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チャプター1 銀髪碧眼幼女、LTAS(エルターズ)に立つ
001 総殺人数24860人の少年とポンコツ天使
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どうやら死んでしまったらしい。
あれはいつもどおりの1日だった。夜通し酒を飲み、すこし危なげなクスリをキメて、妹と親友、部下と遊び呆けていただけだった。仕事終わりということもあり、すこしばかり羽目を外しすぎたのかもしれない。
ただ、それがなんだって話でもある。
「あーあ、ついに死んじまったか。葬式は盛り上がっているんだろうな」
ルーシ・スターリング──死んでしまった彼に名前なんてないのかもしれないが、とにかく彼は生前ルーシと名乗っていた。そんなルーシは、煙草も酒もクスリもない真っ白な空間にて、腕を組みながら目の前にいる女と対峙する。
「随分と軽いですね。アナタ死んだんですよ?」
「死んじまったからにァ仕方ねェだろ。それで? これからどうなるんだい? おれは宗教放棄者だが」
ルーシは普段の冷静な態度を崩さない。
「宗教放棄者、ですか。ならばちょうど良い場所がありますよ」
ピンク色の髪色をした女は、セールスマンのごとくなにかを見せてくる。
「総殺人数24860人。本来ならば満場一致で無期刑でしょうね。永久に魂を縛られ、アナタという存在がアナタの世界から忘れ去られるまで、そこから出ることはかなわない」
「時効を含めれば10000人程度だろ?」
「殺人に時効はありませんよ」女はルーシをうつろな目で見据え、「仮にあったところで、結果は変わらないでしょう。アナタは狂っている。どこまでも人を殺し、どこまでも野望を追い求め、どこまでも異常であり続けた。そんなアナタが為すべきことは……」
「処女である私を抱くことです……とでもいうのかい? ははッ、冗談だよ……ん?」
女はまさしく図星といわんばかりに目を見開く。そんな間抜けな姿に、ルーシは鼻で笑う。
「おいおい、たかが人間ごときに考えを読まれるとは……相当なポンコツだな」ルーシはヘラヘラ笑い、「おれが生前いた日本じゃ、髪の毛をピンクにしていたヤツはみんなアホだった。忍者とか侍とかいっていれば、ベッドまで行くのに一時間もいらなかったよ。手に無数の生傷があるのは不気味だったがな」
「……そうやって私をいじめて楽しいですか?」
女は涙目になる。
(メンタル弱すぎだろ、このアホ)
ルーシは舌打ちし、
「いじめていねェよ。アホにアホっていったらなんの罪に問われるんだい? ロジハラってヤツか?」
こんなポンコツが天使のようだから、天界も落ちぶれたものだ。ルーシは首をゴキゴキ鳴らし、しばし号泣する寸前の女を見つめる。
やがて、ルーシは1回おおきなため息をつき、彼女の胸倉を掴む。
「おい……いい加減にしろよ」冷たい声質で、「オマエみてーな阿婆擦れを抱け、だと? てめェが管轄している人間の世界でも、ポンコツのてめェは無様にボコられてレイプされるのがオチだ。それもある意味卒業ではあるがな?」
ついに号泣してしまった。
(面倒くせェ。人間にちょっと脅されたくらいで泣き始めるようなヤツが、偉そうに物事語っているんじゃねェよ)
「まあ、泣くなよ。泣いたところで問題は解決しねェぜ?」
「で、ですが……」
「泣くんじゃねェ!!」
ルーシはついにブチ切れた。10分に一度煙草を吸っている人間は、もう何日と煙草を咥えていない。さすがに苛立ちが隠せなくなってきているのだ。
「……悪りィ。ヤニ切れなんだ。週1でセラピーにも行っているのさ。もう限界が近けェ」
「だ、だったら──」
