!〜家庭に疲れたので闘ってきます〜

マオ

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序章

春果の幸せとは①

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 菅野 春果(すがの はるか)35歳。
7歳の娘と5歳の息子の母である。
 夫は介護職に勤める菅野 明人(すがの あきと)32歳。
 元々、同じ会社の上司と部下の立場だった・・・。


 夫の方からアプローチをされ、付き合ってたった半年で周りに羨まられながらのスピード婚からの寿退社。

 世間一般では幸せになるんだろう。

 それから6年後・・・そんな幸せも形もなく崩れてしまった。




 娘が生まれ、息子が生まれ、育児の忙しさと孤独感に挟まれる日々。

 会社から「子持ちはちょっとねー」と言われ、復帰もできず就活をしようにもなかなか理解ある会社は見つからず。
 ただただ悩み、夫は育児に協力もせず帰りが遅いためワンオペ状態。

 夫に会う度、毎日喧嘩ばかりだった。




 「はぁー・・・疲れたな・・・昔が懐かしいや。」




 口癖になるくらい言ってきたセリフも数えられなくなってきた。




 ある日、いきなり夫が仕事を辞めてきた。
 私は状況が分からず、ただ立ち尽くしているしか出来なかった。


 「へ?・・・仕事は・・・?どっ・・・どうしたらいいの・・・?もうすぐ娘は小学生なんだよ!?」


 「知るかよ!!お前に俺の苦労が分かるわけないだろ!?」

 「私だって小さな子供達の育児しながらあなたのサポートしてたじゃない!!」



 意味のない喧嘩ってのは分かっている。




 でも、いつかはまたあの頃のように仲良く、子供達にも笑ってくれる夫に戻ると信じてたからこそ頑張ってこれた。

 『いつかは・・・』なんてそんな淡い希望さえ砕け散ったこの状況に耐えられる訳がない。






 それから夫は躁うつと診断されカウセリングを受けながら生活していた。
 喧嘩をして辛かった気持ちもぐっと心の奥にやり、できる限り夫に尽くした。

 幸いにも2ヶ月程で体調も回復、再就職へ・・・。
 現在も働いている介護職に決める。


 前より気持ちが楽なのか、子供達とも笑顔で接してくれるまでなった。





 良かった・・・。

 また笑顔が見れた・・・。
 
 子供達も嬉しそう・・・。




 ずっと『いつかは・・・』で望んでいた姿が今・・・目の前にある。


 それなのに私の中の何かがぐるぐると渦巻いていた。













 夫が気を利かせてくれ、学生時代の友人に会い、何年かぶりのランチをした。


 「春果久しぶり!!元気にしてたー?私はさー旦那と喧嘩して別居中なんだよねー。」

 「相変わらずだね、律華(りつか)は。」

 「そう?でもそこが私じゃん?」


 この笑顔も相変わらずだなーと思った。



 律華は、昔から周りを巻き込んで笑顔にするような子だった。

 羨ましいなぁ・・・


  「ねぇ、春果さ・・・なんか疲れてるよね?大丈夫・・・?話聞くよ?」

  「そうかな?前よりかは今の方が楽だよ…?」

  「それならいいけど・・・無理しないでね!」

 「ありがとう」と伝えようとしたが、急にしんっと店内が静かになる。



 カランカラン




 ゾロゾロとガラの悪そうな人達が店内に入って来た。


 なんだろ?このヤンキー集団は・・・


 まだ若い子達だなと呑気に見ていた。

 その中で一際目立つ存在がいた。

 目が離せずにいると・・・


 ん?今、目が合った気がする。

 気のせいだよね・・・?


 集団は奥のテーブル席に座った。
 



 そういえば・・・と律華が言い出した。

  
 あっ・・・


 ランチ中だったのを思い出し、2人で少し急いで食事を済ませる。

 「ねぇ、雰囲気やばくない?そろそろお店変えようか。」

 「そうだね。どっか別のとこに行こっ・・・。」




 





 テーブルが倒れ、お皿が粉々なる。



 「おい!いいかげんに認めろよ!!」

 「なんでそんなに怒るかねー。俺はただ助けてあげたってのにさ。」

 「あんたの助けなんかいらねぇんだよ!!あんたが手ぇ出すから俺は1人では何も出来ねぇやろうだって笑われるんだよ!!」


 少し小柄な青年がすごい剣幕で怒鳴っていた。

先程、目が合ったであろう青年に今にも掴みかかろうとしている。



 まずいなー。

 早めに逃げなきゃ。

 そう思ったが既に遅かった。




 
 




 ガラスが割れる音が店内に響く。
 


 「「きゃあ!」」

 「「うわー!」」


 店内が慌ただしくなり、パニック状態になる。


 これはかなりまずい・・・。


 「律華!逃げよ!」


 振り向くと律華がうずくまっていた。
どうやらガラスが飛んできて頬をかすった様だ。


 「律華!大丈夫!?これで止血して!」
 

  ハンカチで傷口を押さえる。


 「ごめんねぇ。避けきれなくて・・・切っちゃった。」

 こんな時でも律華は私に心配させない様に笑っている。







 プツン!






_頭の中で何かが切れた。




 私はゆらゆらと立ち上がり、拳を強く握った。


 「ちょっと!あんたら!なにしてくれとんか!!?」

 我を忘れ、怒鳴りながら殴ってしまった。 

 いや・・・

 怒鳴る前に殴ってしまったと思う。





 怒りのままに暴れたと思う。


 そこからふと我に帰り、気づけば拳には血がついていて、なぜか周りに何人も倒れていた。





 「えっ・・・・・・・・・・・・・・・。」



 もしかして、喧嘩を止めよう?として逆に倒しちゃったパターン!?

 覚えてない・・・






「あー・・・ごめんなさい・・・。」




 やっちゃったよ・・・どうしよう。

 まずいどころじゃないよね・・・これ・・・。
 



 「おい・・・。」


 「はい!!」


 恐る恐る後ろに振り返ると、目の合った?子が今にもやりそうなオーラを醸し出していた。

 あっ・・・。

 終わったわ。

 これ。



 目をぎゅっと瞑り、今から来るであろう衝撃に備えた。



 「迷惑かけたな。すまん。怪我したお姉さんは病院行ける?無理なら車出すけど・・・。」




 「へ?」



 多分、人生で1番変な声は出したんじゃないかな。



 クスッ



 ん?
 
 今、笑われた・・・?


 「だから、迷惑かけたから責任持って俺が車を出す。病院代も払うからさ。」


 意外といい子なの・・・かも?

 謝罪があるなんて思ってもおらず、いまいち状況が飲み込めなくて固まってしまう。


 「ありがとう。じゃあお言葉に甘えようかなー。ね?春果。」

  「えっ?・・・あっ・・・うん。そうだね!」

 「じゃあお店の裏側で待ってて。車持ってくる。」

   「はーーい!」
 
 まだよく状況が分からない。



 裏側に行くために2人で歩いていると、律華が私に向かってウィンクをする。

  「リーダー?の子がいい子そうで良かったね!」

 楽観的に考えているようだが、律華を傷つけた原因はあの子なんだけど・・・。


 切り替えの速さはさすがだと言わざるをえない。


 あと、店内で倒れてる子達は放置でいいのかな・・・?


 不安になりながらも、律華と2人で彼が来るのを待っていた。
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