おいでませ あやかし旅館! ~素人の俺が妖怪仲居少女の監督役?!~

矢立まほろ

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○4章 守りたい場所

 -14『恐怖』

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 ドッペルゲンガーが現れた。
 そんな常軌を逸した光景を前に、大広間のサークル員たちのほとんどが深いショックと恐怖に陥っていた。

 中には泣き出している女性や、腰を抜かして倒れこんでいる男性もいた。
 一同に怖がっている中、しかし会長だけは仁王立ちのようにぴんと背筋を張って立っている。

「ああ、なんだいこれは。素晴らしい体験だ。心霊現象? 怪奇現象? 何かの超能力か、はたまた宇宙人の仕業か。素晴らしい、素晴らしい。あははははっ」

 美人だとは思えないほどに、鼻息を荒くしてしわ深い笑顔を浮かべている。

 この状況下で平静でいられるのはさすがといったところか。
 腰砕けた会員たちを余所に、嬉々とした表情でもう一人の自分とにらめっこを続けていた。

 その動じない胆力には恐れ入る。

 怖がらせる作戦はひとまずは上々のようだ。
 だが、サークル員たちを驚かせるのがメインではない。

 大広間の混乱に感化され、本来のターゲット――強面たちは更に表情を不安がらせていた。

 また灯りが落ちる。

 今度は何が起こるのか。
 そんな不安漂う空気感に場がざわめき、強面たちもそれぞれに頼りない声を漏らし始めていた。

「くそ、なんて旅館だ。怨霊でも居着いてやがるのか」
「そんなオカルト話があるわけないやろ。ホラー映画やあるまいし」

 マッスルの言葉をヒョロが力強く否定する。
 だが今度は一向に電気が回復せず、彼らは壁に寄り添って及び腰になっていた。

「おい。女将んとこ行くで。何が起こっとるのか説明してもらおうやないか」
「女将のとこって、どこにいるんだよ」
「どうせフロントとか事務所やろ。さっきも内線繋いだ時はおったんやし」

 ヒョロが廊下を引き返し始める。
 マッスルとサンシタが続いたのを薄闇の中に確認して、俺もこっそりと後をつけるように行動を始めた。

 ここからが本領発揮だ。

 ちょうど月すら雲に隠れて真っ暗の廊下は、重く冷たい空気と床板の軋む音が不気味さを演出し、今すぐにでもどこかから何かが出てきそうな雰囲気を醸し出している。

 強面たちがそんな怖がりの廊下を進んでいると、

「うわああああ」とサンシタが大袈裟に思えるような大声を上げた。

「なんや、このアホ。急に声を出すな」
「い、いや。だって、あれ」

 サンシタが前方を指差す。
 その先には、闇夜に真ん丸く浮かんだ一つの目玉があった。

 それがやがて強面たちへと近づき始める。

 一つ目小僧だ。
 丸い一つだけの目を暗闇に光らせ、あははは、と笑いながら強面たちの脇を走り抜けた。

「な、なんやこいつ!」

 うろたえるヒョロ。
 ふと窓の外に見やり、今度は飛び出しそうなほどに目を開かせる。

「ひ、人魂やー!」と叫んだ視線の先には、明かり一つないはずの建物の傍にほんのりと光る緑色の提灯があった。

 外灯として駐車場などにならんでいる提灯お化けだ。

 続いて壁にくっついて紛れていた塗り壁が強面たちへと倒れこむ。

 かろうじて三人はよけるが、廊下にだらしなく倒れこんでしまった。足は今にも折れそうなほどに震えている。

「ななな、なんやねん。どうなってんねや」
「わ、わからん」

 フロントへと向けていた強面たちの足が滞る。

「ひええええええ」と、一番後ろを歩いているサンシタは頭を抱えて顔を伏せているばかりだ。

「ぼ、僕、もう無理ですよおおおお」と仕舞いには一番の大声を上げ、二人を残して一目散に廊下を駆けて行ってしまった。

「おいコラ。どこいくねん」
「ちくしょう。行っちまいやがったぞ」
「なんなんや。ほんま何がおこってるんや」
「俺が知るか」

 ヒョロとマッスルが互いに言葉を言い合う。
 だがそれは、気を取り持つためにとりあえず何かを喋っておこうという気休めのようなものだ。

 サンシタの後を追おうと歩みを進めるが、真っ暗で進む方向すら探り探りなせいか、伸ばした指先すら震えている。

 いい調子だ。

 ここぞとばかりに俺たちは強面たちを襲い続けた。
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