女は紙巻煙草とライターをどこからともなく発生させた。ルーシはそれを受け取り、真っ白な空間に煙が灯る。
「ありがとう。あー……やはりこれに限るな。んで、話を進めようぜ? まずは自己紹介からだな。はい、どうぞ」
「……ヘーラーです。天使を務めております。まだ3年目の駆け出しものです」
「メンヘラってわけだ」ルーシは嫌味な笑みを浮かべる。
「ち、違いますっ!!」顔が真っ赤になる。図星だったのか。
「それで、メンヘラよ。おれが死んでしまったってのはなんとなくわかる。腹は減らねェし、身体も快調だし、なによりこのアホみてーな空間はわざと作られたと感じる。死を受け入れられねェヤツに向けて、すこしでも精神を安定させるためにな。ま、おれにはあまり関係ないが」
ルーシは死を受け入れている。別に死因などどうだって良いし、残された者の気持ちもわからないうえに、ヤツらならばルーシの死なんて軽々と超えてくれるだろう。だからどうだって良いのだ。
「随分と冷静ですね。普通、もっと取り乱すものですよ?」
「人間に考えを読まれたオマエこそ取り乱すべきだと思うぜ?」
「そ、それは……」
「なあ、メンヘラ」
「メンヘラじゃないですっ!!」
「ちょうど良い場所ってなんだ?」
最前の会話で気になった単語だ。このヘーラーとやらはなにかを隠している。どうせたいしたことではなさそうだが、一応聞いておく価値はありそうである。
「宗教放棄者にふさわしい場所。と、いうことはだ。神を信じたくなるような場所へとおれを飛ばす……ってとこか? それこそ戦場か、動乱か、革命か」
「それは言えない約束となっているので……」
「ああ、そうかい」ルーシは2本目の煙草に火をつけ、「深くは聞かねェよ。おれとてオマエらに逆らうほどアホじゃねェ。人間の送り場所を決められるくらいに偉いオマエらを、おれひとりが反逆したところでどうにかなる話でもないしなぁ」
ルーシは煙草をヘーラーへと投げ捨て、
「おれは暴れられればそれで良い」
宣言したのだった。
あれはいつもどおりの1日だった。夜通し酒を飲み、すこし危なげなクスリをキメて、妹と親友、部下と遊び呆けていただけだった。仕事終わりということもあり、すこしばかり羽目を外しすぎたのかもしれない。
ただ、それがなんだって話でもある。
「あーあ、ついに死んじまったか。葬式は盛り上がっているんだろうな」
ルーシ・スターリング──死んでしまった彼に名前なんてないのかもしれないが、とにかく彼は生前ルーシと名乗っていた。そんなルーシは、煙草も酒もクスリもない真っ白な空間にて、腕を組みながら目の前にいる女と対峙する。
「随分と軽いですね。アナタ死んだんですよ?」
「死んじまったからにァ仕方ねェだろ。それで? これからどうなるんだい? おれは宗教放棄者だが」
ルーシは普段の冷静な態度を崩さない。
「宗教放棄者、ですか。ならばちょうど良い場所がありますよ」
ピンク色の髪色をした女は、セールスマンのごとくなにかを見せてくる。
「総殺人数24860人。本来ならば満場一致で無期刑でしょうね。永久に魂を縛られ、アナタという存在がアナタの世界から忘れ去られるまで、そこから出ることはかなわない」
「時効を含めれば10000人程度だろ?」
「殺人に時効はありませんよ」女はルーシをうつろな目で見据え、「仮にあったところで、結果は変わらないでしょう。アナタは狂っている。どこまでも人を殺し、どこまでも野望を追い求め、どこまでも異常であり続けた。そんなアナタが為すべきことは……」
「処女である私を抱くことです……とでもいうのかい? ははッ、冗談だよ……ん?」
女はまさしく図星といわんばかりに目を見開く。そんな間抜けな姿に、ルーシは鼻で笑う。
「おいおい、たかが人間ごときに考えを読まれるとは……相当なポンコツだな」ルーシはヘラヘラ笑い、「おれが生前いた日本じゃ、髪の毛をピンクにしていたヤツはみんなアホだった。忍者とか侍とかいっていれば、ベッドまで行くのに一時間もいらなかったよ。手に無数の生傷があるのは不気味だったがな」
「……そうやって私をいじめて楽しいですか?」
女は涙目になる。
(メンタル弱すぎだろ、このアホ)
ルーシは舌打ちし、
「いじめていねェよ。アホにアホっていったらなんの罪に問われるんだい? ロジハラってヤツか?」
こんなポンコツが天使のようだから、天界も落ちぶれたものだ。ルーシは首をゴキゴキ鳴らし、しばし号泣する寸前の女を見つめる。
やがて、ルーシは1回おおきなため息をつき、彼女の胸倉を掴む。
「おい……いい加減にしろよ」冷たい声質で、「オマエみてーな阿婆擦れを抱け、だと? てめェが管轄している人間の世界でも、ポンコツのてめェは無様にボコられてレイプされるのがオチだ。それもある意味卒業ではあるがな?」
ついに号泣してしまった。
(面倒くせェ。人間にちょっと脅されたくらいで泣き始めるようなヤツが、偉そうに物事語っているんじゃねェよ)
「まあ、泣くなよ。泣いたところで問題は解決しねェぜ?」
「で、ですが……」
「泣くんじゃねェ!!」
ルーシはついにブチ切れた。10分に一度煙草を吸っている人間は、もう何日と煙草を咥えていない。さすがに苛立ちが隠せなくなってきているのだ。
「……悪りィ。ヤニ切れなんだ。週1でセラピーにも行っているのさ。もう限界が近けェ」
「だ、だったら──」
女は紙巻煙草とライターをどこからともなく発生させた。ルーシはそれを受け取り、真っ白な空間に煙が灯る。
「ありがとう。あー……やはりこれに限るな。んで、話を進めようぜ? まずは自己紹介からだな。はい、どうぞ」
「……ヘーラーです。天使を務めております。まだ3年目の駆け出しものです」
「メンヘラってわけだ」ルーシは嫌味な笑みを浮かべる。
「ち、違いますっ!!」顔が真っ赤になる。図星だったのか。
「それで、メンヘラよ。おれが死んでしまったってのはなんとなくわかる。腹は減らねェし、身体も快調だし、なによりこのアホみてーな空間はわざと作られたと感じる。死を受け入れられねェヤツに向けて、すこしでも精神を安定させるためにな。ま、おれにはあまり関係ないが」
ルーシは死を受け入れている。別に死因などどうだって良いし、残された者の気持ちもわからないうえに、ヤツらならばルーシの死なんて軽々と超えてくれるだろう。だからどうだって良いのだ。
「随分と冷静ですね。普通、もっと取り乱すものですよ?」
「人間に考えを読まれたオマエこそ取り乱すべきだと思うぜ?」
「そ、それは……」
「なあ、メンヘラ」
「メンヘラじゃないですっ!!」
「ちょうど良い場所ってなんだ?」
最前の会話で気になった単語だ。このヘーラーとやらはなにかを隠している。どうせたいしたことではなさそうだが、一応聞いておく価値はありそうである。
「宗教放棄者にふさわしい場所。と、いうことはだ。神を信じたくなるような場所へとおれを飛ばす……ってとこか? それこそ戦場か、動乱か、革命か」
「それは言えない約束となっているので……」
「ああ、そうかい」ルーシは2本目の煙草に火をつけ、「深くは聞かねェよ。おれとてオマエらに逆らうほどアホじゃねェ。人間の送り場所を決められるくらいに偉いオマエらを、おれひとりが反逆したところでどうにかなる話でもないしなぁ」
ルーシは煙草をヘーラーへと投げ捨て、
「おれは暴れられればそれで良い」
宣言したのだった。
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